こういうのは実務上参考になるので紹介します。詳細は東京地検に問い合わせてください。
控訴されていないようなので、この事件の被告人・弁護人には問題意識がなかったようです。
金額の多寡というのは、対償金額が少ないほど買春性が薄れる(ゼロになれば無罪)という意味で争点になることがあります。
「対償として10万円供与の約束をした」という被疑事実・公訴事実に対して、「対償として5万円供与の約束ならしたが、対償として10万円供与の約束をしたことはない」という弁解をする被疑者被告人もいるでしょう。対償供与の約束には金額が必須だとすれば「10万円の約束」が認定されなければ無罪になる可能性もある。
相手は児童だし、密室で行われるし、領収書ないし、そもそも現金でなくてもいいし、という背景もあります。
こんなとき、検察官、裁判所は、大阪高裁H16.1.15を知っていれば、「金額特定不要」として逃げることが出来ます。そう悩むことはない。
逃げられてしまった弁護人からの情報です。
東京地裁H16.6.22
年月日ころ
において
児童Cが18歳未満の児童であることを知りながら周旋者Dに10万円以内の現金を
対償として供与し、性交等をし、もって児童買春した事実認定補足
起訴状では「対償金額は10万円」とされているが、別件(児童ではない者の紹介)の謝礼と児童Cの紹介の謝礼を含めた趣旨で、10万円を交付したものであるから10万円全額を対償とすることはできない。
10万円のうち、対償として供与された金額を具体的には確定できないから判示の通り「10万円以内の現金」と認定すべきである。
大阪高裁H16.1.15
所論は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条の児童買春罪の構成要件は,児童に対して対償を供与し,又はその供与の約束をして,当該児童に対し性交等をすることであるのに,①原判決の罪となるべき事実(犯罪事実)には,児童に対して約束された現金供与が児童に対する性交の対償であることがいずれも摘示されておらず,また,性交の対償に値する利益であることを示す現金の額,大小も摘示されていないから,原判決には理由不備の違法があり(控訴理由第2,第5),
・・・・
確かに,本件の逮捕状及び勾留状の各被疑事実,さらに,起訴状記載の公訴事実のいずれについても,当該児童に供与を約束した現金が児童に対する性交等の対償であるとの明示がされていないこと,原判示第1及び同第2のいずれの犯罪事実についても,同様にその旨の明示及びその供与を約束した現金の額が摘示されていないが,いずれの摘示についてみても,供与を約束した現金が児童に対する性交の対償であることはその事実の記載ないしは判文から明らかに読みとれるし,現金供与の約束の記載がある以上その金額の摘示までは必ずしも必要としないから,いずれの点においても対価性の摘示に欠けるところはないというべきであって,所論はいずれも前提を欠き採用できない。論旨はいずれも理由がない。