買春罪における社会的法益を重視されます。
実践的刑法講座(刑法各論)
第14講 性暴力をめぐる諸問題──自由に対する罪(2)
大阪大学大学院法学研究科教授 佐久間 修
なるほど、近年の児童売買春(いわゆる「援助交際」)などでは、「被害者」自身の積極的な働きかけがあるため、当該行為の強制的件格が欠けるとはいえ、形式的な意思の自由よりは、未成年者の人格的尊厳を尊重する視点が重視されねばならない。13歳未満の年少者も含めて、個々の児童の同意能力を吟味した上で、およそ自由に性的行動の判断をさせることは、社会的に許容されるであろうか。かりに、生理的な年齢だけで同意能力を確定できないとしても、刑法上は、むしろ、未成年者の同意・承諾を口実に性的搾取の対象とした相手方の反社会性が定められているからである。しかも、反対説では、児童買春の犯人が相手方の同意能力を誤信したとき、理論上は常に故意が欠けることにもなりかねない。それでは、未成年者保護という目的が達成されないであろう。