児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

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「強制わいせつ罪の保護法益は一元的なものではなく、一方で、性行為や性的刺激の意味が理解できる被害者にとっては、「いつ、どこで、誰と、どのように性行為をしたり性欲を刺激したりされたりするか、あるいはそれを拒否するのか」についての性的自己決定権であり、他方で、それらの意味がまだ理解できない幼児等にとっては、国家による保護を必要とする児童の権利の一環である性的に健全に成長・ 発達する権利だと解するべき」松宮孝明「平成29年11月29日大法廷判決の意味するもの」季刊刑事弁護No.94

「強制わいせつ罪の保護法益は一元的なものではなく、一方で、性行為や性的刺激の意味が理解できる被害者にとっては、「いつ、どこで、誰と、どのように性行為をしたり性欲を刺激したりされたりするか、あるいはそれを拒否するのか」についての性的自己決定権であり、他方で、それらの意味がまだ理解できない幼児等にとっては、国家による保護を必要とする児童の権利の一環である性的に健全に成長・ 発達する権利だと解するべき」松宮孝明「平成29年11月29日大法廷判決の意味するもの」季刊刑事弁護No.94
 
 「本件の弁護人が主張するように、性的行為ないし「わいせつ行為」の意味を解せず、「性欲」自体をまだ持っていない幼児については、性行為等をする/しないことに関する自己決定権という意味での「性的自由」の侵害は観念し難い。」と主張したんですけど、保護法益からして流動的。

松宮孝明「平成29年11月29日大法廷判決の意味するもの」季刊刑事弁護No.94
5 本罪の保護法益
以上の検討から示唆されるように、本罪の保護法益を「被害者の性的自由」と考えたとしても、それを「性的しゅう恥心ないし性的清浄性」が害されないことと同視することはできない16。
他方、本件の弁護人が主張するように、性的行為ないし「わいせつ行為」の意味を解せず、「性欲」自体をまだ持っていない幼児については、性行為等をする/しないことに関する自己決定権という意味での「性的自由」の侵害は観念し難い。
ゆえに、本罪の保護法益は一元的なものではなく、一方で、性行為や性的刺激の意味が理解できる被害者にとっては、「いつ、どこで、誰と、どのように性行為をしたり性欲を刺激したりされたりするか、あるいはそれを拒否するのか」についての性的自己決定権17であり、他方で、それらの意味がまだ理解できない幼児等にとっては、国家による保護を必要とする児童の権利の一環である性的に健全に成長・ 発達する権利18だと解するべきであろう19。これらは、一般的な人格権の一部と解される。「性的自由」という法益は、実はこのような複合的なものだったといってもよい。
このように考えると、「わいせつ行為」を行為者の性的衝動や性行為をしたいという動機に基づく行為に限るのは狭すぎるといわなければならない。しかし、被害者が行為者や第三者の性的衝動・性的欲求の対象として扱われていない場合には、たとえ被害者自身は性的羞恥心を著しく害されたとしても、それは「わいせつ行為」によるものではない20。ゆえに、「(誰かの性的衝動・性的欲求の対象として扱うという)犯人の性的意図の有無によって、被害者の性的自由が侵害されたか否かが左右されるとは考えられない」という命題自体が、すでに疑われるべきである。

同一児童について「2016年2月中旬ごろ、自宅で当時16歳だった娘に対し、18歳未満と知りながら自分と性交させ、」という児童淫行罪の被疑事実で逮捕したあと、「2012年1月ごろ、自宅で当時13歳未満だった娘とみだらな行為をした」という強姦罪の被疑事実で再逮捕した事例(新潟)


 前回の逮捕は「2016年2月中旬ごろ、自宅で当時16歳だった娘に対し、18歳未満と知りながら自分と性交させ、その様子を撮影して児童ポルノを製造した疑い。」で、
今回は、「2012年1月ごろ、自宅で当時13歳未満だった娘とみだらな行為をした疑い」
のようですが、
 同一児童に対する数回の淫行させる行為は包括一罪ですので、2016の淫行と2012の姦淫とは科刑上一罪になり、同一被疑事実についての再逮捕になります。
 って弁護人は気付くよね。実刑になるし、処断刑期が大きく変わるので、しっかり主張して欲しいところです。
 検察官は、児童淫行罪について起訴して起訴後の勾留つけとかないと。

強姦の疑いで男を逮捕 /新潟県
2018.04.20 朝日新聞
 県警捜査1課と子供女性安全対策課などは19日、上越地方の無職の男(45)を強姦(ごうかん)の疑いで逮捕し、発表した。容疑を認めているという。

 捜査1課によると、男は2012年1月ごろ、自宅で当時13歳未満だった娘とみだらな行為をした疑いがある。16年2月には娘にみだらな行為をさせ、その様子を撮影したとして、児童福祉法違反と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで今年3月に逮捕されている。
・・・
強姦の疑いで再逮捕=新潟
2018.04.20 読売新聞社
 県警捜査1課などは19日、上越地方に住む無職の男(45)を強姦(ごうかん)(現・強制性交)の疑いで再逮捕した。発表によると、男は2012年1月、自宅で当時13歳未満の娘にみだらな行為をした疑い。13歳未満だったことから、改正前の刑法の規定で強姦容疑を適用した。調べに対し、容疑を認めているという。男は16年2月に同じ娘(当時16歳)にみだらな行為をする様子を撮影したとして、今年3月に児童福祉法違反(児童に淫行させる行為)と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)の両容疑で逮捕され、処分保留となった。

児童福祉法など違反容疑で上越地方の男逮捕
2018.04.01 新潟日報
 県警少年課とサイバー犯罪対策課、子供女性安全対策課などは31日、児童福祉法違反(淫行させる行為)と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで、上越地方の無職の男(45)を逮捕した。
 逮捕容疑は2016年2月中旬ごろ、自宅で当時16歳だった娘に対し、18歳未満と知りながら自分と性交させ、その様子を撮影して児童ポルノを製造した疑い。娘から福祉機関に相談があり発覚した。男は容疑を認めている。

強制わいせつ罪で起訴されたら「わいせつ」の定義を問え

 性的意図不要にすると「わいせつ=いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)」という定義も変わるのに、大法廷が示せなかったので、こういうことになります。
 東京高裁とかも聞いたことがない定義を唱えだしている。
 乳房もむとか陰部弄ぶとか陰部に手指を挿入しとか接吻するとか伝統的なわいせつ行為についても、精液投げつける・用便中の姿態見つめる・脅迫して裸写真送らせるという新進のわいせつ行為にしても、わいせつの定義もできないのに「とりあえずわいせつだ」とされて懲役刑を宣告されちゃ納得できないだろう。

公訴事実第○について
(1) まず「わいせつ」の定義を示す必要がある。
 強制わいせつ罪におけるわいせつの定義は「徒に性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう」とするのがおなじみの判例最判昭26・5・10刑集5-6-1026)であるところ、わいせつの定義自体に性欲要件が含まれている。犯人の性欲である。
 ところが、最高裁大法廷判決h29.11.29は、性的な行為を

①刑法176条にいうわいせつな行為と評価されるべき行為の中には,強姦罪に連なる行為のように,行為そのものが持つ性的性質が明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味があると認められるため,直ちにわいせつな行為と評価できる行為(絶対的わいせつ行為)
②行為そのものが持つ性的性質が不明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為(相対的わいせつ行為)

に二分して、①については性的意図不要、②については「性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが同条にいうわいせつな行為として処罰に値すると評価すべきものではない。」「当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ない」「行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得る」とした。大法廷事件の原判決(大阪高裁H28.10.27*1)が「わいせつ=被害者の性的自由を侵害する行為」としたのを修正したことは確かである。

 本件のように陰部さわるといういう行為は①に分類にされ、性的意図不要となる。それゆえ、本件の公訴事実第○にも性的意図を示す「わいせつ行為しようと企て」が記されていない。
 しかし、これでは従前の定義の犯人の「徒に性欲を興奮または刺激させ、」を満たさないから、わいせつ行為と評価できないことになる。
 さらには、大法廷判決は強制わいせつ罪の保護法益を専ら個人的法益(性的自由とか性的羞恥心)と理解するのであろうが、そうであれば、一般人基準による前記の定義は不適切であり、個人的法益からの定義が必要となる。(②の類型のわいせつ行為も包含するように工夫する必要がある)
 「わいせつ」とは強制わいせつ罪の構成要件であるから、わいせつ行為の定義は存在するはずであって、裁判所が定義を示せないと強制わいせつ罪は成立しないことになりうるので、判示を求める。

 参考までに、最新の東京高裁H30.1.30*2も強制わいせつ罪について「一般人が性的な意味があると評価するような行為を意思に反してされたならば,性的自由が侵害されたものと解すべきである。」という定義を試みているが、これまで聞いたことが無い説明となってる。
 さらに、馬渡(モウタイ)調査官の論稿*3によれば定義できないことを棚に上げて「わいせつの定義は困難」「行為の集積で判る」などと開き直っているが、それは罪刑法定主義に反するので、裁判所は定義を明確にする必要がある。
 被告人の行為は結果的には、わいせつ行為と評価されるかもしれない、前提として定義を明らかにする必要がある。


1

阪高裁H28.10.27
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=86760
(2)ところで,強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由と解され,同罪は被害者の性的自由を侵害する行為を処罰するものであり,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,強制わいせつ罪が成立し,行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないと解すべきである。その理由は,原判決も指摘するとおり,犯人の性欲を刺激興奮させ,または満足させるという性的意図の有無によって,被害者の性的自由が侵害されたか否かが左右されるとは考えられないし,このような犯人の性的意図が強制わいせつ罪の成立要件であると定めた規定はなく,同罪の成立にこのような特別な主観的要件を要求する実質的な根拠は存在しないと考えられるからである。
 そうすると,本件において,被告人の目的がいかなるものであったにせよ,被告人の行為が被害女児の性的自由を侵害する行為であることは明らかであり,被告人も自己の行為がそういう行為であることは十分に認識していたと認められるから,強制わいせつ罪が成立することは明白である。
 以上によれば,強制わいせつ罪の成立について犯人が性的意図を有する必要はないから,被告人に性的意図が認められないにしても,被告人には強制わいせつ罪が成立するとした原判決の判断及び法令解釈は相当というべきである。当裁判所も,刑法176条について,原審と同様の解釈をとるものであり,最高裁判例(最高裁昭和45年1月29日第1小法廷判決・刑集24巻1号1頁)の判断基準を現時点において維持するのは相当ではないと考える。
(3)所論は,強制わいせつ罪の保護法益を純粋に個人の性的自由とみて,同罪の成立に犯人の性的意図を要しないと解釈した場合,①わいせつ行為の範囲は,被害者の性的意思決定の自由が害される行為として被害者個人によって主観的に定められることになり,極めて不明確となる,②性的自由を観念できない乳幼児に対する強制わいせつ罪が成立しないことになり,その保護に欠ける,などと主張する。
 しかしながら,前記のように解釈したとしても,強制わいせつ罪におけるわいせつな行為の該当性を検討するに当たっては,被害者の性的自由を侵害する行為であるか否かを客観的に判断すべきであるから,所論①のように処罰範囲が不明確になるとはいえない。また,性的な事柄についての判断能力を有しない乳幼児にも保護されるべき性的自由は当然認められるのであり,その点で既に所論②は失当である上,犯人の性的意図の要否と乳幼児に対する強制わいせつ罪の成否とは特段関連する問題とは考えられないから,保護法益を純粋に性的自由とみて性的意図を不要と解釈すると乳幼児の保護に欠ける事態になるとの批判は当たらない。
 その他,強制わいせつ罪の成立要件について縷々主張する所論は,いずれも失当であって採用することはできない。
 3 したがって,被告人に強制わいせつ罪が成立するとして当該法条を適用した原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがあるとはいえない。法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。また,強制わいせつ罪の成立には犯人の性的意図があることを必要としないと解されるのであるから,原判示第1の1の犯罪事実(罪となるべき事実)に性的意図を記載しなかった原判決に理由不備の違法があるとはいえない。理由不備をいう論旨も理由がない。

2

裁判年月日  平成30年 1月30日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(う)1687号
事件名  保護責任者遺棄致傷、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ(変更後の訴因わいせつ誘拐、強制わいせつ)、殺人、強制わいせつ致傷被告事件
裁判結果  控訴棄却  文献番号  2018WLJPCA01306002
第3  弁護人の法令適用の誤りの主張について
 1  低年齢児に対する強制わいせつ罪,強制わいせつ致傷罪及びわいせつ目的誘拐罪(以下,単に「強制わいせつ罪等」ともいう。)の成否について
   (1)  論旨は,6歳未満の児童に対して強制わいせつ罪等は成立しないのに,強制わいせつ罪等の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
   (2)  刑法は,強制わいせつ罪等の対象について年齢の下限を設けておらず,むしろ13歳未満の児童に対しては保護を厚くしており,法文上,6歳未満の児童も強制わいせつ罪の対象となることは明らかである。
 所論は,①低年齢児に対するわいせつ行為では一般人の性欲を興奮,刺激させない,②低年齢児には性的羞恥心がないので,法益侵害がないなどと主張する。
 しかし,①については,6歳未満の低年齢児でも殊更に全裸又は下半身を裸にさせて性器を露出させてこれを撮影するならば,一般人の性欲を興奮,刺激させるもの,言い換えれば,一般人が性的な意味のある行為であると評価するものと解されるから,強制わいせつ行為に該当する。また,②については,強制わいせつ罪の保護法益は,個人の性的自由であると解されるが,所論のように性的羞恥心のみを重視するのは相当ではなく,一般人が性的な意味があると評価するような行為を意思に反してされたならば,性的自由が侵害されたものと解すべきである。そして,ここで意思に反しないとは,その意味を理解して自由な選択によりその行為を拒否していない場合をいうものと解されるから,そのような意味を理解しない乳幼児については,そもそもそのような意思に反しない状況は想定できない。このことは,精神の障害により性的意味を理解できない者に対しても準強制わいせつ罪(刑法178条1項)が成立することによっても明らかである。本件では,生後4か月から5歳までの乳幼児に対し,性器を露出させるなどして,これを撮影したものであるから,同人らの性的自由を侵害したものと認められる。
 その余の主張を含め,所論は理由がなく,いずれも採用できない。

