児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童淫行罪と場所提供罪とを観念的競合としたもの(福島家裁いわき支部H16)

 従来の実務からすると、売春婦BCに対する場所提供罪については、家裁は管轄がないことになります。
 併合審理した方が被告人に有利なんだから誰も文句言わないですよね。家裁が気を利かせていいうのではないか。

個室付き浴場経営者
従業員ABC3名(うちAは児童)が売春をすることを知りつつ場所提供
1/1 売春婦A 遊客甲
2/1 売春婦B 遊客乙
3/1 売春婦C 遊客丙
するとともに、1/1に児童Aをして遊客と性交させ、
もって、売春場所提供するとともに、児童に淫行させる行為をさせた

秋田家庭裁判所大館支部判決昭和33年11月18日
家庭裁判月報10巻11号80頁
 しかし、売春防止法一一条が情を知つて売春を行う場所を提供した者を処罰する理由は、風儀及び衛生を確保するため売淫行為の絶滅を期するとともに、婦人の人権を擁護する目的を有することにあるのであるから、本条違反罪の法益は各婦女であつて、本件売春防止法違反被告事件のように佐々木八重及び芳賀ミヱが売春する情を知りながら、被告人方の部屋を同女等に貸与した被告人の所為につき、かかる犯罪は各婦女毎に成立するものと解するのが相当であり、児童福祉法六〇条一項が児童に淫行をさせる行為をなすことを処罰する理由は、児童が人として尊ばれ、社会の一員として重んぜられ、よい環境のなかで心身ともに健全に育成されることを期し、虐待、酷使、放任などの不当な取扱から、まもられることを期し、児童の人権を擁護する目的を有することにあるのであるから、本条違反の法益も亦各児童であつて、本件児童福祉法違反被告事件のように、被告人が一八歳に満たないC子及びD子に淫行をさせる行為をした場合も、前記認定のとおりその犯罪は各児童毎に成立するものと解するのが相当であるばかりでなく、本件売春防止法違反被告事件と児童福祉法違反被告事件とは、包括的に一罪の関係にあるのではなく、刑法五四条一項に規定するいわゆる想像的競合又は牽連犯の関係にあるのでもなくて、同法四五条前段の併合罪の関係にあるのである。して見ると、本件売春防止法違反被告事件について、事物管轄は当裁判所に属しないことが明らかで、刑事訴訟法三二九条本文により管轄違の云渡をする場合に該当するものであるといわなければならない。