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人身売買厚生労働省通知

古くて新しい問題なんですね。
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○児童の人権擁護並びに成人の刑事事件に関連する児童の保護について
(昭和二六年九月一二日)
(児発第一、二〇九号)
(各都道府県知事あて厚生省児童局長通知)
児童の人権擁護についてはかねてより十分御配意のことゝ思われるが、最近農村又は特飲街等におけるいわゆる児童人身売買事件が相当激増している模様である。
このことについては既に「親元を離れ他人の家庭に養育され又は雇傭されている児童の保護について」通知(昭二四、五、一四 厚生省発児第四五号 各都道府県知事宛厚生次官法務行政長官労働次官文部次官連名通知)及び本年五月第四回青少年保護育成運動實施要綱により各般の対策を講じられていることゝ思われるが、最近特飲街等におけるこの種事件の悪質化している事情に鑑み、この際この種事件の取締及び児童の保護について一層の御努力をお願いしたい。
なおかゝる事件の取締に関連する児童の保護について国家地方警察本部刑事部防犯課長より別紙の通り各警察管区本部刑事部長、各都道府県方面警察隊長並びに六大都市警察長宛通知がなされたから御了知されたい。
又本通知によつて成人の刑事事件に関連して保護を要する児童があつた場合には今後警察より児童相談所児童福祉司等に通告が行われることゝ思うが、かゝる児童については児童相談所児童福祉司等は警察よりの通告を待つだけでなくその本来の職務として進んで積極的に児童の発見、保護に努め以つて福祉の万全を図るように留意せられたい。

(別紙)
成人の刑事々件に関連する児童の保護について
(昭和二六年八月一三日 防発第六七号)
(各警察管区本部刑事部長 各都府県方面警察隊長(六大都市警察長)あて国家地方警察本部刑事部防犯課長通知 )
標記のことについては、本年四月一○日刑発防第五号「第四回青少年保護育成運動の実施について」の通達において注意を喚起したところであるが、今回本問題について別紙「写」の通り、厚生省児童局長より依頼があつたので、今後も警察による事件の処理にあたつて保護を要する児童を発見した場合には、児童相談所児童福祉司に連絡する等適切に措置するよう努められたい。
自治体警察にも連絡されたい。

(別紙)
成人の刑事々件に関連する児童の保護について
(昭和二六年七月二六日 児発第三四六号)
(国警本部刑事部長あて厚生省児童局長通知)
最近特飲食街等に於ける児童のいわゆる人身売買について取締を徹底されて居ることは児童福祉のために慶賀にたえないところでありますが、これらの成人の刑事々件の場合に、これに関連する児童の福祉の措置の完璧を期する必要が痛感されますので、事件の処理に際し、関係児童に保護者がないかあるいは保護者に監護させることが不適当であるか又は適当な保護者の存否が明らかでない場合に警察の行う当該児童の児童相談所への通告について、その励行に一段の御配意方をお願い致します。
なお被疑者がたまたま児童の保護者でありその被疑者を検挙することによつて児童だけが残るような他の事件の場合についても必要に応じ右に準じたお取り扱いを煩わしたく存じます。

○所謂児童の人身売買事件の対策について
(昭和二七年二月一九日)
(厚生省発児第一五号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通知)
標記については、昭和二四年五月一四日厚生省発児第四五号都道府県知事宛厚生次官、法務行政長官、労働次官、文部次官連名通知「親元を離れ他人の家庭に養育され又は雇用されたる児童の保護について」によつて通知されており、かねてから、御配慮を煩わしているところであるが、最近の社会情勢は、所謂人身売買を益々増加させ、それについて根本的な対策を講ずることは緊急の課題であるので、今回、中央青少年問題協議会において、別紙のとおり、所謂人身売買の定義とその基本的な対策要綱が定められ、二月一四日の次官会議において決定され、その線に沿つて関係各省がそれぞれ具体的対策を講ずることになつた。ついては、貴都道府県におかれても、左記により、益々人身売買の対策に関する活動を促進されるよう御配慮を願いたい。特に本件については、市町村長と緊密な連絡の下に、十分その協力を得るよう配意せられたい。
なお、関係各省も夫々の関係機関に対して、前記の基本対策要綱に沿つた具体的対策を通知しているから、都道府県青少年問題協議会を利用してこれら諸機関と緊密な連絡を保ち、綜合的効果の達成に遺憾なきを期せられたい。

