量刑理由で重視されるのは、被害の大小・被害弁償・営利性
京都地裁h16.3.10著作権法違反
(量刑の理由)
本件は,マイクロソフトコーポレーションの著作権を侵害して,4名に対し,違法に複写したコピー商品であるCD−R合計10枚を有償譲渡するとともに,販売目的で同様のCD−R合計370枚を所持していたという著作権法違反の事案である。同犯行は,会社勤めしていた被告人が,競馬に金をつぎ込み,平成15年3月ころには借入金合計額が約600万円にも膨れあがったことから,その返済資金や今後の遊興費等欲しさから,自宅のパソコンを使用して被害会社のソフトを違法に複製してインターネットのオークションで販売し,あるいは販売するために所持していたというものであって,動機に酌量の余地が乏しく,犯行の態様も,自己の犯行であることの発覚を免れるべく,会社の知人の銀行口座を顧客からの代金の振込先としたり,インターネットのオークションに利用するIDについても,他の知人の口座を借りてそれをもとにIDを作って使用したり,あるいは発送元として架空人名義を使用していたもので,巧妙で,犯情悪質といわねばならない。しかも,被告人にあっては,本件以外にも,一千人を超える顧客に遵法に複製したCD−Rを販売し,数百万円もの利益を得ていたもので,常習性とともに,規範意識の希薄さも顕著である。さらに,現在,本件のような犯罪が多発していることから,この種犯罪については厳重に処罰すべきであるとの一般予防の見地も尊重されねばならない。
このような事情に照らすと,その刑責には軽視できないものがある。しかしながら,被告人が素直に罪を認め,深く反省していること,本件顧客に対し,謝舞文を送付するとともに,被害弁償してもいること,将来,被害会社から被告人に対し相当多額の損害賠償の請求がなされる可能性もあること,本件により,会社を退職せざるを得なかったもので,一応社会的制裁を受けているといえること,これまで前科がないことや家庭の状況など,被告人のために酌むべき事情を考慮すると, 相当であると考えた。
よって,主文のとおり判決する。