児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

わいせつのレンタルは「販売罪」じゃないのか?

 「頒布罪」じゃ、レンタル目的所持罪が処罰できません。
 有償無償という区別で行けば「販売罪」なんですけどね。
 「有体物の占有移転」かどうかで分けてるんですよ。いまどき。

無修整DVD貸し出し容疑*87歳ビデオ店主逮捕*新ひだか
2007.10.01 北海道新聞
新ひだか】静内署は三十日、わいせつ図画頒布の疑いで、容疑者(87)を逮捕した。
 調べによると、容疑者は、今年三月から八月までの間に、自らが経営するレンタルビデオ店で、無修整のわいせつDVDを複数の客に有償で貸し出した疑い。
 店の利用客から「裏ビデオが置いてある」との通報があり、同署が調べていた。

第175条(わいせつ物頒布等)
わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。

法令適用の誤りの誤判は救済されない。

 名古屋簡裁では、改正前からメール送信を「頒布罪」としてましたよね。今なら提供罪ですが。
 大阪高裁h15.9.18(2003.9.18)では販売・頒布罪にならないと確認されています。

児童ポルノをネット配信 埼玉の教師ら逮捕 愛知県警
2003.10.09 NHKニュース 
 男子中学生を撮影したわいせつな映像をインターネットを使って配信していた埼玉県内の小学校教諭や東京都の職員ら六人が、児童ポルノ処罰法違反の疑いで愛知県警察本部に逮捕されました。
 警察の調べによりますと、容疑者の六人はメンバーの一人が横浜市内で撮影した当時十四才の男子中学生を撮影したわいせつな映像を今年五月、インターネットを使って名古屋市内の大学生や埼玉県内の専門学校生に配信するなどしたとして、児童ポルノ処罰法違反の疑いがもたれています。

 この6人は頒布罪で有罪(名古屋簡裁)となったまま。懲戒処分されています。冤罪でした。
 じゃあ、webから送るのもメールで送るのもデータを送るという現象としては同じだから提供罪でいいですよね。名古屋法では。
 しかし、ご当地の名古屋高裁は、今でも提供罪にならないとか判示しています。閲覧者の手元に残るんだから、提供罪だ、それが名古屋法だと主張したんですが。
 それなら、この6人は頒布罪にならなかったことを認めたことになる。

 こういうのも立法者(議員立法)の知恵の浅いところです。まだまだあります。

 こういう誤判は、事実誤認ではなく法令適用の誤りなので、再審制度にはかかりません。お気の毒。
 いくら児童ポルノ野郎でも、やっぱり、ちゃんと弁護しないとこうなって、救済できないということになります。

名古屋高裁h19.7.6
2主任弁護人の控訴理由第3(インターネット上の公開は、不特定多数の者に対する提供であって、公然陳列に該当しない。)について
論旨は、要するに、インターネットの電子掲示板に児童ポルノ画像データを送信して記憶、蔵置させる行為は、児童ポルノ処罰法7条4項の不特定又は多数の者に対する提供罪に該当し、公然陳列罪には該当しないから、これを「公然陳列罪」に該当するとした原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり、ひいては法令適用の誤りがある、というのである。
しかしながら、児童ポルノ画像を「公然と陳列した」とは、その児童ポルノの内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいうところ、インターネットの電子掲示板に児童ポルノ画像データを送信して記憶、蔵置させる行為は、不特定多数のインターネット利用者が自己のパソコンを使用して当該児童ポルノ画像を認識(閲覧)可能な状況を設定するものであるから、これが児童ポルノ画像の公然陳列罪に該当することは明らかである。
所論は、インターネット利用者がインターネットの電子掲示板に記憶、蔵置されている画像データをいわゆる「閲覧」するのは、当該画像データそのものをインターネット利用者のパソコン画面上で見ているのではなく、インターネット利用者がプロバイダを介し当該画像データを構成する各種ファイルの送信を受け(ダウンロード)、これらを自己のパソコンの一時保管ホルダーに保存し、この一時保管された画像データがパソコン画面に表示され、インターネット利用者はこの画面上に表示された画像を見ているのであるから、電子掲示板に児童ポルノ画像を送信して記憶、蔵置させる行為は、児童ポルノ処罰法7条4項の不特定又は多数の者に対する提供罪に該当し、同項の公然陳列罪には該当しない、という。
しかし、所論が、インターネット利用者において、電子掲示板に記憶、蔵置された児童ポルノ画像を見るに至る経緯を、インターネットの仕組みに照らし詳細に説明していることは認めるが、前記認定のとおり、電子掲示板に児童ポルノ画像データを送信して記憶、蔵置させる行為により、不特定多数のインターネット利用者が当該児童ポルノ画像を、所論が詳細に説明するインターネットの仕組みを介して、認識(閲覧)可能な状況を設定していることが認められるのであるから、その行為は、児童ポルノ画像を公然陳列したというを妨げないというべきである。その他、所論のいう児童ポルノの受け手側における再生可能性の有無に関する点を考慮しても、所論は採用できない。
論旨は理由がない。

