児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

通常態勢

通常態勢
平日は通常態勢
事務所は平日09:30〜17:30です。
それ以外は弁護士が下記の電話で対応します。

弁護士への連絡は、
通常
   TEL 050-5861-8888(弁護士直通)
   FAX 06-6363-2161(外出先でも読んでいます)

   メール hp3@okumura-tanaka-law.com(携帯でチェックしています。パソコンからのメールを受信できるようにしてください。)
   Skype okumura_law

緊急相談用
   050-5861-8888
   hp3@okumura-tanaka-law.com(携帯でチェックしています。パソコンからのメールを受信できるようにしてください。)
となっています。

地図
http://kokomail.mapfan.com/receivew.cgi?MAP=E135.30.31.4N34.41.35.7&ZM=11&CI=R

淫行(青少年条例違反)の慰謝料が100万円という弁護士や、青少年条例の保護法益が「貞操権」とか「性的自由」という弁護士

 被害者側と加害者側の双方にこういう弁護士が付けば、100万円程度で示談できるかも知れませんね。
 奥村の経験でも「貞操権侵害」とか「操を害された」として訴額200~300万円で民事訴訟を提起されることがありますが、下記の判例解説とか民事裁判例を挙げれば、1回10~30万円の判決・和解になります。
 高橋調査官の話を交通事故に喩えると、事故に相当するのが児童淫行罪で、事故になりそうだが事故に至っていない交通違反(速度超過とか飲酒運転とか)に相当するのが青少年淫行罪だということで理解しておけばいいでしょう。

最高裁判所判例解説刑事篇
昭和60年度201頁
福岡県青少年保護育成条例違反被告事件昭和60年10月23日
高橋省吾
本条例の淫行罪は、淫行は青少年にとってはそれ自体で健全育成に対する抽象的危険を招くものであるという認識に立った上で、青少年以外の者に対して、このような危険を回避すべき義務を課し、右義務違反に違法性を認めているものと解することもできよう(亀山継夫「児童に淫行をさせる罪(その二 研修三四七号六〇頁参照)

https://www.bengo4.com/c_3/c_1377/b_693499/
未成年と知りながら成人男性が淫行しました
2018年08月09日 09時52分

堀 晴美 弁護士
東京 渋谷
弁護士ランキング 東京都6位 離婚・男女問題に注力する弁護士
請求できる金額としては100万くらいかと思います。
脅迫、強要と取られないよう、言葉を慎重に選ぶ必要があります。またボイスレコーダーを持参して録音しておいた方がよいと思います。
ホテルに入らなければ淫行の未遂ということになると思います。 2018年08月09日 09時57分

2018年08月09日 10時24分
岡村 茂樹
岡村 茂樹 弁護士
埼玉 さいたま市 浦和区
弁護士ランキング 埼玉県1位 離婚・男女問題に注力する弁護士
ありがとう
> 相手に慰謝料の請求項目として、何を訴えるのが良いでしょうか?
・淫行による未成年者の貞操侵害でしょう。 2018年08月09日 10時44分

岡村 茂樹 弁護士
埼玉 さいたま市 浦和区
弁護士ランキング 埼玉県1位 離婚・男女問題に注力する弁護士
ありがとう
保護されるべき心身が未熟な青少年の性的自由の侵害です。
淫行防止条例にいう淫行は,「その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為」と解釈されています。 2018年08月09日 11時11分

少年法37条削除の理由~調査と情報第963号

 児童ポルノ・児童買春法を少年に理解のある家庭裁判所が取り扱うのが適当であるということで家裁管轄にしておけば混乱無かったでしょうね。

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10356511_po_0963.pdf?contentNo=1&alternativeNo=
調査と情報―ISSUE BRIEF―
第963号
No. 963(2017. 5.25)
少年法の適用年齢引下げをめぐる議論
(3)平成 20(2008)年改正
平成 20(2008)年改正24では、少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るため、被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大(第 5 条の 2 第 1 項)、被害者等の申出による意見の聴取の対象者の拡大(第 9 条の 2)、一定の重大事件の被害者等が少年審判を傍聴できる制度の創設(第 22 条の 4)、家庭裁判所が被害者等に対し審判の状況を説明する制度の創設(第 22 条の 6)がなされた。
また、少年の福祉を害する成人の刑事事件に、より適切に対処するため、その管轄が家庭裁判所から地方裁判所等へ移管された(第 37 条及び第 38条の削除25)。26
 
25 改正前の少年法第 37 条では、第 1 項に掲げる児童福祉法違反(児童に淫行をさせる行為等)のような少年の福祉を害する成年の刑事事件は、家庭裁判所が第一審の裁判権を有するものとされていた。この規定が設けられたのは、このような成人の刑事事件は、少年事件を専門に扱い少年に理解のある家庭裁判所が取り扱うのが適当である
等の理由によるものであったが、同項に掲げる事件とそれ以外の事件とが併合罪の関係の場合、家庭裁判所地方裁判所等に別々に公訴が提起され、審理期間が不当に長くなる等の問題が指摘されていた。また、改正前の少年法第 38 条では、家庭裁判所は、少年に対する保護事件の調査又は審判により、少年法第 37 条第 1 項に掲げる事件を発見したときは、これを検察官又は司法警察員に通知しなければならないとされていた。しかし、家庭裁判所の調査・審判の過程において発見されることが多い少年の福祉を害する成人の刑事事件は、第 37 条第 1 項に掲げる事件に限られるものではなく、仮に通知の対象となる規定を整備すると、対象事件の範囲がかなり広がり、刑事訴訟法第 239 条第 2 項に基づき公務員に求められる告発に近づくことになるため、少年法第 38 条のような規定をあえて維持する必要性は低くなる。こうした事情を踏まえ、両規定が削除されることになった。(岡崎忠之「法令解説少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るための法整備 少年法の一部を改正する法律」『時の法令』no.1822, 2008.11.30, pp.14-16.)
26 詳しい内容は、同上, pp.6-16 参照。

岡田好史 不特定多数の者に提供する目的で、衣服をつけない実在する児童の姿態が撮影された画像データを素材としてコンピュータグラフィックスを作成する行為と児童ポルノ製造罪東京高裁平成29年1月24H第10刑事部判決平成28年(う)第872号児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件高刑集70巻1号1頁 刑事法ジャーナル56号

岡田好史 不特定多数の者に提供する目的で、衣服をつけない実在する児童の姿態が撮影された画像データを素材としてコンピュータグラフィックスを作成する行為と児童ポルノ製造罪東京高裁平成29年1月24日第10刑事部判決平成28年(う)第872号児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件高刑集70巻1号1頁 刑事法ジャーナル56号
 個人的法益寄り。
 破棄理由となった罪数問題については言及なし。

 裁判経緯・評釈をwestlawから。ずーっと上告中。

裁判年月日 平成29年 1月24日 
裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件名 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果 破棄自判・一部無罪、一部有罪(罰金30万円(求刑 懲役2年及び罰金100万円)) 
上訴等 上告 
文献番号 2017WLJPCA01246001
出典
高刑 70巻1号10頁
裁判所ウェブサイト
判タ 1446号185頁 
判時 2363号110頁
エストロー・ジャパン
評釈
渡邊卓也・ジュリ臨増 1518号169頁(平29重判解) 
髙良幸哉・法学新報(中央大学) 125巻1・2号173頁
上田正基・立命館法学 372号157頁
岡田好史・刑事法ジャーナル 56号149頁

児童ポルノ法がわいせつ罪的側面を有していることは否定できない。しかし、性的描写の点ではわいせつ表現よりも児童ポルノの方がわいせつに達しない描写も含んでいる点でより広い規制となっていること、刑法175条と異なり児童ポルノ関連犯罪の方が相当広範囲にわたる行為を規制対象としていること、罰則においても刑法175条よりも児童ポルノ関連犯罪の方が重く設定されていることからすると、児童ポルノ法は既存の性刑法に比べて相当厳しい規制であることと認められる。
立法の沿革等から児童ポルノ関連犯罪も物に対する規制であるとの理解が広がり、個人的法益性が読み取りづらくなっていたといえるが、法文から社会的法益性が読み取れるとしても、法の目的や立法趣旨、児童保護措置規定の存在からすると、少なくとも現行法においては、児童の個人的法益の保護が第一次的であると解すべきであり、社会的法益は個人的法益に付随して副次的に認められるに過ぎないというべきであろう
・・・
4本判決の意義
児童ポルノにかかわる表現につき、厳格な規制による保護が憲法上正当化される根拠は、表現の自由についての規制にかかる以上、児童を性欲の対象としない風潮の維持や児童の健全な心身の成長を脅かす環境の排除といった社会的法益自体から正当化することは困難である。すなわち、児童ポルノの作成や流通から被る害悪から被害児童を保護するという実在児童の個人的法益があくまでも前提であって、児童ポルノの受け手への悪影響の除去、児童の健全な心身の成長を脅かす環境の排除自体から、児童ポルノの規制は根拠付けられるものではないと解するべきである。
本件では、実在性を判断するにあたり、モデルとされた児童とCGとしての児童との同一性は、機械的一致によらずともよいということを明らかにしている。CG等により極めてリアルに描写されたものに対しては、被害児童の描写と認識されることがありうることから、総合的に考慮するとしたことは評価できる。
本件では、精綴に作られたCGの立証の困難さも浮き彫りにしている。今後の判例の判断、集積が待たれる。
(おかだ・よしふみ

「物件を借りる際の契約書の保証人になる」という対償供与の約束

 児童を買ったという程度の金額は必要です。
 裁判例で出てくるのはコミック2冊、タバコ数箱です。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」
(3) 「対償」 とは、児童が性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益をいいます。現金のみならず、物品、債務の免除も、「対償j となります。金額の多寡:は問いません。
・・・

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」解説警察庁生活安全局少年課執務資料(部内用)
3 対償の供与、又はその供与の約束
( 1 )対償
ア「対償」とは、売春防止法第2 条にいう「対償」と同義で、児童に対して性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益をいい、このようなものと認められる限り、現金のみならず、物品や債務の免除であっても「対償Jに当たり得る.また、金額の多寡は問わないが、「対償」に当たるためには、性交等をすることに対する反対給付といえるかという点と、供与されたものが社会通念上経済的利益といえるかという点の2 点を満たす必要がある

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33838280W8A800C1ACX000/
少女にわいせつ行為 容疑の塾講師の男逮捕 福岡
九州・沖縄 社会
2018/8/6 11:48
 17歳の少女に賃貸保証人になると持ちかけ、酒を飲ませてわいせつな行為をしたとして、福岡県警春日署は6日、容疑者を児童買春・ポルノ禁止法違反(児童買春)などの疑いで逮捕した。「わいせつな行為するために賃貸の保証人になったつもりはない」と容疑を一部否認している。

 逮捕容疑は7月3日、自宅で「物件を借りる際の契約書の保証人になる」と少女に持ちかけた上で、酒を飲ませわいせつな行為をした疑い。

 同署によると、少女が同月上旬、SNSに「保証人になってほしい」と書き込み、容疑者が応じて自宅に呼んだ。少女が2日後に警察に相談し発覚した。

授乳写真が児童ポルノになるのかという議論~授乳写真を投稿 母乳育児週間への理解を…

授乳写真が児童ポルノになるのかという議論~授乳写真を投稿 母乳育児週間への理解を…
 結論は違法ではないとすべきですが、理由付けが難しい。
 児童ポルノ法は母乳育児週間に理解がない。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180806-00000149-dal-ent
道端ジェシカ 授乳写真を投稿 母乳育児週間への理解を…
8/6(月) 23:05配信 デイリースポーツ
道端ジェシカ 授乳写真を投稿 母乳育児週間への理解を…
 道端ジェシ
 モデルの道端ジェシカが5日、インスタグラムを更新し、生後9カ月の娘「JOY」ちゃんへの授乳写真を投稿し、「世界母乳育児週間」(8月1~7日)への理解を求めた。

 実は、授乳写真が児童ポルノになるのかという議論があります。
https://www.google.co.jp/search?q=%E6%8E%88%E4%B9%B3+%E5%85%90%E7%AB%A5%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%83%8E&oq=%E6%8E%88%E4%B9%B3%E3%80%80%E5%85%90%E7%AB%A5%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%83%8E&aqs=chrome..69i57.9410j0j4&sourceid=chrome&ie=UTF-8

 日本法でいうと、法2条3項2号の「性器等」=性器、肛門又は乳首(同条2項)なので、児童が成人の乳首を触る場合も含みます。
 法文上は「性欲を興奮させ又は刺激するもの」にならないようにするしかないですが、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の要件については、一般人基準ですが、マイナーな嗜好の人も含めて「一般人」だという判例(大阪高裁H24.7.12)があるので、これで興奮する嗜好の人がいないのであれば、2号に該当しないことになります。
 最近の高裁判例では、親が撮影しても児童ポルノに該当しうるとされています。