第一 定義、本通知で「人身売買」とは、中央青少年問題協議会で決定された如く、次のとおりであること。
「児童をしてその福祉に反するような労務又は不当な人身の拘束を伴う労務を提供させ、その対価として財物その他の物を給付することを内容とする契約又はこれを斡旋する行為」
第二 児童福祉思想の昴揚
人身売買の発生を未然に防止するためには、一方では家庭の貧困をなくして生活の安定を図ることが必要であるが、他方では、児童の人権を尊重する思想の啓蒙が必要であるから、人権尊重、児童福祉思想については、特に昨年五月五日に制定された児童憲章の普及宣伝等を中心として、特に左記の点について啓蒙を図るように努めること。
一 児童を独立の人格者として扱い、児童の基本的人権を尊重するという思想の啓蒙を図り、従つて、子供を親の所有物の如く勝手に処分するような封建的遺制を根絶するように努めること。
二 児童を心身ともに健全に育成するためには、原則として、両親の家庭のもとで、且つ正しい愛情と知識と技術を以つて、育てなければならないこと等の児童福祉の思想を普及徹底せしめること。
第三 要保護家庭の生活安定
家庭が貧困であるために子を売る例がすくないことに鑑み人身売買の発生を未然に防止するためには、家庭の生活の安定を図ることが最も効果的であるから、社会福祉関係機関は、特に左の点に留意し要保護家庭の生活の援護、社会的自立の促進等に遺憾なきを期することが必要であること。
一 児童養育困難者の積極的相談
単に家庭が貧困であるという理由だけでその児童をその家庭から引き離して他へ出すことは、児童の福祉にとつて最善でないから、経済的理由等で児童をどうしても手許で養育することが困難になつた場合には、すみやかに、当該地区担当の児童委員、市町村、福祉事務所又は児童相談所に進んで相談するように、予め一般の啓発指導に努めておくこと。
二 児童を家庭においたままでの生活保護法の適用等
前項の相談があつたとき、又は必要があると認められるときは、実情を調査し、保護の要件に該当する限り適切な生活保護法の適用その他のあらゆる指導援助をなすこと。その際、できるだけ家庭から児童をひきはなすことなく児童を家庭においたままで、生活保護法の適用等をなすように努めること。
三 保護受託者制度の活用
適当な職業に直ちには就けない児童について、その将来の自立を促進するため、保護受託者制度の活用を図るものとし、当該家庭等から保護受託者の許へ通勤し又は保護受託者の許へ同居して、独立自活に必要な指導を受けさせる等の措置等を考慮すること。
第四 職業安定機能の強化
児童が人身売買的コースを辿る危険に立つことを防止するためには、予め、正規の過程によつて正常の職業に就くことができるようにすることが必要であるから、児童福祉機関は職業安定機関に協力して、児童の職業安定に努めること。
一 職業安定所への通報
家庭の状況その他から判断してすみやかに職業を斡旋しなければ人身売買的コースを辿る虞のある児童については、福祉事務所長又は児童相談所長は公共職業安定所長に対し、職業斡旋を依頼すること。その際児童相談所長は必要な調査をなし、特に家庭の状況、児童の職業斡旋を必要とする理由、児童の希望就職先等を明記した書類(別紙様式)を添付すること。
二 職業安定所の積極的斡旋
前項の通知を受けた公共職業安定所長は、別途労働省通知により、すみやかに相談に応じ、当該児童に即応した迅速な職業紹介を行うことになつていること。
第五 監督取締
人身売買のケース又は人身売買に発展する虞のあるケースがすでに発生している場合においては、これを可及的すみやかに発見し、第六の保護指導の具体的措置の迅速な適用を促すことが必要であるから、児童福祉関係機関においては特に次の方法に留意して迅速な発見に努めること。
一 児童委員、社会福祉主事児童福祉司等の調査活動の促進
児童委員、社会福祉主事又は、児童福祉司は絶えず担当区域内の実情の把握に留意し人身売買的ケースを迅速に発見するように努めること。実情の把握に当たつては、児童の受入地においては、一定季節等に労力を求める特定の漁村地区、農村地区、又は特殊飲食店街地区その他従来他人の児童を引きとつて養育雇用する慣行のある地区等について、特に注意を払い、また、児童の出身地においては生活困窮、問題家庭等で、その虞の予想されるものその他従来児童を他人の家庭に手放して養育雇用を依頼する慣行のあつた家庭並びに予想される仲介人の言動等について予め注意を払うように努めること。
二 同居届の励行
