春休み明けで、検挙報道も増えてきたので、公訴時効の検索や問い合わせが増えてきました。
法定刑が変わってますので改訂します。
Q 公訴時効はいつまでか?
A
本webサイトのアクセス管理結果によれば「児童ポルノ・児童買春 時効」という検索を行っている方が非常に多いが、関連の条文を組合わせて「買春罪の公訴時効は5年」という結果を得たとしても、あまり有意義とはいえない。
何罪が成立するか、何罪で起訴されるかによって異なるので、事実関係を詳細に聞かないと答えられない。事実認定をして適用罪名を決めるのは、貴殿ではなく裁判所だから、素人判断は当てにならない。
特に児童買春事件は、事案によっては、強姦・強制わいせつ・児童福祉法淫行罪というさらに重い罪名で訴追されることもありうるので、一つの罪名で公訴時効を断言することはできない。強姦致傷罪になれば公訴時効は10年である。
わかりやすく言えば、貴殿が「買春罪」と信じていても、被害児童から告訴が出れば、強制わいせつ罪(時効7年)・強姦罪(10年)等で捜査されるし、児童福祉法淫行罪の被害届が出れば児童福祉法淫行罪(時効7年)で捜査されるのである。
よく質問されるので念押ししておくと、児童買春罪なら時効は一応5年であるが、容疑を強姦・強制わいせつ・児童福祉法淫行罪等の重い刑に切替えれば、時効を延長できるし、実質的には強姦・強制わいせつ・児童福祉法淫行に該当する行為を「児童買春罪」として「軽く」「広く」「迅速に」処理している実務からすれば、児童買春行為を他の重い罪(強姦・強制わいせつ・児童福祉法淫行罪等)で立件することは比較的容易であり、不当とは言えない。だから、児童買春罪の公訴時効を気にしても、必ずしも有益ではない。
要はやった行為と適用される罰条によって、公訴時効は変わるのである。今さら、どうしようもないことである。
一応の目安として関係条文を挙げる。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html
第二百五十条 時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
第4条(児童買春)
児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
第5条(児童買春周旋)
児童買春の周旋をした者は、五年以下の懲役若しくはは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 児童買春の周旋をすることを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
第6条(児童買春勧誘)
児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
第7条(児童ポルノ提供等)
児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6 第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。
刑法も改正されています。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html
(強制わいせつ)
第百七十六条 十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。(強姦)
第百七十七条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。(準強制わいせつ及び準強姦)
第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。(集団強姦等)
第百七十八条の二 二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。(未遂罪)
第百七十九条 第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。(親告罪)
第百八十条 第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、適用しない。(強制わいせつ等致死傷)
第百八十一条 第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 第百七十七条若しくは第百七十八条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は五年以上の懲役に処する。
3 第百七十八条の二の罪又はその未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。(淫行勧誘)
第百八十二条 営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
追記
刑法も刑訴法の条文も変わっていました。注意しましょう。