第2 販売・頒布罪の成否
わいせつ物について最高裁H13.7.16*1、児童ポルノについて大阪高裁H15.9.18*2(上告棄却)によって、販売頒布の客体は有体物でなければならないし、販売頒布には現実の占有移転が必要であるから、販売・頒布罪は成立しないと考える。
従来、メールによるわいせつ図画頒布の事例として、横浜地裁川崎支部h12.11.24.及び、同支部h12.7.6.が紹介されてきたが、大阪高裁H15.9.18事件では、検察官は答弁書(http://www.okumura-tanaka-law.com/www/okumura/child/osakasyber/0501sinozaki.html)において両川崎支部判決の理由付けを引用して反論したが、データの児童ポルノ該当性においても、販売頒布概念の点においても、明確に否定されている。
また、大阪高裁H15.9.18はの上告審ではデータの児童ポルノ性(http://www.okumura-tanaka-law.com/www/okumura/child/031109deta.htm)が被告人から主張されたが排斥されており控訴審判決が一応追認されている。
従って、川崎支部の両判決は、事実上破棄されており、わいせつ物及び児童ポルノについて有体物性が要件であること、販売頒布には占有移転が必要であるという判例が確立したと評価されるべきである。
なお、愛知県警が摘発した、メーリングリストによる児童ポルノ配信の事案について、名古屋地裁H16.1.22は児童ポルノ公然陳列罪、名古屋簡裁H16.10.17(略式命令)は児童ポルノ頒布罪として処理しているとの情報があり、現在確認中である。事実とすれば、いずれも判例違反であるから、非常上告によって是正されるべきである。