市町村長が中心となり、必要あるときに児童委員を協力させて、他人の児童を預り養育又は雇用する者について、児童福祉法第三○条による同居児童の届出を励行させ、人身売買的ケースの発見の端緒に資すること。このために市町村の児童福祉の係は、寄留制度、世帯台帳制度、住民登録制度等の担当係と連絡を密にし、住民登録法による児童の転入届等がなされる場合等には同時に児童福祉法による同居届を提出させるように努めること。
三 学校からの連絡
学校において、その児童、生徒、学生等につき、不就学、長期欠席、問題行為等の事由があつて人身売買がすでに行われた疑があり、又は行われる虞があると認められるときはすみやかに、福祉事務所又は児童相談所へ連絡することになつているから、平素から進んで連絡を密にするように努めること。
学校からの連絡を受けた福祉事務所又は児童相談所は、直ちに実情を調査し、必要な措置を講ずること。この場合すでに児童が他の都道府県に売買されたと認めるときは、都道府県知事を経由して、当該児童の現に所在する地の都道府県知事に連絡すること。
右の連絡を受けた都道府県知事は、関係福祉事務所又は児童相談所をして必要な調査をなさしめ、すみやかに第六の具体的措置をとるようにすること。
第六 保護指導の具体的措置
右第五により発見された児童については、一方において、必要に応じ、使用者仲介者等成人の取締について警察、検察庁、労働基準局へ連絡することになるが、他方当該児童については、保護の万全を期すること。特に、児童が発見された現在地(又は受入地)と児童の親の所在地(又は出身地)とが都道府県の地域をまたがることが多いから、関係都道府県間の緊密な連絡に留意する必要があること。この場合の取扱については、原則として児童の所在地の都道府県知事が具体的な保護の方法を決定すべきものであること。なお警察、検察庁、労働基準局等で人身売買事件として、使用主、仲介人等成人の刑事々件を取り扱うとき、当該事件に関する児童の保護については、福祉事務所又は児童相談所へ連絡することになつているから、右の連絡を受けたときは、その児童の現在地の都道府県知事が、その児童の保護についての責任をもち、必要な措置等をとるべきものであること。
一 親元復帰の原則
売買された児童の保護については、親元へ復帰させることが原則であること。この場合において当該ケースが二都道府県の地域にまたがつているときは、児童の現在地の都道府県知事は、児童の出身地の都道府県知事に連絡し親元の家庭の現在の生活状況、児童を親元へ帰すことが適当であるか否か等について調査すること。
児童を親元へ復帰させる場合、児童の身柄を引き取るために、親元の家庭から直接引取に出向くことができないときは、原則として当該親元の所在地の都道府県の責任において、引取の措置を講ずること。
児童が親元に引き取られた場合においては、同時に、出身地都道府県知事は、当該児童又はその保護者を社会福祉主事又は児童福祉司に指導させること等により、親元復帰後の児童の保護指導に努めるとともに、当該家庭につき生活保護法の適用その他の生活援護に努めるものとし、必要あるときは、右第四の取扱による職業紹介等の措置法による保護受託者への委託措置に努めること。
二 児童福祉施設、里親、保護受託者等の活用
児童を親元へ復帰させることがどうしても困難又は不適当であると認められるときは、児童福祉施設、里親又は保護受託者へ現在の職場等から引き離して、入所又は委託の措置をとること。
この場合、原則として、児童の出身地の都道府県知事が、これらの入所又は委託の措置の責任を負うこと。
三 児童を現在地に置くこと。
児童を現在の職場等でそのままひきつゞいて保護することが他の措置をとるよりも児童の福祉にとつて一層適当であると明らかに認められるときは、社会福祉主事又は児童福祉司の適当の指導監督によりその養育又は雇用を継続させること。この場合、児童の現在地(職場等の所在地)の都道府県知事の責任において行うこと。なおこの方法が許されるのは「人身売買」の定義にも鑑みて極めて少数の場合に限られるべきであつて、例えば契約期間が長すぎる等の場合に、実情によつて取られ得るものであるに過ぎないこと。
この方法による場合は、特に次の諸点に注意すること。
(イ) 法第三○条による同居児童の届出がなされていないものについては、すみやかに提出させること。
(ロ) 労働又は養育の条件、労働契約等が違法又は不適当であるときは、これを合法且(ハ) 義務教育年齢にある児童で不就学又は長期欠席のものについては、必ず就学させるようにすること。つ適当なものに改めさせること。この場合、必要に応じ、労働基準監督署等を連絡をとること。

