児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「被疑者ノート」増刷中

↓にありますから弁護士以外の方でも使えます。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/legal_aid/on-duty_lawyer/higishanote.html

2007.02.09 読売新聞
「被疑者ノート」増刷中 自白強要防止に効果 大阪弁護士会考案
 ◆取調官、強圧的に/「机たたき、いすける」/証拠採用、無罪判決も
 「被疑者ノート」の記述からは、強圧的な態度で自白を迫ったり、甘い言葉で捜査側に都合のいい供述を引き出そうとしたりする取調官の姿が浮かび上がる。
 大阪府内の30歳代の男性は04年4月、16歳の少女に対する婦女暴行容疑で逮捕された。
 「そんなうそが通用するか」「供述したら釈放される。わざわざ裁判せんでもいいやろ」。男性が犯行を否認したところ、取調官が自白を迫った。
 連日の厳しい追及に、男性は「机はたたく、いすはける。まともに話ができる状態ではなかった」と、ノートに記していた。
 弁護人は「自白強要に当たる」と大阪地検に抗議。結局、地検は男性からの自供を得られず、児童福祉法違反罪に切り替え起訴したが、大阪家裁は05年1月、被害少女の供述の信用性を否定し、男性に無罪判決(確定)を言い渡した。

[性犯罪地裁で執行猶予、家裁で実刑(家裁で執行猶予、地裁で実刑)の場合は両方控訴を勧める。

 こうやってない弁護人が散見されるのですが、
 被告人の一連の性犯罪・福祉犯について、一部が地裁、一部が家裁となって、片方(a罪)が執行猶予、他方(b罪)が実刑の場合は、被告人がどう判断するかは別として、次のような説明をして、弁護人は両方控訴を勧めるべきである。

1 総合的な量刑の見通し
 執行猶予の場合(a罪)は、心理的強制のために、長めの刑期となっている。
 事実関係を争っていなければ、一方が実刑(b罪)の場合、併合審理されれば、両事件まとめて実刑判決となる。
 その場合のa罪の量刑は、実刑を前提とするので、精密に決まる。b罪が比較的重い場合には、a罪の刑が埋没して分からないこともある。
 これが併合審理の利益。
 両判決を総合して、こういう見通しを立てる必要がある。

2 2号取消
 b罪が先行した場合、b罪の実刑判決を確定させると、a罪に執行猶予を付し得ない

第25条(執行猶予) 
次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

 a罪が先行した場合、a罪の執行猶予判決を確定させても、後にb罪の実刑が確定すると取り消される。

刑法第26条(執行猶予の必要的取消し)
次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。
二 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。

3 裁判例
 東京高裁平成18年3月6日
 =執行猶予付判決に控訴して、並行事件の実刑判決を加味して刑期が大幅に短縮された事例

4 まとめ
 1に述べたように、執行猶予の場合の量刑の趣旨や併合審理の利益を考えると、執行猶予取消という形で、a罪が実刑判決となることは、刑期の点で被告人に不利益。
 どれくらい不利益かというと、やったことの責任以上の刑期に服することになるということだから、志願囚でもなければ納得できないくらいの不利益。
 裁判官の論文も認める不都合。

判例コンメンタール刑法第2巻p117
趣旨
本号は、執行猶予を言い渡した判決の確定前に犯した他の罪について禁錮以上の実刑判決が確定したことを理由に執行猶予を取り消すといういう趣旨のものである。前号と異なり、執行猶予に内在するものであるか否かは見解は分かれ得るが、社会内で犯罪者の改善・更生を図るという執行猶予制度の趣旨からすれば、その犯人に直ちに刑の執行を受けさせるべき事情が生じたときは執行猶予を維持する実質的理由はなく、矯正施設に収容中に執行猶予期間を過ごさせるのは制度の趣旨にももとることは否めない。したがって、本号も合理性があり、もとより二重処罰の禁止に触れるものではなく合憲である(最決昭42・3・8刑集21・2・423)。
(2)「猶予の言渡し前に犯した他の罪」
執行猶予を言い渡した判決の確定前の趣旨である。通常は、45条後段の余罪の関係にある場合がこれに当たる。執行猶予判決の宣告後、その確定前に犯した場合には限られない(東京高決昭54・11・8)。なお、執行猶予の判決の場合には、実刑判決の場合に比べて若干主刑が重くなる傾向があることから、実体法上併合罪の関係にある複数の罪について分離して審理・判決し、執行猶予の付された判決が先に確定して、後に実刑に処せられた罪の判決が確定するということがあり、そのときには、本号で執行猶予の取消しがされることになり、被告人の責めによらない事由によって、結果的に刑が重くなるという不都合が生じ得る。このような点から、主観的併合の場合にはなるべく併合の利益を考慮した取扱いがされるべきであるが、管轄裁判所が異なり併合ができない場合(例えば一方の罪が家庭裁判所の専属管轄のとき)もあり、被告人にとってやや不合理と感じられる結果になることも見受けられないわけではない。