3

ジュリスト1517号
時の判例
強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
最高裁平成29年11月29日大法廷判決
最高裁判所調査官 馬渡香津子
V.「わいせつな行為」の定義,判断方法
1.「わいせつな行為」概念の重要性
 性的意図が強制わいせつ罪の成立要件でないとすれば,「わいせつな行為」に該当するか否かが強制わいせつ罪の成否を決する上で更に重要となり,「わいせつな行為」該当性の判断に際して,行為者の主観を一切考慮してはならないのかどうかを含め,これをどのように判断し,その処罰範囲を明確化するのかが問題となる。また,強制わいせつ致傷罪は,裁判員裁判対象事件であることも考えれば,「わいせつな行為」の判断基準が明確であることが望ましい。
2.定義
(1)判例,学説の状況
 強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」の定義を明らかにした最高裁判例はない。
 他方,「わいせつ」という用語は,刑法174条(公然わいせつ),175条(わいせつ物頒布罪等)にも使用されており,最一小判昭和26・5・10刑集5巻6号1026頁は,刑法175条所定のわいせつ文書に該当するかという点に関し,「徒に性慾を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反するものと認められる」との理由でわいせつ文書該当性を認めているところ(最大判昭和32・3・13刑集ll巻3号997頁〔チャタレー事件〕も,同条の解釈を示すに際して,その定義を採用している),名古屋高金沢支判昭和36・5・2下刑集3巻5=6号399頁が,強制わいせつ罪の「わいせつ」についても,これらの判例と同内容を判示したことから,多くの学説において,これが刑法176条のわいせつの定義を示したものとして引用されるようになった(大塚ほか編・前掲67頁等)。これに対し,学説の中には,刑法174条,175条にいう「わいせつ」と刑法176条の「わいせつ」とでは,保護法益を異にする以上,同一に解すべきではないとして,別の定義を試みているものも多くある(例えば,「姦淫以外の性的な行為」平野龍一・刑法概説〔第4版)180頁,「性的な意味を有する行為,すなわち,本人の性的差恥心の対象となるような行為」山口厚・刑法各論〔第2版]106頁,「被害者の性的自由を侵害するに足りる行為」高橋則夫・刑法各論〔第2版〕124頁,「性的性質を有する一定の重大な侵襲」佐藤・前掲62頁等)。
(2)検討
 そもそも,「わいせつな行為」という言葉は,一般常識的な言葉として通用していて,一般的な社会通念に照らせば,ある程度のイメージを具体的に持てる言葉といえる。そして,「わいせつな行為」を過不足なく別の言葉でわかりやすく表現することには困難を伴うだけでなく,別の言葉で定義づけた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。また,「わいせつな行為」を定義したからといって,それによって,「わいせつな行為」に該当するか否かを直ちに判断できるものでもなく,結局,個々の事例の積み重ねを通じて判断されていくべき事柄といえ,これまでも実務上,多くの事例判断が積み重ねられ,それらの集積から,ある程度の外延がうかがわれるところでもある(具体的事例については,大塚ほか編・前掲67頁以下等参照)。
 そうであるとすると,いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには,これをどのように定義づけるかよりも,どのような判断要素をどのような判断基準で考慮していくべきなのかという判断方法こそが重要であると考えられる。
 本判決が,「わいせつな行為」の定義そのものには言及していないのは,このようなことが考えられたためと思われる。もっとも,本判決は,その判示内容からすれば,上記名古屋高金沢支判の示した定義を採用していないし,原判決の示す「性的自由を侵害する行為」という定義も採用していないことは明らかと思われる(なお,実務上,「わいせつな行為」該当性を判断する具体的場面においては,従来の判例・裁判例で示されてきた事例判断の積み重ねを踏まえて,「わいせつな行為」の外延をさぐりつつ判断していかなければならないこと自体は,本判決も当然の前提としているものと思われる)。

「相手の女性が売春しており、知事がそれを認識しているような状況があれば、売春防止法違反にあたる可能性があります。ただし、売春行為をしているという認識がなく、普通の恋人だと思っているのであれば、違法性はありません」「一方で女性と思って付き合っていることになれば恋人となるので有罪ではなくなる。」という弁護士のコメント

 文献
http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2018/04/20/000000

 売春罪・買春罪はないので、犯罪の成否は検討する必要ありません。

売春防止法
第二条(定義)
 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
第三条(売春の禁止)
 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。

という体裁ですので、女性側が売春であれば、その相手方となれば、知っていても知らなくても売春防止法3条違反ですよね。過失の方が違法性低いでしょうけど。売春の相手方とならないように注意してということでしょ。対価払うと売春の相手方になってしまうとか、不特定相手方だったら売春の相手方になってしまうということなので、買春行為を避けてもらうことで、売春を無くそうという趣旨です。

検察資料123 売春防止法解説
(売春の祭止)
第三条
何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない。
本条は、売春をし、又はその相手方となる行為は、社会道徳上好ましくないものであるだけでなく、法律上も違法な行為であることを明らかにしたものである。立法過程におい最も議論のあったところである。

 参考までに、こういう判例があって、売春かどうかは売春側の事情で決まります。遊客の認識は影響ありません。

裁判年月日 平成23年 8月24日 裁判所名 最高裁第一小法廷 裁判区分 決定
事件名 売春防止法違反被告事件
主文
 本件上告を棄却する。 
 弁護人養老信吾の上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であり,被告人本人の上告趣意のうち,違法収集証拠に関する判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,被告人は,いわゆる出会い系サイトを利用して遊客を募る形態の派遣売春デートクラブを経営し,男性従業員と共謀の上,女性従業員を遊客に引き合わせて売春をする女性として紹介したものであるが,出会い系サイトに書き込みをして遊客を募る際には売春をする女性自身を装い,遊客の下には直接女性従業員を差し向けるなどして,遊客に対し被告人らの存在を隠していたため,遊客においては,被告人らが介在して女性従業員を売春をする女性として紹介していた事実を認識していなかったというのである。所論は,そのような事実関係の下では,売春防止法6条1項の周旋罪は成立しないという。しかし,売春防止法6条1項の周旋罪が成立するためには,売春が行われるように周旋行為がなされれば足り,遊客において周旋行為が介在している事実を認識していることを要しないと解するのが相当である。したがって,被告人らの行為につき同項の周旋罪の成立を認めた第1審判決を維持した原判断は正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 白木勇 裁判官 宮川光治 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 横田尤孝) 

 

https://www.j-cast.com/tv/2018/04/19326548.html
新潟・米山知事「援助交際」違法?合法?会うたびに3万円
2018/4/19 12:23 印刷
新潟県米山隆一知事(50)はきのう18日(2018年4月)、県議会議長に辞表を提出し、辞職を表明した。「多くの方の信頼を裏切って申し訳ない」と頭を下げた。

週刊文春(4月26日号)によると、米山知事は2016年4月ごろ、出会い系サイトで知り合った22歳の女性に約3万円を渡して交際を始めた。別の24歳の女性にも金銭を渡して交際していた。複数の女性との交際が重なった時期もあるという。

米山知事は「相手の関心をかうため、プレゼントがあったり金銭の授受があったりしました」と認め、「好きになるって、最終的には肉体関係を持ちたい気持ちと重なると思います。それが金銭の対価かどうかは、好きになってほしいと思っているかどうかだと思います。私は好きになってほしいと思っていました」と恋愛感情があったことを強調した。

知事に「買春」の認識あれば売春防止法違反
この関係に違法性はないのだろうか。コメンテーターの菊地幸夫弁護士はこう解説した。「相手の女性が売春しており、知事がそれを認識しているような状況があれば、売春防止法違反にあたる可能性があります。ただし、売春行為をしているという認識がなく、普通の恋人だと思っているのであれば、違法性はありません」

富士ソフト株式会社
新潟 米山知事が辞職会見 「好きになってほしいと...」
2018.04.19 日本テレビ スッキリ 報道/ニュース/ニュース 
昨日午後6時に新潟県米山隆一知事は女性問題についての会見を前倒しで開き、辞職する方針を明かした。週刊文春は米山氏の買春を報じていて、米山氏は2016年4月頃に出会い系サイトで知り合ったこの女性に約3万円を渡して交際していて、知事当選後も関係を続けていた。また、別の女性にも金銭を渡して交際を行っていたとされていて、米山氏は一時期には1人の方としながらもこれを認めている。また、金銭の授受を認識している場合は法に反する恐れはあると見られるが、一方で女性と思って付き合っていることになれば恋人となるので有罪ではなくなる。米山氏は恋愛感情を主張し続けていて、退任までは職責を果たす方針。

【番組放送時間】
2018/04/19 08:00 ~ 2018/04/19 10:25

【コーナー】 NEWSミウライン
放送時間: 2018/04/19 08:52:02 ~ 2018/04/19 09:02:05
出演者: 水卜麻美加藤浩次モーリー・ロバートソン,犬山紙子,坂口孝則森圭介近藤春菜青山和弘阿部祐二,菊地幸夫

児童買春罪1罪の量刑は罰金50万円が基本です(東京高裁h29.12.22)

東京高裁h29.12.22破棄自判 速報番号3631号
前科前歴のない者による被害児童が1人のみの児童買春の事案において、罰金刑を科する場合には、おおむね罰金50万円とする一般的な量刑傾向が認められるところ、本件では、そのような量刑傾向を大幅に超えた刑を科すべき合理的理由は無く、また、児童買春は処罰の必要性や非難の強さが地域によって異なる犯罪とは言いがたいことなどからすると、罰金100万円を科した原判決は量刑傾向を大幅に超えて裁量の幅を逸脱した量刑をしたものと言わざるを得ない。

妾・二号など一定期間継続的に特定の相手方と性交取引行為をなす場合であるが、一般的には売春に当たらないとするのが通説である

 マスコミ取材で、こんな解説したけども、放送できるのかなあ。
 「愛人バンク夕暮れ族」も古いしなあ
 しかし「売春」というのは売る側・買われる側・売春婦側の要件で決まる定義なので、買う側が知ってても知らなくても相手方になってしまうと違法な売春になってしまうということです。

売春防止法
第一条(目的)
 この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする。
第二条(定義)
 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
第三条(売春の禁止)
 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。

注解特別刑法7
三売春およびその相手方となる行為の不処罰
法一条は、売春を、人としての尊厳を害し、性道徳に反し、
本条による禁止については罰則が置かれていない。したがって、本条は、倫理規定(国会審議において政府委員の用いた言葉)ないしは訓示規定である。
売春またはその相手方となる行為を処罰すべきか否かについては、立法過程において最も論議のあったところであるが、賛否両論の根拠をこれまでの議論に現われたところから整理してみると次のとおりである

賛成論
法律が売春の社会悪であることを認め、その防止と取締りを目的とする以上は、社会が納得する程度の制裁規定を置くことは当然である。
売春行為を処罰しないでおいて、売春のための公然の勧誘を処罰することは、筋、が通らないだけでなく、人目につかない方法による売春を野放しにすることになって、法の目的に反する。
売春を処罰しない場合に、売春行為を処罰している条例が失効するとするならば、売春の防止と取締を目的とする法が逆に売春を公認することとなり、失効しないとするならば、法律の精神と条例とが相矛盾して国民はその適従にまどうであろう。
売春を処罰しないでおいて、売春を目的とする業者を処罰することは、理論の根拠を失うものであるし、実際問題としても業者の取締を困難にする。
売春を処罰しない理由として、立証が困難で人権侵害のおそれがあるといわれることがあるが、これは、業者の場合も同様である。
売春婦は弱者であるから処罰には反対であるとする説があるが、処罰とあわせて保護更生施設と転落防止その他社会保障を併行せしめ、売春防止の目的を達成すべきである。
売春を犯罪とすることにより、売春婦を刑罰に代る保安処分に付する道を聞かなければ、売春対策の完壁を期しえない。
売春を処罰しない場合は、売春を買う男性も処罰を免れることとなって、性道徳は無視される結果となる。