(ニ) その職場等の使用主等が保護受託者として適格のものであるときは法による保護受託者として登録させこれに児童を委託することとすること。

(別紙様式)

 

要就職者緊急通報

氏名及び年齢
  年  月  日生 満  歳
 

現住所


家庭の状況
詳記を要するときは別紙を添付すること。

就職を必要とする理由
詳記を要するときは別紙を添付すること。

本人に適すると思われる職業
 


     昭和  年  月  日

長 (印)

   ○○公共職業安定所長殿


(別紙次官会議決定並びにいわゆる人身売買事件対策要綱)


 

    いわゆる人身売買対策について

昭二七・二・一四

次官会議決定

 いわゆる人身売買なる事実が、今日なお減少せざる傾向に鑑み、政府は、差し当たり中央青少年問題協議会の決定せる左記対策を基本とし、関係府省一層緊密な連携を保ち、具体的措置を講ずるものとする。

 なお関係法令の整備、生活の安定等根本的対策についても今後十分な検討、研究を続けるものとする。

一 青少年を擁する要保護家庭について、適確な実情を把握し、生活保護の徹底、就職、授産、内職のあつ〈●●〉旋等によりその生活の安定を図ること。

二 職業安定機能を強化し、青少年に対する職業のあつ〈●●〉旋を積極的に行うとともに、就職については職業安定機関を利用せしめること。

三 児童福祉思想を昴揚し、いわゆる人身売買の慣習を打破するため、関係官公署、報道機関、青少年関係民間団体等あい協力し、いわゆる人身売買事件を絶滅する国民運動を起すよう啓発宣伝を図ること。

四 関係諸機関の連絡を更に強化し、厳重な監督、取締と悪質者の処分を徹底させること。

五 いわゆる人身売買として発見された青少年の措置については、その福祉に即し、保護の徹底化に努めること。


   いわゆる人身売買事件対策要綱

一 趣旨

  個人の尊厳と民主主義とを基調とする憲法のもと、独立国として新発足しようとしているわが国に、いわゆる人身売買という非人道的事実がいまだに存するということは、まことに恥ずべきことであり、その絶滅を図ることは、国家の重大な問題と云わねばならぬ。

  古くからこどもの「身売り」と云われ、一部において長い伝統を有し、慣習とまでなつているいわゆる人身売買は、その由つて起る原因が極めて複雑且つ根深いものがあり、簡単に断定することはできないが、断じて放任されておかるべきことでなく、われわれは、次代を背負つて立つ青少年を雇い入れて業をなし、売買の仲介をして利をむさぼり、青少年の人権と福祉とを全く無視した非人間的な行為を心から憎むと同時に憤りさえ覚えるのである。

  国民の一部にかかることを生ぜざるを得ない社会的、経済的条件の存することに目をおおうことなく、根本的にそれらの除去に努めることは、政府および国民の責任であることを痛感する。

  従来政府も国民も、これについてそれぞれの分野において努力し続けてきたことを認めるに吝さかでないが、これが絶滅を期するには、政府は云うまでもなく関係者は一段と力をあわせ、国民の理解と協力をえて長期にわたる努力を必要とするのである。現在の状勢において、かかることを最小限度にくいとめるため、応分の尽力をすることは、青少年の不良化防止、保護指導を目的とする本協議会の使命の一つであると信ずる。

  ここに差し当たり、現状の下において取りうべき対策の基本を定めて関係者による強力な実施を期待するとともに、民間団体の積極的な活動を望むものである。

二 ここでいわゆる人身売買の意味

  ここでいわゆる人身売買とは、「児童をしてその福祉に反するような労務または不当な人身の拘束を伴う労務を提供させ、その対価として金銭、財物その他を給付することを内容とする契約またはこれをあつせん〈●●●●〉する行為」をいうものとする。

