児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

winny正犯判決

 確定しています。

http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/c1eea0afce437e4949256b510052d736/75f4203576aa0a5d49256f77000e906b?OpenDocument
◆H16.11.30 京都地方裁判所 平成15(わ)2018 著作権法違反被告事件
事件番号  :平成15(わ)2018
事件名   :著作権法違反被告事件
裁判年月日 :H16.11.30
裁判所名  :京都地方裁判所
部     :第2刑事部
原審裁判所名:京都地方裁判所
判示事項の要旨:
ファイル共有ソフトWinnyウィニー)を使用してインターネット利用者に映画の情報を自動公衆送信し得るようにした行為が,著作権法違反になるとされた事例

 弁護人は自戒をこめて判決を振り返ります。
 使えそうな判示もありますね。
 京都地裁平成16年11月30日は、違法情報の媒介者の刑事責任について、媒介者は単なる通過点・通路に過ぎないと判断したと解されます。

http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/c1eea0afce437e4949256b510052d736/75f4203576aa0a5d49256f77000e906b?OpenDocument
③ 弁護人の主張①について
弁護人は,被告人の本件行為は,特定の1名の者に対する送信を可能化したに過ぎず,公衆に対する送信を前提とした送信可能化権侵害には当たらない旨主張する。
 たしかに,被告人は,自己のパソコンを,初期ノードを設定した1個のパソコンに接続し,それを介してWinnyネットワークに接続していたものである。しかし,Winnyネットワークに一旦接続されてしまえば,これに参加している不特定多数のパソコンとの間での情報のやり取りが可能となり,ファイルを共有する状態となるものであることは,明らかである。そして,当初設定された初期ノードにかかるパソコンは,単にWinnyネットワークに通ずる一つの通過点となるに過ぎず,そこには,同パソコンの使用者の意思等が何ら介在しないであるから,被告人の本件行為が,不特定かつ多数の公衆に対する直接の送信を可能化するものと評価されることは明らかである。
 ④ 弁護人の主張⑦について
 弁護人は,Winnyが,そのネットワーク内において他人のパソコンを介して情報の送受信を行うプログラムであることから,そこで行われる送信行為は間接送信にほかならず,被告人の本件行為についても,直接送信を前提とした送信可能化権侵害に当たることはないなどと主張する。
 たしかに,弁護人が主張するように,Winnyネットワーク内における情報の送受信においては,これをアップロードした者とは異なる第三者が使用する複数のパソコンを経由して,その受信者となる者のパソコンに当該情報がダウンロードされるということもあり得る。
 しかし,そのような場合であっても,上記の経由点となる第三者は,当該情報をダウンロードしようとする受信者の送信要求を受けて,これに応じるなど,いかなる意識的な行為もすることがなく,そもそも,当該情報がダウンロードされる際,自己のパソコンを経由したことすら認識することはないのである。このように,上記第三者は,Winnyを自己のパソコンにインストールするか,Winnyを起動するかという場面においては意識的に行動しているけれども,Winnyを利用して情報をダウンロードしようとした者が,その送信要求をしたのに応じて,これをアップロードしているパソコンからデータが送信されるに際し,その送受信が自己のパソコンを経由する場面においては,何ら自己の意思に基づいて行動することはないのであるから,有意識的に当該情報を中継しているなどとは到底評価することはできない。
 したがって,Winnyネットワーク内における情報の送受信において,その送受信の過程で第三者のパソコンを経由することがあったとしても,それは,単なる通路ともいうべき存在に過ぎないのであって,この点をもって,被告人のパソコンから他のパソコンへの情報の送信が,間接送信であるなどと評価することはできない。弁護人の主張は失当である。
 また,弁護人は,インターネットを利用した通信において,複数の電気通信事業者が介在する点を指摘し,直接送信を行うことは不可能であるという趣旨の主張もしている。しかし,電気通信事業者は,通信の媒介を行うものとして通信に不可欠の役割を担うものであり,その存在をもってインターネットを利用した通信の総てが間接的なものであるなどとの解釈をとり得る余地がないことは,関連の法解釈及び社会常識等に照らし,余りにも当然というべきである。

 画像掲示板の管理者も、winny利用者やプロバイダーと同じく、投稿者が発信した違法情報を、掲示板の閲覧者に取り次ぐ「単なる通路」ということです。有意識的でなければ。
 しかも、winnyを起動しているだけでは、有意識的とはいえない。
 プロバイダーの責任には消極的。現実重視。
 例の画像掲示板管理者の東京高裁判決(管理人正犯説)とは方向が違います。

  「通路」のくせに大きな顔をするな
とも、
  「通路」に民事刑事の責任はない P2Pを恐れる必要はない
とも言われそうですが、ISPはどういう感想でしょう?


 とにかく、
    善意のwinnyユーザーやISPに責任なし。
 いい判決ではないか。ケガの功名。

 こんなACCSの見解があるんですが、京都地裁は、善人というか性善説というか、winnyユーザーは原則としてなにも知らずに起動しているという評価をしたことになります。

http://www.itmedia.co.jp/broadband/0312/04/lp13.html
Winnyに参加しただけで摘発も?
 Winnyでは、前述のとおりファイル交換が成立するまでには複数のユーザーが介在する。Winnyユーザーにとって、第3者的な立場で違法ファイルを中継しただけでも罪に問われるかどうか、気になるところだ。
 坂田氏は、「ファイル交換ネットワークに参加すること自体、摘発につながるということは言えるのではないか」と話す。
 「ユーザーは(流通するファイルが)ほぼ100%、他人の著作物であることを把握、想像しているはず。それでもあえて使い続けるなら、(著作権侵害に)加担している、あるいはその主体であるという認識があるのだろう」。
 もちろん厳密な意味で、インターネットに接続された端末に、他人の著作物の断片的なデータが存在することが“ファイルを送信可能な状態においた”といえるかどうかは、法解釈の問題になるだろう。坂田氏自身、法廷などで「徹底的に争うとなれば、(違法性を問えるか)分からない」と認めている。ACCSの賛助会員である法律事務所などの意見も、まだ正式には集約していないという。
 しかし坂田氏は、「今回の摘発からも分かるとおり、Winnyを利用することは、リスクのある行為と知ってほしい」と強調する。中継しただけでも、摘発の可能性はあるだろうとした。

 winnyユーザーはそんなに善人だったのか?

 なお、弁護人の感想としては、地裁レベルで、法令適用についてこれほど細かく判断されることはありません。裁判官の性格でしょうね。
 お忙しいので、通常は刑事訴訟法で判断が強制される事項を除いて、
   弁護人が縷々主張するところは、いずれも採用できない
とバッサリやられますね。氷室さんとかね(別に間違ってなければいいんですけど、児童ポルノの罪数間違ってるで)。