反対論
売春婦は、社会的弱者として保護更生の措置の対象とすべきであり、違法性の面では処罰に値するとしても、責任の面では処罰するにしのびない。
売春を助長する行為を網羅的に刑罰の対象とすることによって、売春防止の目的を達成することができ、売春を行うおそれのある者に保護更生の機会を与えることにもなる。
公衆の目にふれるような方法で勧誘をする者については、風紀の維持という公益を保護する立場から処罰の対象としているのであるから、不合理ではないし、売春それ自体を処罰しようとする目的もある程度は達成できる。
売春行為自体を処罰することとした場合においては、立証上困難があり、捜査を徹底しようとすれば、人権侵害を生じかねない。
これまで児童福祉法においても刑法においても被害者と扱われてきた者を犯罪の主体とするについては、検討を要する問題があるばかりでなく、世界の立法例を見ても、売春自体を処罰する場合には、多く浮浪罪その他外表に現われた事由によっている。
もともと性の問題は、それが純然たる私生活の内部のものとしてとどまる限り、これを処罰の対象とする必要はなく、これをあえて処罰の対象としても、取締の実効は収め難いし、特に売春の相手方となる者をも処罰するときは国家権力の怒意的な発動を招きかねない。
 結局、本法においては、罰則が設けられなかったわけであるが、文献に現われこの立法政策上の選択については、ている限りでは、これが賢明であったとする学説が多い

売春防止法 注釈特別刑法第8巻 P697
対償は、売春の相手方から直壌に受ける必要はなく、雇主などの第三者から間接に受けても、賄賂として婦女を提供する場合のように売春の相手方に代わってこれを負担する第三者から受けてもよい。
実務上問題となるのは、いわゆるセット制売春のように、他のサービスの対価と売春の対償とが不可分の関係にある場合である。飲食代が一般に比べて際立って高く、名目は飲食代としながらも、その中に売春の対償が当然含まれていると見られる場合は積極に解し得ょう。これに対し、性交サービスが単に客寄せのためにのみ行われていて、飲食代も一般と変わらず、女給も性交の有無に関係なく売上額に対する一定割合の歩合を受けているような場合は、消極に解されよう。
四「不特定」の相手方と性交するとは、性交するときにおいて不特定であるという意味ではなく、不特定の者の内から任意に相手方を選び、性交の対価に主眼をおいて、その相手方の特定性を重視しないで性交することをいう(最判S32.9.27)。したがって、特定の男女聞において対償を受けて性交しても売春には当たらない。問題となるのは、いわゆる妾、二号など一定期間継続的に特定の相手方と性交取引行為をなす場合であるが、一般的には売春に当たらないとするのが通説である()。しかし、このような場合でも提供される経済的利益と性交との対価関係が露骨であって、当該相手方との関係が終了すれば、さらに不特定の相手方と同様の関係を結ぶものと認められるときには、相手方の特定性を欠き売春に該当する(大阪高裁S34.2.17 最判S32.9.27)

売春の意義とその概要・特別刑法詳解 木宮高彦著
いわゆる「妾」(「二号」ともいう)については、これを売春とみる説もあるが(たとえば、大阪高裁昭二九)、一般的には、売春にあたらないとするのが通説である(後掲最高裁二小沼哨一三了九・二七判決、最高刑集一一巻九号二三八四頁。なお、この判決につき、高橋「いわゆる妾の斡旋と勅令九号第二条違反の成否」最高裁判例解説刑事篇悩三二年度四六八頁参照)ο しかし、その男女間の結びつきの関係において金銭と性交との対価関係が・きわめて露骨であって、精神的結合あるいは場所的恒定性がなく、通常の売春とその形態が近似しているような場合であって、実質的に相手方が不特定と認められるような場合には、妾、二号、オンリー等の名義の如何を問わず、売春と認めるのが相当である(次掲判例参照)。

注解特別刑法7 売春防止法
不特定の相手万
(イ)不特定の相手方とは、不特定の人間のなかの任意の一人、すなわち、売春をする者が性交の対価に主眼を置いて相手方の特定性を重視することなく、不特定の者のなかから任意に選定した相手方(柑41却健一一・)をいう。
したがって、特定の男女間の性交は、たとえ対償を目的とするものであっても、本法にいう売春ではない。
しかし、ある程度継続的に相手方が特定されている場合でも、性交と対償とが切り離すことのできない関係にあり、その相手方との関係が終れば不特定な相手方と同じ関係を結ぶであろうと認められる場合には、不特定であると認めてよいであろう(鵡骨一ιE買い忌f.(二)一頭一五鵡木)。
この関係で問題となるのは、いわゆる「妾」である。


典型的な形での「妾」(油盟諸一抑止…一一・)が相手方の特定性を欠くものでないことについては、学説上ほとんど争いがない(枇駅
最高裁判例も、被告人の経営する結婚相談所と称するところに、専ら生活の援助という金銭的対価を目途として、不特定の男子のなかから旦那となるべき男子の周旋を依頼してきた婦女に対し、これも同様の趣旨で女の斡旋を申し込んだ男のなかから適当と思われる男を選び、手数料をとって引き合わせることが、勅令九号二条の売淫をさせることを内容とする契約にあたるか否かが争われた事案において、上告趣意が、本件は、妾の斡旋であって、売淫契約ではないと主張したのに対し、「一口に妾又は二号といっても、妻に近い性質を有するものから実質的には売春婦とみとめられるものまで各種各様の形態のものがあるというのが現実の社会の実情である。原判決は、これら各種の妾、二号について、いやしくも、淫行とこれに対する対価の提供との結びつきが少しでもある以上、婦女の貞操を対価取引の対象とするものであって売淫をもって目すべきものと論断しているのであるが、妾、二号といっても、右のようにそれらの者の中には本質的には売春婦とみとめられるべきものがあるから、その限りにおいては原判決の右論断は正当である。しかし、原判決のように令二条の趣旨を拡充して、同条が妾、二号のすべてを売淫としてこれを斡旋したものを処罰の対象としているものとすることは解釈の行き過ぎである。けだし、妾、二号関係がその淫行とこれに対する対価の提供の結びつきがある場合であっても、特定の男女間に関する限り反社会性をもたない当事者聞の問題として法律上放任されているものとみとめなければならないからである」と判示している(

判例番号】 L01210258


       昭和22年勅令第9号違反被告事件


【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和29年(あ)第3497号
【判決日付】 昭和32年9月27日
【参照条文】 婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令(昭和22年勅令9号)2
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集11巻9号2384頁
       最高裁判所裁判集刑事120号561頁
       判例時報126号6頁
       刑事裁判資料229号226頁
       刑事裁判資料229号236頁
【評釈論文】 警察研究31巻6号91頁
       主   文
 本件上告を棄却する。
       理   由

 被告人の上告趣意第一点について。
 原判決は昭和二二年勅令九号「売淫をさせた者等の処罰に関する勅令」(以下令という)二条にいう「婦女に売淫させることを内容とする契約」とは婦女に対価を得て淫行をなさしめることを内容とする契約を汎称するものであるとし、「婦女の淫行と婦女えの利益の提供とが切り離すことのできない相対関係にある場合は、たとえその外に婦女の生活援助の趣旨を含めてその利益が提供せられるときであつても、その提供せられる利益の名目如何にかかわらず、婦女に売淫させることを内容とするものと解して妨げない、さすれば生活資料の援助を受ける前提の下に婦女を妾(いわゆる二号)とさせる場合、淫行とこれに対する対価の提供との結びつきが少しでも窺われる以上は婦女をして売淫させるものと認むべきである。」と判示し、さらに「思うに不特定多数の男性に接し淫行毎に対価を得るのと、又特定の者の妾となり生活援助金等の名目下に対価を得るのとを問わず、いやしくも婦女の貞操を対価取引の対象とするがごときは婦女の人権を蔑視し、多かれ少かれその婦女を束縛し、且つ強制して淫行させる結果を招来し婦女の個人自由の伸長を阻害する虞があるから公共の福祉のためこれを取締るのが前示勅令の規定の精神であるとみなければならない」と判示して、被告人が一審判決判示のごとく、A外二名の婦女と、援助名目で女の幹旋を申込んだ男を相手に附近旅館等で性的関係を結ばせ、男から受取る金銭中から、援助斡旋手数料名下に手数料を貰う約束をした事実をもつて令二条にいう「婦女に売淫させることを内容とする契約」をしたものと判断して、同条によつて被告人を処罰した一審判決を維持したのである。おもうに、妾若しくは二号という概念は今日必ずしも明確ではないのであるが、通常、「法律上の妻又は事実上の妻でなくして、主として妻帯の男性から経済上の援助を受けて、これと性的結合関係を継続する女」をいうものと観念してあやまりないであろう。わが国において妾をもつ習俗は古くから主として血族維持を根本基調とする「家」の制度と密接の関係があるものとされ、法制上においてもいわゆる「妻妾二等親」としてみとめられて来たところである。明治時代になつてからも、民法(明治三一年法律九号)によつて初めて法律上から抹消されたのであるが、その後も社会の習俗としては広く行われていることは否定し得ないところであり、殊に、時代の変転にともない性慾的享楽面を主とする関係への転落的傾向が顕著であつて、一口に妾又は二号といつても、妻に近い性質を有するものから実質的には売春婦とみとめられるものまで各種各様の形態のものがあるというのが現実の社会の実情である。
 原判決は、これら各種の妾、二号について、いやしくも、淫行とこれに対する対価の提供との結びつきが少しでもある以上、婦女の貞操を対価取引の対象とするものであつて売淫をもつて目すべきものと論断しているのであるが、妾、二号といつても、右のようにそれらの者の中には本質的には、売春婦とみとめられるべきものがあるから、その限りにおいては原判決の右論断は正当である。しかし、原判決のように令二条の趣旨を拡充して同条が妾、二号のすべてを売淫としてこれを斡旋したものを処罰の対象としているものとすることは解釈の行き過ぎである。けだし、妾、二号関係がその淫行とこれに対する対価の提供との結びつきがある場合であつても、特定の男女間に関する限り反社会性をもたない当事者間の問題として法律上放任されているものとみとめなければならないからである。令二条にいう売淫は、売春防止法(昭和三一年五月二四日法律一一八号)二条が「売春」についていうごとく「対価を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交する」ことをいうものと解釈すべきである。しかし、ここに「不特定」ということは、もとより性交するときにおいて不特定であるという意味ではなく、不特定の男子のうちから任意に相手方を選定し性交の対価に主眼をおいて、相手方の特定性を重視しないということを意味するのであつて、たとえ、その相手方との関係が相当の期間に及んでいても、その相手方との関係が終了すれば更に不特定の男子のうちの任意の一人と同様の関係を結ぶであろうことが予想される場合においては、なお、相手方は右にいう意味において不特定であると解するを相当とする。そこで問題となるのは、本件において被告人がその結合について斡旋したとせられる男女間の関係が右にいわゆる不特定性を帯びたものであつたかどうかである。原判決の支持した一審判決の挙示する証拠関係をしさいに検討すると、本件の婦女たちは被告人の経営する「千歳」の標札をかかげた結婚相談所と称するところに、だれか生活の援助をして呉れる、いわゆる「旦那」の斡旋を依頼したものであることがわかる。もとより特定した男子との結合を依頼したものでなく、専ら、生活の援助という金銭的価対を目途として不特定の男子の中から、旦那となるべき男子の周旋を依頼してその旨の申込みをし、被告人もその趣旨を了承して、これも同様の趣旨で女の斡旋を申込んだ男の中から適当と思われる男を選んで手数料をとつてこれら男女を結合せしめたものである。生活援助というからには相当の期間その関係の継続すべきことを予定していたことは、うかがわれるけれども、この婦女たちの意向にも、被告人の意向にも、若し一人の男との関係が切れた場合には、更に新たな男との結合をめざしているものであることは十分に理解されるところである。この男女間の結びつき関係は金銭と性交との対価関係がきわめて露骨であつて、その間に何らの精神的要素をみとむべくもない。その関係の場所も、附近の旅館等がその都度利用せられて場所的恒定性もなく通常の売淫とその形態が近似している。以上の見地からみれば、本件男女関係は、妾、二号の名称いかんにかかわらず、「不特定性」のものといわなければならない。(たまたま、この結合の結果特定の男とその関係が相当長期に亘つて継続した事実があつたとしても被告人が斡旋した当時における相手方の不特定性はこれによつて消殺されるものとみることはできない。)そして、この斡旋の結果、被告人と契約した婦女にとつて、被告人に対し、多かれ、少かれ相手方たる男に貞操を提供すべき何らかの拘束を受けることも疑いのない事実である。以上の事実関係を基礎として、原判決を考察すれば、原判決が、一審判決認定の被告人の所為は、A外二名の婦女との間に令二条にいわゆる「婦女に売淫させることを内容とする契約をした」ものに該当するものとして、同条により被告人を処断した一審判決を容認したのは、結局において正当であるといわなければならない。
 論旨は、ひつきよう単なる法令違反の主張を出でず刑訴四〇五条の適法な上告理由とならないのみならず、原判決に結局、判決に影響を及ぼすべき法令違反のないこと前説示のとおりである。同第二点乃至第六点について。論旨は違憲をいう点もあるけれども、実質は単なる法令違反を主張するもので刑訴四〇五条の適法な上告の理由とならない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。よつて同四一四条、三九六条により裁判官小谷勝重、同河村大助の少数意見をのぞく裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。被告人の論旨第一点について、裁判官小谷勝重、裁判官河村大助の少数意見は左のとおりである。原判決は、昭和二二年勅令第九号二条の解釈として「生活資料の援助を受ける前提の下に婦女を妾(いわゆる二号)とさせる場合、淫行とこれに対する対価の提供との結びつきが少しでも窺われる以上は婦女をして売淫をさせるものと認むべきである。弁護人は妾契約は貞操義務を生じ生活援助金の支出ある以上他の男性との性行関係は絶対に許されないからこの点において単純な売淫とは大きな差異がある旨主張するが妾たる婦女においてその男性一人を守ることが同人から利益の提供があるがために因るものと認められるかぎり淫行に対する対価であるとする面においては淫行の都度対価を得る売淫と本質的に差異があるものということはできない。思うに不特定多数の男性に接し淫行毎に対価を得るのと、又特定の者の妾となり生活援助金等の名目下に対価を得るのとを問わず、いやしくも婦女の貞操を対価取引の対象とするが如きは婦女の人権を蔑視し多かれ少かれその婦女を束縛し且つ強制して淫行させる結果を招来し婦女の個人自由の伸長を阻害する虞があるから公共の福祉のためこれを取締るのが前示勅令の規定の精神であるとみなければなちないのである。」となし、特定の者の妾となり、生活援助金等の名目下に対価を得ると、不特定多数の男性に接し、淫行毎に対価を得るとを問わず、これを取締るのが前記勅令の規定の精神であるとの趣旨を判示している。そしてその判示を前提として、本件被告人は、A外二名に売淫をさせることを内容とする契約をしたものに該当するとした第一審判決を是認したのである。
 しかしながら、前記勅令二条に所謂売淫とは、婦女が対価を得て不特定な男子と性交する行為をいうのてあつて、即ち対価さえ受ければ、不特定な男子の中から、だれとでも性交する行為を指すものと解すべきである。けだし、不特定人を相手とする売淫行為は、必然的に公衆衛生及び風紀維持の面で社会性を伴い、放任すべからざる社会悪となるからである。ところで「妾」は通常相手方たる男子から経済的援助を受けるが、それは男女それぞれ自主的な行動の主体として性関係を続ける二人間の私生活であつて、不特定人を相手とする売淫のような社会性を欠くものであることは明らかである。勿論妾契約は公の秩序善良の風俗に反するものとして私法上無効になるにしても、前記勅令二条の「売淫」には当らないことは明確であるといわなければならない。昭和三一年法律第一一八号売春防止法でも『この法律で「売春」とは、対価を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう』と定義されており、この定義は売淫又は売春に対する従来の観念を採用したものというべきである。おもうに第一審判決及び原審判決はいずれも右売春防止法制定以前である昭和二九年になされたものであるが勅令九号は一九四六年(昭和二一年)一月二一日及び同年九月六日の両度にわたる連合軍最高司令官の公娼廃止の指令に基き制定されたものであるところ、同指令中「又直接間接婦人を束縛又は強制して娼婦とさせることを目的としている総ての契約と協定を無効ならしめるやう命ずるものである」とあることにより、第一審及び原審判決は、妾契約は右「直接間接婦人を束縛するもの」故、妾契約もまた本勅令の対象に当るとの誤解に基因した結果ではないかとの疑を抱かせるに足るものである。
 しかして、原審は本件各公訴事実を、対価を得て不特定人と性交することを約するところの所謂売淫と見たのか、或は特定の者を相手とする所謂妾契約と見たのかについてはその判示必ずしも明確ではないけれども、本件は所謂妾契約で売淫行為ではないとの控訴趣意第一点に対し、特定の者の妾となつて、生活援助金の名目の下に、対価を得る所謂妾契約と雖も、勅令九号二条にいう「売淫」に当るものとして判示しているところがら見れば、本件は所謂妾契約をなしたものであるとの事実を認めこれに対して前記勅令を適用しているものと見るべきである。しかも原審の認容した第一審判決挙示の証拠によれば、本件三人の女性、なかんづくAについては、明確に妾関係の成立とその継続を認めることができるのである。即ち当初Aは、被告人に対し「一生援助をして貰える人で自分の気持の的のふであること、ただ男女関係の性行丈けを欲する人は困る」旨申出たこと、Aは被告人から援助者である男を紹介されて、二度程面会してから援助を受けること、即ち妾となつてもよいと決意し、その旨被告人にも話したこと、その後引続き当該男性と妾関係が継続して、現在はアパートを借り受けて貰つて住んでいること、現在主人(即ち相手方)と平穏で幸福な生活をしていること及び感謝の気持で被告人に礼に行つたこと等の趣旨の供述(記録一三七丁以下)から見ても、純然たる妾関係の成立及び継続がうかがわれるのである。多数意見は「この婦女たちの意向にも、被告人の意向にも若し一人の男との関係が切れた場合には、更に新たな男との結合をめざしているものであることは十分に理解されるところである。この男女間の結びつき関係は金銭と性交との対価関係が極めて露骨であつてその間に何らの精神的要素をみとむべくもない。その関係の場所も、附近の旅館等がその都度利用せられて、場所的恒定性もなく通常の売淫とその形態が近似している。以上の見地からみれば、本件男女関係は、妾、二号の名称いかんにかかわらず「不特定性」のものといわなければならない」と説示しているが、右のうち当初附近の旅館等が利用されたこと以外は証拠上これを見出すことが困難である。また仮りに以上多数意見のような事実が認められるとしても、それは妾としての生活が確立されるまでの過程においてはかかる事実関係の発生は常識上想像し得るところであつて、之をもつて直ちに売淫又は売春行為におけると同様の「相手方の不特定性」を認定することは全く行き過ぎであると考える。以上の理由により、所謂妾関係を売淫に当るものとの前提に立つてなした原判決は、前示勅令九号二条の解釈適用を誤つた違法があり、此違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであつてこれを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるから、原判決を破棄するを相当と思料する。
 検察官 安平政吉出席
  昭和三二年九月二七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
