  これを分析すれば、

 1 児童の福祉に反するような労務を提供させることを内容とする契約(広い意味に用う以下同様)とは、

   例えば、児童に淫行、酷使等を伴う業務をさせることを内容としているようなものをいい、

 2 不当な人身の拘束を伴う労務を提供させることを内容とする契約とは、

   例えば、児童を面会、通信、外出等を禁止するような心身の自由を不当に拘束する手段によつて、労働を強制したり、または、相当の長期にわたる契約によつて拘束することを現実の内容としているようなものをいう。

 3 金銭、財物その他の給付とは、

   賃金、給金、支度料等の支払、養育、被服、寝具、宿舎等の給与であり、

 4 あつせん〈●●●●〉する行為とは、

   職業紹介のほか、労働者の募集または供給等が代表的なものであろう。

   そして前記1と3、2と3、1および2と3とがおのおの結びつくもの、殊にこれらに関する4の行為の加わるのが、ここでいわゆる人身売買の典型的なものと考えられる。

   なお児童に淫行させている場合であつても、表面上は児童を女中、女給、ダンサー等として使用し、または養女としたり、或いは相当の長期にわたる契約によつて拘束している場合であつても、一年毎に契約の更新をして等一応合法的な形をとつている場合が多いから形式にとらわれず、実態に即して判断すること。

三 「人身売買」の関係法規

  関係法規として左のようなものが挙げられるが、いわゆる人身売買は、◎印のものの違反という形であらわれてくる場合が多いであろう。

    「いわゆる人身売買」の関係法規

     事項       適用条文

 (一) 労働基準法関係

  ◎1 強制労働の禁止      第五条

  ◎2 中間搾取の排除      第六条

  ◎3 契約期間         第一四条

   4 労働条件の明示      第一五条

   5 賠償予定の禁止      第一六条

   6 前借金相殺の禁止     第一七条

   7 未成年者の労働契約    第五八条

   8 未成年者の独立賃金の請求 第五九条

 (二) 職業安定法関係

  ◎1 有料職業紹介事業     第三二条

   2 無料職業紹介事業     第三三条

   3 直接募集         第三六条

   4 委託募集         第三七条

   5 労働者供給事業の禁止   第四四条

  ◎6 不当な手段による職業及び労働者の斡旋

第六三条第一項第一号

  ◎7 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就労さす目的で職業及び労働者の斡旋第六三条第一項第二号  

◎(三) 児童福祉法関係

   1 不具奇形児の公衆観覧   第三四条第一項第一号

   2 児童にこじき〈●●●〉をさせ又は児童を利用してこじき〈●●●〉をする

第三四条第一項第二号

   3 満一五歳未満児童をして曲馬等により公衆娯楽に供す

第三四条第一項第三号

   4 満一五歳未満児童をして戸外で歌、遊芸等を行わす

第三四条第一項第四号

   5 満一五歳未満児童をして酒席にはべらす業務

第三四条第一項第五号

   6 児童に淫行をさせる行為  第三四条第一項第六号

   7 右の行為をなす虞ある者に対し児童の引き渡し又は斡旋をする第三四条第一項第七号  

   8 正当な職業紹介機関外の者による営利的児童養育の斡旋

第三四条第一項第八号

   9 正当な理由外による児童の心身を阻害さす行為をさせるを目的として自己の支配下におく行為

第三四条第一項第九号

 (四) 刑法関係

   1 淫行の常習でない婦女を営利目的で勧誘し姦淫さす

第一八二条

   2 不法逮捕と監禁      第二二○条

   3 生命、身体、自由、名誉、財産等に害を加える目的で人を脅迫する

第二二二条

   4 右第二二二条の目的で、人又は親権に対する義務なき事の強要と権利の妨害

第二二三条

   5 未成年者の略取又は誘拐  第二二四条

   6 営利、わいせつ〈●●●●〉、又は結婚の目的で人を略取又は誘拐する

第二二五条

   7 略取、誘拐、売買等をもつて人を日本国外に移送さす

第二二六条

   8 右第二二四条、第二二五条、第二二六条の幇助

第二二七条

   9 略取及び誘拐の未遂罪は罰す

第二二八条

◎(五) 勅令第九号(婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令)

