児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童買春+製造で懲役2年4月(千葉地裁松戸支部H19.6.18)

 被害児童3人というパターンが多いので、比較しやすいですね。
 松戸支部の裁判官も弁護人も知らないでしょうが、
  児童買春罪と製造罪が観念的競合(高岡支部、函館地裁)
  製造罪と提供罪は牽連犯(奈良地裁
  数回の提供罪は包括一罪(高裁那覇支部など多数)
  製造罪は被害児童数にかかわらず包括一罪(札幌地裁・奈良地裁
という裁判例があるので、組み合わせると、科刑上一罪(提供罪がかすがいになる)になります。奥村弁護士独自の見解とは言わせません。確定記録調査の成果。
 どっかの検事さんが児童淫行罪と製造罪が観念的競合だなんて言い出すからこうなる。

 そういう主張と、慰謝の措置をとれば、減軽されるはずですが。

女子高生のわいせつ映像、撮影した男に実刑 月刊誌に投稿=千葉2007.06.19 読売新聞社
 判決によると、被告は昨年1月、茨城県取手市内のホテルなどで当時16歳の女子高校生をビデオカメラで撮影、映像を月刊誌「GON!」に投稿した。このほか、昨年1月から12月にかけ、柏市茨城県、東京都内で、この女子生徒を含む当時16、17歳の少女3人に対し、金銭や衣服を与える約束でみだらな行為をしたり、写真を撮ったりした。
 同事件では、映像を収録したDVDを月刊誌の付録として製造した同誌の元編集長と出版元である「ミリオン出版」(東京)が、それぞれ児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で千葉地検松戸支部に書類送致されている。

15歳のヘルス嬢が恐喝した事例

 これでも被害児童かというご意見もあると思いますが、児童淫行罪や児童買春周旋の関係では、思慮浅薄な被害児童であって保護の対象です。

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_06/t2007062002.html
 調べでは、2人は2月、大津市内で兵庫県加古川市の無職男性(35)の乗用車を組員の車にぶつけ事故を偽装。4月7日に滋賀県守山市のレストランへ男性を呼び出して顔を殴るなどし、修理代140万円を脅し取ろうとした疑い。
 県警は、未成年を雇ってデリバリーヘルスを経営したとして5月、組員を逮捕。生徒は、組員のヘルス店に出ていた。
 男性は、生徒が前に飲食店のホステスをしていたときの知り合い。だまして車のキーを持ち出し、脅すときも「自分でぶつけておいて覚えてないのか」などと怒鳴っていたという。

無罪判決(函館地裁H19.5.23)

 具体的な供述内容は、ちょっと声に出せない内容です。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070620105616.pdf
主文被告人は無罪。
理由
第1 公訴事実
本件公訴事実は,「被告人は,平成17年6月19日午後8時ころ,函館市a町b丁目c番d号Aアパートe号棟1階中被告人方玄関内において,B(当時10歳,平成7年5月3日生)に対し,同女が13歳未満であることを知りながら,同女のパンツ内に手を差し入れて手指で同女の陰部を弄び,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をしたものである。」というものである。
第2 争点の概要
上記公訴事実に沿う証拠としては,本件の被害者とされるB本人による供述(公判供述,第4回公判調書中の同人の供述部分,甲3,12ないし16)の他には,同人から被害申告を受けた者の供述(証人Cの公判供述,第3回公判調書中の証人D及び同Eの供述部分,甲11,17)があるのみである。他方,被告人は,そのような行為は全くしていないとして,捜査段階から当公判廷に至るまで一貫して公訴事実を全面的に否認している。そのため,公訴事実の認定は,その被害を受けたとするBの供述(以下,同人による,本件公訴事実及び本件に至る経緯等を含む一連の供述を,「本件被害供述」と総称する。)の信用性に大きく依拠することになる。そこで,以下,本件被害供述の信用性が,合理的な疑いを越えて公訴事実を証明するほど高いと評価できるか否かを中心に検討する。
・・・・・・・・・・・
総合的な評価
以上のとおり,本件被害供述は,その中核部分についてある程度具体的で一貫した説明がなされている点で一応の信用性を有するとは言えるが,他方,①本件以前は被告人との関係は良好であったとしながら(これは前記 アの認定とも符合する。),本件以前にも被告人から繰り返しわいせつな行為をされていたと述べる点で不自然,不合理である上に,②被害の際に第三者がいたのか否かという重要な点について,単なる記憶の変化とは説明できない不可解な変遷がある。さらに,③Bと被告人の関係からすれば,虚偽の供述をする理由がないとは断定できず,④Bは虚偽供述に対する抑制が弱く,これまでも虚言によるトラブルを頻発させていたのであり,これらの事情を総合すると,B自身にその認識があるか否かはともかく,同人が何らかの理由から公訴事実について虚偽の供述をしているのではないかとの疑念を払拭することができず,その信用性には疑問が残るというべきである。
なお,上記①②の問題については,「本件以前にも被告人からわいせつな行為をされた」「第三者がいた」とする点をBの作話と考えれば理解はできるものの,その場合は当然,公訴事実自体についても,同様の可能性を想起せざるを得ないのであるから,いずれにせよ本件被害供述から被告人の犯行を認定することはできない。
被告人の弁解
検察官は被告人の弁解が不自然であると主張するところ,たしかに同人の供述には,本件当日にBと会った時間帯等の点で疑問もあるが,単なる記憶違いと理解することも可能であり,これにより本件被害供述の信用性が増強される関係にもない。検察官の主張を採用することはできない。