児童買春の際の窃盗被告事件について被害者の虚偽供述の動機として「検察官が指摘するとおり、児童買春等も含めた本件被害の状況を踏まえると、Bが被害申告をするのは、大きな心身への負担や心理的抵抗を伴うことは容易に推察され、殊更虚偽の被害申告をするとは通常は考え難い。しかしながら、Bは、本件以前に、援助交際を行ったことで警察が介入する事態になった経験を有する中で、今回、同様の行為について警察に相談せざるを得ない状況になったという事情もある。そのような状況の中で、Bの被害者的側面をより強めたり、児童買春のみならず強

 児童買春の際の窃盗被告事件について被害者の虚偽供述の動機として「検察官が指摘するとおり、児童買春等も含めた本件被害の状況を踏まえると、Bが被害申告をするのは、大きな心身への負担や心理的抵抗を伴うことは容易に推察され、殊更虚偽の被害申告をするとは通常は考え難い。しかしながら、Bは、本件以前に、援助交際を行ったことで警察が介入する事態になった経験を有する中で、今回、同様の行為について警察に相談せざるを得ない状況になったという事情もある。そのような状況の中で、Bの被害者的側面をより強めたり、児童買春のみならず強要未遂等も受けた被告人に対して、少しでも罪が重くなるように、虚偽の窃盗被害を作出するということも、あり得ないことではない。交通費が3000円程度であるとの被告人とBとの間のやり取りと辻褄が合うなどしている点も、Bが1万2000円を盗られた旨の虚偽の被害申告を行うために、辻褄の合う周辺事情と関連付けて、具体的かつ一貫した供述をしていることも考えられなくはない。」と判示した事例(千葉地裁h30.2.22)

千葉地方裁判所平成30年02月22日
上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強要未遂、窃盗、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官笹村美智子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
本件公訴事実中、平成29年5月26日付け起訴状記載の公訴事実第3については、被告人は無罪。
理由
罪となるべき事実
第9 被告人は、平成28年10月29日午後4時53分頃から同日午後7時38分頃までの間、(住所略)ホテル「K」(省略)号室において、B(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、Bに対し、現金10万円の対償を供与する約束をして、Bと性交し、もって児童買春をした。
第10 被告人は、前記第9記載の日時・場所において、Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、Bに、Bが被告人と性交する姿態、Bに被告人の陰茎を口淫させる姿態、被告人がBの陰部を手指で触る姿態及びその乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせ、これらを被告人が使用する動画撮影機能付きスマートフォンで動画撮影し、平成29年1月23日午前5時42分頃から同日午前5時48分頃までの間、東京都内又はその周辺において、同動画のデータ4点を、マイクロSDカードに記録して保存し、もって、児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
第11 被告人は、Dとの性交場面等を撮影した静止画等のデータをインターネット上に公開する旨脅迫し、Dに自己との面会等をさせようと考え、平成28年12月2日、東京都内又はその周辺において、自己が使用する携帯電話機から、Dが使用する携帯電話機に宛てて、「今からでもいいよ! 午前中会わない?」「今から午前中会おう」「じゃあ今からね! 10時Lでいい?」「もういいや 送る」「これ以上言っても無理だね 今日送るから」などと記載した電子メールを送信し、いずれもその頃、埼玉県内又は東京都内において、Dにこれらを閲読させ、被告人との面会等に応じなければDの名誉に危害を加える旨告知してDを脅迫し、Dに義務のないことを行わせようとしたが、Dが拒否したため、その目的を遂げなかった。
第12 被告人は、平成29年1月19日午前10時3分頃から同日午後1時8分頃までの間、東京都(以下略)ホテル「G」(省略)号室において、A(当時16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、Aに対し、現金10万円の対償を供与する約束をして、Aと性交し、もって児童買春をした。
第13 被告人は、Bとの性交場面等を撮影した前記第10の動画データをインターネット上に公開する旨脅迫し、Bに自己との面会等をさせようと考え、平成29年3月6日から同月14日までの間、東京都内又はその周辺において、自己が使用する携帯電話機から、Bが使用する携帯電話機に宛てて、「いつ会おうか?」「それ動画流して良いって事だよね?」「じゃあ流すね!サイナラ」「なら土日だな!無理ならもういい」などと記載した電子メールを送信し、いずれもその頃、岐阜県内又は三重県内において、Bにこれらを閲読させ、被告人との面会等に応じなければBの名誉に危害を加える旨告知してBを脅迫し、Bに義務のないことを行わせようとしたが、Bが警察に届け出たため、その目的を遂げなかった。

(一部無罪の理由)
 当裁判所は、平成29年5月26日付け起訴状記載の公訴事実第3の窃盗の事実については無罪と判断したので、その理由を説明する。
 上記公訴事実の要旨は、被告人が、判示第9記載の日時・場所において、Bの財布内からB所有の現金約1万2000円を抜き取り窃取した、というものである。弁護人は、被告人は窃盗を行っておらず、無罪であると主張し、被告人も、上記日時・場所において、Bと性交するなどしたことは間違いないが、現金を盗ってはいない旨供述している。これに対し、検察官は、被告人から現金約1万2000円を盗られた旨述べるBの公判供述を根拠として、上記公訴事実は認められると主張している。
 そこで、Bの公判供述の信用性について検討する。Bは、当公判廷において、次のとおり供述している。すなわち、Bは、判示第9記載の日時・場所において、被告人と2度にわたって性交した。被告人は、1度目と2度目の性交の間に、Bの財布をバッグから取り出して、Bの学生証を探すなどしていた。被告人は、財布を触っている際に、Bの自宅からNまでの交通費を聞いてきた。Bは、もしかしたらお金を取られるかもしれないと思ったので、新幹線で3000円ぐらいで来たと、少し高めに答えた。その後、被告人が、Bの財布からお札を取って、被告人の財布の中に入れるのが見えた。被告人と会う前は、財布の中には、1万5000円ぐらい(内訳は一万円札1枚と千円札5枚)が入っていたのに、被告人と別れて駅に行く途中で財布の中身を確認すると、3000円ぐらい(千円札3枚)に減っていた。
 Bの上記供述は、当時の心境も交えた具体的なものである。財布の中身が3000円程度に減っていたという点は、自宅からNまでの交通費が3000円程度であるとの被告人とBとの間のやり取りとも辻褄が合うもので、Bの供述は一貫した内容となっている。また、被告人の他の被害児童に対する児童買春等の犯行状況をみると、被告人は、被害児童の帰宅分の交通費を気に掛ける傾向があることがうかがわれ、交通費相当額が財布の中に残っていたというのは、このような被告人の行動傾向とも整合している。以上の点は、検察官も指摘しているとおり、Bの供述の信用性を肯定する根拠となる事情といい得る。
 しかしながら、Bの供述には、客観的な裏付けとなるような事情は見当たらない。また、被害申告の経緯をみても、Bは平成29年3月11日に警察に相談しているところ、当初は、被告人から児童買春や強要の被害を受けていることを申告するのみで、窃盗の被害については申告していなかった。この点は、検察官も指摘するとおり、被告人から性交場面等の動画をインターネット上に流すと告げられて脅されていたという、当時のBの状況を踏まえると、当初の申告に窃盗が含まれていないとしても、不自然ではないが、他方で、被害申告の経緯は、Bの供述の信用性を裏付けるものと評価することも困難である。
 また、Bは、Nで買い物をするために、もともと財布に入っていた5000円に、1万円札を追加で入れて自宅を出た、この1万5000円は親からもらった小遣いであり、小遣いの月額は5000円である旨供述している。Bのこの供述を前提とすると、Bは、小遣い3か月分に相当する現金を持ってNに向かったことになる。しかしながら、Bと被告人との間の事件直前のメールのやり取りを見ると、Bは金銭的に余裕がなく、被告人から児童買春の対償を得られることに執着していることもうかがわれることなどからすると、約1万5000円を持って自宅を出たというBの上記供述にはやや不自然な面があることも否めない。
 さらに、虚偽供述の動機についてみると、検察官が指摘するとおり、児童買春等も含めた本件被害の状況を踏まえると、Bが被害申告をするのは、大きな心身への負担や心理的抵抗を伴うことは容易に推察され、殊更虚偽の被害申告をするとは通常は考え難い。しかしながら、Bは、本件以前に、援助交際を行ったことで警察が介入する事態になった経験を有する中で、今回、同様の行為について警察に相談せざるを得ない状況になったという事情もある。そのような状況の中で、Bの被害者的側面をより強めたり、児童買春のみならず強要未遂等も受けた被告人に対して、少しでも罪が重くなるように、虚偽の窃盗被害を作出するということも、あり得ないことではない。交通費が3000円程度であるとの被告人とBとの間のやり取りと辻褄が合うなどしている点も、Bが1万2000円を盗られた旨の虚偽の被害申告を行うために、辻褄の合う周辺事情と関連付けて、具体的かつ一貫した供述をしていることも考えられなくはない。
 以上によれば、Bの供述の信用性を肯定する根拠となる前記諸事情を踏まえてもなお、Bが虚偽の供述を行っている可能性は残ると言わざるを得ない。他方で、被告人供述については、これを排斥するような事情は見当たらない。
 そうすると、前記窃盗の公訴事実については、合理的な疑いを差し挟む余地がないほどの証明がなされたとはいえないから、刑事訴訟法336条により、被告人に対し無罪の言渡しをする。
(求刑 懲役4年)
刑事第4部
 (裁判官 伊藤大介