   1 暴行、脅迫によらず、困惑させて婦女に売淫させる

第一条

   2 売淫を内容とする婦女との契約

第二条

   3 右二条の未遂罪は罰する  第三条

四 対策

  一の趣旨に従い、差し当たり関係各省庁は、関係者とともに左の基本方針にそい、地方青少年問題協議会を通じ、国民の理解と協力をえて有効適切かつ強力な方法により、いわゆる人身売買の撲滅に当たるものとする。

 1 要保護家庭について適確な実性を把握し、生活保護の徹底、就職、授産、内職のあつせん〈●●●●〉等によりその生活の安定を図ること。

 2 職業安定機能の強化に努力し、職業のあつせん〈●●●●〉を積極的に行うとともに、就職については職業安定機関を利用せしめること。

 3 児童福祉思想を昴揚し、いわゆる人身売買の慣習を打破するため、関係官公署、報道機関、青少年関係民間団体等、あい協力し、いわゆる人身売買事件を絶滅する国民運動を起すよう啓発宣伝を図ること。

 4 関係諸機関の連絡を更に強化し、厳重な監督、取締と悪質者の処分を徹底させること。

 5 発見された身売り児童の措置については、児童の福祉に即し、保護指導の徹底化に努めること。

○親元を離れ他人の家庭に養育され又は雇用されている児童の保護について
(昭和二四年五月一四日)
(厚生省発児第四五号)
(各都道府県知事あて厚生次官、法務行政長官、労働次官、文部次官連名通知)
栃木県、福島県地方を中心として、従来から相当ひろく行われていた、他人の児童を引き取りその家庭で養育又は雇用する慣行(以下家庭養育雇用慣行という。)のあるものは、いわゆる「児童の人身売買事件」として大きな社会問題となつたのであるが、この種の慣行は、たんに栃木県、福島県地方のみに行われているものではなくて、いろいろの形態のもとに全国的に各地で行われているものかと思われる。これは児童の福祉に関係した極めて重要な問題であるから、今回親元を離れ他人の家庭に養育され又は雇用されている児童(以下家庭養育雇用児童という。)についてその全国的な保護対策を左の通りに決定することになつた。これが円滑に実施されるか否かは、わが国児童保護事業の消長に直接に影響するものであるから、実施にあたつては慎重な考慮を払い、児童の福祉の保障につき万遺憾のないよう努められたい。
保護対策実施要綱
第一 現在行われている家庭養育雇用慣行に対する措置
(一) 実情の把握に努めること。
現在行われている家庭養育雇用慣行の態様は多種多様であつて、先ず第一にその態様と個々の実情の把握に努めることが必要である。
(1) 児童委員による実情の把握
市町村長が中心となり、児童委員をして、家庭養育雇用児童の保護に関したえず必要な注意を払い、その実情の把握に努めしめること。
前項の児童とは、四親等内の児童を除き親元を離れ他人の家庭に養育又は雇用されている凡ての児童をいうのであつて、家庭に雇用されている児童の中に女中、子守、農事使用人、店員等一切の年期奉公者及び雇用人等が含まれることはいうまでもないが、児童福祉法にいう里親に養育されているもの、少年法の規定により少年保護司の観察中のもの、単なる下宿人及び寄宿舎等の家庭以外のところにいるものは対象とならない。
実情把握の対象となる児童の中には労働基準法の適用のあるものも含まれるのであるが、これは労働基準監督署の行う監督に協力するとともに児童の日常生活に関する保護をも併せて行うことを目的としているものである。
(2) 市町村長の児童福祉司に対する連絡
市町村長が右の結果
A 労働基準法の適用を受けない雇用契約が、(例えば家事使用契約)A 親権者又はこれに代わるべき者が児童の意志を顧みることなく雇用契約を締結している B 雇用契約の期間が不当に長い C 児童の労働を条件として前借金を受け取つている D 児童が途中で逃走した等契約不履行の場合の損害賠償額を予約している等の条件を含んでいて、これにより直接にあるいは間接に児童の自由を不当に拘束していると思われるもの。
又は