裁判年月日  平成30年 1月30日 
裁判所名  東京高裁 
文献番号  2018WLJPCA01306002
   (2)  論旨は,また,原判決が児童ポルノと認めた画像の中には,一般人の性欲を興奮又は刺激させないものが含まれているとして,具体的には,トイレに座る画像,一部着衣してあどけなく座る画像,児童を拘束している画像,上半身裸の男児の目や口をガムテープで塞ぎ両手を緊縛した画像で性器が映っていないもの,児童が突っ立っている画像を挙げ,これらの画像を撮影した行為について児童ポルノ製造罪を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,原判決は,公訴事実に含まれる各画像を個別に検討し,一部の画像を性欲を興奮させ又は刺激するものに該当しないとするなど,児童ポルノの該当性を慎重に判断しており,所論指摘の画像の撮影行為をいずれも児童ポルノに該当するとした原判決の判断は不合理ではない。トイレに座る画像,一部着衣してあどけなく座る画像,児童が突っ立っている画像であって,児童に殊更扇情的な姿態をとらせたものではなくても,性器を殊更露出させたものであれば,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものといえる。また,全裸で両手を縛った画像や性器をひもで緊縛するなどして児童を拘束している画像や,上半身裸の男児の目,口をガムテープで塞ぎ両手を緊縛した画像も,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものといえる。所論は,少年アイドルの上半身裸の写真や小学生の水泳の写真と同視でき,児童ポルノに該当しないとも主張するが,それらは,画像から読み取れる姿態,場面,周囲の状況,構図等を総合的に考慮して判断するならば,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものとはいえないと評価されるにすぎない。なお,保護者が陰茎をつまんで撮影した写真は,児童ポルノに該当するが,その製造,所持の目的が,子供の成長の記録のためであるなどして,性的好奇心を満たす目的等に欠ける場合には,犯罪を構成しないと評価されるだけである。

阪高裁H24.7.12
2 控訴趣意中,その余の法令適用の誤りの主張について
 論旨は,(1)本件各画像は,児童の裸が撮影されているが,一般人を基準とすると「性欲を興奮させ又は刺激するもの」ではないから,児童ポルノ法7条2項の製造罪(以下「2項製造罪」という。
)は成立しないのに,原判決は原判示罪となるべき事実に同法7条2項,1項,2条3項3号を適用しており,また,(2)本件は,公衆浴場内での4件の2項製造罪であって,常習的に撮影,提供がされていたのであるから,それらは包括一罪となり,また,被害児童が特定されているのは1件だけであり,3件は被害児童が特定されておらず,結局被害児童は1名としか認定できないから,その意味でも包括一罪とすべきであるのに,原判決は,併合罪として処理しており,以上の各点で,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というものである。

 そこで検討するに,(1)の点は,本件各画像が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえるかどうかについては一般人を基準として判断すべきものであることはそのとおりである。
しかし,その判断の基準とすべき「一般人」という概念は幅が広いものと考えられる。
すなわち,「一般人」の中には,本件のような児童の画像で性的興奮や刺激を感じる人もいれば,感じない人もいるものと考えられる。
本件は,公衆浴場の男湯に入浴中の女児の裸の画像が対象になっており,そこには大人の男性が多数入浴しており,その多くの男性は違和感なく共に入浴している。
そのことからすると,一般人の中の比較的多くの人がそれらの画像では性的興奮や刺激を特に感じないということもできる。
しかし,その一方で被告人のようにその女児の裸の画像を他の者から分からないように隠し撮りし,これを大切に保存し,これを密かに見るなどしている者もおり,その者らはこれら画像で性的興奮や刺激を感じるからこそ,これら画像を撮影し,保存するなどしているのである。
そして,これらの人も一般人の中にいて,社会生活を送っているのである。
ところで,児童ポルノ法が規制をしようとしているのはこれらの人々を対象にしているのであって,これらの人々が「一般人」の中にいることを前提に違法であるか否かを考える必要があると思われる。
他人に提供する目的で本件のような低年齢の女児を対象とする3号ポルノを製造する場合は,提供を予定されている人は一般人の中でそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人達が対象として想定されているものであり,そのような人に提供する目的での3号ポルノの製造も処罰しなければ,2項製造罪の規定の意味がそのような3号ポルノの範囲では没却されるものである。
したがって,比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がいれば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である。

 したがって,原判決が原判示各事実に児童ポルノ法7条2項,1項,2条3項3号を適用したのは正当である。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第二条 
1 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

医師の面談を拒否されて、医師との面談を強く求め、事務局長に「医師を出さないと痛い目に遭わせるぞ」と申し向けたり。包丁を示す行為は、脅迫罪ではなく強要未遂罪なので罰金刑が選択できない。~イチケイのカラス(モーニング2018/08/16号)

脅迫して義務無きことを行わせようとすると、強要未遂罪になって、脅迫罪は成立しないことになって、罰金刑を選択できません。脅迫して何か頼むという点は罪となるべき事実に記載しないことだ。
 脅迫罪として罰金刑とした原判決には法令適用の誤りがある。

f:id:okumuraosaka:20180806142718j:plain

刑法
第二二二条(脅迫)
1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
第二二三条(強要)
 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3前二項の罪の未遂は、罰する。

 脅迫罪の犯罪事実にはそこまで書き込まないものだ。

脅迫被告事件、詐欺被告事件
【事件番号】 福岡地方裁判所判決
【判決日付】 平成29年12月27日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
第1 被告人は,元交際相手であるA(当時24歳)を脅迫しようと考え,平成28年8月28日午後7時26分ころから同月29日午後1時54分ころまでの間,福岡県内において,自己が使用する携帯電話機から前記Aが使用する携帯電話機に,「絶対地獄に落としてやろ」「ソープに沈めてもいい」「地獄みせてやる」旨記載したショートメッセージを送信し,いずれも,そのころ,同県内にいた同人に閲覧させてその内容を了知させ,もって同人の生命,身体等に危害を加える旨を告知して脅迫した。
・・・
      脅迫,傷害被告事件
【事件番号】 京都地方裁判所判決
【判決日付】 平成29年10月19日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
罪となるべき事実)
被告人は,
第1 平成27年4月20日午前6時15分頃から同日午前6時45分頃までの間に,E市内所在の社会福祉法人E府社会福祉事業団E府立F学園3階一般男子フロアープレイルームにおいて,V(当時9歳)に対し,手に持ったはさみを開閉させながら「そんなおちんちんなら要らないし,切ったらいい。」などと言い,同人の身体に危害を加える旨告知し,もって脅迫した。

チャットで知り合った強制性交・強盗被告事件(無罪・確定)(前橋地裁H30.5.23)

「確かに,動かし難い事実のうち,〔1〕初対面で会ってすぐに本件性交に至っていること,〔2〕本件性交が,昼間に,本件車両内で行われたものであること,〔3〕本件性交時,被告人は避妊具を着けずに膣内に射精していること,〔4〕Aが本件当日に警察への通報を希望していることの各事実は,被告人とAとの間には本件性交に関する合意はなく,ひいては本件暴行・脅迫を用いて本件性交がなされたことを一応推認させるものといえる。」ということです。
 児童買春事件では〔1〕~〔3〕は普通ですが、対償供与約束を隠され、強制性交罪を疑われることもあります。

前橋地方裁判所
平成30年5月23日刑事第2部判決
       判   決
 上記の者に対する強盗・強制性交等被告事件について,当裁判所は,検察官吉川和秀及び同井上恵理子並びに国選弁護人鈴木克昌(主任),同町田祐助及び同稲毛正弘各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文
被告人は無罪。
       理   由

