児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

公衆送信・送信可能化、そもそも何を送信するのか?

 こう主張すれば、解釈示すだろうという主張です。

 そもそも、「公衆送信」「送信可能化」とは何を送信するのかについて定義がない。
 23条によれば、「著作物について」「送信する」とされているのだが、客体が不明確である。
 「著作物」とは有体物であるから、電気通信の方法では送信できない。
 だとすれば、一般人の判断では、著作物について、「著作物そのものではない何か」を送信することとしか読み取れない。

第2条(定義)
七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(有線電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。

九の四 自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。

九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。

第23条(公衆送信権等)
1著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

 これでは、次に検討する「情報」概念の曖昧さとの相乗効果で、客体が特定できない。
 形式的には、「映画が存在すること」「映画の題名」「映画のスタッフ一覧表」を送っただけでも「送信可能化」とされる可能性もある。
 構成要件にこのような漠然不明確な概念を含む刑罰法規は無効である(罪刑法定主義 憲法31条)。
 また、著作権浸害罪は表現行為を取り締まる法律であるから、表現の自由憲法21条)に対する漠然不明確な規制であるが故に無効である。