 それを回避するには、両方控訴して、高裁に両事件の記録を調べてもらって総合的な量刑を決めてもらうしかない。

 こういう場合、猶予だからって、確定させてしまうと、取り返し付かないわけです。
 その点については、よく調べて欲しいし、結論が出るまで、暫定的に控訴するということも躊躇すべきではないと思います。
 

弁護過誤事件の後始末

 いまだに、

  • 一審の弁護士は罰金で済む・執行猶予間違いないと言っていたのに、実刑になった」(量刑を知らない場合)
  • 当番弁護士は児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)について略式命令で済むと言っていたのに公判請求された(法令を知らない・量刑を知らない場合)
  • 逮捕前に有料法律相談して「一人で出頭して説明すれば逮捕されない」という回答を得て、単身で出頭したら逮捕された。(実務を知らない場合)

という、苦情を多分に含んだ相談が多いです。
 弁護費用も、一審弁護人に使い果たして、もうないということも
 奥村のせいではないし、そんな弁護士を選任した被告人の自己責任と言えないこともないんですが、弁護士業界全体への評判・信用を考えると、断るわけにも行きません。
 報酬基準より下げて受任するか、国選弁護人に(被告人からの相談という扱いで)アドバイス役に付くかとか、安価なコースを設定するしかないです。
 それで完全に救済できるわけではありませんが。

休日夜間・無料相談・電話相談

 こういう要望というか、クレームが多いですね。
 法令適用とか電話一本で予防できるような弁護過誤の事件を後から聞くと、必要性はあると思います。
 弁護士が携帯1台用意すればいいわけですが、
  なかなかつながらない
  コストは回収できるか?
  専門分野に絞ってきてくれるか?
  「専門外は応対しない」は通用するか?
無料だから内容は薄い。ブログとか一般論程度。
というのがネック。
 ちょっと検討中。

映画盗撮に厳罰、海賊版対策で防止法案提出へ

 著作権侵害としてではなく、予備罪的特別類型。
 送信可能化権は、予備罪的なんだけど、著作権侵害

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070211-00000001-yom-ent
自民党の一部議員が準備している「映画の盗撮防止に関する法律案(仮称)」では、許可なく映画を撮影すると、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金という厳しい罰則を設ける方向だ。映画をビデオカメラで撮影するだけでは犯罪にならない現状を改め、海賊版の横行に歯止めをかけることを目指す。

 懲役10年と罰金を選択的に決めると、本権の量刑相場からすれば、ほとんど罰金になりますよね。
 ほんとに厳重処罰だというのなら、法定刑の下限を引き上げておくべきですね。これは効きますけど、バランスがとれません。

令状提示後の宅配便を開封できる(最高裁h19.2.8)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070210-00000032-san-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070210-00000057-jij-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070211-00000016-san-soci
家宅捜索の途中で被告あての宅配便が到着し、警察官が開封したところ覚醒剤約48グラムが入っており、被告は覚醒剤所持の現行犯で逮捕された。
 被告側は「捜索差押令状が容疑者に示された場合、捜索すべき場所の中にある物品に限られ、令状の提示後に他から搬入された物品にまで及ぶものではなく、違法だ」と無罪を主張していたが、退けられた。

 判例はいずれ↓に載る。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0020?action_id=search&hanreiSrchKbn=02&recentInfoFlg=1

 こういうのって、判例も学説もないから、弁護人は必死で情報集めて、理屈を考えるわけです。
 判決や意見をwebで公開して、意見を求めるなんていうのも、風当たり強い。
 学者の援助も欲しいところですが、学者さんも忙しいし、自説が採用されない危険性も高いしで、なかなか協力は得られません。
 結論として、最高裁が被告人に有利な判断をすることはなかなかないわけで、そうなると、弁護人が必死で考えた理屈は「独自の見解」「反対説」と一蹴される。
 また、学説は「判例の結論に賛成する」一色になる。
 挙げ句の果てに、「弁護人が○○を主張しなかったのは残念である」なんて書かれて。
 弁護人の努力に対して、失礼な話です。お前らも分からなかったか。考えたこともなかったくせに。
 奥村は慣れました。
 戦略的には、高裁レベルでA説・B説出しておいてから、上告したいですね。
 最近の議院立法はかなりお粗末なので、そんなことが可能です。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=34123&hanreiKbn=01
事件番号 平成18(あ)1733
事件名 覚せい剤取締法違反被告事件
裁判年月日 平成19年02月08日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 決定
結果 棄却
判例集巻・号・頁
原審裁判所名 仙台高等裁判所 秋田支部
原審事件番号 平成18(う)19
原審裁判年月日 平成18年07月25日

判示事項
裁判要旨 被疑者方居室に対する捜索差押許可状により同居室を捜索中に被疑者あてに配達され同人が受領した荷物について同許可状に基づき捜索することの可否

主文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中70日を第1審判決の懲役刑に算入する。
理由
なお,所論にかんがみ職権で判断する。原判決の認定によれば,警察官が,被告人に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき,捜索場所を被告人方居室等,差し押さえるべき物を覚せい剤等とする捜索差押許可状に基づき,被告人立会いの下に上記居室を捜索中,宅配便の配達員によって被告人あてに配達され,被告人が受領した荷物について,警察官において,これを開封したところ,中から覚せい剤が発見されたため,被告人を覚せい剤所持罪で現行犯逮捕し,逮捕の現場で上記覚せい剤を差し押さえたというのである。所論は,上記許可状の効力は令状呈示後に搬入された物品には及ばない旨主張するが,警察官は,このような荷物についても上記許可状に基づき捜索できるものと解するのが相当であるから,この点に関する原判断は結論において正当である。