強制わいせつ罪について「被告人が被害者の陰部に指を挿入するなどした事実や、被害者が被告人から胸をなめられるなどした際に、「やめてください」と言うなどして拒否する態度を示した事実を認定するには合理的な疑いが残る」などとして無罪とした上で予備的訴因である青少年条例違反罪についても「本件の性的な行為について、被告人が被害者を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような行為をしたと認めるには、合理的な疑いが残るといわざるを得ない。」として無罪とした事例(仙台地裁H30.2.8)

「被害者の供述には、不自然な部分や自己に不都合な事実を隠そうとする供述経過等があるため、これに符合するようなメッセージ送信などの事実やBの供述があることに照らしても、被害者の供述を全面的に信用するのは難しく、被害者が被告人と性的な接触をした時点で、被害者の同意がなかったと認めるのはためらわれる上、少なくとも、被告人は、被害者が被告人と性的な接触をすることについて同意していたと認識していた可能性が排斥できず、被害者の同意に関し誤信があった合理的な疑いが残る」とされています。
 青少年条例違反もこういう関係でも無罪になるようです。

仙台地方裁判所平成30年02月08日
 上記の者に対する強制わいせつ(予備的訴因 宮城県青少年健全育成条例違反)被告事件について、当裁判所は、検察官矢部良二及び髙山由子並びに私選弁護人薄井淳(主任)及び同草場裕之各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人は無罪。

理由
第1 公訴事実及び争点等
 1 本件各公訴事実
  本件公訴事実のうち、主位的訴因は、「被告人は、A(当時17歳。以下「被害者」という。)に強いてわいせつな行為をしようと考え、平成28年11月8日午後6時30分頃(以下、年号はいずれも平成28年である。)、宮城県(以下略)E店屋上駐車場(以下「本件駐車場」という。)に駐車中の自動車(以下「本件車両」という。)内において、助手席に座っていた被害者に対し、いきなり覆いかぶさって助手席シートを倒し、その両乳房をもみ、乳首をなめ、更に下着の中に手を差し入れて陰部に指を挿入して弄ぶなどし、もって強いてわいせつな行為をした。」というものであり、予備的訴因は、「被告人は、11月8日午後6時30分頃、本件駐車場に駐車中の本件車両内において、被害者が18歳未満の者であることを知りながら、単に自己の性的欲望を満足させるため被害者の両乳房をもみ、乳首をなめ、更に下着の中に手を差し入れて陰部に指を挿入して弄ぶなどし、もって青少年に対しわいせつな行為をした。」というものである。
 2 争点等
  主位的訴因については、被告人が被害者に対して行ったわいせつ行為の内容のほか、〈1〉被害者がわいせつ行為に同意したか、〈2〉被告人がその同意があると誤信したかが争われ、予備的訴因については、〈3〉年齢の知情性及び〈4〉淫行行為の該当性が争われており、被害者の供述の信用性の評価が大きく対立している。
  (1) 検察官は、11月8日午後6時40分に被害者が友人のBに「助けて」というメッセージをFで送り、Bに会うなどして本件被害を打ち明け、同日午後9時15分にBが被害者の携帯電話機を使って警察に本件被害を伝え、その後被害者が警察署で事情聴取を受け、他方、被告人が同日午後10時48分以降に被害者に謝罪するメッセージを繰り返し送信するなどしているから、被告人が被害者に対し意に反する重大なことをしたことが合理的に推認でき、そうした事実等とも整合する被害者供述が信用できるとし、これに依拠して、被告人が主位的訴因のとおりのわいせつ行為を行ったことのほか、被害者は「やめてください。」と言うなど被告人による性的な接触を明確に拒む態度を示していたから、被害者の同意も、被告人に被害者の同意があるとの誤信もないと主張し、また、予備的訴因について、被害者は、本件以前に被告人に年齢などを伝え、本件時に被告人が被害者に対し、お金をあげるなどと伝えているから、被害者が18歳未満の者であることを知りつつ、被告人が単に自己の性的欲望を満足させるために本件を行ったことは明らかであると主張する。
  (2) 他方、弁護人は、被害者の供述には大きな変遷があり、供述内容も不自然不合理で全く信用性がないとして、その供述に沿うわいせつ行為の存在を争うほか、主位的訴因に対し、性的行為に至る経緯や心理的経過を含め具体的かつ自然に述べる被告人の供述は信用できるとして、〈1〉被害者は、被告人と性的な接触をすることについて同意していた、〈2〉仮に被害者の同意がなかったとしても、被害者は、当初は被告人との性的な接触を拒否する態度を示しておらず、その途中で「やっぱり彼氏がいい。」と言い出し、それ以降は性的な接触をしていないため、被告人には被害者の同意があるとの誤信があったと評価すべきであると指摘し、また、予備的訴因に対しても、被告人は、〈3〉被害者が18歳未満であることを知らなかった、〈4〉被害者に対する真摯な恋愛感情があり、それに基づき性的行為に及んでいるから、単に自己の性的欲望を満足させるための行為ではなかったと指摘して、被告人はいずれも無罪であると主張し、被告人も公判でこれに沿う供述をする。
  (3) 当裁判所は、概要、主位的訴因について、被害者の供述には、不自然な部分や自己に不都合な事実を隠そうとする供述経過等があるため、これに符合するようなメッセージ送信などの事実やBの供述があることに照らしても、被害者の供述を全面的に信用するのは難しく、被害者が被告人と性的な接触をした時点で、被害者の同意がなかったと認めるのはためらわれる上、少なくとも、被告人は、被害者が被告人と性的な接触をすることについて同意していたと認識していた可能性が排斥できず、被害者の同意に関し誤信があった合理的な疑いが残ること、予備的訴因については、交際状況に関する捜査が十分ではない上、捜査段階では年齢の知情性に関し何ら捜査がされていないところ、本件の証拠関係に照らすと、被告人が、被害者が18歳未満であることを知っていたと認めるには合理的な疑いが残り、さらに本件の性的な行為が条例が禁じる淫行行為に当たると認めるには合理的な疑いが残ることから、被告人はいずれも無罪と判断したので、以下、その理由を説明する。