第1 本件公訴事実の要旨
 被告人は,インターネットアプリケーションソフト「微信(ウィシン)」(以下「ウィチャット」という。)を通じて知り合った■(当時19歳)(以下「A」という。)と強制的に性交をしようと考え,平成29年7月30日(以下「本件当日」という。)午後零時20分頃から同日午後零時45分頃までの間,群馬県■郡■町■番地■(以下「本件現場」という。)に駐車中の自動車内において,助手席に座っていたAに対し,その両肩を押さえ付けた上,助手席シートを倒し,同人に覆い被さってその下着を脱がし,「殺さないから怖がらないで。動かないで。」などと言って暴行・脅迫(以下「本件暴行・脅迫」という。)を加え,その反抗を抑圧した上,Aと性交をし,さらに,Aが前記一連の暴行・脅迫により反抗を抑圧されているのに乗じてAから現金を強取しようと考え,その頃,同所において,Aに対し,「口でして。口でしてくれないなら20万円払ってよ。」などと言い,現金を強取しようとしたが,Aが隙を見て逃げたため,その目的を遂げなかった。
第2 本件の争点
1 本件公訴事実に対し,被告人は,本件公訴事実記載の日時場所でAと性交したこと(以下「本件性交」という。)は間違いないが,〔1〕Aに本件暴行・脅迫を加えてその反抗を抑圧したことはない,〔2〕Aが一連の暴行・脅迫により反抗を抑圧されているのに乗じて,その頃,同所において,Aに対し,「口でして。口でしてくれないなら20万円払ってよ。」などと言って現金を強取しようとしたこともない旨述べ,弁護人も,〔1〕本件性交は,被告人とAとの間の合意に基づくものであって,本件暴行・脅迫を用いて行われたものではない,〔2〕被告人は,Aから20万円を奪おうとしたことはないし,Aに現金を要求したこともなかったとして,被告人は無罪である旨主張する。
2 したがって,本件の争点は,〔1〕本件性交は,本件暴行・脅迫を用いて行われたものであるのか,〔2〕本件性交後,被告人がAに対して現金の支払を要求した(以下「本件要求行為」という。)のかの2点である。
第3 当裁判所の判断
1 判断の枠組み
 本件暴行・脅迫及び本件要求行為の存在を直接証明する客観的な証拠はない。本件暴行・脅迫及び本件要求行為を直接証明する証拠はAの証言であり,これを直接否定する証拠は被告人の供述である。そこで,当裁判所は,まず,証拠上動かし難い事実を認定し,続いて,Aの証言の信用性を検討し,さらに,被告人の供述の信用性を検討した。その結果,〔1〕本件性交は,常識に照らして間違いなく,本件暴行・脅迫を用いて行われたものであるとは認められず,また,〔2〕本件性交後,常識に照らして間違いなく,被告人がAに対して本件要求行為をしたとは認められないと判断した。以下,その理由を説明する(括弧内の「甲」「乙」の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠番号,「弁」の番号は同カードにおける弁護人請求証拠番号,「職」の番号は同カードにおける職権による取調べの証拠番号を示す。なお,Aの証言と被告人の供述は,特に必要な場合を除いて記載を省略している。)。
2 証拠上動かし難い事実
(1)動かし難い事実の認定
 本件の2つの争点を理解,判断するために必要で,検察官並びに被告人及び弁護人も特に争っておらず,かつ,証拠上明らかに認定できる事実(以下「動かし難い事実」という。)は,以下のとおりである。
ア 被告人と被害者の関係
 被告人は,平成27年(2015年)9月,留学の在留資格で日本に入国し,1か月余り埼玉県草加市に居住した記録もあるが,おおむね長野市内に居住している(乙5)。被告人は,本件当日頃,30歳で,身長は約173センチメートル,体重は約82キログラムであった。
 Aは,平成28年(2016年)6月,技能実習生として日本に入国した後,群馬県内の会社に勤務し,本件当日は群馬県■郡■町■所在の■店(以下「本件スーパーマーケット」という。)の近くに住んでいた。Aは,本件当日頃,19歳で,身長は約165センチメートル,体重は約53キログラムであった。
 被告人とAは,平成29年(2017年)5月か6月頃,ウィチャットを通じて知り合い,本件当日までの間,ウィチャットでメッセージ等のやり取りをしていた。被告人とAは,本件当日の1週間前に初めて会うことになり,Aは,被告人に対し,本件当日の待ち合わせ場所として本件スーパーマーケットを指定し,被告人も,これを了承した。
イ 本件性交に至る経緯
 Aは,本件当日午前11時13分頃,本件スーパーマーケットに到着したが,被告人を見つけることができず,少なくとも約17分間,本件スーパーマーケットの内外を歩き回って被告人を探していた(弁2)。
 被告人は,軽四輪自動車(以下「本件車両」という。)を運転して本件スーパーマーケットに向かった。Aは,被告人が自動車で来ることを知っており,本件当日午後零時頃までの間に被告人と会い,自ら,被告人が運転する本件車両の助手席に乗り込んだ。
ウ 本件性交の状況
 被告人とAは,本件当日午後零時頃,被告人が運転する本件車両で,本件現場に到着した。本件現場には,本件現場に駐車した本件車両の運転席及び助手席を正面から撮影できる位置と方向に,ダミーの防犯カメラが設置されていた(職3)。
 被告人は,本件性交前,小用のために本件車両から出たことがあった。Aは,本件車両が本件現場に到着してから本件現場を去るまでの間,本件車両の中にいた。
 被告人とAは,被告人が本件車両の運転席に,Aが助手席に座った状態で会話をした後,本件車両の助手席で本件性交をした。本件性交時,被告人は,避妊具を着けず,Aの膣内に射精した。被告人は,本件性交後,被告人の下半身等をティッシュで拭き,そのティッシュを本件車両の外へ投げ捨てた。
エ 本件性交後の被告人とAの行動
 本件性交後,被告人とAは,本件車両で,群馬県■郡■町■銀行■支店(以下「本件銀行」という。)に向かった。
 Aは,本件銀行に到着後,先に一人で本件車両を降り,そのまま,被告人に断ることなく本件銀行から立ち去った。本件当日午後1時29分頃にAが,同32分頃から34分頃までの間に被告人が,それぞれ一人で本件銀行ATMコーナーの前を歩く姿が,本件銀行のATMコーナーに設置された防犯カメラの映像に記録されている(弁2)。その後,被告人とAは,それぞれのウィチャットのメッセージ等を消去し,お互いに会うことも連絡を取ることもなかった。
 被告人は,Aと出会ってから別れるまでの間,Aのバッグやその中にある財布,現金,銀行のキャッシュカード,在留カードなどを取ることはなかった。
オ 110番通報に至る経緯
 Aは,本件銀行を立ち去った後,本件銀行の近くにある自宅に帰ると,普段から親しくしていたAの勤務先の同僚女性■(以下「B」という。)に対し,強姦と強盗の被害に遭った旨話した。
 Aの話を聞いたBは,A及びBの勤務先に技能実習生を派遣する会社で普段からA及びBを含む技能実習生の面倒を見る立場の男性■(以下「C」という。)に対し,Aが強姦と強盗の被害に遭った旨報告した。Cは,Bからの報告を聞いた際,AとBに対し,証拠を集めるように指示した。AとBは,同日午後5時30分頃,自転車に乗って本件現場を訪れ,そこで,被告人が本件性交後に被告人の下半身等を拭いたティッシュを拾い,持ち帰った。Aの勤務先のチーフマネージャーの男性は,同日午後9時57分,Cからの情報を基に110番通報をした(甲23)。
(2)動かし難い事実による推認
ア 本件暴行・脅迫及び本件要求行為を肯定する方向に働く事情の検討
 検察官は,「争いのない事実」,すなわち,〔1〕被告人とAは,知り合って約1か月ほどであり,本件当日は初対面であったこと,〔2〕被告人は,人気のない場所に駐車された車内で,避妊具を着けずにAの膣内に射精したこと,〔3〕本件当時,被告人は身長173センチメートル,体重82キログラム,30歳で,Aは,身長165センチメートル,体重53キログラム,19歳であったことという事実のみでも,Aが被告人と性交することを合意していたとは到底言えない旨主張しているので,検討する。
 確かに,動かし難い事実のうち,〔1〕初対面で会ってすぐに本件性交に至っていること,〔2〕本件性交が,昼間に,本件車両内で行われたものであること,〔3〕本件性交時,被告人は避妊具を着けずに膣内に射精していること,〔4〕Aが本件当日に警察への通報を希望していることの各事実は,被告人とAとの間には本件性交に関する合意はなく,ひいては本件暴行・脅迫を用いて本件性交がなされたことを一応推認させるものといえる。
 しかし,世間では,初対面ですぐに,また,昼間に車両内で,性交に至ることもないわけではなく,また,Aは,本件性交後,膣内に射精されたことについて特に不平や不安を述べたという証拠も見当たらない。そうすると,これら〔1〕から〔4〕までの事実から,本件性交に関する合意がなかったことが強く推認されるわけではない。
 また,年齢差や体格差は暴行の程度においては十分考慮すべきであるが,年齢差や体格差があるから性交が暴行・脅迫を用いて行われるという経験則はないし,合意のある性交でも人気のない場所で行われることはあるものと考えられるから,これらの事実は,本件暴行・脅迫の存在を推認させるものではない。
 したがって,「争いのない事実」のみでもAが被告人と性交することを合意していたとは到底言えないという検察官の主張は,採用できない。
イ 本件暴行・脅迫及び本件要求行為を否定する方向に働く事情の検討
 第1に,弁護人は,被告人とAは,ウィチャットを通じて知り合い,本件当日までの間,ウィチャットでメッセージ等のやり取りをしていたこと,また,Aは,本件当日,少なくとも約17分間,本件スーパーマーケットの内外を歩き回って被告人を探していたことから,被告人とAは,性交渉に同意していたといえる旨主張する。
 しかし,ウィチャットは他人とメッセージ等をやり取りするものにすぎず,本件におけるCのように,派遣先の中国人実習生との業務連絡に使用されている例も認められる。そうすると,常識的に考えて,被告人とAがウィチャットを使用していることから,被告人とAが交際することを目的としていたとはいえず,Aが,被告人と出会う前に本件スーパーマーケットの内外を歩き回って被告人を探していた事実を併せ考慮しても,性交渉の同意には結びつかないといえる。
 第2に,弁護人が指摘するとおり,Aは,本件当日午後5時30分頃,本件現場を女性であるBのみと一緒に再度訪れ,証拠物として被告人の精液がついているとAが考えていたティッシュを自ら採取していることが,動かし難い事実として認められる。Aに対する本件暴行・脅迫及び本件要求行為が存在し,かつ,Aが被告人に対して強い恐怖心を抱いていたとすると,AとBの女性2人のみで本件現場を再度訪れるというのは,証拠の確保という意味があったことを考慮しても,不自然といわざるを得ない。そうすると,AとBが本件当日に本件現場を再訪した事実は,本件暴行・脅迫及び本件要求行為を否定する方向に働く事情であるといえる。
ウ 動かし難い事実による推認の評価
 以上のように,動かし難い事実を全体として評価すると,本件暴行・脅迫及び本件要求行為を否定する方向に働く事情が優勢であるとはいえるが,本件暴行・脅迫及び本件要求行為の存否を直接証明するのは,Aの証言であるから,その信用性について検討する必要がある。
3 Aの証言の信用性の検討
(1)Aの証言の要旨
 Aは,公判廷において,〔1〕被告人から何回も誘われ,被告人と会うのは不安で断り続けたが,これ以上会わないと「罪人みたいな許し難い人間」になってしまうと感じて,被告人と会うことになった,〔2〕本件当日,被告人が運転する本件車両で,本件現場に連れて行かれた,〔3〕本件車両内で被告人から手を触れられた際,被告人の手をはねのけたが,被告人は,本件現場に駐車した本件車両の助手席に座っていたAに対し,両手で両肩をつかみ,助手席シートを倒して,被告人の上半身をAの上半身に密着させた,〔4〕被告人は,Aのワンピースを脱がせようとし,抵抗するAに対し,「おとなしくしろ,俺はあなたを殺さないから」と言い,両手でAのパンツを脱がせて後ろの座席に投げ,Aの上に覆いかぶさってキスをし,胸を触って,避妊具を着用せずに被告人の生殖器を膣内に挿入して射精した,〔5〕被告人は,助手席の前のダッシュボードからティッシュを取って,Aの下半身と被告人の下半身を拭き,運転席の窓から外に投げた,〔6〕被告人は,本件性交後,再度性交や口淫を要求し,Aが拒否すると,「そうしてくれなくてもいいんだけど,20万円ちょうだい」と言い,Aがお金はないと答えると,「かばんの中にカードがあるんだろう、下ろしてきて」と言われた,〔7〕被告人の運転する本件車両で本件銀行に到着した後,「ここで待ってるからお金を下ろしてきて」と言われ,かばんを持って本件車両から降り,ATMの方向に向かい,降りたところからATMまでは歩いて行って,その時点で被告人がついてきてなかったことを確認できたので,そこから走って帰ったなどと,本件性交前後の状況を交えて,本件暴行・脅迫及び本件要求行為があった旨証言している。
(2)Aの証言の信用性を高める方向に働く事情の検討
ア B及びCの各証言による裏付け
 検察官は,Aの証言内容は,B及びCの各証言など他の証拠から裏付けられており,信用性が高い旨主張する。 
 確かに,B及びCの各証言内容は,Cの携帯電話に残されたAらとの間のメッセージや通話履歴からも裏付けられており,また,B及びCには虚偽の証言をする動機も見当たらないから,その信用性は高いといえる。
 しかし,Bが直接見聞きしたのは,Aが帰宅した後の事情であり,Cが直接見聞きしたのも,AやBからウィチャットで連絡を受けた後の事情であるから,Aが強姦や強盗の被害に遭ったというB及びCの各証言内容は,Aの話を前提としているものである。したがって,B及びCの各証言は,Aの帰宅後に関する証言を裏付けてはいるものの,本件暴行・脅迫及び本件要求行為の存在を直接裏付けるものではない。
 もっとも,Bの証言のうち,Aが午後2時頃に二人きりになると泣き崩れて被害を打ち明けたという内容の証言は,Bが直接見聞きしたものであり,本件暴行・脅迫及び本件要求行為に関するAの証言を裏付けているとはいえる。しかし,Bが証言する,帰宅後にAが泣き崩れて強姦の被害を訴える様子と,本件性交後に本件銀行のATMコーナーに設置された防犯カメラ映像に記録されているAの様子,すなわち,本件銀行のATMコーナーの前をAが一人で歩いて去っていく姿には隔たりがあり,Bの上記証言は,本件暴行・脅迫及び本件要求行為を強く推認させるものではない。
 さらに,Aの証言とBの証言の一致の程度という観点から検討すると,Bは,Aが震えている様子で白い車に後をつけられたと言っていたと証言しているが,Aはそのような証言はしていない上,ほかにAが白い車で追いかけられたという証拠は見当たらず,むしろ,本件銀行のATMコーナーに設置された防犯カメラの映像では,Aが白い車に追いかけられることなく,歩いて行く様子が記録されている。
 したがって,少なくとも本件暴行・脅迫及び本件要求行為の存在についてのAの証言内容は,B及びCの各証言などの他の証拠によって裏付けられているとはいえない。
イ Aの証言内容の合理性・具体性等
 検察官は,Aの本件性交に関する証言内容は,争いのない事実とも合致する,自然で合理的な内容であり,かつ,想像で話すことが困難で,現実に体験していなければ証言が困難なほど,具体的・迫真的で生々しい内容であり,このことはAの証言の信用性を高める事情といえる旨主張する。
 確かに,Aの証言内容は,特に本件性交に関しては,具体的で生々しい内容となっている。
 しかし,本件性交が被告人とAとの間で行われたことは動かし難い事実のとおりであって,被告人も争っていないから,被告人が「奥さん」と言い続けたことなどの本件性交の場面に関する証言が具体的であるからといって,本件暴行・脅迫及び本件要求行為が裏付けられるわけではない。
 本件で重要なのは,本件性交前のAの抵抗の様子,本件暴行・脅迫の有無,再度の性交や口淫の拒否と本件要求行為に関する証言内容が合理的であるかという点である。このような観点からみると,「被告人が体の上に覆いかぶさってきたとき,それまで明るい表情だった被告人の顔が怖くなった。性交中,泣いて抵抗しても,被告人はまったく気にせず,「奥さん」と言い続けながら性交してきた」という検察官が引用する証言も,本件暴行・脅迫及び本件要求行為について,現実に体験しなければ証言が困難であるほど具体的で迫真性があるとはいえない。
ウ Aが虚偽の証言をする動機
 検察官は,被告人とAは本件当日が初対面であり,Aは被告人に対して個人的な恨みなどなく,嘘の話を作り上げて被告人を陥れようとする動機はなく,このことはAの証言の信用性を高める事情といえる旨主張する。
 確かに,Aは,被告人とは本件当日の約1か月前にウィチャットを通じて知合い,メッセージ等のやり取りをしていただけの関係であり,本件より前に被告人に対して個人的な恨みがあったという事情は特に見当たらない。
 しかし,Aは,本件当日に初めて会った被告人について,「ただのおじさんという,ちょっと清潔感が欠けていたという感じ」であり,「太っていて,顔も大きいし,おなかも大きかった」と証言しており,本件性交についても,「痛いからもうどいて」とすごい声で叫んだと証言しているから,被告人に対して好印象を抱いていなかったことが認められる。また,被告人は,Aが金を貸してくれというまでは雰囲気は悪くなかった旨供述している。そうすると,男女間の気持ちのずれや金銭関係のもつれなど,本件性交以後に,被告人に対する怒りや恨みの感情がAに生じた現実的可能性は否定できない。
 そうすると,公判廷における証言当時,Aに虚偽の証言をする動機がなかったとまではいえない。
(3)Aの証言の信用性を低める方向に働く事情の検討
ア 他の証拠との不一致
 第1に,Aは,被告人から何回も誘われ,被告人と会うのは不安で断り続けたが,これ以上会わないと「罪人みたいな許し難い人間」になってしまうと感じて,被告人と会うことになった旨証言する。
 しかし,〔1〕Aは,見知らぬ異性同士が出会える機能も有するウィチャットを通じて,被告人と知り合っていること,〔2〕待ち合わせ場所に本件スーパーマーケットを指定したのはAであること,〔3〕Aは,本件当日,本件スーパーマーケットにおいて少なくとも約17分間被告人を探し回っていたことが認められる。これらの動かし難い事実によれば,Aは,被告人と会うことに積極的であったともいえる。そうすると,被告人と会うことに消極的であったとするAの上記証言内容は,動かし難い事実と一致しないものであり,Aの証言の信用性を低めるものといえる。
 第2に,Aは,Aのワンピースを脱がせようとする被告人に抵抗した,被告人にパンツを脱がされて後ろの座席に投げられたなど本件性交前の様子を証言している。
 しかし,Aのパンツの所在は明らかではない上,Aが本件性交時に着用していた衣服に破損等があるといった証拠はなく,Aが本件当日軽傷を含めてけがをしていたという証拠もない。このような本件暴行・脅迫を直接裏付ける証拠がないことは,本件暴行・脅迫が存在しなかった可能性をうかがわせる事情ということができ,Aの証言の信用性を低めるものである。
 第3に,Aは,本件性交後,被告人が運転する本件車両で本件銀行に向かい,本件銀行に到着後,本件車両から降り,本件銀行のATMの入口の前で,被告人がついてきてないことを確認してから走り始めて帰った,本件銀行に被告人を案内したのは,被告人にもう一度強姦されないよう,誰かに助けてもらうためであった旨証言している。
 しかし,本件銀行のATMコーナーに設置された防犯カメラの映像によれば,Aは,本件銀行のATMコーナーの前を通り過ぎる際,前だけを見ながらまっすぐ歩いており,振り返って被告人の様子をうかがったり,ATMコーナーの中を見て人を探すなど,誰かに助けを求めるような素振りは認められない。
 このようにAの証言は,客観的な証拠と一致していない。
イ Aの証言内容の不合理性や不自然さ等
 第1に,Aは,本件スーパーマーケットの周辺において本件車両に乗り込んだ際の状況について,最初に被告人の運転する本件車両に乗り込むことには少し抵抗があったが,道路上であり,後ろの車の妨げになることから乗った旨証言する。
 しかし,動かし難い事実のとおり,Aは,被告人と待ち合わせをしたときから,本件スーパーマーケットに被告人が自動車を運転して現れることを知っていたのだから,本件車両に乗り込むことに抵抗を感じるという証言は,動かし難い事実と矛盾するといえる。
 第2に,Aは,本件当日,被告人が運転する本件車両で,本件現場に連れて行かれた旨証言している。
 確かに,本件当日は被告人が本件車両を運転していたのであるから,被告人が行き先を決めることができる立場にあったといえる。
 しかし,本件現場は,幹線道路沿いではなく,土地勘がない人間にはその場所を認識するのが容易ではない場所である。しかも,動かし難い事実のとおり,本件当日,本件現場には,本件現場に駐車した本件車両の運転席及び助手席を正面から撮影できる位置と方向に,ダミーの防犯カメラが設置されていた。被告人は,長野市在住で,群馬県内の本件現場付近に土地勘があったという証拠はなく,被告人が本件現場付近を事前に調べたという証拠もないことからすれば,被告人が本件現場を性交する場所として知って本件現場にAを連れて行ったと認定するには疑問が残る。
 他方,Aは,本件現場から自転車で10分程度の距離に住んでおり,本件スーパーマーケットを待ち合わせの場所にしたり,本件現場まで自転車で行くことができるなど,本件スーパーマーケットや本件現場付近の状況に詳しいことが認められる。
 そうすると,本件現場を案内したのはむしろAであると考えるのが自然で合理的であり,被告人の運転で本件現場に連れて行かれたというAの証言は,不自然・不合理といわざるを得ない。
(4)Aの証言の信用性の評価
 ところで,性犯罪の危機に瀕した被害者に加えられた暴行,脅迫といった衝撃は,被害者から合理的な行動の自由まで奪ってしまうことがある。したがって,性犯罪に直面した被害者の心理等にも十分留意することが必要である。
 しかし,本件では,Aの証言は,本件暴行・脅迫及び本件要求行為の存在そのものについて,B及びCの証言によって裏付けられているとはいえないし,その内容においても,現実に体験しなければ証言が困難であるほど具体的で迫真性のある内容が含まれているとはいえない。また,Aに虚偽の証言をする動機がないとも言い切れない。かえって,Aの証言内容には,性犯罪に直面した被害者の心理等では説明が困難なほどの不自然,不合理な点や他の証拠と一致しない点が多くみられる。したがって,Aの証言は,間違いなく信用できるとまでは評価できない。
4 被告人の供述の信用性の検討
(1)被告人の供述の要旨
 被告人は,公判廷において,〔1〕被告人が本件車両を運転し,Aの案内で本件現場に到着した,〔2〕本件現場に防犯カメラがあることは知っていたが,Aから壊れていると言われた,〔3〕避妊具を着けずに,膣内で射精したが,Aから不平や不満はなかった,〔4〕本件性交後,Aに対して本件要求行為を行ったことはなく,Aは,服を着た後,被告人に対して,10万円を貸して欲しいと言ってきた,〔5〕Aは,被告人の財布の中の三,四万円を受け取ってくれず,Aに対して金がないことを示すため,銀行のキャッシュカードを確認してもらうように言ってAの案内で本件銀行に向かった,〔6〕本件銀行に到着した後,Aがトイレに行くと言って一人で本件車両を降り,そのまま戻ってこなかったなどと,本件暴行・脅迫及び本件要求行為は行っておらず,本件性交は同意に基づいたものであった旨供述する。
(2)被告人の供述の信用性を低める事情の検討
 検察官は,〔1〕被告人の供述内容が,Aの証言と矛盾すること,〔2〕被告人の供述内容が,不自然・不合理であること,〔3〕被告人の弁解内容が合理的な理由なく変わっていることを挙げて,被告人の供述は到底信用できない旨主張する。
 まず,上記〔1〕について,確かに,被告人の供述は,Aの証言と矛盾するものであるが,前述のとおり,Aの証言は間違いなく信用できるものとはいえない。本件では,被告人とAが本件暴行・脅迫及び本件要求行為の有無をめぐって矛盾・対立する供述をしており,このような矛盾・対立の状況が被告人供述の信用性を直ちに否定するものとはいえない。
 次に,上記〔2〕について,被告人の供述内容のうち,初対面のAと合意の上で本件性交をしたという点は,被告人とAがウィチャットにより本件性交の約1か月前から連絡を取り合っていたことからすれば,必ずしも不自然とまではいえない。また,被告人が避妊具を着けずに膣内で射精したが,Aから不平や不満がなかったとする点は,Aも,Aから強姦の被害を聞いたというBもCも,Aの妊娠の可能性について問題にしたり,不安を述べたりする証言をしていないのであるから,不自然であるとはいえない。さらに,被告人とAが本件銀行に行った経緯に関する供述については,被告人がキャッシュカードの暗証番号を教えようとしたという点などやや不自然な点もあるが,本件銀行のATMコーナーの防犯カメラ映像に記録されている,被告人がAを探し回っている様子は,被告人の供述内容と整合する面があり,不自然であると断定することはできない。
 さらに,上記〔3〕について,確かに,被告人は,逮捕翌日にはAと性交したことを否定していたが,公判ではAと性交したことは認めているから,捜査段階と公判段階では供述に変遷がある。しかし,交際相手がいるという被告人が逮捕翌日の段階で他の女性との性交を認めることに抵抗があったことは十分考えられる。また,本件では被告人とAが性交したことは争いがない以上,この供述の変遷が,本件暴行・脅迫及び本件要求行為の存否に関する被告人の供述の信用性を低めるものとはいえない。
(3)被告人の供述の信用性を高める事情の検討
 第1に,既に検討したとおり,被告人が本件車両を運転し,Aの案内で本件現場に到着したという供述は,動かし難い事実による事実関係とも一致する。
 第2に,被告人は,本件性交以前に,Aに対し,ウィチャットで,自己紹介をした上,被告人の顔写真まで送り,被告人の下半身等を拭いたティッシュを本件現場に投げ捨てており、仮に被告人が強制性交等の犯罪を行えば被告人が犯人であると容易に結びついてしまうような痕跡を残している。このような被告人の行動は,暴行・脅迫を用いてまでAと性交する意思がなかったことを示すものであり,本件暴行・脅迫を否定する被告人の供述を裏付けるものといえる。
 第3に,被告人は,本件性交前,本件現場には防犯カメラが設置されているのが見え,そのカメラについて,Aがダミーであると教えてくれた旨供述している。この供述内容は,本件現場の状況という客観的証拠と合致し,かつ,実際に本件現場で性交をした者でなければ供述困難な具体的な内容を含んでいる。 
 第4に,本件銀行のATMコーナーの前のAや被告人の行動は,被告人の供述内容に沿うものである。
 第5に,被告人は,Aと出会ってから別れるまでの間,Aのバッグやその中にある財布,現金,銀行のキャッシュカード,在留カードなどを取ることはなかったことが動かし難い事実として認められる。この事実は,被告人が本件当日Aの金品を奪う意思がなかったことを推認させるものであり,本件要求行為を否定する被告人の供述の信用性を高める事情といえる。
(4)被告人の供述の信用性の評価
 以上を総合すれば,被告人の供述は,不自然さを感じさせる点がないとはいえないものの,動かし難い事実と特に矛盾する点はなく,かえって,動かし難い事実と整合し,また,その供述内容には体験したものでなければ供述できないような具体的な事実関係を含んでいる。したがって,被告人の供述は信用できないとはいえない。
第4 結論
 以上検討したとおり,動かし難い事実のうち,〔1〕初対面で会ってすぐに本件性交をしていること,〔2〕本件性交が,昼間に,本件車両内で行われたものであること,〔3〕本件性交時,被告人は避妊具を着けずに膣内に射精していること,〔4〕Aが本件当日に警察への通報を希望していることの各事実は,被告人とAとの間には本件性交に関する合意はなく,本件暴行・脅迫を用いて本件性交がなされたことを一応推認させるものといえるが,その推認の程度は高くはない。
 そして,本件暴行・脅迫及び本件要求行為に関する中心的な証拠であるAの証言は,間違いなく信用できるものとはいえない一方で,本件暴行・脅迫を行っておらず,本件要求行為もしていないとする被告人の供述は信用できないとはいえない。
 そうすると,本件暴行・脅迫及び本件要求行為があったと認定するには,合理的な疑いが残るといわざるを得ない。
 よって,本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。
(求刑 懲役10年)
(弁護人の意見 無罪)
平成30年5月25日
前橋地方裁判所刑事第2部
裁判長裁判官 國井恒志 裁判官 中野哲美 裁判官 谷山暢宏

