児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

包括評価される児童ポルノの被害(岡山地裁H16.12.14)

「公然陳列目的製造罪」というのは珍しいです。

 岡山では、製造→その後数ヶ月陳列されても、包括一罪です。
 岡山の児童の権利というのは、新潟の児童の何分の1かくらいしかないようです。しかも量刑も軽いし。

岡山地裁H16.12.14
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
被告人両名は共謀の上公然陳列の目的で、
第1 H15.2.18製造と陳列(被害児童A 包括一罪) 被告人甲は未必の故意
H15.2.18ころ
Aが18才に満たない児童であることを知りながら(被告人甲は未必の故意で)、同児童の乳房や陰部付近をあらわにした衣服の一部を着けない姿態であって性欲を興奮させ刺激する者をデジタルカメラ及びデジタルビデオカメラで撮影してそれぞれの電磁的記録媒体に画像データとして記録蔵置しもって児童ポルノを製造した上、
同年3月2日から5月16日までの間、5回にわたり、前記デジタルカメラの電磁的記録媒体に記録蔵置した前記画像データをサーバーコンピューターに送信し、インターネット上で、児童ポルノを公然と陳列した。
第2 H15.11.14製造と陳列(被害児童B 包括一罪)
第3 H15.2.18製造と陳列(被害児童C 包括一罪)
量刑理由
「濃いモザイク処理をするから、個人の特定はできない」と欺罔的手段を用いて勧誘したが、薄いモザイク処理しかなかったし、顔もでていたので被害感情が厳しい。

 金沢地裁の事件の被害者は大阪の児童ですが、これも軽く包括評価されています。(これは、奥村弁護士控訴審弁護人ですから、マスクなしの原判決を持っています。先日金沢地検で「摘録」したのではありません。)

金沢地裁H13.9.14
第3 乙と共謀の上,
1 児童A子が満18歳に満たない児童であることを知りながら,金90万円の対償を支払う約束をした上,
(1)平成12年12月21日ころ,前記乙が,前記ホテル406号室において,前記児童と性交するなどし,もって,児童買春をし,
(2)同月22日ころ,被告人が大阪市所在のホテル「ド」401号室において,前記児童と性交するなどし,もって,
児童買春をし,
2 販売の目的で,前記乙が,同月21日ころ,前記ホテル「プ」406号室において,前記児童を相手方とする性交等の場面をビデオ撮影するとともに,被告人が同月22日ころ,前記ホテル「ド」401号室において,前記児童を相手方とする性交等の場面をビデオ撮影し,児童を相手方ととする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識できる方法により,描写した児童ポルノであるビデオテープ2巻を製造し,
第4 児童Bが満18歳に満たない児童であることを知りながら,予め,120万円の対償を支払う約束で,
1 平成13年3月7日ころ,大阪市所在の,ホテル「ビ」201号室において,前記児童と性交するなどし,
2 さらに,同月23日ころ,前記ホテル「プ」307号室において,前記児童と性交するなどし,
もって,児童買春をした。

法令の適用
判示第3の1(1)及び(2),第4の1,2の各所為それぞれ包括して同法律4条
(判示第3の1(1)及び(2)の事実につきさらに刑法60条)

 判示第3の2の児童ポルノ製造罪もよくみれば、日時場所も違う製造行為を包括評価しています。

 一応、上級審の判断があって、被害者が新潟県の児童の場合については、「その過程全体を牽連犯一罪として,あるいは児童毎に包括一罪として,既判力等の点で個別処罰を不可能とするような解釈はとるべきではない」とされています。

東京高裁平成15年6月4日(原田判決)
2 罪数関係の誤りをいう論旨について(控訴理由第8,第11,第13,第14)
 まず,①の点は,児童ポルノ製造罪及び同所持罪は,販売等の目的をもってされるものであり,販売罪等と手段,結果という関係にあることが多いが,とりわけ,児童ポルノの製造は,それ自体が児童に対する性的搾取及び性的虐待であり,児童に対する侵害の程度が極めて大きいものがあるからこそ,わいせつ物の規制と異なり,製造過程に遡ってこれを規制するものである。この童法趣旨に照らせば,各罪はそれぞれ法益侵害の態様を異にし,それぞれ別個独立に処罰しようとするものであって,販売等の目的が共通であっても,その過程全体を牽連犯一罪として,あるいは児童毎に包括一罪として,既判力等の点で個別処罰を不可能とするような解釈はとるべきではない。
 もっとも,わいせつ図画販売目的所持罪と同販売罪とは包括一罪であるから,結局,原判示第2ないし第4の各罪は一罪として評価されるべきであり,この点で原判決には法令の適用を誤った違法があるが,処断刑期の範囲は同一であるから,判決に影響を及ぼすものではない。
 ②の点は,児童ポルノ販売罪等は,その行為が,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず,これが社会にまん延すると,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えることなどを理由に処罰しようとするものであって,性的秩序,風俗を害することを防止しようとする刑法のわいせつ図画に係る罪とは処罰根拠が異なるだけでなく,児童ポルノに該当するものでも,わいせつ図画には該当しない場合もあるから,所論のいうように両罪が法条兢合(特別関係)にあるとは認められない。
 ③の点は,原判決には所論のいうような誤りはなく,所論は原判決を正解しないものである。
 ④については,一個の機会に撮影して製造した物は一罪と解するべきであるが,本件のMOについては,全く別の機会に製作されたファイルが追加記録されているのであるから,媒体は同一でも追加記録は別罪を構成するものというべきである。原判決の「弁護人の主張に対する判断」の1は,画像データが同一でも別の媒体に複写すれば製造に当たる旨を説示したにすぎず,媒体が同一であれば一罪になる旨判示したものではなく,所論は原判決を正解しないものといわざるを得ない。

 原田判決は、判例としての影響力がないんでしょうか?