第2 主位的訴因に対する当裁判所の判断
 1 前提事実
  証拠によれば、以下の前提事実が認められる。
  (1) 被告人と被害者は、3月頃、被告人がSNSを通じて被害者に対し連絡したことをきっかけに、Fでやり取りをするようになり、二人は本件以前に少なくとも5月頃及び夏頃(6月後半から7月中旬までの間)の2回会った。二人が会った際には、いずれも、被告人が運転する本件車両に被害者が乗り込み、被告人が被害者を自宅付近まで送り届けていた。なお、被告人と被害者は、本件に至るまで、被告人を「Y」と、被害者を「A'」と呼び合い、お互いの本名を教え合っていなかった。また、夏頃に会ってから本件当日までの間に、被告人と被害者が会うことはなかったが、その間、被告人と被害者のFでのやり取りは断続的に行われていた。
  (2) 被告人と被害者は、Fでのやり取りで本件当日に会うこととなり、二人は、11月8日午後6時頃、本件駐車場で待ち合わせた。その頃、被害者は、本件車両に乗り込み、被害者の用事を済ませるため付近の武道館まで本件車両で移動し、その用事を済ませた後、再度本件車両の助手席に乗り込み、被告人の運転で本件駐車場に戻った。
  (3) 被害者は、同日午後6時40分頃、Bに対し、「たすけて」というメッセージをFで送信したほか、同日午後7時4分頃にBと通話し(甲10)、その後、B宅に行き、Bに対し、本件車両内で被告人と性的な接触をしたことなどを相談した。また、被害者とBは、同日、警察に対し、被告人から強制わいせつの被害を受けた旨通報し、被害者は、同日午後9時50分頃から行われた本件駐車場の実況見分に立ち会うなどした(甲3)。
  他方、被告人は、同日午後10時48分頃以降、被害者に対し、「嫌な気持ちにさせてほんとに申し訳ありません。」「死刑でも何でもうけます。家族だけは助けてください。」などの内容のメッセージをFで送信し(甲10)、また、本件車両内に遺留された被害者の自宅のかぎの返還などに関し、被害者とメッセージのやり取りをした(甲11)。
 2 被害者の同意の有無等について
  以上を前提に争点について検討を加える。本件ではわいせつ行為の態様にも争いがあるが、より重要な争点である被害者の同意の有無等(前記〈1〉、〈2〉)を中心に検討を加えることとする。
  (1) 被害者供述の信用性
  ア 被害者は、公判において、概要、本件当日に本件駐車場に戻った後、本件車両から降りようとしたが、ドアが施錠されていたので、被告人に対し降りないのかと聞いたところ、被告人は被害者が座っていた助手席のシートをいきなり倒し、被害者に覆いかぶさり、被害者の両乳房を直接もみ、乳首をなめたため、被告人に「やめてください」と言ったり、被告人の手を払ったりした、被告人は行為を止めなかったので、自身の左脇に置いていたバッグの中で携帯電話機を操作して、Bに対し「たすけて」というメッセージをFで送信した、被害者は、被告人の手を払おうとしたが、被告人に手や足を使って押さえ付けられ、陰部に指を挿入された、被告人は被害者に対し陰茎をなめるよう言ったが、これに応じなかった、被告人が被害者の身体から離れた隙に、ドアのかぎを開けて降車し、走って逃げた、などと供述する。
  イ この点、性的な行為があったとされる時間帯に「たすけて」というメッセージをBに送信したことは、意に反する性的な行為を受けたとの供述をよく裏付けており、被害者が供述するような体勢でも、「たすけて」との単純なメッセージを送信する動作をすることは不可能ではないから、これ自体としても、被害者の意に反して被告人が性的な接触をしたことを一定程度推認させるものである。もっとも、突然被告人から助手席のシートを倒され、乳首をなめられるなどの性的被害を受け、振り払った手を被告人の手や足で押さえられたりする中で、バッグの中にあった携帯電話機を操作して、Fアプリを作動させて特定の者を選択してメッセージを送信する余裕があったかという点や、二人の体勢も含め性交渉のやり取りを具体的に述べる被告人の供述に比して、被害者は、必死に助けを求めた際の被害者と被告人の位置関係・姿勢や送信時の性行為の内容などについてあいまいな供述しかしていない点など、被害者の供述は、やや不自然さがぬぐえない。
  また、被害者は、Bに上記メッセージを送信したことに加えて、その送信から24分後に、Bに対し電話をかけ、その後同人と会って被告人との性的な接触があったことを相談し、同日中にBと共に警察に強制わいせつの被害を申告し、同日午後9時50分から警察の実況見分に立ち会うなどしている。Bは、この点、被害者が泣きながら電話をかけてきて、陰部を触られるなどの被害を訴えた旨供述しており(Bの供述は、このようなやり取りがあった限度では疑うべきところはない。)、犯行直後にBに被害を打ち明け、さほど時間を置かずに警察に被害申告した経過も、被害者の意に反する性的な接触があったこととよく整合する事実である。しかし、被害者の供述によると、シートを倒されて以降さほど長い時間被告人による性的な接触を受けていないとうかがわれる(被告人は駐車していた時間が10分か15分と述べる。)が、上記メッセージの送信時点では既に性的な接触があったはずであるから、その時点から電話をかけるまで24分もの時間を要したのは、当初の両乳房をもまれるなどしてから陰部に指を入れられるまでの一連の行為が意に反していたとすると、経過としてやや不自然さがある。一方、この点は、被告人が弁解するように、被害者が当初は被告人との性的な接触について拒絶の態度を示していなかったものの、途中から「やっぱり彼氏がいい。」と考えて、被告人との性的な接触を嫌がった被害者が動転し、本件車両を降りる前後にメッセージを送ったとしても、説明が付かないわけではないと思われる。また、後記エのとおり、被害申告しながら、ほぼ同時に被害者が被告人との関係性を隠すような行動をしたことは無視できない。
  ウ さらに、被害者は、本件以前の5月頃に被告人と会った際、被告人と車内で性交した旨供述する。この事実は、被害者に相当不利なものであるから、虚偽供述する理由はなく、被告人と被害者は5月頃に本件車両内で性交をしたと認められる(被告人は乳首をなめたりしたのにとどまるとして性交の事実を否定しており、この点が一致しないのは理解困難であるが、被告人の供述等を踏まえても、比較的濃厚な身体接触があったことに変わりはなく、性交したと認定することを妨げない。)。このほか、被告人と被害者が夏頃会った際、二人がキスした事実は被告人と被害者が一致した供述をしている上、被告人はその機会にも被害者の胸をなめたり、陰部に指を入れた旨供述するが、交際が浅い5月頃には被害者が被告人との性交を許したことに照らすと、この供述を排斥するのは困難である。このように、二人は過去2回会う度に本件車両内で性的な接触をした関係にあるから、本件当日も被告人が性的な接触に及ぶことは十分予想できる状況にある。そのような状況で被害者が本件車両に乗ったことや、シートに座っていた被害者のズボンを下げるには被害者の腰を上げるなどの動作を伴う方が容易であること、被害者は隙をついて逃げたというのに本件車両から降りた時点で膝まで下がったズボンを多分はいていたと述べていることも、被害者が被告人から性的な接触をされて嫌だったとの供述の信用性に疑いを生じさせる方向に働く事情である。
  この点、被害者は、5月頃の性交の際は彼氏がおらず、被告人と性交してもいいかなと思っていたのに対し、本件当時は、好きな人がいたので嫌だった旨供述する。被害者が当時17歳と若年であることや、被告人と最後に会ってから数か月が経過していることからすれば、被害者に既に好きな人がいたために、過去2回とは異なり、本件当時はそれに応じる意思を欠いたとしても不自然ではなく、その供述が不合理とはいえない。しかし、そのような被害者の心情を踏まえても、二人の従前の関係性等を考慮すると、本件当日において被害者が被告人との性的な接触を当初は受け入れ、途中から気持ちが変わって、被告人との性的な接触を嫌がったとの疑いが払拭できるわけではない。
  エ 加えて、被害者供述の信用性に疑問を差し挟むべき事情として、被害者が、本件直後に被告人との従前のFメッセージのデータを削除した点が挙げられる。一部が復元されたデータ(甲22)によれば、削除したデータの中には、知り合って以降の被告人との親密なやり取りが推認されるものがある。そして、被害者は、捜査段階において、夏頃に会って以降、被告人とFでのやり取りはなかったと述べ(弁24)、5月頃に被告人と性交した事実も供述していなかったところ、これらの事実を公判段階で初めて明らかにした。被告人は、捜査の早い段階で被害者と2回くらい性的な接触をした旨述べていたというのであり、従前の被害者と被告人との関係性は重要な事実であるから、被害者に対しても捜査官は必ずこれに関連する質問をするはずである。したがって、捜査段階では、被害者があえてこれを供述せず、また、被告人との良好な関係性を示すデータを消去したとしか考えられない。これらの事情からすれば、被害者は、本件直後や捜査段階において、何らかの自己に不利な事実を隠そうとしていたと認められる。そして、本件当日に警察に被害申告するのと並行してデータ消去等をしたことは、上記イの被害申告等の事実を、被害者供述を補強するものと扱うことにも疑問を生じさせる。
  オ その他、Bの公判供述によれば、被害者は、被告人の陰茎をなめた事実がないのに、本件当日及び翌日に、Bに対し、被告人の陰茎をなめさせられたと述べているから、Bが聞いた被害者の供述には、被害内容を誇張する部分があったとみる余地がある。また、被害者は、本件後に手首と足に痣があったと供述し、Bも、被害者から痣を見せられた上、痣の写真データをもらった旨供述しており、この点の両者の供述は一致するものの、これらの供述を裏付ける客観証拠はないほか、通常、被害者が警察に被害申告しながらその裏付けとなる痣について申告しないことは考えられないところ、12月18日の取調べで供述(弁28)するまで、被害者が捜査機関に痣を見せたり写真を提出したりした形跡はなく、痣に関する被害者供述にも不自然な面がある。
  カ そうすると、被害者供述の全体の信用性には疑問が残るといわざるを得ない。
  なお、検察官は、Bの公判供述は信用でき、これと一致する被害者の供述も信用できると主張する。しかし、Bと被害者の供述が一致するのは本件当日の出来事の一部にすぎない上、B供述の主要部分はBが被害者自身から聴取したことを基にしている。したがって、Bの供述は、独自に被害者供述を裏付けるようなものではなく、その聴取の仕方も、Bが誘導的な質問をして被害者が肯定か否定をするようなものであったとうかがわれるから、被害者供述の信用性を大きく支えるものではない。なお、B自身、被害者が本件前に被告人と性交していたことを知っていたら、被害者にそこまで協力しなかったと端的に述べているが、これも被害者が大げさに被告人との出来事を伝えたことをうかがわせる事情といえる。
  また、検察官は、被害者には虚偽供述をする理由がない旨も主張する。確かに、検察官が主張するとおり、被告人と被害者の本件以降のFでのやり取りの状況からすると、示談目的での虚偽供述の可能性は考えにくいものの、他方で、好きな人がいるのに被告人と性的な接触をした言い訳などとして、虚偽供述をする事態も全く考えられないわけではない。
  よって、検察官の指摘を踏まえても、被害者の供述の信用性に関する上記評価は変わらない。
  (2) 被告人供述の信用性
  ア 被告人は、公判において、概要、本件駐車場に戻った後、本件車両内において、被害者に対し、「好きな人いるの」と聞くと、被害者が「いないよ」と言ったので、被害者にキスをして、被害者の胸をもんだり胸をなめたりし、更にズボンの上から被害者の陰部を触ってから、ズボンを膝辺りまで脱がせて被害者の下着の中に手を入れ、直接陰部を触ったこと、すると、陰部を直接触り始めて少ししてから、突然、被害者が「彼氏がいい。」と言ったこと、そのため、びっくりして被害者のズボンをはかせ、被害者から「帰る。」と言われたので、「送っていくよ。」と言うと、被害者が「母親が迎えに来るからいい。」と言って降車し、被害者と別れたことなどを供述する。
  イ この点、被告人は、同日午後10時48分以降、被害者に対し謝罪するFメッセージを多数回送信しており、その中には「死刑でも何でもうけます。」との相当重大な事態が生じ、それに責任を感じなければ書かないような文面もある上、被告人と証人Cとのやり取りの中でも、「俺やっぱ生きていけないわ」などと重大な事態が生じた旨の認識を有しているかのようなFメッセージを送信しており、これらの事実からすると、被告人は、本件に関し、相当に罪の意識を感じていた様子がうかがえる。この点、被告人が述べるとおりであれば、交際相手がいないと考えていた女性と性的な接触をしたにすぎず、被告人のこれまでの交際状況等に照らし、常識的にはそれほど強い罪の意識を感じる必要はないから、これらの客観証拠は、被告人が供述する状況と矛盾するように見え、その供述の信用性に疑いを生じさせる。
  もっとも、被告人の供述を前提にしても、被害者に好きな人がいたから、性的な接触が実際には被害者の意思に反していて、これを重く受け止めたとの説明は一応可能である。すなわち、被告人の年齢や社会経験の乏しさに加えて、被告人が被害者の周辺人物や交遊関係を警戒していた心理状態も踏まえると、被告人が、結果的に被害者の意思に反する性的な接触を行ったことについて、結婚式を控えた自己の家族に迷惑がかかることも含め、強い焦りや罪悪感などを感じたことも、あながち理解できないわけではない。かえって、被告人は、本件当時、被害者から「彼氏がいい。」と言われた旨供述するが、この点は、被告人が被害者に送信したFメッセージの中に、「彼氏いたことも知らなくてすいません。彼氏いたからいないからとかの問題じゃないと思ってます。」との内容のものがあることと整合しないわけではない。
  そうすると、被害者とのメッセージのやり取りに関する心理描写を含め、詳しく述べる被告人の供述全体を信用できないとして完全に排斥することはできない。
 3 強制わいせつ罪の成否についての評価
  (1) 以上の検討からすると、被害者の供述を全面的に信用するのはためらわれ、被害者の供述から、被告人が被害者の陰部に指を挿入するなどした事実や、被害者が被告人から胸をなめられるなどした際に、「やめてください」と言うなどして拒否する態度を示した事実を認定するには合理的な疑いが残るといわざるを得ない。
  (2) さらに、被告人と被害者の関係をみると、被告人は、本件以前に被害者と2回会った際、いずれも被害者に拒否されずに性的な行為に及び、5月頃には性交にも及んでいる。そうすると、被告人は、本件当時も、被害者が性的な接触に応じることに強い期待があったと合理的に推認できる。この点、検察官は、被告人と被害者は性的な行為に及ぶことが当たり前の関係にはなかったと主張するが、少なくとも、二人が会った際に性的な接触に及ぶ可能性は相応にある関係にあったといえ、被告人としても、被害者と再び会えば性的な接触に至ることは当然期待していた状況にある。
  また、被告人と被害者は約半年間会っていなかったものの、Fでのやり取りを継続しており、それには日常生活に関する些細な内容も含まれているなど、ある程度親密な関係にあったと認められる。そして、本件以前の性的な接触は、いずれも被害者が被告人の車両に乗り、被告人が被害者を自宅付近まで送り届けるなどした際に、本件車両内において生じたものであるところ、本件も被害者が本件車両に乗り、被害者の用事のために被告人が送迎した後に、その車内で性的な接触が行われており、これらの事実経過はほぼ共通する。一方で、今回に限り、被害者と性的な接触を図るという被告人の強い期待感が解消されていたような特別の事情は証拠上うかがえない。
  さらに、被害者は、警察に被害申告しながらも、しばらくの間被告人に対し、処罰を求めるというよりは謝ってくれればよいというメッセージのやり取りを繰り返している。このことは、意に反して陰部に指を入れられたりする性的被害に遭ったことと矛盾はしないものの、一方で、被告人がいうように、被害者が性的な行為を受け入れている最中に彼氏がいることを思い出し、嫌悪感や躊躇を感じて性的な行為をやめたとしても、彼氏がいるのに性的な行為をしてしまったことの謝罪が問題になっているものとして、自然に理解できる。
  (3) 以上の事情からすれば、本件後の被告人の罪悪感の感じ方にはやや不自然さが残るにしても、本件当時、被告人は、被害者が被告人と性的な接触をすることについて、同意していると信じていたとしても、特に不合理であるとはいえない。
  したがって、被告人に対し、被害者に対する強制わいせつ罪が成立すると認めるには、合理的な疑いが残る。
第3 予備的訴因に対する当裁判所の判断
 1 被告人は、本件当時、被害者を大学生と思っており、被害者が18歳未満であるとは知らなかった旨供述する。一方、被害者は、5月頃に会った際に自分の誕生日の話になったことや、被告人から何歳かと聞かれて年齢を答えたことを供述する。
  確かに、被害者は5月が誕生月であるが、上記第2のとおり、被害者の供述は全体として信用性に疑問の余地がある上、SNSを通じて知り合い、本名も教え合っていない若者同士の関係性において、お互いの誕生日や年齢の話をすることについての明確な経験則など存在せず、その裏付けもないのに、被告人に年齢を教えたとの被害者の供述を直ちに信用することはできない。
 2 また、被害者は、3月頃に、被害者が制服を着用している写真(甲11)を掲載するSNSを見た被告人から連絡があった旨供述し、検察官もこの点を年齢知情の根拠として指摘する。しかし、被告人がSNSで被害者の写真を見たことがあったとしても、被告人が見た写真が甲11号証そのものであることに関する被害者供述には裏付けがないし、その写真がいつ撮影されたもので、どの程度の期間掲載されていたかの被害者の説明もない。また、その写真は、それ自体として18歳未満という認識を生じるような内容でもない。
  さらに、被害者は、本件以前に高校まで被告人に迎えに来てもらい、制服姿で会ったことがある旨供述し、他方、被告人は、3月頃、D大学の門の前へ行って被害者と会ったが、その際、被害者がコートを着ていて中に何を着ていたか分からなかったと供述する。この点、その敷地内には大学と付属高校が存在し、門の前だけでは被害者がどちらの学校に所属しているか直ちに判別できないし、前年度である3月頃の時点で被告人が制服姿の被害者を門の前まで迎えに行ったとしても、翌年度である本件当時の時点で、被害者が18歳未満であったとの認識を被告人が有していたことには当然にはならない。
  なお、被告人は、本件後に被害者から「高校にも行けない」旨のFメッセージを受け取ったのに対し、大学生ではないのかなどと聞き返したり驚いたりした形跡はなく、この点は被害者が高校生であることを被告人が認識していたとうかがわせる事情ではあるが、こうした事後のやり取りの状況のみから被告人が被害者の年齢を具体的に認識していたと推認するのは適当ではないと考える。
 3 そもそも、本件当時、被告人が被害者の年齢を知っていたかどうかについては、捜査段階において何ら捜査がされていないどころか、被害者と被告人との従前の関係性について、被害者側の供述を重視してこれを疑う姿勢が欠け、被害者が捜査官に示した以外に従前のFでのやり取りがあるかどうかを確認したり、削除されたFでのやり取りを復元することなどもしていない結果、本件以前のFでのやり取りなどの、二人の交際状況や年齢の認識に関する重要な資料となるはずの証拠が欠ける事態となっている。
  しかるに、この点に関する被告人と被害者の供述は対立していて、被告人が被害者の年齢を知っていたことを示す明確な証拠がない以上、被告人が被害者の年齢を認識していたとの事実を認定するには合理的な疑いが残るといわなければならない。
 4 もっとも、宮城県青少年健全育成条例41条6項は、当該青少年の年齢を知らないことに過失のないときを除き、年齢を知らないことを理由として、同条1項の規定による処罰を免れることはできない旨定めている。そこで、〈4〉の争点である「みだらな性行為又はわいせつな行為」の該当性についても以下検討する。
  宮城県青少年健全育成条例における「みだらな性行為又はわいせつな行為」とは、青少年を対象とした性行為やわいせつな行為を広く対象とするものではなく、(1)「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不正な手段により行う性交又は性交類似行為」、(2)「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」をいうと解される(昭和60年10月23日最高裁大法廷判決参照)。そして、これに該当するか否かは、行為当時の両者の年齢、性交渉に至る経緯、その他両者間の付合いの態様等の諸事情を考慮し、健全な常識を有する一般社会人の立場から決せられることになる。
  上記第2のとおり、被害者の供述は、全体として信用性に疑問の余地があり、被害者が供述するように、被告人が嫌がる被害者の手や足を押さえ付けるなどしたり、お金をあげるからと言った上で性的な行為に及んだりしたと認定することには合理的な疑いが残る。そして、被告人と被害者の年齢差、本件に至るまでのやり取りや関係性に照らして、その心身の未成熟に乗じた不正な手段(上記(1))により性的な行為に及んだと認めることは困難である。次に、(2)の点についてみると、被告人は4月に大学を卒業したばかりの23歳、被害者は5月に17歳になった高校2年生であり、交遊関係等が発展して交際することになっても不自然ではない年齢差である。被告人は、友人の交際相手を探す過程で被害者とSNSを通じて会うこととなったが、出会い系サイトなどを通じて交際を始めたわけではなく、知り合った際には、既に被害者には性行為の経験があったと解される。また、性交に至る経緯や付合いの状況についてみると、3月中旬に被告人と被害者が初めて会った際には(その頃に会ったとする被告人供述を排斥できない。)、車に乗せて世間話をした程度にすぎなかったが、その後はFでのやり取りを続け、5月頃に会った際には、二人は車に乗ってGで飲み物を買い、どういう人が好きかを被告人が被害者に聞き、被害者が年上の人が好きなどという会話をし、信号待ちの際には被害者が被告人に寄り添うこともあった。そして、被告人は、被害者方の近くまで送り届けた車内で、好きと言いながら被害者にキスをし、性交に至っている。また、二人は、また遊ぼうと約束して別れ、その後も、Fでのやり取りを続けた。夏頃にも二人は午後9時頃に会い、スーパーに寄るなどした後、車で被害者方の近くまで送り届け、その車内で、被告人が被害者にキスをし、胸をなめたり、陰部に指を入れるなどしたが、性交まではしなかった。その後、被告人と被害者は、Fで日常生活に関わるやり取りなどを繰り返した。本件の際も、Fでのメッセージを通じて午後6時に会うこととなったが、被害者の希望で、本件車両で武道館に行き、被害者の用事を済ませ、その後、本件駐車場に戻り、性的な行為に至っている。性的な行為の際には、被害者から積極的な性行為に及んでいないものの、当初は被告人の行為に特に拒絶的な態度を示しておらず(上記第2のとおり、被害者が当初から「やめてください」と言うなどして拒否する態度を示した事実を認定するには合理的な疑いが残る。)、被害者が「彼氏がいい。」と言うと、被告人は直ちに性的な行為を止めている。
  以上を踏まえて検討すると、二人は2回目に会った際に自動車内で性交に及び、かつ、3回目に会った際にも性的な行為に及んでおり、これらに照らすと、被告人が性交渉を目的として被害者と会っていた疑いは否定できない。しかしながら、二人は、5月頃や夏頃以降もFで日常的なやり取りを行っており、その後本件に至るまでの間に被告人が積極的に性的な行為を求めたようなところもなく、会った際には性的な行為以外のやり取りもしている。その上、被害者に対し本件当時に好意を抱いていたという被告人の供述を排斥することはできない。被告人や被害者のような年齢層の若者が交際する中で、性的な行為に至ることを期待したり、自然に性衝動などが生じることは通常のことであるし、被告人は、「彼氏がいい。」との被害者の言葉で性的な行為を止めていて、被害者の意向にも配慮している。このような事情にも照らすと、被告人は、専ら自己の性欲を優先したとまではいい難い。加えて、捜査段階において、被害者と被告人の従前の関係性について十分な捜査がされておらず、交際状況に関する証拠が欠けている。
  そうすると、本件の性的な行為について、被告人が被害者を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような行為をしたと認めるには、合理的な疑いが残るといわざるを得ない。
 5 以上によれば、予備的訴因の立証が尽くされたとは認められない。
第4 結論
  結局、本件各公訴事実については、主位的訴因及び予備的訴因のいずれについても犯罪の証明がないことに帰するから、刑事訴訟法336条により、被告人に無罪の言渡しをする。
(求刑 主位的訴因につき懲役2年、予備的訴因につき罰金30万円)
第2刑事部
 (裁判長裁判官 小池健治 裁判官 内田曉 裁判官 西村有紗