水庫一浩 強盗致傷等被告事件の被告人を執行猶予付き懲役刑に処した裁判員裁判の原判決について, その量刑判断は是認できないとして破棄し,被告人を実刑に処した事例(研修820号)

 原判決は懲役3年執行猶予5年保護観察で、検察官控訴の結果、A懲役6年6月,B懲役6年になった。
 最近の量刑理由でも量刑DBとか量刑傾向とかが多用されています。
 奥村の事件でも、同種事案の量刑傾向を示すと、その範囲内に収まっています。

(東京高裁平成28年6月30日判決)
【事案の概要】
本件は,被告人A及び被告人Bの両名が,共謀の上,深夜の路上において
第1 通行中の44歳の男性に対し,背後から体当たりをして転倒させ,左こめかみを拳で殴るなどして金品を強取しようとしたが,抵抗されてその目的を遂げず, その際, 同人に約2週間の加療を要する顔面打撲傷,両膝挫傷等の傷害を負わせ
第2第1の事案と同日,通行中の60歳の男性に対し,後方から肩付近をつかんで後方に引き倒し,預金通帳等在中のシヨルダーバッグ1個(時価合計約2550円相当)を強取し
第3第2の事案の1週間後,通行中の45歳の男性に対し,後方から肩をつかんで後方に引き倒し,仰向けに倒れている同人の顔面を拳で殴り,脇腹付近を足で蹴るなどして,現金約31万円及び財布等在中のビジネスバッグ1個(時価合計約4万4500円相当)を強取しその際同人に全治約5週間を要する左環指中節骨骨折及び右鼻部打撲の傷害を負わせたという強盗致傷2件及び強盗1件の事案である。
【原審における審理経過及び原判決の要旨】
1 原審における審理経
被告人両名は,裁判員裁判で審理された原審において,前記第1な
いし第3の事実をいずれも認めたため,争点は量刑となった。そし
て,検察官は,被告人Aについては懲役9年を,被告人Bについて
は懲役8年をそれぞれ求刑し,被告人Aと被告人Bの各弁護人は,
いずれも執行猶予付きの判決を求めた。
【本判決の要旨】
原判決に対し,検察官が量刑不当を理由に控訴したところ,本判決は,原判決を破棄して,被告人Aを懲役6年6月に,被告人Bを懲役6年にそれぞれ処した上,その理由について,以下のように判示した。
・・・
そこで,本件のような,共犯による連続的な強盗致傷の類型の量刑のおおまかな傾向をみると,その具体的な量刑分布は,量刑検索システムの検索条件をどのように設定するかなどによって多少異なるにせよ,その中心的量刑は懲役4年6月以上8年以下の範囲に収まっており, これがほぼ本件の量刑の大枠に相当するとみることができる。



【参考事項】
裁判員裁判の判決が量刑不当として破棄された判例としては,両親による幼児に対する傷害致死の事案について,被告人両名につき,懲役10年の求刑を超えて懲役15年に処した第1審判決及びこれを是認した第2審判決を量刑不当として破棄した最高裁平成26年7月24日判決・刑集68巻6号925頁があり, 同最高裁判決は,本判決でも引用されている
本判決の判断は, 同最高裁判決の判断に沿ったものであるが,裁判員裁判の判決に対し,検察官が量刑不当のみを理由として控訴した事案は珍しく,実務の参考になると思われる。
また, 同最高裁判決については, 「あくまで量刑傾向を重い方向で踏み出す場合についての判断であり,量刑傾向を軽い方向で踏み出す場合についての判断ではない。」とする見解もあったが(間光洋「最高裁で量刑不当による破棄自判がされた事例」季刊刑事弁護80号73頁),本判決は,同最高裁判決の判断が,量刑傾向を軽い方向で踏み出す場合についても妥当することを明らかにした点でも実務の参考になると思われる。
(法務総合研究所教官水庫一浩)