「非常に残念に思う。3人の裁判官の頭に五寸くぎを打ちたい」と怒りをぶちまけた。

 無罪求刑ですから、検察官請求証拠を不同意にしたら、撤回されて終わりですね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070620-00000136-jij-soci
弁護側の証人申請については、「採用されると思っていた。怒り心頭に思う」と話し、「日本の裁判のやり方が昔のままで非常に残念だ」と批判した。 

 怒りは被告人質問とか国賠とかでぶちまけるしかないです。

 釘じゃ効かないような、石頭とか化石みたいな裁判官は時々いますよね。直接申し上げる勇気はないですけど。
 奥村は、「五寸釘」程度じゃだめだと思ったので(石だし、頭数も多いし)、裁判例を梃子にして動かしてやろうと考えて、裁判例を調べることにしました。梃子も太くなったので、最近、時々、動くようになりました。

「求釈明を持ち帰って検討する」という検察官(傍聴記)

 傍聴も楽しいものです。
 起訴状朗読後、若い弁護人から突然求釈明が出た。
 普通、検察官は一様に「釈明の必要なし。書いてある通りじゃっ」ってにべもない返事をするものですが、今日の若い検事さんは「持ち帰って検討する」って言っちゃったので、被告人は罪状認否もできず、今日はそこで審理が止まりました。裁判官も意外な展開に笑ってました。
 優しい奥村弁護士なら、突然聞いて検事さんに恥をかかせるのも気の毒だし、どうせ「釈明の必要なし」と答えるに決まっているので、事前に送っておいて、手続き進めてもらいますけどね。奥村はその方がやりやすい。
 なんか、新鮮な感じでしたね。

メールによる提供罪は送信行為だけでは成立しない(札幌地裁H19.6.12)

 起訴状と判決文を併せて読めばわかります。
 当初の公訴事実(送信行為のみ)では罪にならなかったわけです。
 奥村は自白事件でも、そんなところを見ています。

レンタルは頒布か?

 大阪高裁h15.9.18が「児童買春児童ポルノ禁止法7条の児童ポルノ販売,頒布罪における販売ないしは頒布は,不特定又は多数の人に対する有償の所有権の移転を伴う譲渡行為ないしそれ以外の方法による交付行為をいうものであるところ,」と言っている以外、刑法175の判例はないですよね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070620-00000010-kyt-l26
容疑者は2月21日午後9時ごろ、自宅のあるマンションの1階で営むビデオ店「セントラル」で、男性の客に無修正のわいせつなDVD4枚を3800円で貸し出し、1枚を1000円で販売した疑い。

 わいせつ物については、頒布目的所持・陳列目的所持は罪になりません。理由はわかりません。

第175条(わいせつ物頒布等)
わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。