児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

判例時報1846号155頁 不正アクセス東京高裁h15.6.25

 東京高裁h15.6.25と原判決東京地裁h14.12.25が紹介されています
判例時報1846号155頁 不正アクセス東京高裁h15.6.25
不正アクセス行為に該当し、違法性が阻却されないとした原判決の判断に事実誤認はないとされた事例
二 勤務先からの不正アクセス行為と約3時間後の自宅からの不正アクセス行為を併合罪とした原判決の判断に誤りはないとされた事例

 なお、決定で上告棄却h15.11.11。上告審弁護人が奥村弁護士
 一審・控訴審は国選弁護人。
 罪数判断の誤りは上告理由に当たらないと言われました。



奥村の主張はこうです。
http://www.okumura-tanaka-law.com/www/okumura/access/access.htm
http://www.okumura-tanaka-law.com/www/030908access_fig3.gif
 奥村弁護士は納得していないので、ここで改めて吠えておきます。

 原田裁判長は刑法学会会員なので、あえて言うが、だいたい、不正アクセス罪の犯罪地は侵入されたサーバーですから、どこからアクセスしたかで行為を区切るのは間違っています。そんなこと言い出せば、携帯端末の中継局が変わると別罪になってしまう。

 警察庁の解説書とかは証拠でも出していないし、主張でも引用されていない。

 しかし、著作権で正当事由というのも、どうかと思うな。


不正アクセス罪の保護法益について
東京高裁h15.6.25
ネットワーク社会において,ネットワークを通じてコンピュータを利用する者を正しく識別できなければ,侵害行為に対する抑止力が失われ,アクセス制御機能により保護を図ることとしている業務の円滑な遂行や関係者の権利・利益に対し具体的な侵害の危険が生じるからこそ,法により不正アクセス行為に対する罰則が定められているのであって,具体的,現実的に権利・利益が侵害される前の段階において処罰しようとするのが法の趣旨である。そこからさらに進んで,アクセス制御により保護されている情報を勝手に利用したり,業務を妨害したりすれば,それは業務妨害罪等の別罪を構成する可能性が高く,現実的損害があったとの立証がない限りは不可罰であるなどとはいえない。
(中略)
被告人の行為は,コンピュータ・ネットワークが社会の基盤としての役割を果たすようになった高度に発達したネットワーク社会において,いわば鍵の掛かった他人の家を勝手に開けて入り込む行為であり,ネットワークの秩序を乱し,ひいては高度情報通信社会の健全な発展を阻害しかねない悪質な行為である。

罪数について
東京高裁h15.6.25
第2法令適用の誤りの論旨について
所論は,原判決は,原判示第1の罪と同第2の罪を併合罪としているが,両者の行為は客観的に行為態様及び侵害した法益の点で共通性を有し,時間的にも接着し,主観的にみても「着ボイス」のソースコードファイルを探すという共通した目的が継続した状態で行われており,侵害法益の個数は実質的に1個といえるから包括一罪と評価すべきであるという。
しかしながら,原判示第1の行為は勤務先のコンピュータから不正アクセスをしたもので,同第2の行為は自宅のパソコンから同一サーバへのアクセスをしたもので,時間的接着性や犯意の継続性はあるとしても,犯行場所やアクセスの経路が異なり,自宅での不正アクセスは,自宅のパソコンにファイルをダウンロードする目的で行われており,不正アクセスによる法益侵害の程度,態様が同一とはいえず,これを併合罪と評価した原判決の判断に誤りはない。
法令適用の誤りをいう論旨も理由がない。