児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

性非行臨床における課題

 少年の処遇にアイデアを探してみたのですが、こんなことになっているそうです。

藤岡淳子「性非行臨床における課題」こころの科学 '02.03
しかし、現在の日本で、性非行少年の性暴力行動そのものを変化させ、再犯罪の防止を目標に掲げた処遇が十分に行われているとは、残念ではあるが、言えまい。先にも述べたように、性非行の理解やアセスメントおよびトリートメント (処遇) に関しては、北米を中心にこの二〇年間ほどで、かなりの知見と経験が積み重ねられてきている。
(中略)
現時点では、おおむね二〇〜三〇%の再犯防止率が報告されている。性犯罪者の再犯防止の特別処遇を受けなかった同様の条件の性犯罪者に比べ、処遇を受けた者では、再犯する者が、一〇人に二人から三人程度は減るということである。それなら特別処遇をやる必要はないということになるであろうか?
考え方次第であろう。しかし、一人性犯罪者が減れば、被害者は三八〇人ほど減るということを思い出す必要もあろう。性犯罪少年の処遇
は、第一に社会のため、被害者のために行うものである。
(中略)
現在の日本では、こうした性犯罪者のための特別な処遇はほとんど行われていないのが実情である。一部の少年刑務所あるいは少年院にお
いて、試みとして開始されてはいるが、政策としての組織的取り組みではなく、個人的努力に拠っていると言って過言ではないであろう。そして社会内においては、筆者の知る限り、そうしたプログラムを提供する機関は、ほとんど皆無と言ってよいのではあるまいか。一つには、比較的攻撃性や習癖性がまだ低く、自分の行った性暴力の責任を負う構えを持ち、変化への動機づけが見られる性非行少年には社会内で処遇を提供するシステムが、二つには、それらの条件が整わない性犯罪者には矯正施設内でそれを提供するシステムが、そして三つには、施設から社会に戻る際にも、適切な処遇と監督とを保証するシステムが必要であり、その構築が重要な課題であると筆者は考えている。しかし、現在のところそれらを構築しようとする動きや展望があるようには、残念ながら、筆者には思えないのである。