児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「プロバイダ責任制限法 名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」の一部改訂-法務省人権擁護機関からの情報削除依頼対応プロセスの明確化-

http://www.telesa.or.jp/019kyougikai/html/01provider/index_provider_041006.htm

 法務省が出てくるというのは気味悪ですが、奥村弁護士の守備範囲についてはコメントをつけました。
 しかし、求められて削除するまでもなく、刑事法的には未必の故意で作為の正犯なんですよね。


改正前

http://www.telesa.or.jp/019kyougikai/html/01provider/provider_020524_2.pdf
2刑事上も違法な情報としては、名誉毀損、信用毀損、侮辱などのように特定の者の権利が侵害されている
場合のほか、わいせつ画像、他人のIDやパスワード(不正アクセス禁止法)、児童ポルノ(児童買春等処罰法)、風説の流布証券取引法)などのように特定の者の権利が侵害されているとは限らないものもある。

奥村説

http://www.telesa.or.jp/019kyougikai/html/01provider/comment_041006-2.pdf
奥村徹 (弁護士)
2頁 脚注

児童ポルノはわいせつ図画とは違って、被描写者の権利を侵害することは明かであり、氏名こそわからないが、画像によって、被害者は特定されている。 従って、「児童ポルノ(児童買春等処罰法)、風説の流布証券取引法)などのように特定の者の権利が侵害されているとは限らないものもある。」という記述は誤っている。 これは法文上も複数の高裁判決でも確認されているところであり、児童ポルノ画像については、プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドラインだけが「権利侵害がない」としているところであり、認識の甘さを露呈している。 改正によって児童ポルノ陳列罪は懲役5年までとなり、プロバイダの責任も重い。この際訂正されるべきであると考える。


わいせつ図画、児童ポルノでは、刑事上、わいせつ図画陳列罪、児童ポルノ陳列罪への該当性が問題となる一方、民事上も名誉毀損、プライバシー侵害等に該当する可能性は十分にあります。このため、本ガイドラインでは、肖像等が掲載された場合の送信防止措置の要否について21頁「③写真、肖像等が掲載されたウェブページ等」以下に定めていますのでご参照ください。 また、ご指摘のように児童のうち被害児童が特定できる影像がある場合、被害児童に対する権利侵害が生じているのは明白と考えられますので、誤解を招かぬよう次のような注記を加えたいと思います。 『但し、わいせつ図画、児童ポルノでは、刑事上、わいせつ図画陳列罪、児童ポルノ陳列罪への該当性が問題となる一方、民事上も名誉毀損、プライバシー侵害等に該当する可能性もあり、この場合の対応については、本ガイドラインが適用される。』


改正後

http://www.telesa.or.jp/019kyougikai/html/01provider/provider_041006_2.pdf
2刑事上も違法な情報としては、名誉毀損、信用毀損、侮辱などのように特定の者の権利が侵害されている場合のほか、わいせつ画像、他人のIDやパスワード(不正アクセス禁止法)、児童ポルノ(児童買春等処罰法)、風説の流布証券取引法)などのように特定の者の権利が侵害されているとは限らないものもある。但し、わいせつ画像、児童ポルノでは、刑事上、わいせつ図画陳列罪、児童ポルノ陳列罪への該当性が問題となる一方、民事上も名誉毀損、プライバシー侵害等に該当する可能性もあり、この場合の対応については、本ガイドラインが適用される。

 児童ポルノ罪は必ず権利侵害があると思うんですけど。なかなか理解されません。
 また、「本ガイドラインが適用される」といっても、管理者はすでに留置場という危険性があります。

 東京高裁H16.6.23は被害者からの削除要請もないし、被告人は画像を認識していない(未必の故意)。

東京高裁H16.6.23
5所論は,要するに,いわゆるプロバイダー責任制限法によれば,被告人は,本件掲示板の管理者であって,同法3条1項の要件を満たさないから,同法の適用あるいは類推適用により,被告人は被害児童に対する関係で民事・刑事の責任を免責される,と主張する。
 所論は,法令適用の誤りの主張と解されるが,前記説示に係る事実関係の下では,被告人がいわゆるプロバイダー責任制限法によって,その刑事責任を免責される理由はないというべきである。所論は,独自の見解に立つもので到底採用の限りではない。
 論旨は理由がない。