児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

買春罪と製造罪の罪数

 こんなことを主張したことがあります。

控訴理由第21 法令適用の誤り
 原判決は、判示第3の所為について、第3の1を児童買春の包括一罪、第3の2を児童ポルノ製造の包括一罪として、両罪を併合罪として処断していることが明らかである。

原判決
金沢地裁平成13年9月14日
被告人は
第3 
Nと共謀の上,
1 児童B子(昭和60年月日生)が満18歳に満たない児童であることを知りながら,金90万円の対償を支払う約束をした上,
(1)平成12年12月21日ころ,前記Nが,前記ホテル「P」406号室において,前記児童と性交するなどし,もって,児童買春をし,
(2)同月22日ころ,被告人が大阪市所在のホテル「D」401号室において,前記児童と性交するなどし,もって,児童買春をし,
2 販売の目的で,前記Nが,同月21日ころ,前記ホテル「P」406号室において,前記児童を相手方とする性交等の場面をビデオ撮影するとともに,被告人が同月22日ころ,前記ホテル「D」401号室において,前記児童を相手方とする性交等の場面をビデオ撮影し,児童を相手方とする性交及び性交類似行為、に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により,描写した児童ポルノであるビデオテープ2巻(平成13年押第13号の1,2)を製造した

(適用法令)
1 罰条
判示第3の1(1)及び(2),第4の1,2の各所為
それぞれ包括して同法律4条
(判示第3の1(1)及び(2)の事実につきさらに刑法60条)
判示第3の2の所為
包括して刑法60条,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条2項,1項

2 刑種の選択
いずれも所定刑中懲役刑を選択
3 併合罪加重
刑法45条前段、47条本文、10条(刑および犯情の最も重い判示第4の刑に法定の加重))

 しかし、買春の場面を、買春しながら撮影していたことが本件児童ポルノ製造の実行行為にほかならないのであるから、買春と撮影は1個の行為であり、両罪は観念的競合である。
 これを併合罪とした原判決には法令適用の誤りがあるから破棄を免れない。
 確かに、一見すると、児童と買春する行為と撮影行為は別の行為と評価することもできる。しかし、本件児童ポルノ製造行為は、自分は被害者B子と淫行しながら、たまたま他人と他人が行う性行為を撮影するというのではなく、被告人自らが児童と性行為を行う模様を撮影するというものであって、ここで被告人が被害者B子と性行為を行わなければ児童ポルノの要件を満たさないのであるから、買春行為は児童ポルノ製造行為の一部を構成している。
 図示すると、「性交ないし性交類似行為」の点は明らかに重なっており、しかも買春罪においても児童ポルノ製造罪においても「性交ないし性交類似行為」は最も重要な構成要件であるから、1個の行為と言うべきである。

 これに対する高裁判決はこうでした。

名古屋高等裁判所金沢支部平成14年3月28日(公刊物未掲載)
(3)所論は,原判示第3の1の買春行為がビデオで撮影しながら行われたものであることから,上記児童買春罪と原判示第3の2の児童ポルノ製造罪とは観念的競合となるともいうが(控訴理由第21),両罪の行為は行為者の動態が社会見解上1個のものと評価することはできないから,採用することはできない。