児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(強姦罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例違反)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

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かすがい現象とかすがい外し~児童淫行罪と監護者性交等罪の関係

同居している妻の連れ子(12歳)が、13歳未満の者と知りながら、立場利用して
(1)7/22 性交
(2)7/24 性交
(3)7/26 性交
した

というように、親族間で性交・性交類似行為が行われた場合、監護者性交罪(5年~20年)と児童淫行罪(10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金)とが成立して、観念的競合になると思われます。
 同一児童に対する数回の児童淫行罪は包括一罪になるので、(1)~(3)は科刑上一罪となり、処断刑期の上限は20年になります(かすがい現象)。
 ところで、画像があるなどで、長期間100回とかの性交が特定されて立証される場合、検察官は、わざと児童淫行罪を起訴せず、監護者性交等罪を併合罪加重して、懲役30年を目指してくることがありえます(かすがい外し)。
 被告人に不利なかすがい外しは許されないと考えています。
 

香城敏麿「訴因制度の構造(中)」判例時報1238号
もっとも縮小訴因にも'他の法原理の観点からの限界はありうる。これまでの論議に表われた事例のうち検討を要するものが二つある. 一つは、住居侵入のうえ二人を傷害したような牽連一罪のうち住居侵入を訴追から外す場合である。この場合、住居侵入を訴追した場合より処断刑が重くなるため、そのような縮小訴因は許されないのではないかという疑問が提起されているのである。しかし.実質上そのことにより宣告刑が重くなることは考えられないばかりか'法律上も住居侵入を訴追した場合の処断刑を超える宣告刑は禁止されると解することにより不都合が避けられるので'そのような縮小訴因自体を違法とする必要はないであろう。

