児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

福祉犯は刑務所では治らない

 量刑不当の控訴理由でこんなことを書きました。
 なぜかしら、施設内処遇に福祉犯対策がありません。

 多数回の児童買春罪は、被告人の性的嗜好が原因であることは否定できないので、再犯防止のための矯生をいうのであれば、性的嗜好に対する処遇が準備されていなければならない。
 しかし、刑務所における性犯罪再犯防止の「改善指導」では児童買春罪・児童ポルノ罪は対象外であるから、被告人の再犯防止は図れない。これは法律上明らかである。
 暴力的性犯罪に対する処遇しか用意されていないのである。

刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(平成十七年五月二十五日法律第五十号)
(改善指導)
第八十二条  刑事施設の長は、受刑者に対し、犯罪の責任を自覚させ、健康な心身を培わせ、並びに社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるため必要な指導を行うものとする。
2  次に掲げる事情を有することにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対し前項の指導を行うに当たっては、その事情の改善に資するよう特に配慮しなければならない。
一  麻薬、覚せい剤その他の薬物に対する依存があること。
二  暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員であること。
三  その他法務省令で定める事情

刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律施行規則
(平成十八年五月二十三日法務省令第五十七号)
(法第八十二条第二項第三号 に規定する法務省令で定める事情)
第五十八条  法第八十二条第二項第三号 に規定する法務省令で定める事情は、次に掲げる事情とする。
一  人の生命又は身体を害する罪により刑の執行を受けている者について、その被害者及びその親族その他の関係者に対する謝罪の意識が低いこと。
二  刑法 (明治四十年法律第四十五号)第百七十六条 から第百七十九条 まで、第百八十一条、第二百二十五条(わいせつの目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、第二百二十六条の二第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、第二百二十七条第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、第二百二十八条(同法第二百二十五条 、第二百二十六条の二第三項又は第二百二十七条第三項に係る部分に限る。)、第二百四十一条又は第二百四十三条(同法第二百四十一条 に係る部分に限る。)の罪の原因となる認知の偏り又は自己統制力の不足があること。
三  自動車の運転に関し刑法第二百八条の二 若しくは第二百十一条第一項 前段の罪又は道路交通法 (昭和三十五年法律第百五号)第百十六条 から第百十七条の二 (第一号及び第一号の二に係る部分に限る。)まで、第百十七条の三、第百十七条の四(第二号から第四号までに係る部分に限る。)、第百十七条の五(第一号に係る部分に限る。)、第百十八条第一項(第一号、第二号、第七号及び第八号に係る部分に限る。)若しくは第二項若しくは第百十九条第一項(第一号から第二号の二まで、第三号の二、第四号、第五号(自動車を運転する行為に係る部分に限る。)、第七号、第九号から第十号まで、第十二号の二、第十二号の三及び第十五号に係る部分に限る。)の罪を犯した者について、交通安全に関する意識が低いこと。
四  職場における人間関係に適応するのに必要な心構え及び行動様式が身に付いていないこと。

 これに対して、保護観察「類型別処遇マニュアル」によれば、認定事項2として、「本件処分の罪名又は非行名のいかんにかかわらず,犯罪・非行の原因・動機が性的欲求に基づく者(下着盗.住居侵入等のほか性的欲求に起因するストーカーを含む。)とされているので、被告人のような児童ポルノ・児童買春犯人に対しても、対応した処遇が可能となる。
 処遇内容としては、専門家による治療が用意されている。
 その適用は、暴力的性犯罪に限らないと説明されている。
    細井洋子「犯罪者に対する類型別処遇について考える」更生保護54巻8号

 さらに、最高裁からは、保護観察を活用するようにという通達も出ている。
  「保護観察類型別処遇要領」の全部改正について」家裁月報0308
 とすれば、短期自由刑として施設内で一般の受刑者と同様の処遇を受けさせるよりは、最高5年、社会内で保護観察として治療的処遇を受けさせる方が、被告人の犯罪傾向を除去するのにふさわしいことは明らかである。