阪高裁h15.9.18
(6)原判示第2の事実についての法令適用の誤りの主張(控訴理由第1,第2)について
所論は,原判示第2の事実について,①有体物に化体しない画像データそのものは児童買春児童ポルノ禁止法2条所定の児童ポルノに該当せず(控訴理由第1),また,②有償の譲渡行為といえるためには現実の交付を伴うことが必要であるところ,本件ではこれがない(控訴理由第2)にもかかわらず,それぞれ児童ポルノである画像データを販売したと認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というものである。
そこで,検討するに,原判示第2の事実は,被告人が,各購入者に対して,自己がサーバーコンピューター上に開設したホームページのアドレス及びパスワードをメールで送信し,B1及びB2に対してはそれぞれの自宅に設置されたパーソナルコンピューター内のハードディスクにダウンロードさせる方法で(原判示第2の1及び2の各事実),B3に対してはその自宅に設置されたパーソナルコンピューター内のフロッピーディスクにダウンロードさせる方法で(同3の事実),児童ポルノである画像データを版売した事実を認定していることが明らかである。ところで,児童買春児童ポルノ禁止法2条3項は,「『児童ポルノ』とは,写真,ビデオテープその他の物であって,次の各号のいずれかに該当するものをいう。」と規定しており,「その他の物」については,その例示として掲げられている物が写真,ビデオテープであることからすれば,文理解釈上,これらと同様に同条項各号に掲げられた視覚により認識することができる方法により描写した情報が化体された有体物をいうものと解すべきであるところ,関係各証拠によれば,本件において児童ポルノに該当するとされている画像データは,被告人において,契約を結んだ東京都千代田区大手町1丁目6番地の1大手町ビルディング3階所在の株式会社エヌ・テイ・ティエックス管理のサーバーコンピューターにホームページを開設し,同コンピューターの記憶装置であるディスクアレイ内に記憶,蔵置させた電磁的記錬であり,このような電磁的記録そのものは有体物に当たらないことは明らかである。そして,児童買春児童ポルノ禁止法7条の児童ポルノ販売,頒布罪における販売ないしは頒布は,不特定又は多数の人に対する有償の所有権の移転を伴う譲渡行為ないしそれ以外の方法による交付行為をいうものであるところ,本件において,上記B1,B2及びB3は,それぞれ,被告人から教示されたホームページアドレス等を自己のパーソナルコンピューターにおいて入力することにより,被告人が開設した上記会社管理のサーバーコンピューター内のホームページにアクセスし,同サーバーコンピューターのディスクアレイに記憶,蔵置された本件の画像データをそれぞれ自己のパーソナルコンピューターにダウンロードし,ハードディスクないしはフロッピーディスクにその画像データを記憶,蔵置させて画像データを入手していることが認められるが,上記サーバーコンピューターのディスクアレイ上に記憶,蔵置された画像データそのものは上記B1らのダウンロードによってもその電磁的記録としては何らの変化は生じていないのであり,画像データの入手者であるB1らに上記サーバーコンピューターに記憶,蔵置された電磁的記録そのものの占有支配が移転したと見る余地もなく,この点で原判示第2に認定された事実のもとでは児童ポルノの販売に該当する事実もないというべきである。
そうすると,原判決には児童買春児童ポルノ禁止法7条所定の児童ポルノ販売罪に該当しない事実を同罪に該当するとして有罪とした法令の解釈適用の誤りがあり,この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
論旨は理由がある。

