児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

再逮捕再勾留が例外的に許される場合(札幌高裁H19.3.8)

  被害児童A
  2/1 児童淫行罪+児童ポルノ製造
  3/1 児童淫行罪+児童ポルノ製造
  4/1 児童淫行罪+児童ポルノ製造
  5/1 青少年淫行罪
のようなときに、青少年淫行罪で逮捕・勾留した後、児童ポルノ罪で逮捕・勾留できるかという論点。
 児童淫行罪と製造罪が観念的競合、数回の児童淫行罪は包括一罪、青少年淫行罪と児童淫行罪は一罪、という前提で初めて問題となる。(児童淫行罪がかすがいになって、科刑上一罪)
 札幌高裁H19.3.8は、罪数処理については、前記である(おおっ!)と解した上で、例外として許容されるとしています。
 弁護人としては、例外持ち出してまで許容するくらいなら、併合罪にしとけばいいのにと思いました。

参考判例

福岡高等裁判所決定昭和42年3月24日
 そこで、まず原裁判所の標榜する一罪一勾留の原則から検討するに、勾留の対象は逮捕ととも現実に犯された個々の犯罪事実を対象とするものと解するのが相当である。したがつて、被告人或いは被疑者が或る犯罪事実についてすでに勾留されていたとしても、さらに他の犯罪事実について同一被告人或いは被疑者を勾留することが可能であつて、その場合に右各事実がそれぞれ事件の同一性を欠き刑法第四五条前段の併合罪の関係にあることを要しない。それらの各事実が包括的に一罪を構成するに止まる場合であつても、個々の事実自体の間に同一性が認められないときには、刑事訴訟法第六〇条所定の理由があるかぎり各事実毎に勾留することも許されると解するのが相当である。けだし、勾留は主として被告人或いは被疑者の逃亡、罪証隠滅を防止するために行われるものであつて、その理由の存否は現実に犯された個々の犯罪事実毎に検討することが必要であるからである(刑事訴訟法第六〇条第一項参照)。もつとも、同一被告人或いは被疑者に対し数個の犯罪事実ことに当初から判明している数個の犯罪事実についてことさらに順次勾留をくり返すことは不当に被告人或いは被疑者の権利を侵害するおそれがあり、その運用についてはとくに慎重を期さなければならないことはいうまでもない。しかし本件においては、すでに説示した経過に徴し、再度勾留にかかる傷害事犯は最初の勾留時は勿論起訴当時においても予測できなかつた新たな犯罪行為であるから、たとえそれが最初の勾留又は起訴にかかる傷害事犯とも包括して暴力行為等処罰に関する法律第一条の三の常習傷害罪の一罪を構成するに止まるとしても、これについて再び勾留する理由ないし必要性があるかぎり、本件再度の勾留は必ずしも不当とはいえない。右と異る原裁判所の見解には賛同し難い。なお、原裁判所は、本件抗告に対する意見のなかで、包括一罪について既判力の関係で一罪性を認め、勾留に関する関係では個々の犯罪事実が対象となるものとして一罪性を否定することは恣意的に一罪を分断し包括一罪を認めた趣旨を没却するものであるという。しかしながら、公訴の提起の効力及び既判力が一罪の全てに及ぶ(刑事訴訟法第二五六条、第三一二条、第三三七条第一号)とされるのは同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われないいわゆる一事不再理の原則(憲法第三九条)に基づく法的安定性の強い要請によるものであるのに対し、他方勾留は主として被告人或いは被疑者の逃亡、罪証隠滅を防止するというきわめて現実的な要請によるものであり、それとこれとはそれぞれ制度本来の趣旨を異にするものであつて、必ずしも直接関連するものではなく、いわゆる常習一罪ないし包括一罪の関係で、既判力の及ぶ範囲と勾留の効力の及ぶ範囲とが時にその限界を異にするぱあいがあつても、けだしやむをえないところである。原裁判所の右意見には必ずしも賛同し難い