児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

弁護士が警察に「面会が終わったことは署員に自分が伝えるので、そのまま帰ってほしい」と言ったらしい

 ここは守秘義務で黙秘で。
 計画性立証に使われちゃうかもで、信頼失う。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180817/k10011580451000.html
大阪の富田林警察署で勾留されていた男が、弁護士と面会したあと接見室から逃走した事件で、男が弁護士に対し「面会が終わったことは署員に自分が伝えるので、そのまま帰ってほしい」という趣旨の話をしていたことが関係者への取材でわかりました。警察は計画的に逃走したと見て、行方を捜査しています。

強盗傷害や窃盗の罪で起訴され、性的暴行をしようとした疑いで再逮捕されていた容疑者)は、今月12日の夜、接見室で弁護士と会ったあと、アクリル板を破って逃走しました。
発生から5日目となりますが、依然として行方はわかっていません。
警察のその後の調べで、容疑者が接見を終えて帰ろうとした弁護士に対し、「面会が終わったことは署員に自分が伝えるので、そのまま帰ってほしい」という趣旨の話をしていたことが関係者への取材でわかりました。
この警察署では接見室の扉を開けた時に鳴るブザーは、電池が抜かれていて使われておらず、弁護士は容疑者の要望どおり、署員に伝えずに警察署を離れていて、事件が発覚したのは、およそ1時間45分後でした。
警察は接見室で1人になる時間を作り計画的に逃走したと見て、いきさつを調べています。

https://mainichi.jp/articles/20180817/k00/00e/040/294000c
捜査関係者によると、容疑者は接見が終わる前、弁護士に「署員には言わなくてもいい」という趣旨の話をしたという。弁護士の事務所は「取材には一切答えられない」と話している。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20180817-OYT1T50121.html
容疑者が弁護士に「面会が終わったことは自分が署員に伝える」と虚偽の説明をしていたことが、わかった。署員に弁護士から接見終了が伝わるのを防いで面会室に1人で残る狙いとみられ、逃走が計画的だった可能性も浮上する。
・・・
捜査関係者によると、弁護士は府警に対し、容疑者が「留置場が忙しいので、面会が終わったことは自分が連絡する。そのまま帰ってください」などと話したと説明したという。

https://www.sankei.com/west/news/180817/wst1808170091-n1.html
容疑者は12日午後7時半ごろから、同署2階の面会室で弁護士と接見。同8時ごろに弁護士が退出した後、室内のアクリル板を蹴破って逃走した。捜査関係者によると、容疑者は接見を終える際、弁護士に「署員に終わったことを伝えなくていい」との趣旨の話をしたという。
同署では接見する弁護士に対し「終了した際は声をかけてほしい」と伝えていたが、このとき弁護士は署員に声をかけなかった。弁護士側の扉には開くとブザーが鳴る装置があったが、同署は「接見終了時に、弁護士が署員に声を掛けることが多いため不要」として電池を抜いていた。
 この結果、同署は接見終了に気付かず、留置場の担当者が長時間の接見を不審に思い、面会室を開けて誰もいないのに気付いたのは同9時43分だった。
 面会室につながる前室にも当時、執務時間外で署員は配置されていなかった。捜査本部は、署の態勢が手薄な日曜日の夜間を狙った可能性もあるとみている

条解弁護士法 第4版(2012年 弘文堂)
(秘密保持の権利及び義務)
第23条
弁護士又は弁護士であった者は,その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し,義務を負う。但し,法律に別段の定めがある場合は,この限りでない。
【1】本条の趣旨
本条は,弁護士文は弁護士であった者に対し,職務上知り得た秘密を保持する権利と義務があることを規定する。
依頼者は,法律事件について,秘密に関する事項を打ち明けて弁護士に法律事務を委任するものであるから,職務上知り得た秘密を他に漏らさないことは,弁護士の義務として最も重要視されるものであり,また,この義務が遵守されることによって,弁護士の職業の存立が保障されるともいえる。
この弁護士の秘密保持の権利と義務は,法1条2項に規定された誠実義務のー内容とみられるものである。
なお,弁護士の秘密保持義務については,刑法の秘密漏示罪(134条1項)により,刑罰をもって裏づけがなされている。


【5】保持の権利と義務
1 秘密保持の権利・義務は,本条但書により,法律に別段の定めがある場合にはないとされるから,その意味で制限的なものである。そして,法律に別段の定めのある場合とは,民事訴訟法197条2項,刑事訴訟法105条但書, 149条但書の場合がこれにあたるものと解される。
・・・
この関係で,問題となるのが,民事訴訟法や刑事訴訟法上,証言を拒絶することができる場合において,この拒絶の権利を行使しなかったとき,本条の秘密保持義務に違反するかという点であるが,肯定的に解すべきである。けだし,弁護士について証言拒絶権が保障されているのであるから,その権利を適正に行使しないことは正当な理由がないこととなるというべきだからである。

なお,証言拒絶権の行使をせずに証言した場合,刑法上の秘密漏示罪が成立するかについては見解が分かれるが,秘密を守られることによる本人の利益と弁護士が証言をすることによって得られる司法上の利益とを比較衡量し,後者が優越している場合には,違法性がないと解するのが相当であろう(斎藤秀夫他編『注解民事訴訟法(第2版) (7)」 438頁参照)。

刑訴第一〇五条[押収と業務上の秘密]
 医師、歯科医師助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職に在る者又はこれらの職に在つた者は、業務上委託を受けたため、保管し、又は所持する物で他人の秘密に関するものについては、押収を拒むことができる。但し、本人が承諾した場合、押収の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合(被告人が本人である場合を除く。)その他裁判所の規則で定める事由がある場合は、この限りでない。

高中正彦 弁護士法第4版P109
3 義務の解除
23条本文には、刑法134条1項にある「正当な理由がないのに」という要件がないが、秘密を開示する正当な理由がある場合には、23条本文違反とはならないものと解するべきである(仙台高判昭46・2・4下民集22巻l・2号81頁)。正当な理由のある場合とは、秘密の主体の同意があった場合、弁護士自身が民事・刑事の係争当事者となったり、懲戒請求を受けた場合、すなわち自己防衛の必要性がある場合、依頼者の犯罪行為の意思が明確で実行行為が差し迫っており、その結果も重大である場合などが考え
られる。なお、民事訴訟法(196条)、刑事訴訟法(149条)の規定により証人としての証言拒絶ができる場合に、これをせずに証言を行い秘密を漏らしたときは、正当な理由があるとはいえないから、23条違反となるというべきである。
(12)加藤新太郎・コモンベーシック弁護士倫理(有斐閣・2006) 110頁。
(13)前掲大阪高判平19・2・28は、突然にメールを送信された弁護士が、送信者が実在するかを確認するためメールに名前が出ている弁護士に対しメールがあったことを告げた行為は、正当な理由によって守秘義務を免れる行為であって、守秘義務に違反しないとする。