児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

観念的競合説の論証(最新版)

 裁判例をみていると、他の性犯罪なら、もともと法定刑の幅が広いので、罪数処理が量刑に直結することは稀で(製造罪が入ると、量刑はワンランク上がりますけど)、裁判所もあまりこだわっていないようです。その証拠に罪数処理がまちまちです。
 しかし、児童淫行罪が来ると事物管轄の問題になるので重大問題です。裁判所も真剣に考えて欲しいところですが、実はここでもまちまちです。
 観念的競合説として家裁小樽支部h18.10.2(控訴中)とか家裁岡崎支部h18.12.5(実刑報道)が出ています。
 大阪高裁H18.10.11は併合罪説(上告中)。
 こういう判例状況で、裁かれる犯人はたまりませんね。児童性的虐待の悪い奴なんだけど、それを裁く側の体勢が定まってない。情けない。最近は裁判所が児童ポルノ法の立法者に文句付けてますけど、事物管轄がビシッと決まらないというのは、裁判所の不始末。裁判所が法律を知らないのか?ああ情けない。

 「社会的にみても、被告人・被害児童の認識としても、「ハメ撮り」という一個の行為である。」と言えるかどうかですね。
 個人的には否定的ですね。上級審になるほど「ハメ撮り」なんて行為を認めないと思います。

第3 児童福祉法違反(児童淫行罪)と児童ポルノ製造罪は観念的競合
 被告人は、撮影したり、性交したり、性交場面を撮影したりしているのであるから、社会見解的にみて1個の行為である。
 社会的にみても、被告人・被害児童の認識としても、「ハメ撮り」という一個の行為である。
 そもそも犯罪類型として、買春等の機会に児童ポルノが製造されることが多いので、3項製造罪が設けられたのである。
大橋検事「ハイテク犯罪の捜査」捜査研究2004.12
 製造罪は、前提として、児童買春などの児童に対する性行為(前提性犯罪)を予定している。
 ここで前提性犯罪が「性交等」(児童買春罪)、「姦淫」(強姦罪)である場合には、撮影行為(製造罪)と社会見解的に一致することは困難であるが、「淫行」(児童淫行罪)とはその概念の曖昧さによって撮影行為(製造罪)と社会見解的に同一の行為となりうるところである。
 すなわち淫行(児童福祉法)についても、必ずしも性交を要さず、児童の健全育成を阻害する性的行為一般を包括しうる概念であるから*1*2、撮影行為(製造罪)と社会見解的に同一の行為となりうるのある。

 児童福祉法違反(淫行させる行為)の機会に児童ポルノ製造行為が行われた場合については、観念的競合とする裁判例は多数ある。
奈良家裁H16.2.5
奈良家裁H16.1.21
横浜家裁横須賀支部H17.6.1
東京家裁H16.10.25*3
 観念的競合とされている。
 検事が実務上参考になるとして紹介しているのであるから、一罪の処理はかなり広範囲に行われていると思われる。(
小栗健一「16歳の少女について年齢確認の方法を尽くさず、女優としてアダルトDVDに出演させた事件について」捜査研究6月号
⑤東京高裁H17.12.26*4
 児童淫行罪とその際の撮影行為(児童ポルノ製造罪)は性交自体を撮影している場合、観念的競合となると明確に判示した。
名古屋高裁金沢支部H14.3.28
長野家裁H18.4.20
⑦千葉家裁H12.12.22
札幌家裁小樽支部H18.10.2*5
⑨大阪高裁H18.9.21
名古屋家裁岡崎支部h18.12.5

 検事さんは観念的競合説のようですね。組織的な勘違いだと思います。