児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

結局、被害児童救済は進まない

 「裸の写真が永久に流れる」というのは大人でも辛いと思うんですが、現行法では、児童ポルノの流通(提供・陳列)にはたいした被害はない(被害者の個性は問題にしない)という体裁であり、判例もそういう解釈が定着した。写っている児童1人1人が被害者だという検察官もいないし、そう主張した弁護人には「それは屁理屈」だと判決される。稀にそう書いた地裁判決もあるが高裁で覆される。
 しかも、児童ポルノ・児童買春の被害者は、条文上存在するが、実際には姿が見えない。国や自治体は救済しないし、国内のNPOも声高に規制を求めた割には全く救済に動かない。謝罪に向かった弁護人は被害者からそういう状況をさんざん聞かされる。
 だから、被害児童は救済されないんですよ。
 単純所持罪とか二次元を規制しても、救済する気がないんだから、救済されない。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080607ddm041040078000c.html
「あの写真を見た人かも」。少女はすれ違う男性と目が合う度に息が詰まる。見知らぬ男にレイプされ写真を撮られた。男はかばんに現金をねじ込み「これで援助交際だ。通報したら写真をばらまく」と脅した。思い切って警察に行くと「お金が欲しかったんじゃないの」と言われた。学校に行けなくなった。

 事件から2年。画像がネット上に出ていないか確かめたいが、怖くてできない。男が逮捕されたという連絡もまだない。「安心して眠れる夜が早く来ればいいのに」=おわり(この連載は、磯崎由美、曽田拓、田辺一城、堀井恵里子が担当しました)

 被害者が永続する被害を訴えても、連載は終わってしまうようです。
 時々思い出したように法改正しても、それにあわせて記事書いても、こういう状況は改善されないですよね。

 なお、現行法でも児童ポルノ画像の「削除義務がない」なんて日本の裁判所も言わないですね。明文規定がないけど、作為に注目したり条理に根拠を求めたり工夫して「削除義務違反」を処罰しています。その辺を調べた神奈川県警や兵庫県警や愛知県警に取材して欲しいものです。プロバイダも「児童ポルノは合法だから削除できない」なんていえないわけです。
 毎日新聞がお手本にする外国でも削除されてないのに、日本の裁判所は工夫している。そこは評価して欲しいですね。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080607ddm041040078000c.html
児童ポルノを公然陳列した者は処罰されるが、プロバイダーには削除する義務はない。センターは07年に1609件の通報を受け、うち526件を削除依頼した。だが応じたのは339件だけだった。海外サーバーを使ったものは他国に要請し、消去を待つしかない。国分明男センター長は「違法サイト運営者はある国を追放されると、別の国で同じことをする」と指摘する。

 先ほど条文をいただきました。
 

青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案
(青少年有害情報の発信が行われた場合における特定サーバー管理考の努力義務)
第二十一条.特定サーバー管理者は、その管理する特定サーバーを利用して他人により青少年有害情報の発信が行われたことを知ったとき又は自ら青少年有害情報の発信を行おうとするときは、当該青少年有害情報について、インターネットを利用して青少年による閲覧ができないようにするための措置(以下「青少年閲覧防止措置」 という。) をとるよう努めなければならない。

第二条
3この法律において「青少年有害情報」とは 'インターネットを利用して公衆の閲覧 (視聴を含む。以下同じ。 )に供されている情報であって青少年の健全な成長を著しく阻害するものをいう。
4前項の青少年有害情報を例示すると、次のとおりである。
一 犯罪若しくは刑罰法令に触れる行為を直接的かつ明示的に請け負い 仲介し 若しくは誘引し又は自殺を直接的かつ明示的に誘引する情報
二 人の性行為又は性器等のわいせつな描写その他の著しく性欲を興奮させ又は刺激する情報
三 殺人、処刑 '虐待等の場面の陰惨な描写その他の著しく残虐な内容の情報

11 この法律において「特定サーバー管理者」とはインターネットを利用した公衆による情報の閲覧の用に供されるサーバー (以下「特定サーバー」という。 )を用いて、他人の求めに応じ情報をインターネットを利用して公衆による閲覧ができる状態に置きこれに閲覧をさせる役務を提供する者をいう

 ちなみに、自動公衆送信装置設置者の努力義務というのがあって、罰則はないんですが、警察庁によればその違反は「公然陳列罪の幇助」と説明されています(警察学論集)。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
第31条の8(街頭における広告及び宣伝の規制等)
5 その自動公衆送信装置の全部又は一部を映像伝達用設備として映像送信型性風俗特殊営業を営む者に提供している当該自動公衆送信装置の設置者(次条において「自動公衆送信装置設置者」という。)は、その自動公衆送信装置の記録媒体に映像送信型性風俗特殊営業を営む者がわいせつな映像又は児童ポルノ映像(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第二条第三項各号に規定する児童の姿態に該当するものの映像をいう。次条第二項において同じ。)を記録したことを知つたときは、当該映像の送信を防止するため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第31条の9(指示等)
映像送信型性風俗特殊営業を営む者又はその代理人等が、当該営業に関し、この法律又はこの法律に基づく命令若しくは条例の規定に違反したときは、当該違反行為が行われた時における事務所の所在地を管轄する公安委員会は、当該映像送信型性風俗特殊営業を営む者に対し、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要な指示をすることができる。
2 映像送信型性風俗特殊営業を営む者が客にわいせつな映像又は児童ポルノ映像を見せた場合において、当該映像送信型性風俗特殊営業を営む者に係る自動公衆送信装置設置者が前条第五項の規定を遵守していないと認めるときは、当該自動公衆送信装置設置者の事務所の所在地を管轄する公安委員会は、当該自動公衆送信装置設置者に対し、同項の規定が遵守されることを確保するため必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
3 公安委員会は、電気通信事業者たる自動公衆送信装置設置者に対して前項の規定による勧告をしようとするときは、あらかじめ総務大臣と協議しなければならない。

 同様に考えるとほら、法案の努力義務を根拠に、サーバー管理者を公然陳列罪に問うことは容易になってるじゃないですか。そういうとこは国会答弁とかで確認しておかないとダメですよ。議員立法ですから、後で聞きたいと思っても立案者の議員いませんよ。