児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

前提性犯罪と製造罪の罪数関係(強制わいせつ)

 強制わいせつ罪との関係では、
 撮影行為が性的傾向の表現である場合には、撮影行為が強制わいせつ罪の実行行為である「わいせつ行為」と評価される。

静岡地裁浜松支部H11.12.1
強制わいせつ被告事件
 (罪となるべき事実)
 被告人は、平成一一年四月二五日ころ、静岡県浜松市〈番地等略〉五階駐車場に駐車中の普通乗用自動車内において、甘言を用いて誘い出した甲野春子(当一一年。昭和五三年五月一八日生)および乙山夏子(当八年。平成年月日生)に対し、同女らが満一三歳未満であることを知りながら、「ゲームボーイを買うお金をあげるから、裸の写真を撮らせて。」などと申し向け、同女らをしてその着衣を脱がせて全裸にさせたうえ、同女らの陰部等の写真を撮影し、もって一三歳未満の婦女に対しわいせつな行為をしたものである

東京高裁S29.5.29
論旨第一点。
然しながら、たとえ、その加えた力そのものにおいては弱小なものがあるにしても、婦女子の意思に反して、その身体髪膚に有形力を加え、或いは、裸体にするため有形力をもつてその身体に接着する衣類を引き剥ぐが如きは、刑法第百七十六条にいわゆる暴行というべきところ(大正十一三年(れ)第一五八六号同年十月二十二日第三刑事部判決−大審院刑事判例集第三巻七四九頁参照)証拠によれば、本件各被害者は、いづれも未婚のうら若い女性(Aが満二十二年であつたほか、他はすべて満十五年乃至十八年)であつて、学校の卒業記念にするなどの理由で、写真撮影業を営む被告人の許に写真の撮影に赴むいた際、他人の交通しない撮影室で、依頼写真撮影を終つた後、被告人の無償で海水着姿の写真を撮つてやるとの甘言に気を許し、軽卒にも好奇心から海水着又は海浜着とパンツだけの姿となつて写真を斎つた虚に乗じ、被告人は、若い女性が、このような場合、その特有の慎ましさから、成年の男子の前で裸体になりかけた姿を世間の人に知られることを恐れ恥ぢらい、敢て騒ぎ立てようとしない傾向にあるのを奇貨として、性慾の刺戟興奮のため、いきなり、海水着(又は海浜着)やパンツに手をかけて引き外しにかかり被害者が、驚き嫌がつて抵抗するのを無理に剥ぎ取つて、原判示の如く、或いは裸体にしてその写真をり撮り、或いは裸体にされて更に世間に対する羞恥と被告人に対する恐怖の度を加えで殆ど無抵抗となつた被害者の陰部を自らの手指をもつて左右に開き又は強いて開かしめた上その写真を撮影し、或いは、その自由を奪つて被害者の陰部を手指で弄んだりしたことが、明らがであつて、冐頭説示するところに照らし、いづれも、被害者の意志に反し、暴行をもつて猥褻の行為を為したものと言わざるを得ない。

条解刑法
4)わいせつな行為の意義  わいせつな行為とは,本条においても、基本的には,174条、175条の場合と同様,性欲を刺激,興僻又は満足させ,かつ、普通人の性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為をいうものと解される。
しかし,本条が個人の性的事由を保護法益とするものであり,客体である個人の性的自由を侵害するかという見地から解釈する必要があるため,他の条文の場合とは若干の解釈の遠いが生じてくる.例えば、接吻も本条のわいせつな行為に当たるものと解される
・・・・
身体的な接触行為はなくても,人前で裸にする場合は,それか公然といえるか否かに関わりなく,本罪を構成する。したがって,裸にして写真を粘る行為が本罪に該当するのは当然である


 この場合には、児童ポルノ製造罪の実行行為である撮影行為は、強制わいせつ罪の実行行為である「わいせつ行為」でもあるから、製造罪と強制わいせつ罪とは観念的競合となる。

 別の視点から見ると、強姦罪・児童買春罪の場合は、実行行為が「姦淫」「性交等」に限定されているので、製造罪との重なりが狭いが、強制わいせつ罪の実行行為は比較的広いので、製造罪と完全に重複することがあり得るということであろう。

 とすると、児童福祉法違反(淫行させる行為)の実行行為もある程度広いから、製造罪との重なり合いが広い。
 従って、児童福祉法違反(淫行させる行為)と3項製造罪とは観念的競合。

奈良家裁H16.2.5
横浜家裁横須賀支部H17.6.1
東京家裁H16.10.25