http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/20080918/1221710814
検察官の訴因設定権と裁判所の審判範囲(法学教室336号P85)
〈一罪の一部を除いて併合罪とする場合〉
大澤
もう 1つ取り上げてみたいのは、一罪の一部を除くことによって併合罪として起訴することは許されるかという問題です。例えば,かすがい理論によって一罪となる犯罪事実から,かすがい部分を除いた上,併合罪として起訴するような場合です。
一罪の一部を除いて併合罪とする場合でも,例えば,平成 15年 10月7日判決で問題となった,常習特殊窃盗の事実から常習性の点を除いて単純窃盗の併合罪で起訴する場合などを考えますと,処断刑が重くなるわけではなしむしろ被告人にとって利益になるわけですが,かすがいの場合には,かすがい部分を除くことによって処断刑が重くなるという問題が生じます。
この点、をどのように考えるのかが 1つのポイントになるかと思いますが,いかがでしょうか。
今崎
 起訴されることによって処断刑が重くなるという被告人にとっての不利益を考慮に入れた上で,検察官の訴因設定権の行使としてどこまでが許容されるかということがテストされているのだろうと思います。これについても,こういう起訴は裁量権の濫用として何らかの違法を来すという考え方もあり得ると思います。
ただ,こうした考えの持つ問題の 1つは裁量権の濫用ないし逸脱の有無を判断することの問題性です。先ほどの親告罪の例では,訴因が別の親告罪の一部であるかどうか,そして,そうした訴因について審理判断することが親告罪の趣旨に反しないか,といったことを判断すれば一応足りたわけですけれども,今回問題になっている事案では,訴因を絞ったことについての検察官の判断の理由を明らかにし,それが処断刑の変更を来すのを正当化するかだけの理由になるかどうかということを判断することになるのでしょう。
 しかし,それは,非常に難しい判断です。それに,そもそもそうした判断をすることは,検察官は事案の軽重,立証の難易等諸般の事情を考慮して訴因を設定することができ,そのような公訴の提起を受けた裁判所は訴因を審判の対象とすべきであって,訴因外の事情に立ち入って判断すべきでないとした平成 15年大法廷判決が示したスタンスと整合するのかという疑問を感じます。さらに翻ってと言いますか,実務に目を向ければ,例えば住居に侵入して,人を 1人殺害したという事案でも,何らかの理由から殺人だけを起訴するということは,しばしば行われていますが,先ほども述べたとおり,そうした場合でも,裁判所としては,住居侵入罪を起訴しなかった理由について詮索することはしないのが通常です。ところが,違法説によると,住居侵入の上 2名を殺害したという事案では,住居侵入を不起訴とすることが違法となるという可能性を生じることになります。そうであれば, 1人殺害の場合に住居侵入を不起訴にすることも違法としなければ一貫しないように思うのです。
しかし,そのような考えは,これまで検討してきた検察官の訴因設定権をめぐる考え方と正面から衝突する可能性をはらみます。下手をすると,検察官の訴因設定権を一から見直さなければならないことにもなりかねないように思うのですが,果たしてそこまでする必要性,実益があるのだろうかという素朴な疑問を持つのです。
私などは,いい加減な人間なので,もっとコストパフォーマンスの良い解決があるのではないかと安易な発想をしてしまいます。公訴提起によって生じる問題,ここで言えば処断刑が上がるという問題ですが,例えば,そういう問題が生じるのであれば,そういう不利益が生じないよう終局判断の中で是正すればよいのではないかと思うのです。仮に処断刑に不均衡が生じるのが問題なのであれば,本案判断の中でその点を考慮して,上がる前の処断刑を前提に宣告刑を考えればよいのではないかと思うわけです。
そうした解決の方向性を示唆する例として,東京高裁平成 17年 12月26日判決(判時 1918号 122頁)があります。この事件は家裁に起訴された児童福祉法違反(児童淫行罪)の訴因と地裁に起訴された児童買春等処罰法違反(児童ポルノ製造罪)の訴因とが,不起訴となった別の児童淫行行為をかすがいとして一罪の関係に立つという事案です。
 裁判所は,かすがいになる行為が起訴されないことによって被告人が必要以上に量刑上不利益になることは回避すべきであるとした上で,量刑に当たって,併合の利益を考慮し,量刑上の二重評価を防ぐような配慮をすれば,かすがいに当たる児童淫行罪を起訴しなかった検察官の措置も是認できるとしました。これなどは,あるいは同様の発想かもしれないと思うのです。もっとも,この判決は,お読みいただければ分かるとおり,緻密で慎重な利益衡量をした上で結論を導いています。私のような組雑な発想ではないので,その点は誤解のないようにお願いします。
(2) 今回の対談を振り返り,若干の反省を覚えるのは,かすがい理論により一罪を構成する事実からかすがい部分を除き併合罪として起訴することの適否について議論した部分である。かすがい外しの起訴がなされる理由についての筆者の見方は,議論の前提としてやや狭随に過ぎたかもしれない。筆者はそのような起訴がなされることがあるとすれば,その狙いは,専らかすがい理論の実体法的不都合さを回避することにあると考えていた。これに対し,今崎判事からは,それとは別の理由からそのような起訴がなされることもあるとの示唆がなされた。確かに,対談の中で紹介があった東京高裁平成17年12月26日判決の事案は,「被害児童の心情等をも考慮して」かすがいに当たる児童淫行罪が訴因から除かれた例であり,今崎判事の見方を裏付ける例といえる。それにもかかわらず,訴訟法学者としては実体法の方で正面から解決してほしいと言いたいという締め括り方をした点は,今崎判事のご指摘とかみ合わないところがあった。なお,平成17年の東京高裁判決については,川出敏裕・平成18年度重判解(ジュリスト1332号)が学習上の手引きとなろう。

川出敏裕「訴因による裁判所の審理範囲の限定について」
東京高裁は、起訴された児童ポルノ製造罪の一部が同時に児童淫行罪にも該当することを認めたうえで、被告人の主張に対する判断を行う前提として、本件の事案において、「かすがい」にあたる児童淫行罪を除外して起訴した措置が許されるか否かを問題とした。そして、一般論としては、合理的な理由があればそのような惜置も是認されるとしたうえで、児童淫行罪が児童ポルノ製造罪に出べて、法定刑の上限はもとより、量刑上の犯情においても格段に重いことは明らかであるから、検察官が児童淫行罪の訴因について、証拠上確実なものに限るのはもとより、被害児童の心情等をも考慮して、その一部に限定して起訴するのは、合理的であるし、また、そのほうが被告人にとっても一般的に有利であるとする。そのうえで、さらに、本件の場合は、両罪が別々の裁判所に起訴されたことにより、併合の利雄が失われ、二重評価の危険性が生じるおそれがあるという特殊な問題があることを指摘し、量刑の上で、その点についての配慮がなされ、「かすがい」となる児童淫行罪が起訴されないことにより、必要以上に被告人が量刑上不利益になることが回避されるのであれば、本件における検察官の措置も十分是認することができるとの判断を示したのである。
本判決は、直接には、「かすがい」となる部分を除外して起訴することにより処断刑が重くなることの当否を扱ったものではない。しかし、そこでは、一般論として、本件の場合に児童淫行罪を除外して起訴する措置が是認される理由として、被害児童の心情保護ということと並んで、そのような起訴のほうが被告人にとって一般的に有利である旨が指摘されている。
つまり、処断刑としては重くなるとしても、「かすがい」にあたる部分が除外されることにより、実際の宣告刑においては、全体として量刑が被告人に有利になるということであり、逆にいえば、そうでない事例は、本判決の射程外ということになろう(29)
(29)本判決も指摘しているとおり、本件の場合は児童ポルノ製造罪と児童淫行罪が数罪として処理されると、それぞれが別の裁判所に起訴されることになるため、一罪が数罪として拠理されること自体に加えて、併合審理ができず、併合の利益が失われるという特殊な問題がある。しかし、この点は、両罪について言い渡される実際的刑の総和が、それらを併合審理した場合的処断刑を上回るものでなければ問題はないということになろう。また、本判決は、量刑の際の二重評価という点も指摘しており、これは、おそらく、それぞれの罪の量刑の際に、他方の罪を余罪として量刑上不利益に考慮することを問題にするものと考えられる。そうだとすれば、それを回避するためには、実際的量刑の場面で、他の裁判所に起訴されている罪を考慮しないかたちにすることが必要であり、そのような措置がなされるのであれば、この点についても問題はないことになろう

