児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

5項製造罪と児童淫行罪とを観念的競合にしながら「加重」してしまった一審判決と、それくらい構わないとした控訴審判決

 明白な誤記は破棄されないというのです。
 加重したという一行はないことに。
 でも、原判決は観念的競合としていて、理由中では延々と併合罪だと言って、にもかかわらず法令適用の「観念的競合」を残すというのは、控訴審判決もまた理由齟齬になってるような。
 そんなに難しい問題か?

東京地裁h21.3.26
(法令の適用)
罰   条
 児童に淫行させた点   刑法 60条,児童福祉法60粂 1項,4項,34条 1項 6号
 児童ポルノを製造した点 刑法 60条,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律 7条 5項前段, 9条, 2条 3項
科刑上一罪の処理     刑法 54条前段 , 10条
              重い児童福祉法違反の罪の刑に法定の加重

東京高裁H21.7.6
第2 理由齟齬,訴訟手続の法令違反及び法令適用の誤りの主張(同控訴理由第1及び第4)について
論旨は,要するに,原判決は,その「法令の適用」において「科刑上ー罪の処理」として「10条」,「刑法54条前段,重い児童福祉法違反の罪の刑に法定の加重」と記載しているが,①刑法54条前段という条文の挙示が誤っているほか,その適条には,科刑上一罪としながら「法定の加重」という刑の加重事由があるとしており,自己矛盾があるから,理由齟齬ないし判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反(刑事訴訟法335条違反)及び法令適用の誤りがある,というのである。
・・・・
 原判決は法令の適用において,本件淫行罪と本件製造罪について観念的競合に当たるとして,併合罪加重を行っていないことは明らかであるから,その点で法令適用の誤りがあると認められる。しかしながら,その誤りも,本件の犯情等を考慮すると,直ちに判決に影響を及ぼすことが明らかとはいえないか」ら,これを理由に原判決を破棄することはしない(なお,原判決の「法令の適用には,所論①指摘のとおり不正確な記載があるが,その記載を原判示の罪となるべき事実と照らし合わせると,その趣旨は,本件各罪について,科刑上ー罪の関係に立つと解したものと理解することができ,その処理の中での明白な誤記ないしこれに類するものということができるから,そのような誤記自体から,理由齟齬ないし,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるとまではいえない 

東京地判H21.1.28がwestlawjapanに全文掲載されています。

 もう10月。
 中村裁判官。
 撮影行為と描写行為は別個の行為だというのですが、それは仙台高裁h21.3.3で否定されています。

裁判年月日 平成21年 1月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件名 児童買春、ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
しかし,法7条3項の児童ポルノ製造罪は,所定の姿態をとらせるだけではなく,その姿態を写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写する行為,これを本件に即していえば,カメラやビデオカメラで撮影して画像をコンパクトフラッシュやデジタルビデオカセットテープに記憶させる行為(以下,単に「描写行為」ともいう。)が付け加わって初めて成立する犯罪であるところ,描写行為は,それが静止画を記憶させるカメラによると動画を記憶させるビデオカメラによるとを問わず,たとえ上記のような性交と同時並行的に,かつその一部始終について行われていたとしても,それとは別個の行為であることは明らかである。

仙台高裁H21.3.3
②原判決は,各被害児童の陰部をカメラ機能付き携帯電話やデジタルカメラで撮影した電磁的記録を携帯電話機やSDカードに記録した行為をも強制わいせつ罪の実行行為としているが,仮に撮影行為がわいせつな行為と評価されるとしても,撮影後に記録媒体に記録する行為は,いかなる意味においても対人的行為ではないし,性的自由を害するものではなく,強制わいせつ罪の実行行為とはいえないから,これらの行為をわいせつな行為として同条後段を適用した原判決には法令適用の誤りがある,
などと主張する。
(2)しかしながら,
②については,上記のとおり被害児童の陰部を撮影する行為は,刑法176条のわいせつな行為に該当するというべきところ,撮影の際に電磁的記録であるその画像データが携帯電話機やSDカードに同時に記録されるような場合には,このような記録行為も撮影行為と不可分なその一部と評価できるのであるから,原判示第2から第4までの各事実における各記録行為も撮影行為の一部としてわいせつな行為に該当するということができる。したがって,この点においても原判決に法令適用の誤りはない

 弁護人は、東京地裁で「別個の行為」だと言われたので、そのまま仙台高裁に持ち込んだんですが、通らないんですよ。
 

【社会部オンデマンド】ブラックベリーなぜフィルタリングできないの? 海外プロバイダー対象外 今後導入も

 国ごとで対応しているので、こうなります。
 害を受けるのは日本の児童なのに。

http://sankei.jp.msn.com/life/education/090927/edc0909270801002-n2.htm

総務省の担当者は「青少年が有害情報を閲覧する機会が少ないものは、利用実態を踏まえて判断するよう政令で定めています」と話す。そのため、「ブラックベリー」については、(1)ISPをカナダのRIM社が管理しているため法律の適用ができない(2)ビジネス向けのモデルで青少年の利用は少ない−ことから、フィルタリング規定の対象外と判断しているという。
・・・
ドコモ経営企画部の東原弘さんは「国内で法律ができたことや、顧客層を広げるためにもフィルタリングは必須。RIM社とは、日本の顧客向けにフィルタリングを提供できないか検討中です」と説明。店頭では現在、フィルタリングの対象外であることを説明し、フィルタリング機能の希望者にはほかの機種を勧めている状況だ。

 売れてない機種は対象外のようです。なんで?