淫行する際の年齢確認義務は「具体的には、単に青少年の年齢、生年月日を尋ねただけ、あるいは身体の外観等からの判断だけでは足りず、自動車運転免許証、住民票等の公信力のある書面で確認するか、又は、保護者に問い合わせるなど客観的に通常可能とされるあらゆる方法を用いて確認している場合をいう。」 新潟県青少年健全育成条例の解説H11

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 児童買春罪との関係はどうかな

新潟県青少年健全育成条例の解説H11
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第20条何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年にわいせつな行為をさせてはならない。
3 何人も、青少年に第l項の行為を教え、又は見せてはならない。
{要旨]
本条は、青少年に対し、みだらな性行為やわいせつな行為をすること、又は、わいせつな行為をさせること、並びに、みだらな性行為やわいせつな行為を教え、見せることを禁止したものである。
【解説】
l 本条は、一般に青少年が心身共に未成熟であり、精神的な痛手を受けやすく、また、その痛手からの回復が困難であることから、青少年の健全な育成を図るため、青少年を対象としてなされる性行為等のうち、その育成を阻害するおそれのあるものとして社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止したものである。
その行為の認定にあっては、当時における両者のそれぞれの年齢、性交渉に至る経緯、その他両者の付き合いの態様等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断されるべきものであるo
2 第l項は次のように解釈される。
(1) 「何人」とは、県民はもとより、旅行者、滞在者を含み、現に本県内にいるすべての人を指す。
青少年が主体である場合は、本条例第31条の規定により処罰は適用されない。
(2) 「みだらな性行為」とは、健全な常識のある一般社会人からみて、不純とされる性交及び性交類似行為をいう。
具体的には、次の2類型をいう。
O 青少年を誘惑し、脅迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な
手段により行う性交又は性交類似行為
O 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認めら
れないような性交又は性交類似行為
(最高裁判決昭和60. 10. 30)
(3) 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激、興奮させたり、その露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に対し、性的な差恥嫌悪の情を起こさせる行為をいう。
3 第2項は、児童福祉法第34条第1項第6号で「児童に淫行させる行為」だけを禁止していることから、「わいせつな行為jについても条例で規制したものである。
4 第3項は次のように解釈される。
(1) 「教え」とは、みだらな性行為やわいせつな行為を相当程度具体的に教示することであり、
単に一般的なひわいな談話をすることなどはこれに該当しない。
(2) 「見せ」とは、みだらな性行為やわいせつな行為を直接的に青少年にみせることをいう。文書、図画、映像、その他の物によって見せることは該当しない。
5 過失犯規定の適用
第29条第6項の規定により、青少年の年齢を知らないことを理由として、処罰を免れることはできない。
「ただし、過失がないとき」とは、社会通念に照らし、通常可能な確認が適切に行われているか否かによって判断される。
具体的には、単に青少年の年齢、生年月日を尋ねただけ、あるいは身体の外観等からの判断だけでは足りず、自動車運転免許証、住民票等の公信力のある書面で確認するか、又は、保護者に問い合わせるなど客観的に通常可能とされるあらゆる方法を用いて確認している場合をいう。

第29条
1 第20条第1項又は第2項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。


6 第15条の9第1項若しくは第2項又は第20条第l項、第2項若しくは第3項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第l項又は第3項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

【要旨】
本条は、条例違反者に対する制裁規定であり、この条例が関係者によって確実に守られ、その目的が達成されることを確保するために罰則を規定したものである。
【解説】
第6項の規定は、青少年の健全な育成を阻害するおそれが強く、当然社会的にも非難されるべき行為について、青少年の年齢を知らなかったとしても、そのことを理由に処罰を免れることができない旨を規定しているもので、青少年保護の実効性を確保しようとするものであるo
「ただし、過失がないときjとは、社会通念に照らし、通常可能な確認が適切に行われているか否かによって判断される。
具体的には、単に青少年の年齢、生年月日を尋ねただけ、あるいは身体を外観等からの判断だけでは足りず、自動車運転免許証、住民票等の公信力のある書面で確認するか、又は、保護者に問い合わせるなど客観的に通常可能とされるあらゆる方法を用いて確認している場合をいう。

児童ポルノ等の提供の要求罪(兵庫県青少年愛護条例)

 過失でも処罰されます。自称女子大生(実は13歳)に要求すると処罰されます。
 交際関係なら処罰されないとか言ってますね
 送ってしまったときの、姿態をとらせて製造罪との関係は吸収関係ですかね? 保護法益違うから包括一罪ですかね。

兵庫県少年愛護条例の解説H30
児童ポルノ等の提供の求めの禁止)
第21条の3
何人も、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項に規定する児童ポルノ及び同項各号のいずれかに掲げる姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録をいう。以下同じ。)の提供を求めてはならない。

【要旨】
この条は、いわゆる児童ポルノの自画撮り勧誘行為を禁止したものである。

【解説】
lこの条は、スマートフォン等の普及に伴い、SNSに代表されるコミュニティサイト等を通じて知り合った相手に、青少年が自身の裸や下着姿を撮影させられた上、メール等で送らされる事案が後を絶たないことを受け、平成29年の改正により新設されたものである。
2「何人も」とは、前条の解説のとおりである。
3勧誘行為は、インターネットを通じて行われることがほとんどであるが、インターネットを通じて犯行が行われた場合、行為者が勧誘行為を行った場所のみならず、被害者となる青少年が勧誘行為を受けた場所である結果発生地も犯罪地となる。よって、コミュニティサイトやメールなどを利用して県外から県内の青少年に提供を求める行為、県内から県外の青少年に提供を求める行為についても規制の対象となる。
4「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、いわゆる「自画撮り画像」をいう。「児童ポルノ等」には、写真や電磁的記録に係る記録媒体のほか、メール等に添付する画像データも含まれる。
5本条の規定に違反して、当該青少年に対し、不当な手段(「欺き、威迫し又は困惑させる方法」及び「財産上の利益を供与し、又はその供与の申込み若しくは約束をする方法」)により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めた場合は、30万円以下の罰金又は科料に処せられる。(第30条第5項第12号)

6本条は、不当な手段を用いた要求行為のみを禁止しているものではなく、恋愛関係にある場合や冗談等であっても、児童ポルノ等のやり取りにより、インターネット上への画像の流出やリベンジポルノに繋がり、青少年を将来に渡って苦しめる要因となる危険性が否定できないことから、青少年に対して児童ポルノの自画撮り画像を要求する行為は、いかなる態様であっても禁止するものである。

ただし、罰則については前述の不当な手段によるもの以外は適用しない。

・・・
第7章罰則
(罰則)
第30条
1次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(1)第20条第1項又は第2項の規定に違反した者
(2)第21条第1項の規定に違反した者

