児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

犯罪収益規制法10条1項に規定する犯罪収益の取得につき事実を仮装する行為を実行する段階において,前提犯罪である児童ポルノ提供罪が既遂に達していることを要すると解するものではない(大阪地裁h19.12.21)

で問題提起されている論点ですが、手元に半田支部H15.5.8があったので、紹介しておいたら、大阪でもその通りの判決でした。理由は確認中です。
 じゃあ、提供罪が予備未遂で終わって、金だけ動いた場合はどうなるのか?が問題ですね。

名古屋地裁半田支部H15.5.8
2弁護人の主張(1)について
犯罪収益規制法2条2項1号は,財産上不正な利益を得る目的で犯した児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条1項の罪(児童ポルノ販売罪.別表59号)の犯罪行為により得た財産を「犯罪収益」にあたると規定しており,児童ポルノ販売罪の未遂罪は処罰の対象とされていないから,児童ポルノ販売罪を前提犯罪とする「犯罪収益」といえるためには,児童ポルノ販売罪が既遂に達していることを要すると解される。しかしながら、このことは,犯罪収益規制法10条1項に規定する犯罪収益の取得につき事実を仮装する行為を実行する段階において,前提犯罪である児童ポルノ販売罪が既遂に達していることを要すると解するものではない。
 すなわち、児童ポルノ販売罪の実行行為により得た財産の取得につき事実を仮装し,その後に児童ポルノ販売罪が既遂に達した場合は,その既遂時点において,当該仮装行為が,「犯罪収益の取得に関する仮装行為」と法的に評価されることになると解するべきである。
 なぜなら,まず第1に,犯罪収益規制法10条は,金融機関を経由することによって犯罪収益をクリーンな外観を有する財産に変えて前提犯罪との関係を隠匿し,あるいはこれらの財産を隠匿する行為は,将来の犯罪活動に再投資されたり,事業活動に投資されて合法的な経済活動に悪影響を及ぼすなどのおそれのある犯罪収益の保持・運用を容易にすることから,これを処罰する趣旨の規定であるところ,犯罪収益の取得は,経験上必ずしも前提犯罪の完了後に行われるものではなく,犯罪遂行の過程においてされることが往々にしてあるから,このように解釈しなければ法の趣旨は達成できない。
第2に,前提犯罪の完了を目指して着手した実行行為により得た財産は,取得時点において,既に将来犯罪収益となることが予定されているものであるから,その帰属を仮装する行為は,後に当初の予定どおり前提犯罪が完了したときには,遡って犯罪収益につき事実を仮装した行為にあたると評価するのは自然であり,かつ合理的な見方であるといえるからである。よって,弁護人の主張は採用できない。