大阪府青少年健全育成条例と3項製造罪(姿態とらせて製造)とは観念的競合

 例規がupされているので、関係が明らかになりました。

「わいせつな行為」とは、性器に対して指で触れる行為、女性の乳房をもてあそぶ行為、裸にして陰部等の写真を撮る行為・・・

ということですから、条例の「わいせつな行為」とは、観念的競合。

「性行為」=「性交」及び男女の性交を模した「性交類似行為」とは重なりませんから、併合罪
 児童淫行罪とは併合罪併合罪併合罪
 児童福祉法違反について高裁でやってるのに、条例の例規を出してもしょうがないが大阪では併合罪

大阪府青少年健全育成条例
http://www.pref.osaka.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k2010487001.html
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第二十八条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
一 青少年に金品その他の財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
二 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
三 性行為又はわいせつな行為を行うことの周旋を受け、青少年に対し当該周旋に係る性行為又はわいせつな行為を行うこと。

http://www.police.pref.osaka.jp/01sogo/law/images/seian/seian_540123600074.pdf
大阪府青少年健全育成条例の運用について
昭和60年12月26日
例規(少)第74 号
最近改正平成10 年6月19 日例規(総)第34 号
大阪府青少年健全育成条例(昭和59 年条例第4号。以下「条例」という。)については、「大阪府青少年健全育成条例の施行に伴う当面の運用について」(昭和59 年10 月29 日一般(少)第665 号)により運用してきたところであるが、昭和61 年1月1日から次により運用することとしたので、誤りのないようにされたい。
11 みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止(第23 条関係)
(1) 本条違反は、何人も青少年に対し第1号から第4号までのいずれかに該当する性行為又はわいせつな行為(以下「性的行為」という)を行うことによつて成立する。
(2) 各号の規定は反社会性の強い性的行為を具体的に条文に盛り込んだものであるが男女間の関係は、極めて微妙な判断を要するので、事件処理を行うときは本条の趣旨、目的をよく理解し、性的行為等に至つた経緯、態様、可罰性、妥当性等を総合的に検討すること。

(3) 「性行為」とは「性交」及び男女の性交を模した「性交類似行為」をいう。
(4) 「わいせつな行為」とは、性器に対して指で触れる行為、女性の乳房をもてあそぶ行為、裸にして陰部等の写真を撮る行為、人前で全裸にしたり陰部を露出せしめる行為等いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、露骨な表現によつて、健全な常識のある一般人に対し、性的にしゆう恥嫌悪の情を起こさせる行為等をいう。
(5) 本条第1号は、金品その他の財産上の利益、役務及び職務を供与し、又はこれを供与する約束と引換えに行う性的行為であり、行為者が供与し又は供与を約束する金品
等と性的行為との間に、直接的で密接な対償性の存することが必要である。
ア「その他の財産上の利益」とは、債務の免除、債務保障の承諾、債権の譲渡、弁済の延期又は猶予、不利な契約の破棄等有体の財物でない財産上の利益をいう。
イ「役務」とは、一定の労力やサービスをいう。
(6) 本条第2号は、専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫するなどにより当該青少年に対し性的行為を行うことであり一般的には「専ら」でないことを種々弁解するものと予想されるので、性的行為に至る経緯、状況等から「専ら」性的欲望を満足させる目的であつたか否か判断する必要がある。
ア「威迫し」とは、暴行又は脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により心理的威圧を加えて相手方に不安の念を抱かせ自由な判断力を低下させることをいう。
イ「困惑させて」とは、借金の返済を厳しく迫つたり、雇用関係、職場における上司と部下の関係等の特殊な関係を利用して義理人情の機微につけ込むことなど、心理的な圧迫を加え、精神上の自由な判断力を低下させることをいう。

強制わいせつの事例(大分県警)

 器物損壊罪に落ち着くと思うんですけど。i
 一応、触らなくても強制わいせつは可能。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070211-00000195-mailo-l44
大分市内の24時間営業のインターネットカフェで、自慰行為をして、椅子に腰掛け熟睡していた団体職員の女性(27)のコートやマフラーに精液を付着させた疑い。

釧路地方裁判所北見支部判決昭和53年10月6日
しかし、刑法一七六条の強制猥褻罪は被害者の性的自由を主たる保護法益とするものであつて、本罪の成立には、犯人の性欲を刺激・興奮させ、または満足させるという性的意図のもとに、被害者の性的自由を侵害する行為をなせばたり、必ずしも被害者の身体に接触することを要するものではないと解すべきところ、被告人両名の判示第二の行為は、右の意図のもとになされた性的自由の侵害行為というに十分であるから、刑法一七六条前段の罪が成立するものであることは明らかである。