裁判年月日 平成26年 7月24日 裁判所名 最高裁第一小法廷 裁判区分 判決
事件名 傷害致死被告事件
裁判結果 破棄自判 文献番号 2014WLJPCA07249002
理由
 被告人Aの弁護人高山巌,被告人Bの弁護人木原万樹子,同間光洋の各上告趣意は,いずれも憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であり,被告人A本人の上告趣意は,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 しかしながら,所論に鑑み,職権をもって調査すると,原判決及び第1審判決は,刑訴法411条2号により破棄を免れない。その理由は,以下のとおりである。
第1 事案の概要等
第2 当裁判所の判断
 1 第1審判決の犯情及び一般情状に関する評価について,これらが誤っているとまではいえないとした原判断は正当である。しかしながら,これを前提としても,被告人両名を各懲役15年とした第1審判決の量刑及びこれを維持した原判断は,是認できない。その理由は,以下のとおりである。
 2 我が国の刑法は,一つの構成要件の中に種々の犯罪類型が含まれることを前提に幅広い法定刑を定めている。その上で,裁判においては,行為責任の原則を基礎としつつ,当該犯罪行為にふさわしいと考えられる刑が言い渡されることとなるが,裁判例が集積されることによって,犯罪類型ごとに一定の量刑傾向が示されることとなる。そうした先例の集積それ自体は直ちに法規範性を帯びるものではないが,量刑を決定するに当たって,その目安とされるという意義をもっている。量刑が裁判の判断として是認されるためには,量刑要素が客観的に適切に評価され,結果が公平性を損なわないものであることが求められるが,これまでの量刑傾向を視野に入れて判断がされることは,当該量刑判断のプロセスが適切なものであったことを担保する重要な要素になると考えられるからである。
 この点は,裁判員裁判においても等しく妥当するところである。裁判員制度は,刑事裁判に国民の視点を入れるために導入された。したがって,量刑に関しても,裁判員裁判導入前の先例の集積結果に相応の変容を与えることがあり得ることは当然に想定されていたということができる。その意味では,裁判員裁判において,それが導入される前の量刑傾向を厳密に調査・分析することは求められていないし,ましてや,これに従うことまで求められているわけではない。しかし,裁判員裁判といえども,他の裁判の結果との公平性が保持された適正なものでなければならないことはいうまでもなく,評議に当たっては,これまでのおおまかな量刑の傾向を裁判体の共通認識とした上で,これを出発点として当該事案にふさわしい評議を深めていくことが求められているというべきである。
 3 こうした観点に立って,本件第1審判決をみると,「同種事犯のほか死亡結果について故意が認められる事案等の量刑傾向を参照しつつ,この種事犯におけるあるべき量刑等について議論するなどして評議を尽くした」と判示されており,この表現だけを捉えると,おおまかな量刑の傾向を出発点とした上で評議を進めるという上記要請に沿って量刑が決定されたようにも理解されないわけではない。
 しかし,第1審判決は,引き続いて,検察官の求刑については,本件犯行の背後事情である本件幼児虐待の悪質性と被告人両名の態度の問題性を十分に評価していないとし,量刑検索システムで表示される量刑の傾向については,同システムの登録数が十分でなくその判断の妥当性も検証できないとした上で,本件のような行為責任が重大と考えられる児童虐待事犯に対しては,今まで以上に厳しい罰を科すことが法改正や社会情勢に適合するなどと説示して,検察官の求刑を大幅に超過し,法定刑の上限に近い宣告刑を導いている。これによれば,第1審判決は,これまでの傾向に必ずしも同調せず,そこから踏み出した重い量刑が相当であると考えていることは明らかである。もとより,前記のとおり,これまでの傾向を変容させる意図を持って量刑を行うことも,裁判員裁判の役割として直ちに否定されるものではない。しかし,そうした量刑判断が公平性の観点からも是認できるものであるためには,従来の量刑の傾向を前提とすべきではない事情の存在について,裁判体の判断が具体的,説得的に判示されるべきである。
 4 これを本件についてみると,指摘された社会情勢等の事情を本件の量刑に強く反映させ,これまでの量刑の傾向から踏み出し,公益の代表者である検察官の懲役10年という求刑を大幅に超える懲役15年という量刑をすることについて,具体的,説得的な根拠が示されているとはいい難い。その結果,本件第1審は,甚だしく不当な量刑判断に至ったものというほかない。同時に,法定刑の中において選択の余地のある範囲内に収まっているというのみで合理的な理由なく第1審判決の量刑を是認した原判決は,甚だしく不当であって,これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。
 よって,刑訴法411条2号により原判決及び第1審判決を破棄し,同法413条ただし書により各被告事件について更に判決することとし,第1審判決の認定した罪となるべき事実に法令を適用すると,被告人両名の各行為は,いずれも刑法60条,205条に該当するので,各所定刑期の範囲内で,被告人Aについては,原判決が是認する第1審判決の量刑事情の評価に基づき検討を行って懲役10年に処し,さらに,被告人Bについては,実行行為に及んでいないことを踏まえ,犯罪行為にふさわしい刑を科すという観点から懲役8年に処することとする。そして,同法21条を適用して第1審における未決勾留日数中各400日をそれぞれその刑に算入し,第1審における訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人両名に負担させないこととし,被告人Aに関する原審及び当審における訴訟費用は,同項ただし書を適用して同被告人に負担させないこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官白木勇の補足意見がある。
 裁判官白木勇の補足意見は,次のとおりである。
 1 量刑は裁判体の健全な裁量によって決せられるものであるが,裁判体の直感によって決めればよいのではなく,客観的な合理性を有するものでなければならない。このことは,裁判員裁判であろうとなかろうと変わるところはない。裁判員裁判を担当する裁判官としては,量刑に関する判例や文献等を参考にしながら,量刑評議の在り方について日頃から研究し,考えを深めておく必要があろう。評議に臨んでは,個別の事案に即して判断に必要な事項を裁判員にていねいに説明し,その理解を得て量刑評議を進めていく必要がある。
 2 量刑の先例やその集積である量刑の傾向は,それ自体としては拘束力を持つものではないし,社会情勢や国民意識の変化などに伴って徐々に変わり得るものである。しかし,処罰の公平性は裁判員裁判を含む刑事裁判全般における基本的な要請であり,同種事犯の量刑の傾向を考慮に入れて量刑を判断することの重要性は,裁判員裁判においても何ら異なるものではない。そうでなければ,量刑評議は合理的な指針もないまま直感による意見の交換となってしまうであろう。
 こうして,量刑判断の客観的な合理性を確保するため,裁判官としては,評議において,当該事案の法定刑をベースにした上,参考となるおおまかな量刑の傾向を紹介し,裁判体全員の共通の認識とした上で評議を進めるべきであり,併せて,裁判員に対し,同種事案においてどのような要素を考慮して量刑判断が行われてきたか,あるいは,そうした量刑の傾向がなぜ,どのような意味で出発点となるべきなのかといった事情を適切に説明する必要がある。このようにして,量刑の傾向の意義や内容を十分理解してもらって初めて裁判員と裁判官との実質的な意見交換を実現することが可能になると考えられる。そうした過程を経て,裁判体が量刑の傾向と異なった判断をし,そうした裁判例が蓄積されて量刑の傾向が変わっていくのであれば,それこそ国民の感覚を反映した量刑判断であり,裁判員裁判の健全な運用というべきであろう。私は,かつて,覚せい剤取締法違反等被告事件に関する判決(最一小判平成24年2月13日刑集66巻4号482頁いわゆるチョコレート缶事件判決)の補足意見において,「裁判員裁判においては,ある程度の幅を持った認定,量刑が許容されるべき(である)」と述べたが,それは以上のような適切な評議が行われたことを前提としているのである。
 3 本件では,裁判官と裁判員との量刑評議が必ずしも在るべき姿に沿った形で進められていないのではないかという疑問があり,それが本件第1審の量刑判断につながったのではないかと考えられる。裁判官としては,重要な事柄は十分に説明し,裁判員の正しい理解を得た上で評議を進めるべきであり,そうすることが裁判員と裁判官との実質的な協働につながると思われる。評議を適切に運営することは裁判官の重要な職責であり,裁判員裁判を担当する裁判官は,その点を改めて考えてみる必要があることを指摘しておきたい。
 検察官 藤本治彦 公判出席
 (裁判長裁判官 白木勇 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 横田尤孝 裁判官 山浦善樹) 

司法研修所の未決算入の公式「起訴後の算入可能な未決勾留日数-(30+10×(公判期日の回数-1))」・公判前整理手続がある場合

 未決算入を気にする被告人もいるので、弁論で目安を主張していますが、
 司法研修所ではこう教えているようです。

第68期刑事裁判事前配布資料
処断刑等はどのように決まるか
刑事裁判教官室
9未決勾留日数の算入
刑法21条によって裁判所がその裁量により本刑に算入することができる未決勾留日数は,勾留状執行の日から判決言渡しの前日までの現実に拘禁された日数であり,起訴前の勾留期間も含む。【63】
どのくらい算入するのが適切かという点については,法律上算入可能な日数を全て算入すべきであるとする全部算入説と, 当該事件の捜査・審理に通常必要な期間の勾留は被告人が罪を犯したことに起因するやむを得ないものとして被告人の負担とし,それを超える部分について算入することをもって足りるとする一部算入説とがある。現在の実務の大勢は,一部算入説で運用されている。【68】
公判前整理手続制度が始まる以前には,具体的な算入の目処として,次のような運用(『研修所方式」と呼ばれることがある。)を行っている例が多かった。
①捜査段階の日数は算入しない(捜査に必要な期間であると考える。)。
②起訴後の(算入可能な)未決勾留日数のうち,審理に必要な合理的期間を控除した日数を, 10日単位(すなわち, 10日未満の端数が出た場合,四捨五入又は切り上げ・切り下げにより端数処理を行う。)で算入する。
③控除すべき「審理に必要な合理的期間」とは,
ア起訴日から第1回公判期日まで……30日
イ第1回公判期日以降・…………各期日(判決宣告期日も含む)ごとに10日(当該公判期日の審理を行うための準備(判決宣告期日については,判決作成の準備)のため,上記各日数くらいは通常必要であると考えられるから, これは未決算入の対
象に含めないと考える。)
以上の①~③を整理すると,次の計算式となる:
起訴後の算入可能な未決勾留日数一(30+10× (公判期日の回数-1))
ただし,③のアの期間が30日よりも短かったり,イが10日よりも短かったり場合には,それぞれの現実の日数しか控除しない。
公判前整理手続等を経る事件では公判期日が連続的に行われる傾向にあるし,公判前整理手続自体に一定期間を要するから, このような考え方を直接当てはめるのは相当ではないであろう。
それぞれの裁判体で実務上工夫をしているところであるが, 当該事件の捜査・審理に通常必要な期間の勾留を超える部分について算入をするという基本的な考え方は大方維持されているように思われる。ただし,その「審理に必要な期間」には,審理を実現するための争点及び証拠の整理のために必要な期間も含まれるとして,公判前整理手続のために通常必要な期間を一定のルールにより算出し,控除するという運用の傾向があるものとみられる。

「性暴力被害者の法的支援~性的自己決定権・性的人格権の確立に向けて」における児童ポルノ罪

 児童ポルノ・児童買春罪に過失処罰規定があるような記載ですが、使用関係がある場合のみです。使用関係がある場合無過失で免責になる余地は極めて少ないので、「まもなく 18歳になる女児が, 自ら18歳以上であると主張して,写真撮影等のモデルになりたいと応募してきた場合等に,撮影した者を罪に問うのは酷ではないか等という議論があり,設けられたと言われています。」という場合でも過失ありということで処罰されます。免責されないんだからこんな議論はなかったんじゃないかなあ。
 法文を丸写ししにしておいた方が正確でした。
 判例盛り込もうとしたら、罪数の判例しかないし

児童ポルノ禁止法等(角崎恭子弁護士〕
①児童ボルノ禁止法(児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)児童ポルノ禁止法は, 1999(平成11)年に定められましたが,その各規定は,条文としては読みにくいものが多いため,概略について説明します。
(1) 「児童買舂」の定義等2条1項に定める「児童」とは, 「18歳未満の者」を言い, 同条2項「児童買春」とは, 「児童又はその周旋者・保護者(親権者等) ・児童を支配下に置く者に対し,対価を供与し,又はその約束をして,児童に対し,性交等(性交若しくは性交類似行為,又は,性器を触る, 自己の性器を触らせること)をすること」を言います。
この条文の特徴は, 「児童買春」の定義の中に,狭義の性交だけでなく,その類似行為等が含まれる点です。
4条では, 「児童買春」をした者は, 5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処することが, 5条では, 「児童買春周旋」をした者は, 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金又はこれの併科に処することが定められています。
(2) 「児菫ポルノ製造等」の定義等2条3項に定める「児童ポルノ」とは, 「写真,電磁的記録媒体等であって,次の①から③のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」を言います。
①児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為にかかる児童の姿態
②他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為にかかる児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
③衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部,臂部又は胸部)が露出又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するもの上記の「児童ポルノ」については,所持しているだけで処罰されます。
罰則は7条に規定されており,下記のとおりの処罰規定が設けられています。
①単純所持: l年以下の懲役又は100万円以下の罰金
②提供:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(提供とは,写真又は記録媒体の交付, インターネットを介した送信等を指します。)
③提供目的製造等:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(製造等には,製造(複製保存を含む(最高裁平成18年2月20日決定)) ・所持・運搬・輸入・輸出・電磁的記録の保管が含まれます。)
④非提供目的製造等:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
⑤盗撮による児童ポルノ製造:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
⑥不特定多数への提供等:5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金又は併科(不特定多数への提供とは,児童ポルノを不特定多数の者に提供し,又は,公然と陳列する場合を言い, インターネット上へのアップロードや,児童ポルノを閲覧できるURLの表示も, 「公然陳列」に当たります(最高裁平成24年7月9日決定)。)
⑦不特定多数への提供目的製造等:5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金又は併科
⑧不特定多数への提供目的輸出入:5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金又は併科(3)注意点児童ポルノ禁止法には, 「児童の年齢を知らなかったとしても処罰を免れない(9条)。」という規定がありますが, 「18歳未満であると知らなかったことが無過失の場合はこの限りでない。」という規定も, 同時に設けられています。
この規定は,例えば, まもなく 18歳になる女児が, 自ら18歳以上であると主張して,写真撮影等のモデルになりたいと応募してきた場合等に,撮影した者を罪に問うのは酷ではないか等という議論があり,設けられたと言われています。
ただ,無過失というためには,少なくとも年齢が分かる公的な書類等で,児童の年齢を確認したこと等が要求されると考えられます。
また,第3章の5で解説する児童福祉法違反と児童ポルノ禁止法には,重なり合う部分も多くありますが,両方の法律に違反した場合は,併合罪として重く処罰されます(最高裁平成21年10月21日決定)。
2つの罪が併合罪として処断される場合には,その最も重い刑の長期(刑期の上限)に,その2分の1を加えたものが長期とされますので(刑法47条本文),法定刑の上限があがることになります。