法務省刑事局付渡辺裕也「13歳未満の被害者に対する強姦事件において,性交が被害者の意思に反するものであったと断定できない場合の量刑への影響について言及した事例(平成28年5月26日福岡高裁判決)」

 13未満の売春事案(強姦+児童買春)は量刑的に軽く執行猶予も見受けられるというのは、児童側が性交に積極的だからでしょうね。

研修(平29. 7. 第829号)新判例解説

第1 はじめに
13歳未満の女子と性交する行為には,刑法177条後段に規定する強姦罪が成立するところ, その際被疑者が暴行・脅迫を用いたか否か,被害
者が性交を承諾していたか否かによって, 同罪の成否は左右されないものと解釈されており(#Fl) , この点に異論はないものと思われる。もっとも,この種事案において,被疑者が「被害者の承諾の上で性交に及んだ」旨主張することも珍しくないところである。その場合, このような主張が犯罪の成否に影響しないとしても,情状の点で, いかなる意味を持つのか必ずしも明らかではないと思われる。本判決は, 13歳未満の被害者に対する強姦事件について,性交が被害者の意思に反していたか否かが量刑にいかなる影響を及ぼすのかについて判断を示した事例として実務
上参考になると思われるので紹介する。なお,本稿中,意見にわたる部分は, もとより筆者の私見である。
第2事案の概要等
1 事案の概要(争いのない事実)
(1) 被告人(当時44歳)は,平成21年8月頃, 元妻と結婚前に交際する中で,元妻元妻の連れ子(当時10歳)及び被害者(元妻の姉の子。当時11歳小学校5年生) と共に泊まりがけで海水浴に行くことになった。しかし 直前に元妻が参加できなくなったことから,被告人は, 元妻の子と被害者の二人を連れて海水浴に行きホテルに宿泊した。その夜被告人は,被害者と性交した。
(2) 被害者は, 小学校2, 3年生の頃から被告人と家族ぐるみで付き合っており‘被告人に懐いていたものの,被告人と交際関係にはなかった。
被害者が性交するのは本件が初めてであった。その際,被告人が暴行・脅迫を加えたことはない上‘被害者も性交を明確に拒絶したことはなかった。
2第一審における争点と判断
第一審において, 被告人は,本件犯行を認めつつも,性交は被害者の意思に反していない旨述べ,弁護人も. 「無理矢理セックスされた,怖かったり気持ち悪かったりして声も出せなかった」旨述べる被害者の供述調書の信用性を争ったが‘ 第一審判決は,被害者の供述調書に信用性を認め,本件犯行が被害者の意思に反していたのは明らかであるとした。その上で,第一審判決は,被告人に不利な情状として, 「実質的には姪の関係にある, 当時1l歳と性的に未熟な被害者に対し, その意思に反して姦淫したというものであり, 人倫にもとる身勝手極まりない卑劣な犯行である」ことなどを指摘した上で,被告人に懲役5年を言い渡した。
第3本判決の概要
これに対して,被告人は,本件の性交は被害者の意思に反するものではなく, これを認定した原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認があるなと.として控訴に及んだ。この事実誤認の点に対する本判決の判断は以下のとおりである。
まず,本判決は, 「一般論として,性犯罪に直面した被害者が恐怖や衝撃から抵抗できない状態に陥ることは十分ありうるから, かかる外形のみに着目して性行為への黙示的承諾があったなどと速断すべきではな」いとしながらも㈱本件発生から被害者の調書作成までに相当大きな時間的隔たりがあり↑被害者の発達段階も大きく異なっていること,被告人と被害者とは本件以降特異な人間関係を形成していたが,被害者の調書作成時点ではその関係が崩壊していたこと,原審では被害者の証人尋問が実施されておらず, その供述の細かな意図まで確認できないことといった事情を踏まえ, 「被告人に無理矢理セックスされたとする供述調書の記載によって,本件の性交が, その当時における被害者の意思に反していたと断定することには, なお一抹の濤曙を覚えざるを得ない」とし, 「他に適当な証拠もない以上,本件の性交が被害者の意思に反するものであったことが合理的な疑いを差し挟む余地無く立証されたとはいえず, これが明らかに認められる旨を判示した点で,原判決に事実誤認があることは否定できない」とした。
その上で‘ 本判決は, 「量刑への影響を検討するに, 13歳未満の女子との関係では,暴行・脅迫が強姦罪の要件でないことはもとより(刑法177条後段),承諾がある場合も性交自体が同罪を構成するのであるが,これは‘年少者が心身の未成熟故に抗拒困難の状態にある上に,性的行為の意味も十分把握しえず、的確な自己決定を期待できないという理解によるものと解される。そして, この法意は, 同罪の成否のみならず,その量刑判断においても通底すると解するのが相当である。すなわち,13歳未満の女子に対し,暴行・脅迫に及ぶことなく,或いは,外形上承諾を得て性交渉を持ったとしても, それは年少者の非力や知慮浅薄に乗じたというに過ぎず, そのような女子を対象として性欲を満たすこと自体,抵抗を実力で排除した場合にも劣らない刑罰的非難に値するというべきだからである」とし. 「暴行・脅迫を伴ったわけでも,明示的抵抗があったわけでもない本件において,性交渉が被害者の意思に反するものであったか否かは同人が当時11歳に過ぎなかった以上量刑判断において本質的差異をもたらすものではないというべきであり,結局この点の事実誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえないことに帰する」(下線は筆者による。) とし,事実誤認の論旨に理由はないとした。