被害児童の学校には連絡しない

 「保護」ですから。

宮崎県公安委員会> 宮崎県公安委員会会議録> 公安委員会会議録(4月5日)
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/kouaniinkai/page00060.html
4) 女子中学生被害に係る福祉犯事件の検挙について生活安全部長から、女子中学生に現金を供与する約束をして、みだらな行為を行った無職男性を児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被疑者として通常逮捕した旨報告がなされた。
 委員から、「学校には連絡しているのか。」との質問があった。
 生活安全部長が、「学校には連絡していない。」旨説明した。

服務規律の徹底を呼び掛けるリーフレットを年内にも作製し、全教職員ら約一万人に配布する札幌市教委

 道教委・市教委と、こんなことばっかりやってるんですが、増え続けている感じ。
 いくら徹底しても、
 被告人は
    職場の回覧でバレれば懲戒免職になるとは知っていたが
    まさか逮捕されるとは思わなかった
なんて言ってて、
 弁護人は
    懲戒免職で社会的制裁を受けた
    寛大な処分を賜りたい
なんて弁論して、
検察官も
    教職員の同種事案が頻発しており
    懲戒処分では効かない
    体刑をもって償わせるべきだ
という論告を繰り返しています。

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/52858.html
事件発生後、これまでに抗議の電話が同校などへ殺到し、二十件を超えた。
 また、市教委は三日から、小中学校の校長を通じ任命責任をわびるとともに、人事管理の注意を喚起する。服務規律の徹底を呼び掛けるリーフレットを年内にも作製し、全教職員ら約一万人に配布する。

 裁判所も、
   なんか法文読んでも法令適用わからないけど、
   とりあえず、有罪だし、悪質だから実刑
という感じ。

「児童ポルノ・児童買春の実刑判決なんて聞いたことがない」と言った弁護人へ

 捜査公判と何もしないものだから、一審実刑になって、こちらに苦情が来てますけど。
 報道されなくても実刑の事案の件数は増えています。比率は低いけど。起訴状見たらだいたいわかります。
 まあ、実刑になるようなことをしたのは被告人なので、実刑になるのは、自分に責任があるわけですが、いいかげんな説明をすると、矛先が弁護人に向けられるのですよ。
 インフォームドコンセントの問題です。
 さて、とりあえず、今から何してどうなるかを教えて、方針を決めてもらいます。

製造罪の量刑を教えて下さい

 マスコミからも。
 前提になる性犯罪・福祉犯や、製造後の提供・陳列まで広がるので、執行猶予になるのから懲役15年まで幅広く分布しています。
 だいたいどの程度で実刑ラインかについては、手持ちの事案と懸案の事案を比較すればわかります。
 裁判所も、検察庁も、こうやって決めてるんでしょうね。

匿名通報ダイヤル

http://www.tokumei.or.jp/index.php?
 自首して処分が決まった人が、
  その被害児童は他にも援助交際している
って匿名通報したても、解決に役立たなかったといってもらえないでしょうね。
 年度末に予算が無くなれば払われないような制度で、どれだけ効果が上がりますか?

http://www.tokumei.or.jp/index.php?req_id=index.harai
本ダイヤルに寄せられた情報のうち情報料の支払の対象となるのは、少年の福祉を害する犯罪又は人身取引事犯に関するものであり、かつ、警察が一定の基準に基づき当該事件の解決等に役立ったと判断したものです。受付番号は、少年の福祉を害する犯罪又は人身取引事犯に関する通報に対してのみ付されます。
情報料の支払の対象者として不適格であるもの
上記項目において、情報料の支払の対象となる少年の福祉を害する犯罪又は人身取引事犯に関する情報であったとしても、当該情報の通報者が、次の①から⑤に該当する場合には、情報料の支払は行われません。