[001/002] 145 - 衆 - 法務委員会 - 12号
平成11年05月14日
○笹川委員 今の発議者の答弁の中で、マフィアその他がわかりにくいというお話があったので、私は、そういうことが起こり得るんですということを申し上げただけの話であります。
 例えば、「過失がないときは、この限りでない。」九条にありますね。いかなることがあっても処罰を免れないんだけれども、過失がないときというのをお尋ねしようと思ったんだけれども、時間の関係でなるたけ早くやめたいと思ったから。では、IDカードを見せなさい、ドライバーライセンスを見せなさいと言って年齢が確認できたらいいですよ。こんなことをしてはいけないんだけれども、仮にそうしたときに、できないでしょうから、幾つと聞いたときに、いや、十八と言った、だからおれは「この限りでない。」に入ると思うけれども、相手は、そんなこと言わなかった、私は正真正銘十四歳でしたと言われたときに、私は、申し上げたようなことがアメリカでもあったし、日本でも起こり得ますと。
 だから、国外犯の処罰というのはやはり難しい面がありますよということは、皆さんの勉強会の中でそういう話が出ましたかということをお聞きしただけであります。
○林(芳)参議院議員 お答えを申し上げます。
 私も先生がおっしゃることは、男性でございますのでというわけでもありませんが、よくわかるつもりでございまして、その意味で、この九条を置いておりまして、児童を使用する者以外は、この反対解釈として、過失の場合は認められないということ、除かれるということに一応して、これは国外犯にも適用がございますので、御懸念のところは、その辺のラインで、あとは運用のところできちっとやってもらわなければいけないというふうに考えておるところでございます。
○福岡委員 そうしますと、今その判例に従うということですから、実際的には、法的な意味で従属制があるとか親権に服するとかということよりもっと広い概念だということですね。事実上支配をしているというような関係に立つ者がそういうことをしたということですね。わかりました。
 それで、次にそれに関連しまして、第九条の規定全体を見てみますと、私は、本来、第五条ないし八条の罪というものは故意犯だと思うんですよ。故意犯を前提として、その年齢を知らなかった、十八歳未満であるということを知らなかったということに過失がある場合は処罰をするという、いわゆる過失犯を設定した規定だというふうに全体として認識するわけですけれども、それで間違いないでしょうか。
○林(芳)参議院議員 お答え申し上げます。
 結論から申し上げますと、委員の御指摘のとおりでございますが、五条から八条までに規定する犯罪は故意犯でありますから、児童である、この場合は十八歳未満でございますが、その認識がなければ処罰ができないというのがこの原則でございますけれども、児童を使用する者については年齢に関する調査確認義務があるというふうに考えられますので、このような者については、児童の年齢を知らないということを理由にしてのみ処罰を免れさせるのは妥当でないという判断をいたしまして、これらの者については、認識がないことについて過失があれば処罰するということにいたしたところでございます。
○福岡委員 そうしますと、この規定の仕方を見ると、何か、裁かれる被告人側の者が過失がないことについて立証責任を負うというようにも読めるんですよ。要するに、原則として、知らないことは処罰される、ただし、知らないことについて過失がない場合には免れるというような感じになりますから。ところが、実際は刑事訴訟法の大原則は、すべて構成要件的なもの、過失もいわゆる構成要件ですから、それについては検察側の立証の義務があるということははっきりした事実ですね。したがって、その点をやはり変更しているというわけじゃないでしょうか。そこのところだけ明確にしていただきたいんです。
○林(芳)参議院議員 お答え申し上げます。
 これも委員のおっしゃるとおりでございまして、このような規定には児童福祉法六十条三項というのもございますが、本条はこれに倣ったものでございます。これは解釈上、学説等いろいろあるようでございますが、我々といたしましては、憲法の三十一条に規定されております検察官の立証ということの原則にのっとりまして、検察官が過失を立証すべきであるというふうに考えております。



○佐々木(秀)委員 つまり、私がお尋ねをしたような事柄については、別の法律ないしは別の措置によって保護の措置を考えるべきである、こういうお考えだということでよろしいですね。
 それから、私が予定した質問は大分先ほど同僚委員からの御質問があり、それと重複している部分もありますので、もうお答えいただいたところについては割愛をさせていただきたいと思いますが、ただ、先ほども年齢についてのお話がありました。例えば、本法では児童については十八歳未満にしているわけですけれども、しかし、先ほども御指摘がありましたけれども、もう十五歳、十六歳などというと、例えば身体的には大人と変わりない、大人よりも立派な体をしている女性もたくさんいるわけです。諸外国の例で言うと、ドイツでは十四歳、フランスでは十五歳、ベルギーでは十六歳となっていると聞いております。それからまた、先ほども御指摘がありましたけれども、我が国では女性の婚姻適齢が十六歳になっているなどということもある。
 それで、これは先ほど福岡委員からも御指摘があったところですけれども、いわゆる第九条の、児童の年齢についての情を知っているかどうかということについてです。児童を使用する者が、児童の年齢を知らないことを理由にして、第五条から第八条までの規定による処罰を免れることはできない、ただし、過失がないときはこの限りではない、こうなっているわけです。今のような子供たちの身体の発育状況などからいうと、これは情を知るという、九条関係でいうと、使う場合に、一々戸籍抄本あるいは戸籍謄本などを出せというところまでは、恐らくどんな企業でも余りやってないんだろうと思うんです。まともな企業でもですよ。
 そうすると、そうでなくて、特に風俗だとか何かで使うような場合に、それを聞かない、それで本人の年齢を聞いて、本人の年齢についての偽りの申告、それを受けたという場合に、それをさらに突っ込んで確かめないままにというようなことが過失に当たるのかどうか、これは先ほどの御指摘にもあったけれども、なかなか難しいんじゃないかと思うんですね。
 それと、その外国の事例での年齢の問題などと比べると、これは経過の中でもいろいろ私どもも議論に参加したところだったんですが、十八歳という年齢はちょっと高過ぎるんじゃないかという意見がかなりあったんです。しかし、これで、十八歳で決めたということについて、簡単で結構ですから、そこを決断されたという事情について
○円参議院議員 先ほど福岡委員にもお答えしたんですけれども、一定の年齢に満たない者に対し特別の保護を与えることを定めた児童の権利に関する条約というものがございます。その対象となる児童は十八歳に満たない者とすることをこの条約では原則としておりまして、また我が国におきましては、児童が健やかに成長するように各般の制度を整備するとともに、児童に淫行させる行為等、児童買春に関連する行為をも処罰の対象とする法律に児童福祉法がございますが、同法の対象となる児童も十八歳に満たない者でございます。そして、これは女性の婚姻による例外を認めておりません。これらの条約や法律の目的とこの法律の目的から考えて、対象とするものの範囲も同一にすべきものと私どもは考えまして、十八歳未満の者をこの法律による児童としたわけでございます。先生がおっしゃるような議論はさまざまございましたけれども、そういうわけでございます。
○佐々木(秀)委員 一応そのように伺っておきます。
 それから、先ほど来他の委員からも御指摘がありましたように、これが刑法との関係で、特に児童に対する性的な犯罪、処罰も重くなっているというようなこと、あるいは犯罪類型としても構成要件的にぴたっといくのかどうかなというようなことから、これが濫用されるおそれはないんだろうかというようなことがありますね。
 例えば、児童ポルノの販売目的の所持だとか製造だとか運搬、これが禁止をされ、違反をすると処罰をされるということになるわけですが、そういうことが、例えば憲法二十一条二項の検閲の禁止に触れないか。つまり、原稿の作成だとか印刷段階だとかあるいは映画だとかビデオの撮影段階がこの販売目的の所持、製造、運搬禁止ということに触れないとは限らないのではないか。そうすると、今言ったような後者の段階でも強制捜査の機会が生じるのではないかというようなおそれが指摘をされたりするわけですね。そういうことから、第三条では「国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」こう書いてあるわけですね。
 そこで、これはむしろ法務省にお聞きをした方がいいのかと思いますけれども、私が今挙げたような例のほかに、ここで心配されている国民の権利の不当な侵害のおそれというのはどんなような事例が考えられるのか、そして、それに対する歯どめとして、この法律で賄えるのかどうか。先ほど、第九条関係では、過失の立証責任は捜査官の方にあるだろう、検察側にあるだろうというお話もあったんだけれども、私が述べたようなことからして、果たして立証可能なのかどうか、そんなことも含めて刑事局長にお尋ねをしたいと思います。
○松尾政府委員 まず、憲法の問題といいますか、重要な問題である検閲になるのかどうかという、ここのところからお答えしたいと思います。
 最高裁判例で、昭和五十九年十二月十二日に、検閲についての判例がございます。その判決での文言でございますが、検閲というのは何かということでございます。これは「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指す」、これが検閲だ、こう判示しているわけでございます。
 この法案の第七条では、確かに頒布等の目的で児童ポルノの製造、所持、運搬等をした者について処罰するという規定になっております。これは「対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査」するというものでないことは、この法案の文言からも明らかでございます。判決に言う検閲の概念には該当しないということがまず言えるかと思います。
 それから二番目に、この法案が成立した際の運用等で、例えばその濫用のおそれとか、あるいは概念の混同等が生じて混乱することがないのかという御趣旨かと思いますが、例えば、本法案では、既存の刑法あるいは児童福祉法その他の用いている文言と同じ文言がございます。同じ文言は、当然のことでございますが、従来の解釈あるいは判例によってその内容が逐次明らかにされてきている部分につきましては、その判例の流れといいますかそういうことが実務に定着しておりますので、その趣旨を体して、あるいはその趣旨を尊重しながら運用するということに当然なろうかと思います。
 ただ、この法案では、若干のところにつきまして従来よりも処罰範囲を広げたことがございます。この法文上の文言あるいはその趣旨につきましては発議者の方から何回かにわたっていろいろな観点からの御説明がございました。我々捜査当局といたしましては、国会におけるそうした法文についての御論議、あるいは参議院も通じてでございますが、委員会でいろいろ交わされましたことについて、その趣旨にのっとりまして慎重に適用してまいりたいと思っているところでございます。
○吉川(春)参議院議員 お答えいたします。
 これは故意犯ですので、やはり年齢が十八歳未満であるということの認識も必要といたします。
 同時に、ただ、五条から八条については、児童を使用する者については、児童の年齢に関する調査確認の義務があると考えられますので、これらの者が五条から八条までに規定する行為をした場合については、十八歳未満の者であるとの認識がなくても、認識がないことについて過失があれば処罰する、こういう法律の組み立てになっておりまして、したがって、原則として年齢について知らなくてはならない、これがこの法律の原則です。
○木島委員 そう読まざるを得ないのですね、これは。これは検察・法務といえども、この条文を読んだらそう読まざるを得ない、故意犯ですからね。しかし、そうなると、ほとんど脱法で捕まえることができなくなるのじゃないかという私の心配なんですね。まあ、そう聞いておきます。
 ではその次に、それではこの法律の組み立て方で、第四条の児童買春罪、これだけは、児童を使用する者は年齢を知らないことを理由として罪を免れることができないという、要するに、年齢の不知は許さずという立場から除外したのですね。何で第四条だけを除外してしまったのでしょうか。
○吉川(春)参議院議員 第四条を除外したというより、第四条が原則なんですね。
 それで、第五条から八条については、児童を使用する者ということになっておりまして、児童を使用するという者は、雇用関係にあるだけではなくて、もう少し広く解釈いたしますけれども、こういう性的な犠牲にならないように、児童に対して注意義務を持たなくてはならない、こういうような人について特に厳しく処罰することにしたということでありまして、原則は第四条です。
 そして、今は非常に子供たちの成長も早いから、十五、六歳なのか十九歳なのかという認識がなかなかつきにくいというのはお説のとおりでございますけれども、同時に、こういう場合には、例えば未必の故意が認められる場合もあるでありましょうし、しかし、年齢のことについて認識が不可能という場合にはやはり処罰をしない。これが立法政策といいますか、私たちはそういうことを選択をいたしました。
 今後、この法律が初めて日本で施行されることになるわけでございまして、これによって大半の処罰が免れるような実態になるというようなことがあれば、またその次の段階として考えなくてはならないと思いますけれども、私たちは、あくまで年齢の認識が必要だということを基本に置いて故意犯として組み立ててきた、こういうことです。
○木島委員 確かに、この法体系は第四条が基本、児童買春については基本条文なんですね。第四条は児童買春罪です。
 第五条は周旋です。それから、二項は業とした者です。第六条も周旋です。そして、二項は勧誘を業とした者ですから、確かに、使用するということを想定される場合が非常に高いことは事実です。ですから、そういう場合は、知らないことは許さないというのは非常にいいと思うのですね。七条以降もそうですが。だからといって、四条の児童買春罪の基本法について、私は、知らないことを許すというのは理屈が通らないと思うのですね。
 というのは、最近、高校生のアルバイトもふえているのですよ。高校生、どんどんアルバイトに入るわけです。そうすると、使用関係に入っていく高校生は非常に多いのですよ。そういう、たまたまある会社なり業にアルバイトとして入った高校生、高校生は大体十八歳未満ですからね。そうすると、使用関係が生まれるその使用者なり支店長が、地位を利用しなくたっていいですね、お金を渡して性行為に入ったら四条が適用なんですが、その支店長なり使用人が、その子の年齢、おれは知らぬ、十八歳以上だと思ったという弁解を許さなくたっていいんじゃないかな。想定できる。
 四条の場合でも、使用関係に入った女の子が被害者になることは大いに今の日本の社会状況の中で想定されるから、四条は外さなくてもいいんではないかなと思うので、要するに重くするという意味ですよ。年齢の不知は許さないという基本のところでいいんじゃないかなと思うのですが、これ、私、頑張り過ぎますと修正問題になってしまうので、この辺でやめますが、何か御答弁あったら……。
○大森参議院議員 被害者の年齢等が規定されている条文というのはほかにもございます。そのときにその年齢だと思わなかったという否認の弁解というのはよく出てくることでありまして、これをとめることはできません。その場合に、どういう立証ができるかということであると思います。
 それで、やはり原則は故意犯でありまして、児童を使用する者については、別の過失推定のような規定を置いたわけです。これは児童福祉法の規定と同じような内容と理解しておりますけれども、使用する者と言い得るためには、児童の年齢確認義務を課すことが相当と認められる関係のある者、その確認義務を尽くさなかったために児童の年齢を知らなくとも処罰されるのもやむを得ないと見られる者という、この基準から判断されるとしておりますけれども、例えば児童福祉法でも、こういう場合には児童保護のために、特に原則故意犯の一部例外的なものを認めたわけでありまして、これを広く広げるべきではないと思います。
 今回の、どこにこの使用する者の部分を当てはめるかにつきまして、買春者というのは、通常一回性の行為というものが予定されますので、ここからは除外いたしました。確かに、年齢が十八歳未満、十七歳ぐらいになると、故意の内容というものが、十七歳だから、例えば二十歳と思ったと見る場合もあると思います。要するに、その弁解が信用できるかどうかということで、あくまで立証の問題だと思います。