青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律施行令
(青少年による青少年有害情報の閲覧に及ぼす影響が軽微な場合)
第二条  法第十八条ただし書の政令で定める場合は、インターネット接続役務提供事業者がインターネット接続役務を提供する契約を締結している者の数が五万を超えない場合とする。
第三条  法第十九条ただし書の政令で定める場合は、同条に規定する機器にあらかじめブラウザが組み込まれていない場合、青少年による当該機器の使用が十八歳以上の者に目視により監視される蓋然性が高いと認められる場合として経済産業大臣が告示で定める場合、当該機器が専ら事業のために使用されると認められる場合又は経済産業大臣が告示で定める当該機器の種類ごとに、同一の事業者が製造した当該機器の当該年度の前年度における販売数量が一万台を超えない場合において、当該事業者が製造した当該機器を当該年度に販売するときとする。

判例紹介 弁護人において,前訴の確定判決の一事不再理の効力を主張して免訴を求めるのは権利の濫用に当たるとした事例(広島高裁第1部平21. 4. 28)(研修735号P412)

 公訴事実の同一性を認めるけど、免訴の主張は権利濫用だというのです。

5 一事不再理の効力の及ぶ範囲につき,訴訟の具体的事実経過に基づき.権利の濫用として判断を示したものであり,今後の執務の参考になると思われ紹介した次第である。
なお.本件は.被告人が上告中である。
(注)「かすがい現象」とは. 甲罪と乙罪が併合罪の関係にあるとき.甲罪と丙罪が科刑上一罪.また乙罪と丙罪が科刑上ー罪の関係にあるとき. 甲罪と乙罪が科刑上ー罪になることをいう(前回雅英・刑法総論講義第3版480頁参照)。つまり.本件では .甲罪( 窃盗)と丙罪(建造物侵入)が科刑上一罪となり。
また.乙罪(非現住建造物等放火)と丙罪(建造物侵入)が科刑上一罪となるので. 甲罪 (窃盗)と乙罪(非現住建造物等放火)も科刑上一罪となる。
(法務総合研究所教官小沢正明)

違法サイト撲滅へ事務局設置=関係者会議も開催−警視庁

 ついに撲滅されるようです。
 武器は足りてますか?現行法でやるんなら、さっさとやっちゃって下さい。
 管理者の刑事責任については、幇助で処理しておけば、普通の弁護士なら(判例違反とか)文句言わない。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009092800299
同本部によると、ネット上では匿名性などを悪用した犯罪が多発。金融機関口座や違法薬物などが売買され、わいせつ画像や児童ポルノなどもあふれている。
 同事務局ではこうした違法サイトの情報を集約し、関係部門での事件化を推進。来月から振り込め詐欺を助長する口座売買などを一斉摘発する特別対策を実施する

やはり立法が必要なようです。

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20090928_318098.html
違法サイトをめぐっては、銀行口座の売買などを掲示板に書き込んだ者は摘発されてきたが、管理者には適用法令がなく、責任が問われなかった。事務局は「管理者を摘発するため警察庁と法改正についても協議していきたい」としている。
 警視庁によると、昨年、電話相談やメールなどで寄せられた違法サイトに関する情報は約3万7千件。振り込め詐欺に使われる銀行口座や、違法薬物の密売、児童ポルノの公開などが目立つ。

短期自由刑(実刑)が一審判決の2年6月後に確定した。

 控訴理由と上告理由をよく検討すれば可能性があるということですね。
 執行猶予が切れるまで確定を延ばしてくれとかいう注文が時々ありますが、控訴理由からよく考えておけば、最高裁が長考することがあります。

石井 徹哉「児童ポルノ製造罪と児童淫行罪の罪数関係と起訴状不記載の公訴事実に基づく犯罪事実認定の可否--東京高判平成17.12.26判時1918号122頁 」

 管轄の話ですけど、児童ポルノ・児童買春法に影響されて、母屋の少年法37条が廃止されました。

刑事裁判例批評(28)児童ポルノ製造罪と児童淫行罪の罪数関係と起訴状不記載の公訴事実に基づく犯罪事実認定の可否--東京高判平成17.12.26判時1918号122頁
著者 石井 徹哉(イシイ テツヤ)
雑誌名 刑事法ジャーナル
出版者・編者 イウス出版
巻号・年月日 5 [2006]
ページ 157〜162
他方で、児童買春・児童ポルノ禁止法が児童の権利保護を目的としており、同法15条および16 条において行政機関に心身に有害な影響を受けた児童に対する保護および保護のため体制の整備を語っていることからすれば、本来は同法の制定時において少年法37条を改正し、同法違反罪について家庭裁判所の管轄を規定すべきであったといえる

(8) 森山真弓野田聖子編著『よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法」をみるかぎり、立法者は、表面的には児童の権利の保護ということをいってはいるものの、おりにふれ、児童を性の対象とする風潮ということを強調しているのであり、本法律の立法の本来の立法動機は反道徳的風潮の除去にあり、そのため少年法37条を一顧だにしなかったのではないかという疑念を抱かせる。

週末に上告趣意書を1件出したら、週明けに上告棄却決定が1通届いた。

 係属部が同じなのでヒヤッとしましたけどね。違う事件でした。
 控訴趣意書書いている最中に、同じ高裁の同じ部から控訴棄却判決が届いたりするとかもありますね。「まだ趣意書出してないのにもう棄却?」なんて思います。
 だいたい、刑事の上訴事件は、常時
  上告事件は5〜6件
  控訴事件は5〜6件
ですね。
罪名は
  強制わいせつ罪
  児童福祉法違反
  児童ポルノ製造罪
  わいせつ物公然陳列罪
  名誉毀損
  児童ポルノ公然陳列罪