児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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上告理由ネタ 判決書謄本の有償性

 刑事事件の判決書は有料(1枚60円)なんです。
 しかし、上告審としての事件受理には判決書が必要である。
 とすると、謄写費用がないと、上告審としての事件受理ができない。
 なんてことを主張したいのですが、なかなか事件がなくて。
 上告受理申立される方のヒントとして差し上げます。



法令違反(判決書謄本の有償性について)
 本件上告及び上告受理申立にあたり、有償(60×18枚=1080円)で判決書謄本を交付したことは憲法32条に違反する。
 刑事訴訟法46条の、判決書に関して「自己の費用で、」という部分は刑法32条に違反し、無効である。
 にもかかわらず判決書謄本交付について費用納付を命じた原審手続には法令違反があるから原判決は破棄を免れない。

 およそ裁判においては、各当事者は判決を目指して訴訟行為を行うのであって、判決書はその成果である。
 刑事訴訟も同様である。
 特に、判決に不服があって上訴を検討する際には、原判決の判決書は不可欠である。
 特に、上告受理の申立においては、判決書謄本(コピー不可)の添付が要求されている(規則258条の3)。
(事件受理の申立理由書・法第四百六条)
規則第258条の3
(1) 申立人は、前条第二項の規定による謄本の交付を受けたときはその日から、前条第一項但書の場合には第二百五十七条の申立をした日から十四日以内に理由書を原裁判所に差し出さなければならない。この場合には、理由書に相手方の数に応ずる謄本及び原判決の謄本を添附しなければならない。
(2) 前項の理由書には、第一審判決の内容を摘記する等の方法により、申立の理由をできる限り具体的に記載しなければならない。

 しかし、刑事訴訟に限っていえば、判決書は有料なのである(法46条)。(民事は無料である。刑事も最高裁は無料である。)
刑事訴訟法第46条
被告人その他訴訟関係人は、自己の費用で、裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本の交付を請求することができる。
 特に、上告受理の申立については、判決書謄本(コピー不可)の添付が要求されているし(規則258条の3)、申し立てと同時に、「判決の謄本の交付の請求があつたものとみなす。」(規則258条の2)とされているにもかかわらず、被告人は金を払わなくては判決書を得られないのである。
 規則上の義務を履行するためには、費用を支払わなければならず、その費用を納付しなければ、上告審理としての事件受理の申立が不適法となるというのである。
原判決の謄本の交付・法第四百六条)
規則第258条の2
(1) 第二百五十七条の申立があつたときは、原裁判所に対して法第四十六条の規定による判決の謄本の交付の請求があつたものとみなす。但し、申立人が申立の前に判決の謄本の交付を受けているときは、この限りでない。
(2) 前項本文の場合には、原裁判所は、遅滞なく判決の謄本を申立人に交付しなければならない。
(3) 第一項但書又は前項の場合には、裁判所書記官は、判決の謄本を交付した日を記録上明らかにしておかなければならない。

(事件受理の申立理由書・法第四百六条)
規則第258条の3
(1) 申立人は、前条第二項の規定による謄本の交付を受けたときはその日から、前条第一項但書の場合には第二百五十七条の申立をした日から十四日以内に理由書を原裁判所に差し出さなければならない。この場合には、理由書に相手方の数に応ずる謄本及び原判決の謄本を添附しなければならない。

 これでは、被告人の裁判を受ける権利を十分に行使できない。
憲法第32条
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

 本件上告及び上告受理申立にあたり、有償で判決書謄本を交付したことは憲法32条に違反する。
 また、刑事訴訟法46条の、判決書に関する限り、「自己の費用で、」という部分は刑法32条に違反し、無効である。
 にもかかわらず判決書謄本交付について費用納付を命じた原審手続には法令違反があるから原判決は破棄を免れない。