児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

掲示板管理者と違法情報の投稿者は共犯か同時犯か?

 刑法本体の議論です。
 まず、正犯者を決めて、共犯者を決める。
 こんな主張をしたことがあるんですが、通りませんでした。
 掲示板設置行為が単独正犯(同時犯)・作為犯ということになっています。

犯人性・正犯性の欠如
2 犯人は誰か?
 画像掲示板に違法画像が掲載された場合、まず第一に責任を問われるのは、掲載した者=ULした者である。
 陳列罪においては、

最高裁決定H13.7.16
同条が定めるわいせつ物を「公然と陳列した」とは,その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい,その物のわいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にするまでのことは必ずしも要しないものと解される。

とされており、その後、陳列されたままの状態に置かれたとしても、別罪を構成しない(すなわち陳列罪は状態犯である)。
 わいせつ物陳列罪に関する大阪高裁判決H11でも、別罪を構成するとは評価されていない。

【事件番号】大阪高等裁判所判決/平成9年(う)第1052号
【判決日付】平成11年8月26日
【判示事項】パソコンネットの開設運営者が自己の管理するホストコンピューターのハードディスク内にわいせつ画像データを記憶・蔵置するなどした事案において、わいせつ物公然陳列罪の成立を認めた原判決の判断が維持された事例
【参照条文】刑法175
【参考文献】判例タイムズ1064号239頁
      判例時報1692号148頁
 さらに、所論は、原判決は、本件ハードディスクにつき電話回線を使用して閲覧可能な状況を設定したことに加え、わいせつ画像の情報にアクセスしてきた不特定多数の会員らに右データを送信して再生閲覧させ、了知させたことも公然陳列の実行行為の一部としてとらえているが、これは、従来、抽象的危険犯として理解されてきたわいせつ物公然陳列罪を、他者の行為が介在する一種の結果犯と構成するもので、同罪に異質な類型を持ち込む矛盾を犯すものである、という。
 しかし、すでに説示したように、本件におけるわいせつ物公然陳列罪が既遂に達した時期は、被告人が、わいせつ画像データを記憶・蔵置させたハードディスクをホストコンピューターの管理機能に取り込み、会員による右データへのアクセスが可能な状態にした時点であると解すべきであり、原判決が、右のアクセス可能な状態に置いたことのみならず、アクセスしてきた不特定多数の者に右データを送信して再生閲覧させたことをも認定、判示しているのは、それが既遂に達するための不可欠な要素であるとして判示したとみるべきではなく、本件において被告人がわいせつ物を公然陳列したという犯行態様を、その犯情にかかわる結果部分を含め、具体的に認定、適示したに過ぎないとみるのが相当である。したがって、原判決の右認定が、同罪を所論のような結果犯と構成したものとは認められないから、所論はその前提を欠いており失当である。


3 投稿者の陳列行為との関係
 ところで、例えば、投稿者が投稿した画像1及び5をみると、被告人の公訴事実は、場所以外、投稿者と同じである。結果まで同じであり、被告人のそれと両立しない。真犯人は投稿者である。
 江戸で投稿していた投稿者と、長崎で何もしていなかった被告人との間で、同時犯はあり得ない。

4 従犯であるという裁判例
 公然陳列罪は継続犯だとする裁判例がある。着手時期についても判示がある。

大阪地方裁判所第二刑事部、平成10年(わ)第6382号 わいせつ図画公然陳列被告事件、平成11年2月23日判決(確定)
「わいせつ図画の陳列行為は閲覧可能状態になった時点で既遂に達しうるものの、閲覧可能状態になった後も犯罪は継続している」
「わいせつな画像のデータのアップロード行為、すなわち、わいせつ図画の設置行為について実行の着手があり」、


 弁護人の見解(状態犯)とは異なるのだが、継続犯であれば、被告人の行為は幇助である。被告人の行為に正犯性は認められない。

園田 わいせつの電子的存在について 関大法学論集47巻4号1997年