○木島委員 もう論争をこれで私は打ち切りますが、一つだけ披露したいのがあるのです。神奈川県青少年保護育成条例であります。
 この条例は、第十九条で、みだらな性行為、わいせつな性行為の禁止規定があります。「何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」「「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、」本件で言う性交のようなものです。「同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為」。わいせつな行為でしょうね。
 これが処罰されるのですが、神奈川県条例の大変ユニークな、画期的な条文は、第三十七条七項で、この十九条一項もしくは二項、今言った青少年に対するみだらな性行為罪、わいせつ行為罪を、その「行為をした者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、前各項の規定による処罰を免れることができない。 ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。」といって、使用関係がなくても、神奈川県条例の場合は年齢の不知は許さない、そういう弁解を許さないという条文を置いているので、これは神奈川県、なかなか大したものだなというふうに思っておりますので、ひとつ三年後の見直しのときにはこんな条文もこの法に盛り込めればいいなと私は思います。
 では、一点だけ聞きましょうか。この条例と本法との整合性の問題について御答弁願いたい。
○吉川(春)参議院議員 神奈川県条例の三十七条七項は、確かに本法の四条についても年齢の不知は許さない、こういう立場をとったと思います。今度この法案ができましても、確かにこの部分はまだ処罰として条例としては残るわけです。それは県の条例ですので、県の御判断によって、この法律との整合性のために条例の改正という手続をおとりになるのかあるいはそのまま残されるのかは県の判断だと思いますけれども、私は、立法政策として一つの方法であるということは認めたいと思います。
 同時に、先ほど来、木島議員の御意見ですけれども、児童の虐待、そういうことを許さないという強い意思を示すためということであれば、例えばポルノグラフィーの所持そのものを処罰した方がいいんじゃないかとか、そういうのもあったのですけれども、それも自社さ案からは削ったという議論がありましたけれども、ともかくこの法案をスタートしてみて、そして不都合があれば見直すということで、第一歩という形でそういう立場をとったということを御理解いただきたいと思います。
○吉川(春)参議院議員 ですから、この法律と重なる部分は効力を失うけれども、それからはみ出す部分については当然残るのであって、それをどうするかについては各地方公共団体の御判断である、この立場でございます。
・・・・・・・
[002/002] 145 - 参 - 法務委員会 - 8号
平成11年04月27日
高野博師君 第九条は、「児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。」。この条文を置いた趣旨は何でしょうか。
○委員以外の議員(林芳正君) お答え申し上げます。
 九条は、先生の御指摘のとおり知情のことを書いておりますが、この法案の第五条から第八条までに規定する各種の犯罪はいずれも故意犯でございます。ですから、児童であるという認識、すなわち定義のように十八歳未満の者であるという認識がなければ処罰ができない、これが故意犯の原則でございます。
 しかしながら、児童を使用する者については児童の年齢に関する調査や確認義務があるというふうに考えられまして、このような者について児童の年齢を知らないことのみを理由に処罰を免れさせる旨は妥当ではないという判断をいたしまして、これらの者については、当該児童が十八歳未満の者であることの認識がない場合においてもその認識がないことについて過失があれば処罰をするということを規定したものでございます。
高野博師君 それでは最後に、第九条の「児童を使用する者」とはどういうことか。児童福祉法第六十条にも同様の規定がありますが、そこで言う「児童を使用する者」と同じ内容と考えていいのでしょうか。
○委員以外の議員(林芳正君) まさに先生御指摘のとおり同様の定義だということでございますが、今先生がおっしゃられたように、「児童を使用する者」については、児童福祉法第六十条の第三項に同様の規定がありまして、これに倣ったのがこの法案のこの言葉でございます。
 児童福祉法の同規定におきます「児童を使用する者」の意義については、判例上、児童と雇用契約関係にある者に限らず、児童との身分的もしくは組織的関連において児童の行為を利用し得る地位にある者、またあるいは特にその年齢の確認を義務づけることが社会通念上相当と認められる程度の密接な結びつきを当該児童との間に有する者などという判例になっております。こういうことでございまして、本案における「児童を使用する者」の意義は、先生御指摘のとおりこれと同じものでございます。

オウム事件の裁判記録 無期限保存へ 今後の調査研究のため

 刑事確定訴訟記録法9条の刑事参考記録として保管されるようです。
 

刑事確定訴訟記録法
第九条(刑事参考記録の保存及び閲覧)
1 法務大臣は、保管記録又は再審保存記録について、刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料するときは、その保管期間又は保存期間の満了後、これを刑事参考記録として保存するものとする。
2法務大臣は、学術研究のため必要があると認める場合その他法務省令で定める場合には、申出により、刑事参考記録を閲覧させることができる。この場合においては、第四条第四項及び第六条の規定を準用する。
3刑事参考記録について再審の手続のため保存の必要があると認められる場合におけるその保存及び閲覧については、再審保存記録の保存及び閲覧の例による。
4法務大臣は、法務省令で定めるところにより、第一項又は第二項の規定に基づく権限を所部の職員に委任することができる。


刑事確定訴訟記録法施行規則
第十四条 法第九条第二項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 民事上又は行政上の争訟に関して刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合
二 刑事上の手続に関して刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合
三 その他特に刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合
(権限の委任)
第十五条 法第九条第四項の規定に基づき、刑事参考記録の保存及び閲覧に関する法務大臣の権限(刑事参考記録として保存する旨の決定に関する権限を除く。)は、刑事参考記録に係る被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の長(区検察庁にあつては、その所在地を管轄する地方裁判所に対応する検察庁の検事正。以下同じ。)に委任する。
(刑事参考記録の閲覧の申出等)
第十六条 法第九条第二項の刑事参考記録の閲覧の申出をしようとする者は、刑事参考記録閲覧申出書(様式第六号)を前条に規定する検察庁の長に提出しなければならない。
2 第十二条の規定は、刑事参考記録の閲覧について準用する。この場合において、同条中「保管検察官」とあるのは、「検察庁の長」と読み替えるものとする。

注釈 刑事確定訴訟記録法 押切謙徳 外著 
解釈
第一項
本項は、刑事参考記録としての保存の要件について定めるものである。
刑事参考記録は、刑事法制及びその運用に関する調査研究の重要な参考資料並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料としての件質を有する記録であるがハ注一二〉、ここにいう「刑事法制」とは、刑事に関する法律制度の意であって、手続法に関するもののみならず、実体法に関するものも含む概念である。
刑事参考記録の保存の円的は、法務省の所掌事務である司法制度に関する法令案の作成(法務省設置法第三条第四号)、内外の法令並びに司法制度及び法務に関する資料の調査、収集、整備及び編纂(同条第五号)、犯罪捜査の科学的研究(同条第二二号)、刑事に関する法令案の作成、犯罪の予防(同条第一五号)、犯罪者及びその改善更生に関する科学的研究(同条第二四号〉、刑事政策に関する総合的な調査研究(同条第三五号)等に資することに「犯罪に関する調査研究の重要な参考資料」としての刑事参考記録の範囲は、その目的から、自ずから限あり、定されることとなろう。
刑事参考記録は、刑事法制等の重要な参考資料となるものであるので、通常の場合は、記録の全部についてこれを保存することとなろうが一部についてのみ、例えば判決書だけを刑事参考記録として保存することもあり得るところである。
刑事参考記録としての保存期間については本法の定めるところではないが、その性質上半永久的に保存されることとなるものが多かろうと思われる。

第二項
本項は、刑事参考記録の閲覧に関する規定である。
法務大臣は、学術研究のため必要があると認める場合及び法務省令で定める場合には、閲賢しようとする者の申出により、刑事参考記録を閲覧させることができることとされている。
本条に基づき、刑事確定訴訟記録法施行規則第一四条は、民事上又は行政上の争訟に関して刑事参考記録を閲監する必要があると認める場合を列挙している
刑事上の手続に関して刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合
その他特に刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合
刑事参考記録を閲覧させる場合については、謄本閲覧に関する第四条第四項の規定と閲覧者の義務に関する第六条の規定が準用される。第七条の規定の準用はなく、閲覧手数料の納付を要しない。
刑事参考記録の問覧の申出に対する法務大臣の措置に対しては、本法による不服申立てはできない(第八条参照)。また刑事参考記録の閲覧は権利又は法律上保護された利益として認められているわけではないので、行政不服審査法による不服申立て行政事件訴訟法による不服申立てもできない(注四

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180803/k10011561951000.html
オウム事件の裁判記録 無期限保存へ 今後の調査研究のため
2018年8月3日 13時50分

先月オウム真理教の一連の事件で13人の死刑囚全員に死刑を執行したことに関連し、法務省は、通常は一定期間過ぎると廃棄する刑事裁判の記録を、オウム真理教が関わった事件の記録などについては、今後の調査や研究のため、期限を定めず保存することを決めました。

法務省によりますと、刑事裁判の記録は、判決の内容によって確定後3年から50年、判決文は最長で100年間、検察庁で保管すると定められていて、一定期間過ぎると廃棄してしまいます。

こうした中、法務省は、オウム真理教が関わった事件の刑事裁判の記録については、今後の調査や研究のため、期限を定めずに「刑事参考記録」として保存することを決めました。

また、先月オウム真理教の一連の事件で13人の死刑囚全員に死刑を執行したことに関連し、死刑執行に関する行政文書についても無期限で保存することを決めました。

迷惑防止条例と国法の罪の関係~群馬県公衆に迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例解説s38