5次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
(12)第21条の3の規定に違反して、次に掲げる方法により、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めた者
ア青少年を欺き、威迫し又は困惑させる方法
イ青少年に対し、財産上の利益を供与し、又はその供与の申込み若しくは約束をする方法

6第17条第1項(同項第4号又は第9号に係る部分を除く。)、第20条第1項若しくは第2項、第21条第1項若しくは第2項、第21条の2、第21条の3又は第24条第2項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第1項又は前3項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
【要旨】
この条は、この条例の規定に違反した者に対する罰則を定めたものである。

【解説】
(14)みだらな性行為又はわいせつな行為を青少年に教え、又は見せた者

(16)青少年を欺き、威迫し又は困惑させる方法により当該青少年に係る児童ポルノ等を求めた者
「欺く」とは、事実および評価についての人の判断に誤りを生じさせる行為をいう。
「威迫」とは、脅迫に至らない程度の人に不安を生ぜしめるような行為をいう。
「困惑させる」とは、相手方を困らせて戸惑わせる(不安にさせる)ことをいう。

(17)青少年に対し、財産上の利益を供与し、又はその供与の申込み若しくは約束をする方法により当該青少年に係る児童ポルノ等を求めた者
「財産上の利益」とは、金品だけでなく、金員貸与、債務免除などを含む。

6第6項は、次に掲げる行為を行った者は青少年の年齢を知らなかったことを理由として処罰を免れることができない旨を定めたもので、相手が青少年であるか否かの確認を義務づけたものである。
(8)青少年に対し入れ墨を施した者、又は青少年に対し勧誘し、若しくは周旋して入れ墨を受けさせた者
(9)青少年にみだらな性行為又はわいせつな行為をした者、又は青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為を教え又は見せた者
(10)青少年から使用済み下着等の買い受け等を行った者
(1l)青少年を欺き、威迫し又は困惑させる方法により当該青少年に係る児童ポルノ等を求めた者
(12)青少年に対し、財産上の利益を供与し、又はその供与の申込み若しくは約束をする方法により当該青少年に係る児童ポルノ等を求めた者
(13)保護者等の委託を受けず、承諾を得ない等正当な理由なく深夜に青少年をその住所等から連れ出し、又はその住所等以外の場所に居させた者
「過失のないとき」とは、単に青少年に年齢、生年月日等を確認しただけ、又は身体の外観的発育状況等から判断しただけでは足りず、学生証運転免許証等の公信力のある書面、又は当該青少年の父兄に直接問い合わせるなど、その状況に応じて通常可能とされるあらゆる方法を用いて青少年の年齢を確認している場合をいう。

児童淫行罪・金沢市に330万円の賠償命じる判決 中学教諭わいせつ訴訟(金沢地裁H30.3.29)

金沢市に330万円の賠償命じる判決 中学教諭わいせつ訴訟(金沢地裁H30.3.29)


 刑事事件は児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)で故意否認。
 児童淫行罪には金銭賠償になじまないから刑事損害賠償命令の制度が適用されないので、別途民事訴訟になります。
 1.1の倍数になるのは、弁護士費用が1割認容されるから。
 

金沢市に330万円の賠償命じる判決 中学教諭わいせつ訴訟 /石川県
2018.04.11 朝日新聞
 金沢市立中学に通っていた男子生徒が、担任の男性教諭からわいせつな行為をされ、心的外傷などを発症したとして市に550万円の損害賠償などを求めた訴訟で金沢地裁(加島滋人裁判長)は3月29日、市に330万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。

 判決によると、男子生徒は所属する部活の顧問で学級担任の教諭から体を触るなどの性的行為を長期間にわたって受け、心的外傷とストレス因関連障害群と診断を受けた。判決は「教諭は職務上の立場に基づく強い影響力を利用し行為等に及んだ」などと認定し、市側に賠償を命じた。判決に対して、市教委は「判決文を精査の上、対処を検討する」とコメントした。

金沢市に330万円の賠償命令 元担任のわいせつ行為を認定 地裁判決
2018.04.10 北國新聞
 中学校時代の担任からわいせつな行為を受けたとして、金沢市の中学校に通っていた元男子生徒が市に損害賠償を求めた訴訟で、金沢地裁は「わいせつ行為により原告の心身の健全な発達が阻害された」として、市に330万円の支払いを命じる判決を言い渡した。判決は3月29日付。

 判決理由で加島滋人裁判長は、当時の男性教諭が学級担任や部活動顧問という立場を悪用し、継続的に元生徒にわいせつな行為をしていたと認め、市側の責任を認定した。

 市教委は「判決文を精査した上で対応を検討する」としている。男性教諭は2015年8月、児童福祉法違反などの罪で懲役4年の実刑判決が確定している。

児童ポルノ単純所持等で懲役2年6月執行猶予4年(静岡地裁h30.4.11)

 所持罪は量刑に反映してないよね。

水着窃盗など、元警察官に有罪 地裁判決 /静岡県
2018.04.12 朝日新聞
 中学校や民家で女子の水着を盗んだなどとして窃盗や児童買春・児童ポルノ禁止法違反(単純所持)などの罪に問われた県警警備課の元巡査部長に対し、静岡地裁は11日、懲役2年6カ月執行猶予4年(求刑懲役2年6カ月)の判決を言い渡した。
 判決などによると、被告は2015年6月28日~17年7月12日、5回にわたって静岡市葵区の中学校や浜松市北区の民家などに侵入し、水着などが入った女子生徒のトートバッグや女児の水着を盗んだ。昨年11月には児童ポルノのDVD3枚を自宅に所持した。
 肥田薫裁判官は「犯行は悪質で常習性が顕著」と指摘。一方で一部の被害者と示談が成立し、反省の態度と謝罪の気持ちを示していることから、「執行を猶予し、更生する機会を与えるのが相当」とした。

「18歳未満だとは知らず、本人の画像だとも思わなかった」と弁解しようにも逮捕になってしまった事例

 児童に頼んで撮影送信してもらう行為(sexting)を姿態をとらせて製造罪とするのが実務の大勢です。
 予め撮ってあるのを送ってもらったとか、18歳未満とは知らなかった場合には製造罪にはなりませんが、画像の送受信が確認できれば、姿態をとらせて製造罪を疑われて、逮捕されることになります。

http://www.sankei.com/west/news/180409/wst1804090032-n1.html
大分市職員、女子高生に体をスマホで撮影させ画像送らせる 児童ポルノ製造疑いで逮捕
反応

 大分県警宇佐署は9日、女子高生に胸などを撮影させ画像を送らせたとして、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで、大分市職員の男(42)を逮捕した。画像を送らせたことは認めているが「18歳未満だとは知らず、本人の画像だとも思わなかった」として、一部容疑を否認している。

 逮捕容疑は2月26日から3月1日までの間、18歳未満と知りながら、大分県内の女子高生(16)に衣服の一部をつけていない状態の胸や下半身をスマートフォンで撮影させ、画像2枚を自身のスマホに送信させた疑い。

木村光江「行為者の性的意図と強制わいせつ罪の成立要件」重要判例解説h29

木村光江「行為者の性的意図と強制わいせつ罪の成立要件」重要判例解説h29
 木村説のわいせつの定義は性欲要件入りでいいんですかね

http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2018/03/25/000000
木村光江刑法4版p219
わいせつの意義
刑法上の「わいせつ」とは,徒に性欲を興奮または刺激せしめ,かつ普通人の性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反すること(最判昭26.5.10刑集5.6.1026)をいう.ただ,この定義は,わいせつ物頒布罪に関して用いられたものであり,強制わいせつ罪は個人の性的自由を侵害する罪である以上,これより広いわいせつ概念を用いざるを得ない.例えば,反抗を抑圧してキスする行為は強制わいせつ罪に当たるが,映画や小説におけるキスシーンはわいせつではない.わいせつ行為は,必ずしも被害者の身体に触れる必要はなく,脅迫して裸にならせ写真を撮影する行為も含む(最判昭45.1.29刑集24.1.1参照).
【傾向犯】従来の判例は,強制わいせつ罪には,わいせつ行為を行っていることの認識に加え,犯人の主観的傾向としてわいせつの目的(性欲を刺激,興奮させ,または満足させるという性的意図)が必要であるとしてきた(傾向犯という.前掲・最判昭45.1.29(消極)).しかし,被害者に性的差恥心を抱かせるに足りる客観的行為を行っている以上,法益侵害性は認められ,その認識があれば故意も認められる.性的自由は,行為者の動機の如何にかかわらず害されているからである.最決平29.11.29(裁判所時報1688.1)は,昭45年最高裁判例を変更し,「被害者の受けた性的な被害の有無やその内容,程度」により判断すべきであって,「性的意図」は成立要件とすべきでないとした(→23頁参照).

木村光江「行為者の性的意図と強制わいせつ罪の成立要件」重要判例解説h29
7性的な意味があることが明確でない行為
もっとも,本判決はおよそ性的意図が意味を持たないとはしていない。
本判決は「わいせつな行為」自体の定義を示さず,「性的な意味がある」行為という表現を用いる。
そして,①行為そのものが持つ性的性質が明確で,当然に性的な意味がある行為と,②行為そのものが持つ性的性質が不明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価しがたい行為に分け,①は他の事情を考慮するまでもなくわいせつな行為といえるが,②の場合の性的性質の有無は,「規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪に対する社会の一般的な受け止め方を考慮しつつ客観的に判断されるべき事柄」であって,その判断要素の一つとして「行為者の目的等の主観的事情」も含まれるとする。
ただ,行為の性的な意味は.あくまでも「客観的に判断されるべき」ものであるとしていることが重要で,客観的な「わいせつな行為」に当たるか否かの構成要件解釈に際して,行為者の主観が考慮されるに過ぎない。
昭和45年判例との決定的な違いは,行為者の主観を独立の成立要件としない点であり,②の行為であっても,他の事情から性的行為であることが判断できれば,行為者の性的意図を考慮する必要はないことになる。
強姦罪や強制性交等罪では,そもそも性的意図を問題としないが,それは上記①の,行為そのものの持つ性的性質が極めて明確な場合だからであろう。
改正前の強制わいせつ罪のうち,強制性交等罪の「性交等」に当たる行為は当然に①に当たることになるが,本判決の事案も,被告人は自己の陰茎を被害者の口にくわえさせているから,現行法では性交等に当たる行為である。
本判決も①に分類されるものとして,その他の事情を考慮するまでもなくわいせつ行為であるとする。

8社会の一般的な受け止め方
問題は,どのような行為が②に当たるかである。
そもそも①か②かは,本判決のいう「社会の一般的な受け止め方」を考慮して判断されることになるが,それは,詰まるところ「わいせつな行為」の構成要件解釈そのものであり,「性欲を刺激,興奮または満足させ,かつ,普通人の性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為」(前田雅英編集代表『条解刑法〔第3版]j499頁)とは何かに尽きる。
当該被害者の個別具体的な被害感情そのものではあり得ず(もちろんそれも判断材料の1つとはなり得ようが),その時代の一般的な社会常識で決めざるを得ない。
行為者にこの行為の認識があれば,「性的意図」があるのではなく,故意があることになる。
身体的接触があれば①に当たることが多いであろうが.昭和45年判例や.前掲昭和62年判決のような「裸にして写真を撮る行為」は,その他の事情も考慮して判断せざるを得ず,②に当たることになる。
その場合には,当該行為の性質,被害者との関係,被害者の同意の有無四囲の状況等のほか,事案によっては医療上の必要性といった事情も考慮して判断されることになろう(たとえ衣服を脱がせる行為が診察上必要であっても,それを撮影することの必要性がなければわいせつ行為に当たる。
前掲広島高判平成23.5.26参照。
形式的には「衣服を脱がせる行為がわいせつか」は構成要件該当性の問題であり,「医療行為として正当化されるか」は違法阻却の問題であるともいえるが,わいせつ行為のような規範的判断において,これを区別することの実益は小さい)。
さらに,②の外枠(わいせつ行為としての処罰の限界)が問題となるのが,指を口内に差し込む行為や,(わいせつ目的で)被害者の所有物を窃取する行為である。
嘔吐させることに性的満足を覚える者が.性的意図を持って女子高校生の口内に指を差し入れ嘔吐させる行為は,客観的に「わいせつ行為」に当たらず,いかに性的意図があったとしても暴行罪にとどまる(青森地判平成18・3.16裁判所Web〔平17(わ)314号])。
また,性的意図をもって女性の定期券を奪う行為も,窃盗罪であってわいせつ行為ではない(東京高判昭和62.7.9〔昭62(う)641号〕。
不法領得の意思はある)。
昭和45年判例から本判例までは47年間の隔たりがある。
昭和55年刊行の解説書において,「着衣の上から臂,乳房などに触れるいわゆる痴漢行為」につき,判例(ここでは,前掲名古屋地判昭和48.9.28を指す)の基準からは,わいせつ性を具備しないことになるという記述があるが(西原春夫ほか編『判例法研究(5)」252頁[森井璋]),これがそのまま現在でも維持し得るかは疑問の余地がある。
わいせつ行為は,時代により「社会の一般的な受け止め方」が変わり,それに応じて変化するのである。
[参考文献]本文中に引用したもの。
木村光江首都大学東京教授
jurist_No.1518