B 雇用契約労働基準法その他の関係法令に違反するとか、児童が虐待されているとか、冷遇されているとか、その他著しく不適当な監護を受けている等のため、児童の福祉の見地から特別の措置を必要とすると思われるものを発見したときは、児童委員をして精密な調査をさせ、その結果ならびに意見を附して、担当地区の児童福祉司に連絡すること、なお児童委員の行う調査には必要に応じて、労働基準監督署労働省婦人少年局地方職員室、公共職業安定所その他の関係機関の協力を求めること。
(3) 児童福祉司の行う調査と必要な措置の判定
右の連絡を受けた児童福祉司はそのケースにつき児童委員の協力をえて個別調査を行い、県児童課又は児童相談所、必要に応じてはそれぞれ労働基準監督署労働省婦人少年局地方職員室、公共職業安定所その他の関係機関と取らるべき児童福祉の具体的措置について協議決定すること。
(二) 児童福祉の具体的措置
(一)の(2)に掲げるような、雇用契約が直接にあるいは間接に児童の自由を不当に拘束しているものであれば、それは法律上無効になるものが多く、それに対して児童の福祉の見地から新たな措置をとらなければならないことはいうまでもない。なおその外に家庭養育雇用慣行の中には雇用契約労働基準法その他の関係法令に違反するとか、児童が虐待されているとか、冷遇されているとか、その他著しく不適当な監護をうけている等のため、児童の福祉の見地から新たな措置を必要とするものが相当多数あると思われるが、児童福祉の具体的措置をとるにあたつては児童の意思を尊重することはもちろん、諸般の事情に照して児童の福祉が最も良く保障される左のいずれかの措置をとるよう指導に努めなければならない。
(1) 児童を親元に返して、その家庭に生活援護その他の指導をすることによつて現実的に児童の福祉が保障できる場合には、児童を親元に返すこと。そのために児童福祉司都道府県を通じて児童の親元の地区を担当する児童福祉司又は児童委員等と緊密な連絡をとり、親が児童を他人の家庭に出すにいたつた原因、親の現在の生活状況、児童を親元に返すことが適当であるかどうか等について調査すること。
(2) 児童を親元に返すことが適当でなく、しかも児童を現在の家庭から引き離して保護する必要がある場合には、他の適当な里親を見つけて児童を委託すること。なおこの場合適当な里親が見付からないときは適当な児童福祉施設に入所せしめるか、他の適当な個人家庭に保護を依頼するとかその他適当な措置をとること。
(3) 児童の福祉の見地から現に児童が適当な保護を受けており、現在の家庭でそのままひきつづいて保護されることが他の措置をとられるよりも一層児童にとつて幸福であるという客観的事情が認められるときは、
A 先ず第一に児童福祉法にいう里親として適格なものは、法の里親にすること。
B 児童福祉にいう里親にするには若干の適格条件を欠いているが、なお児童が幸福に養育されている場合(児童が働いている場合を除く。)には、児童福祉司、児童委員等の指導監督のもとに養育を継続せしむること。
C A、Bの外児童を働かしている場合はそれぞれ適当な年齢に応じ、次のいずれかの措置をとること。
A 労働基準法の適用があるものについては不適当な労働条件を是正するとか、新たに適正な労働契約を締結させる等児童の労働条件の改善に努めること。
B 労働基準法の適用がない家事使用についても、労働基準法の精神にのつとり、不適当な雇用条件を是正するとか新たに適正な雇用条件を締結させる等児童の雇用条件の改善につとめること。
なお、この場合にはそれぞれ労働基準監督署労働省婦人少年局地方職員室と緊密な連携をとること。
(三) 児童福祉司、児童委員の行う指導
児童福祉司、児童委員は特別な措置を必要とする(1)、(2)、(3)のケースについては勿論、その他の家庭養育雇用慣行についてもたえず注意を払い、必要があると思われるときは児童の保護に関する適当な指導をなすよう努めること。
(四) 児童の就学奨励
家庭養育雇用児童の中には未就学、不就学ならびに長期欠席の児童が相当数いることに鑑み親権者又は後見人に対してはもちろん、他人の児童を家庭で養育又は雇用している者に対しても、学齢期にある児童を通学させて義務教育をうけさせるよう積極的な指導を行うこと。このためには教育委員会の積極的な活動を促し、市町村、学校、PTA、児童福祉児童委員が相協力して児童の就学にむかつて努力すること。児童を就学させるに際しては、特に学年編入につき、児童の生活年齢、精神年齢等を十分に考慮して児童に最も適した措置を講ずることが必要である。