①通報に係る事件の被疑者(共犯者を含む。)
②通報に係る事件の被害者
③警察職員
④受託団体(=民間団体)
⑤通報に係る情報を入手する過程において犯罪行為その他公共の安全と秩序を害する行為を行ったと認められる者その他情報料を支払うことが不適当であると認められる者
情報料の支払の通知
本サイトの「通報された情報の現在の状況」ページにおいて、通報された情報が事件の解決等に役立った場合に、情報料を支払う旨の通知を行います。情報料の受取を希望される場合には 0120-924-839 まで御連絡ください。御連絡をいただいた際に、受付番号及び暗証番号をお訊きしますので、お答えください。情報料の支払手続に入ります。
情報料の支払方法
通報料の支払方法は、原則として、民間団体の事務所において通報者本人に現金を交付する方法によって行います(この場合においても、受取人のお名前等を確認することはなく、匿名性の確保は最大限行うこととします。)。ただし、通報者が希望する場合には、次の①又は②のいずれかの方法により支払を行うことも可能です。

①通報者が希望する金融機関の預貯金口座への振り込みによる方法
②通報者が希望する宛先に現金を郵送する方法金融期間等への送金
留意事項
情報料の支払総額があらかじめ確保した予算額を超えた場合には、その後の情報料の支払は行われません。
情報料の支払の通知その他の通報者への連絡は、本サイトの「通報された情報の現在の状況」ページにおいてのみ行いますので、通報をされた方は時折本サイトを確認してください。

判決直前に示談見込みとなったとき。

 被害者から弁護人が示した条件で示談に応じるという手紙がきたが、来週判決なので、書面(示談書など)が間に合うか微妙。

 責めるつもりはないが被害者の対応が裁判のペースに合わないのでギリギリになった。
 こんな話を聞いたら、判決期日を取り消すとか、取り消さずに続行するとかしてくれますよね。普通。
 ここで判決で打ち切られたら、弁護人も任務終了で、弁償しませんよね。被告人には不利益な結果となるし、被害者はさらに傷つきますよね。
 それを知ってまさか判決しませんよね。
 期日を2週間延期するぐらいの御慈悲はありますよね。

という書面を高裁に出しました。
 
追記
 「そしたら2週間だけ猶予したるわ」という決定が出ました。
 これ以上はのばせないので、間に合わせるためには、弁護人は現金を持参して携帯用プリンターで示談書をその場で作成するようなこともあります。

公判前整理手続き 思わぬ時間 大阪の偽装街頭募金事件

 個人的法益の罪で、被害者=不特定多数じゃ訴因不特定ですよね。常識では。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071003-00000105-san-soci
■証拠開示攻防 2年ぶり審理再開
 虚偽の街頭募金をめぐり、詐欺と組織的犯罪処罰法違反などの罪に問われた男の公判が3日、大阪地裁(杉田宗久裁判長)で開かれた。この公判は、詐欺の被害者を個人でなく「不特定多数」とした異例の起訴だったため、地裁が争点を整理する「公判前整理手続き」を初適用。しかし、検察と弁護側の協議が難航し、今回の審理再開まで約2年も要した。同手続きは裁判迅速化の切り札として導入されたが、逆に“遅延”を招く事態となった。 
・・・
初公判で被告は職安法違反については認めたが、その後、偽募金約2500万円を集めたとして追起訴された詐欺罪などの成立をめぐっては争う姿勢を示した。多数の募金者のうち特定できた9人だけを代表的な被害者として立件にこぎつけた異例の「構図」だったからだ。

 児童ポルノでも個人的法益を強調すると訴因特定が問題になります。

大阪高等裁判所判決昭和50年8月27日
高等裁判所刑事判例集28巻3号310頁
      判例タイムズ329号307頁
      判例時報807号105頁
警察学論集30巻2号149頁
      別冊ジュリスト74号72頁
      判例タイムズ335号118頁
〈前略〉論旨のうち暴力行為等処罰に関する法律一条の解釈適用の誤りをを主張する点について。