児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

わいせつ容疑の乳腺外科医の裁判、今日再開

 大法廷h29.11.29が性的意図不要としたので、こういうのは構成要件レベルでは準強制わいせつ罪を疑われるリスクも増えますよね。
 録画は難しいですが、女性看護師を立ち会わせるとか予防策を徹底しないとね。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201809/557745.html
準強制わいせつで起訴された乳腺外科医の弁護団に聞く
わいせつ容疑の乳腺外科医の裁判、今日再開
2018/9/10 増谷 彩=日経メディカル

 2016年8月25日、右乳腺腫瘍摘出手術後で麻酔が残る女性患者に対し、術後診察に訪れた医師がわいせつ行為をしたとして、柳原病院(東京都足立区)の非常勤外科医が準強制わいせつで起訴された事件の裁判が今日、再開された。

 この事件の初公判が開かれたのは、2016年11月30日。そこから2年弱の時間が空いたが、その間に証拠の整理が行われてきた。弁護団によれば、特に検察側の証拠開示に時間が掛かったという。

争点はDNA型の鑑定と定量

 本事件の初公判では、検察側が女性の胸部から、アミラーゼ反応を認め、そこから男性のDNA型が検出されたことを指摘。逮捕後に被告医師の口腔粘膜を採取して調べた結果、DNA型が一致していた、との見解を示していた(わいせつ容疑の外科医、初公判で無罪を主張)。

 しかし弁護団によると、手術当日、被告医師が患者や患者の知人と話しながら患者の胸部を撮影した際や、手術台で他の医師と話し合いながら患者の胸部にマジックでマークをした際、超音波検査をした際に被告医師がマスクを付けていなかったことが明かになっており、被告医師のDNAを含んだ唾液の飛沫が胸部に付着した可能性があるという。また、被告医師は、手術前に、手術してない方(左胸)も触診をしていたため、手指を介して被告医師のDNAが付着した可能性もある。こうしたことから弁護団は、以前から「女性の胸部から、唾液反応と被告医師のDNA型が出ることはおかしくない」と主張していた。

 このアミラーゼ反応やDNA型鑑定方法の適切さや科学性・再現性に加え、女性の胸部から採取されたDNAが被告医師のものだとしても、それによって「なめたことにより付着した」と断定できるのかどうかが争点となる。

 検察側は、採取されたDNAの量により、そのDNAが唾液の飛沫や手指を介したものではないと断定できると主張している。弁護団は、検察側に検体の保管状況、鑑定の方法や時間、使用した薬品の量など、鑑定の過程の開示を求めてきたが、開示に時間がかかった上、全ての過程は開示されなかったという。

 弁護団は、法医学者に依頼し、適切な方法での再現実験を実施。唾液の飛沫、触診、なめる行為において採取されるDNA型やDNAの量を計測し、結果の分析や鑑定書の作成などを行ったという。その結果は、今後の公判の中で明らかにされる。

 弁護団は「唾液からDNAが検出されるのは、口腔内の細胞が剥がれたり、口腔内の出血で細胞が唾液に混じるため。そうした条件によって唾液から検出されるDNAの量は大きく変わる」と話している。

「女性患者はせん妄状態だった」

 また、被害者とされる女性がせん妄状態であったとの主張も引き続き行っていく意向だ(準強制わいせつ容疑の医師「やっておりません」)。手術では、麻酔を13時35分に開始し、14時40分に終了した。手術開始は14時、終了は14時32分だった。

 麻酔薬は、笑気ガスを13時37分に開始し14時22分に終了(総量60L)、セボフルラン吸入麻酔液15mLを13時37分に開始し14時32分に終了、プロポフォール静注1%20mL(200mg)を13時37分に使用、ペンタゾシン5mgを14時に使用、ジクロフェナクナトリウム50mg坐剤を13時39分に使用した。

 こうした麻酔薬や鎮痛剤の使用量やそれぞれの副作用、病室での女性の言動、当時の状況などから、せん妄状態であった可能性を示す精神科医の鑑定意見書などを作成しているという。

 勾留状の被疑事実では、右乳腺腫瘍摘出手術の女性患者に対し、5月10日の午後2時45分ごろから同日午後2時50分ごろまでの間にわいせつ行為をし、同日午後3時7分ごろから同日午後3時12分ごろまでの間に自慰行為をするなどわいせつ行為をしたとされていた。一方で起訴状では、2016年5月10日午後2時55分ごろから同日午後3時12分ごろまでの間、病室のベッドに横たわる患者に対し、着衣をめくって左乳房を露出された上、その左乳首をなめるなどし、わいせつな行為をしたとしており、「自慰行為」の表記や時刻などが変わっていた(患者への準強制わいせつ罪で外科医を起訴)。

 弁護団は「検察側の主張する事実が時間が経つにつれて変化していること、DNAや唾液に関する鑑定が科学的とは到底言えないことなど、ずさんな点を指摘したい」と話している。

 被告医師は、2016年8月25日に女性患者へのわいせつ容疑で逮捕され、柳原病院は抗議声明を発表していた(わいせつ容疑で医師逮捕、病院が抗議声明)。その後、9月6日には勾留理由開示公判が行われたが勾留は続き、9月14日に起訴となった。被告医師は身体拘束が続いていたため、医療関係者有志で作った「外科医師を守る会」が早期釈放を求める嘆願署名を東京地方裁判所に提出(外科医の早期釈放求め2万筆弱の嘆願署名を提出)。初公判後に保釈されている