第二 家庭養育雇用慣行に対する今後の措置
いわゆる「児童の人身売買事件」のごときことが再び発生しないようにするとともに、さらに進んで児童の福祉を積極的に増進するために、今後は次のごとき方針でその実施にあたること。
(一) 児童の人権尊重
児童の最大の幸福は原則として両親のもとで健やかに育てられること、児童の基本的人権を尊重しなければならないこと等の児童福祉思想を普及徹底せしめ、児童をあたかも親の所有物であるかのごとく考え、児童の幸福を顧みることなくこれを勝手に処分するような封建的な遺制を根絶是正するよう努めること。
(二) 児童を養育することが困難な者の児童福祉司、児童委員の相談児童がたんに家庭が貧困である等の経済的理由のみで児童をその家庭から引き離すことは児童の福祉のために適当でない。しかしながら経済的、身体的又は精神的な原因のためにどうしても、児童を養育することが困難になつた場合には、必ずその地区を担当する児童福祉司、児童委員に相談するよう一般の啓発指導に努めること。
右の相談があつた場合には、児童福祉司、児童委員は懇切丁寧に事情を聞き、必要によつては、実情を調査して、それぞれの事情に適応した生活援護、里親委託、児童福祉施設への入所、その他適当な保護指導の措置をとること、児童福祉司、児童委員においても担当地区の人々にその氏名やその仕事の内容を周知せしめ、児童福祉司、児童委員のところへいけばきつと必要な面倒をみてもらえるという情勢を整えておくこと。
但し、児童福祉司、児童委員が右の措置をとろうとするときは、児童をたんに経済的理由のみで家庭から引き離すことは児童の福祉にとつて適当でないことを十分理解し、児童をできるだけ家庭から引き離すようなことなく、その家庭に対して生活保護法の適用その他凡ゆる指導援助をなして児童の福祉を図るよう努めること。
(三) 公共職業安定所の利用
児童が就職するときには必ず公共職業安定所を利用するよう一般の指導に努めるとともに、許可をうけないで就職の斡旋をすることは法の違反となり、したがつて処罰されることを一般に周知せしむること。児童福祉司、児童委員等が児童の就職について相談、又は依頼を受けた場合は、必ず所轄公共職業安定所に連絡すること。
(四) 仲介業者の排除根絶
児童福祉司、又は児童福祉員が営利を目的として児童の就職の斡旋をする者を発見したときは、直ちに労働基準監督署又は公共職業安定所に連絡して、それぞれ労働基準法、職業安定による悪質仲介業者の排除根絶に努めるとともに、無料で就職を斡旋することも、許可を受けないでこれを反覆して行う場合には、職業安定法の違反となるから、かかる斡旋者の排除についても公共職業安定所と連絡を密にすること。
なお、児童福祉司又は児童委員が、児童福祉法第三四条第一項第八号の規定(改正予定)に違反して、営利を目的として児童の養育を斡旋する者を発見したときは、直ちに県児童課又は児童相談所に連絡してその排除根絶に努めること。
(五) 児童福祉法にいう里親制度の普及
児童福祉法にいう里親制度の普及徹底を図り、真にやむをえない事情のため他人に児童を預けることを余儀なくされた者が、勝手に他人に児童を預けるようなことをしないで、児童相談所を通じて里親制度を活用するよう、一般の啓発指導に努めること。なおこの場合地区の児童福祉司又は児童委員に連絡相談させるようにしてもよく、連絡相談があつたときは、児童福祉司又は児童委員は必ず必要な斡旋指導をすること。
第三 都道府県間ならびに関係諸機関の連絡
家庭養育雇用慣行はたんに一都道府県内で行われているばかりでなく、二以上の都道府県にまたがつて行われているものも数多くあり、又それはひろく児童福祉法労働基準法職業安定法、学校教育法ならびに人身保護法等の諸法規に関係するところが大であるから、関係都道府県間はもちろん関係諸機関が相互に緊密な連絡をとつてこれが円滑な処理にあたることが必要である。

〔参考条文〕(省略)