 古本屋にて
 国法と重ならないように解釈するようです。

s38群馬県公衆に迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例解説
第2条例の性格
この条例は、地方自治法第2条に定める地方公共団体の固有事務である住民および滞在者の安全を保持すること(同条第3項第1号) 、風俗のじゅん化に関する事項(同条第3項第7号)および犯罪の防止に関すること(同条第3項第8号)を執行するために制定されたものであって、その行政目的を実現するため、各条において住民一般に一定の義務を課し、その義務違反者に対しては、一定の刑罰を科することによって実効性を確保している。すなわち、この条例は、単なる刑罰法令ではなく、また国の委任事務を執行するための条例でもなくて、地方公共団体が固有する立法権に基づいて制定した固有の行政事務条例である。
次に、この条例は、その制定の目的趣旨において述べたように、現行法令の不備を補完するものとして立案されたものであるため、必然的に既存法令と密接な関連を有する。たとえば、粗暴行為、不当な金品の要求行為等については、刑法や軽犯罪法を主に適用し、景品買行為については、風俗営業等取締法、同施行条例、たばこ専売法、道路交通法等を適用していたものである。
その他この条例の各条項と関連を有するものとしては、刑法のわいせつ罪、暴行罪、脅迫罪、強要罪、詐欺罪、恐喝罪、器物毅棄罪等があるほか、売春防止法、船舶安全法等の特別法があるが、この条例は、そのいずれの条項をみても、既存法令の先占にふれるところはない。しかしこの条例は、既存法令の不備を補完するものであるため、既存法令とは、観念的競合、法条競合、牽連犯、併合罪等複雑な罪数関係を生じているのであるが、その詳細については後記の逐条の説明のとおりである。
・・・・
2捜査についての基本的な心構え
捜査手続きの具体的な要領については、後記第6によるが、この条例違反の捜査にあたっては、刑事訴訟法、犯罪捜査規範等の一般的原則にのっとって実施することはもちろんであるが、事犯の性質上、特に次の事項について留意する必要がある。
(1) 第1点は、関係法令との関連性を明確に認識しなければならないということである。
すなわち、この条例が、現行法令の不備欠陥を補なうために制定されたものであるため、規制の対象となっているものの多くは、前にもあげたとおり、刑法、軽犯罪法のほか、道路交通法物価統制令鉄道営業法風俗営業等取締法、同施行条例、船舶安全法等に規定する罪と、行為の形態、構成要件、保護法益等の点で密接な関連性をもっている。
そこで、この条例の特質をは握するためにも、また個々の罪の構成要件を理解するためにも、常にこれらの関係法令と比較対照して、関連性を明らかにし、いかなる程度に達し、いかなる要件を充足した場合に、刑法犯またはその他の特別法令の罪を構成するかについてよく検討し、その適用に誤りのないようにすること。
このことは、要するに、この条例は既存の法令とはその目的、趣旨において、あるいは手段方法において、または行為の主体や客体において重複をさけ、その先占を侵すことのないようにされているが、そのため、一行為数罪の関係を生じ、または手段もしくは結果たる関係を生じて、刑法第54条の適用をみるほか、あるいは法条競合となり、もしくは部分規定と包括規定としての包括一罪の関係を生ずる等、複雑な罪数関係を生じているものであり、したがって、捜査にあたっても単純一罪か否かによって、立証すべき内容を異にし、また実質的数罪の場合において、告訴、告発等の特別な訴訟条件をもつ犯罪の有無により、立件の方法を異にする等、罪数問題は現実の捜査活動に重要な関係をもつものである。
・・・
第6 捜査書類作成上の留意事項
1 一般的留意事項
(1) この条例は、現行法令の不備または欠陥を補うために制定されたものであるため、その規制の対象となっている行為のほとんどは刑法、軽犯罪法物価統制令または鉄道営業法等の既存法令と競合する場合が多い。
したがって、このような場合には、この条例のほか競合する法令の構成要件を充足するような捜査を行なって送致するよう配意すること。

わいせつな行為=客観的に「自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる性的意味を有する」行為 松宮刑法各論講義第5版

「この点、客観的に相手方の性的差恥心を害する行為を要求する見解は、差恥心を感じない幼児等に対する本罪の成立を説明できないし、反対に、医学的に適切な処置であっても説明不足のために患者が性的差恥心を害された場合には、本罪ないし準強制わいせつ罪(178条)が成立することになりかねない。」ということで羞恥心説はだめ。
 現像不要なデジカメ等の普及で、低年齢に対する行為の客観証拠が出て来るようになって、乳幼児へのわいせつ行為の説明が求められるようになってきた。
 0歳4ヶ月に性的自由があるというには「性的自由」の説明も欲しいところだ。「性的自由を害されました」という供述は取れないからな

3「わいせつな行為」の意味-本罪は「傾向犯」か?
 本罪については、それは「傾向犯」か否か、 という問題がある。
「傾向犯」とは、行為者のもつ一定の主観的な傾向ないし性向が構成要件要素に付着しているか、あるいは、客観的要素とともにその意味を決定しているものをいう。
「わいせつな行為」の場合は、その行為は行為者のわいせつな傾向ないし性向の表現であることを要するのである。
というのも、 「わいせつ」 とは、一般に、 「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう」からである(175条に関して、最判昭和26・5・10刑集5-6-1026)。
この場合に、 「徒に性欲を興奮または刺激」されるのは、行為者、被害者またはその他の関係者一共犯者を含む-である。
つまり、 「わいせつな行為」は、その定義上、その行為が自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行われることを要することになる(最判昭和45・1・29刑集24-1-1頁、百選ⅡNo. 15は、これを「犯人の性欲」に限定していた)。
それゆえ、 「婦女を脅迫し裸にして撮影する行為であっても、 これが專らその婦女に報復し、 または、 これを侮辱し、虐待する目的に出たときは、強要罪その他の罪を構成するのは格別、強制わいせつの罪は成立しない」とされている。
しかし、その後最高裁は、 もっぱら金銭を得る目的で7歳の女児に男性器を触らせ口にくわえさせる等の行為をさせ、 これを撮影してその画像データを送信したという事案に関し、犯人の性欲を満足させるという性的意図を一律に要求することはできないと判示した(最大判平成29・11・29刑集71-9-467)。
 学説は、一般に、本罪にこのような特殊な主観的要素を要求することに批判的である(団藤・各論491頁、平野・概説180頁、大谷・各論lll頁以下、中森・各論58頁、西田・各論100頁、林・各論90頁、山口・各論108頁等)。
被害者の性的自由を侵害する点を主眼として考える以上、行為者の側の特殊な主観的要素を本罪の構成要件に含ませることは相当でないというのである(団藤・各論491頁注(三)参照。その結果として、客観的に相手方の性的差恥心を害する行為であれば足りるとする見解が多い)。
また、下級審でも、性欲を興奮または刺激せしめるという、 この性的「意図」を、 「自らを男性として制的に刺激、興奮させる性的意味を有した行為であること」の「認識」に還元したものがある(東京地判昭和62・9・16判時1294-143.その事案は、若い女性の弱みを掴んで下着ショップで働かせようとの目的で全裸を撮影しようとして未遂に終わったというものである)。
問題は、 自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという行為の客観的属性が一義的に明らかでない行為にある。
たとえば、一見すると親権者の懲戒行為のように思われたが、実際には、その親権者はサデイステイックな性的意図で未成年者に暴行を加えており、 したがってそれは、主としてあるいは同時に、 「自己の性欲を刺激興奮させまたは満足させる意図」のもとに行われていたという場合である。
本罪を「傾向犯」とする見解は、まさにこのような場合に犯罪の成否を分けるのは、行為者の性欲満足という意図でしかないと考えたのである。前掲最大判平成29・ll.29も、 このような場合に行為者の目的等を考慮する必要性を否定していない。
この点、客観的に相手方の性的差恥心を害する行為を要求する見解は、差恥心を感じない幼児等に対する本罪の成立を説明できないし、反対に、医学的に適切な処置であっても説明不足のために患者が性的差恥心を害された場合には、本罪ないし準強制わいせつ罪(178条)が成立することになりかねない。
なお、 7歳の幼児に対する本罪の成立を認めたものとして、新潟地判昭和63.8.26判時1299-152、患者が差恥を感じても臨床検査技師である被告人にわいせつ目的が認定されないとして178条の罪を否定したものに、京都地判平成18・12・18公刊物未登載がある)。
しかし、 「自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる性的意味を有していた」ことが一義的に明らかであるような行為であれば、行為者の動機のいかんに関わらず、その行為は被害者の性的自由を害する客観的意味を持つであろうし、逆に、そのような意味を有する行為であることがほとんど明らかにならないのであれば、行為者の「意図」のみを理由に本罪の成立を認めるのは「客観主義」 「行為主義」に反するであろう。
その意味で、「わいせつな行為」とは、 まず、客観的に「自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる性的意味を有する」行為であることが必要である。
ゆえに、二義的な行為の場合でも、行為の具体的な脈絡から客観的にこの意味が判明しない場合には、 「わいせつな行為」に当たらないと解するべきであろう。
その結果として、行為が「自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる」意図という特殊な主観的要素は不要であると同時に、客観的にみて行為がそのような性的意味を有することは本罪の構成要件要素として、その認識は、本罪の故意そのものの内容として、必要であることになる。

強制性交強盗罪の裁判例(大分地裁h30.3.9)

 
 改正前の罪名だと、強姦+強盗致傷ですが、241条1項ということになって、傷害を含む場合もこれだけのようです

大谷刑法各論第5版 
(1) 強盗・強制性交等罪
本罪は,犯罪学上,強盗犯人が強盗の機会に強制性交等の行為に及ぶ場合が多いこと, また,強制性交等の機会に強盗行為に及ぶことが多い犯罪の実態を踏まえ, そのような行為の抑止と犯罪の重大性・悪質性に即した処罰の適正を図るため,強盗罪と強制性交等を結合させて独立の構成要件を設け,重い刑を科すこととしたものである。
(ア)行為本罪が成立するためには,強盗罪(もしくはその未遂罪)および強制性交等罪(もしくはその未遂罪)が,同一の機会に行われることが必要である。同一の機会に当たるか否かは,時間的・場所的な近接の程度と強盗または強制性交等の暴行・脅迫による反抗抑圧状態の継続性を基準に判断すべきである。

なお,本条は,強盗・強制性交等致傷の場合については規定していない。
強盗・強制性交等罪の法定刑は「無期又は7年以上の懲役」であるところから,致傷の結果は同罪に織り込まれているという趣旨で,敢えて条文に入れなかったものと考えられる。

改正前
第二四一条(強盗強姦及び同致死)
 強盗が女子を強姦したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。よって女子を死亡させたときは、死刑又は無期懲役に処する。

改正後
(強盗・強制性交等及び同致死)
第二百四十一条 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第百七十九条第二項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。
2 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
3 第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。

大分地裁平成30年 3月 9日 
事件名 強盗・強制性交等,邸宅侵入,公然わいせつ被告事件
文献番号 2018WLJPCA03096005
 上記の者に対する強盗・強制性交等,邸宅侵入,公然わいせつ被告事件について,当裁判所は,裁判員の参加する合議体により,検察官志水崇通,同小林佐和子,主任弁護人靍野嘉厚及び弁護人内田精治各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
 被告人を懲役12年に処する。
 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
理由

 (罪となるべき事実)
 被告人は
 第3 強制的に●●●と性交等をしようと考え,同月31日午後7時30分頃から同日午後8時30分頃までの間,大分市〈以下省略〉cアパート110号室において,同人に対し,その両手及び両足を椅子等に結束バンド等で縛り付け,「騒いだら殺すぞ。」などと言って暴行・脅迫を加え,その反抗を抑圧した上,同人と口腔性交及び性交をし,さらに,その際,同人から,現金を強奪しようと考え,その頃,同所において,同人に対し,前記反抗抑圧状態に乗じ,同人管理の現金約4万3000円を奪い,その際,前記一連の暴行により,同人に全治まで約8日間を要する索条痕部の皮膚炎の傷害を負わせたものである。
 (証拠の標目)
 (累犯前科)
 (法令の適用)
 1 罰条
 判示第1の行為 刑法130条前段
 判示第2の行為
 邸宅侵入の点 刑法130条前段
 公然わいせつの点 刑法174条
 判示第3の行為 刑法241条1項
 2 科刑上一罪の処理
 判示第2の罪 刑法54条1項後段,10条(邸宅侵入と公然わいせつとの間には手段結果の関係があるので,1罪として重い邸宅侵入罪の刑で処断)
 3 刑種の選択
 判示第1及び第2の各罪
 懲役刑を選択
 判示第3の罪 有期懲役刑を選択
 4 累犯加重 刑法59条,56条1項,57条(判示各罪の刑にそれぞれ3犯の加重〔ただし,判示第3の罪の刑については,同法14条2項の制限に従う。〕)
 5 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第3の罪の刑に同法14条2項の制限内で法定の加重)
 6 未決勾留日数の算入 刑法21条
 7 訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書
 (量刑の理由)
 量刑判断の中心となる強盗・強制性交等の犯行についてみると,被告人は,家庭教師会社に娘に家庭教師を付けたいなどとうそを言って被害者を部屋に呼んだ上,被害者を椅子等に縛り付けるためのひも,結束バンド等を事前に購入して,すぐに使用できるように準備しており,顕著な計画性が認められる。そして,被告人は,部屋に来た被害者に対し,マジックのアンケートに協力してほしいなどとうそを言って,アイマスクを着用させ,これらのひも等を使用し,被害者の手足を椅子等に縛り付けるなどして行動の自由を完全に奪った上で,犯行に及び,膣内に射精までしている。その手口は,犯行実現の可能性の高い,極めて巧妙で,卑劣なもので,被告人が被害者に凶器を突き付けたり,直接的な暴力を加えたりしていないとしても,犯行態様はこの種事案の中でも悪質である。被害者が多大な精神的苦痛を受けたことはいうまでもなく,被告人への厳重な処罰を望むのは当然である。
 被告人は,同種服役前科2犯(直近前科は,本件同様にうそを言って,女性の手首を結束バンドで縛るなどして口淫をさせた罪を含む。)を有するのに,その刑の執行終了から7か月足らずで,被害者をより強力な方法で拘束する方法を考え,本件において性交にまで至っており,この種犯罪に対する被告人の規範意識は著しく低下している。
 以上に加えて,邸宅侵入,公然わいせつも犯していることを併せると,本件は,同種事案(強盗強姦1件,単独犯,強盗の点:既遂)の量刑傾向の中では重い部類に属する。
 被告人は,法廷で,被害者への謝罪を述べるなどして反省し,社会復帰後には専門機関において治療を受ける意欲を示しているが,これまで述べたところからすると,再犯のおそれが高いといわざるを得ない。
 以上の検討を経て,主文の刑を導いた。
 (求刑 懲役13年)
 平成30年3月22日
 大分地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 今泉裕登 裁判官 家入美香 裁判官 大須賀謙一)