児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

胃ガンの見落とし

 電話相談があって要点を見直しています。債務不履行構成になっています。
 A病院は検査したが結果を検討していない。ガンが写っているのに読影していないというレベルでした。
 見落とさなかったらどれくらい延命できたかが争点になった事件です。

訴  状
原告代理人 弁護士 奥  村     徹
被     告  医療法人
右代表者理事長
損害賠償請求事件
請求の趣旨
一 被告は、原告に対し、金円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決ならびに仮執行宣言を求める。

請求の原因
一 当事者
1 原告妻は、亡夫の妻である。
2 被告は、診療所を経営し科学的かつ適正な医療を普及することを目的とし、肩書住所地においてA病院を開設している医療法人である。
二 診療契約の成立
1 亡夫は平成年月日頃より胃痛を覚え、同年同月日A病院において受診した。
被告は亡夫に対し、X線バリウム検査、超音波エコー検査及び血液検査を実施した結果、「胃が荒れているだけだ。」「肝臓はきれいだ。」「血液検査に異常はない。」として「胃炎」と診断し、薬を交付した。
2 すなわち、平成年月日、亡夫と被告との間に、亡夫の疾病について、専門医として要求される高度の知識、技術を駆使して的確な診断を行い、必要な処置を遅滞なく実施し、もって亡夫の疾病の回復を図るため、最善の治療を給付することを内容とする診療契約が成立した。

三 被告の責任
1 A病院での診療経過
2 B病院での診療経過
 超音波エコー、胃カメラ検査、血液検査の結果、「胃癌のおそれが大きい。」「胃から肝臓、リンパ節、脊髄にも転移している。」「余命あと一ヶ月。」と診断され即時入院。
胃癌により死亡(甲第一号証)。
3 被告の責任
隸 注意義務
 亡夫には胃癌を疑わせる多くの症状があり、その旨被告に訴えていたのであるから、被告には右診療契約に基づき、右症状について十分な診察・診断をなした上で適切な治療を施し、仮に被告医院にはかかる診察・診断に十分な設備がない場合には適当な大学病院を紹介する等適切な措置をとる義務、亡夫の病気の原因及び病状を解明し、亡夫本人あるいはその家族に対して解明された病気を正確かつ具体的に説明した上で、解明された病状に対して時宜を得た適切な治療をなすべき義務(インフォームド・コンセント)、亡夫本人並びに家族に、如何なる処置を行ったかどうかを正確かつ具体的に説明する義務、
がある。
隹 注意義務違反饒
 本件の経緯及び今日の医療水準に照らせば、被告医院において、胃癌の発見が遅れず、かつ適正な治療ないし転院等の措置が行われていれば、亡夫は実際の死期よりもさらに相当期間延命することができたことは明らかである。
雎 注意義務違反饌
 被告は、亡夫本人に対して、ただ「胃が荒れている」等と告げただけで、初診以降一度も、解明された病気についてなんら正確かつ具体的な説明をしておらず、結果として亡夫が適切な治療を受け相当期間の延命をはかる機会と可能性を奪ったことは明らかである。
雋 注意義務違反饕
 被告は、漫然と、消化剤投与や注射・点滴を行っただけで、亡夫本人にも家族にも、如何なる目的で如何なる処置を行ったかを説明していない。
4 債務不履行
  被告は、初診時にバリウム検査、血液検査を行ったのみで、「胃が荒れているだけである。」という誤診をなし、一ヶ月以上にわたり漫然と消化剤を交付し注射をしていただけで、癌に対する適切な治療を全く怠ったばかりか、適当な医療機関へ転院させることもせず、「胃炎」を前提として漫然と不適切な治療を続け、月日B病院において「胃癌が既に肝臓、リンパ腺、脊髄等広範囲に転移」しているとの診断を受け、月日に死亡するに至ったのであるから被告の債務不履行は明白である。

五 損害
1 逸失利益
2 慰謝料
3 弁護士費用
六 原告の相続
原告は亡夫の妻である(甲第二号証)。