飲食店の女子トイレにおいて、飲酒酩酊のため抗拒不能であった被害者に対し、接吻し、その頭部を手で押さえて自己の陰茎を口淫させ、その膣内に指を挿入するなどした上で姦淫し(準強姦)、引き続き、同所に現れた弁論分離前の共同被告人との間で、意思を通じ、被告人が共同被告人を煽るような発言をし、2人以上の者が共同して被害者の抗拒不能に乗じて姦淫した(集団強姦)行為を、準強姦と集団強姦罪の包括一罪とした事例(千葉地裁H28.5.9)

 混合的包括一罪

千葉地方裁判所平成29年5月29日
上記の者に対する集団強姦被告事件について、当裁判所は、検察官西村圭一、同田端仁美、弁護人伊藤安兼各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中40日をその刑に算入する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、平成28年9月20日午後10時頃から同月21日午前零時30分頃までの間に、(住所略)飲食店A店内女子トイレにおいて、●●●(●●●)が飲酒酩酊のため抗拒不能であることに乗じ、●●●を姦淫しようと考え、飲酒酩酊のため抗拒不能であった●●●に対し、その口に接吻し、その頭部を手で押さえて自己の陰茎を口淫させ、その膣内に指を挿入するなどした上で姦淫し、もって、●●●の抗拒不能に乗じて姦淫し、引き続き、同所に現れた弁論分離前の共同被告人Bとの間で、●●●の抗拒不能に乗じて共同して●●●を姦淫しようとの意思を相通じ、被告人が、Bに対し、「キスしすぎだよ」「便座に座らせたら、超やりやすいよ」などと姦淫を煽るような発言をし、Bが、飲酒酩酊のため抗拒不能であった●●●に対し、その膣内に指を挿入し、その頭部を手で押さえて自己の陰茎を口淫させた上、●●●を姦淫し、被告人が、その状況を見続け、もって、2人以上の者が現場において共同して●●●の抗拒不能に乗じて姦淫した。
(事実認定の補足説明)
 弁護人は、被告人自身の姦淫に関する準強姦罪の成立は争わないが、その後のBによる姦淫に関し、被告人がBと意思を相通じて共同して姦淫したことはないとして集団準強姦罪の成立を争っている。
 1 そこで、検討すると、被害者の供述調書(被害者は、Bの供述内容に迎合したりすることなく、自己の記憶している事実を真摯に供述しているものと認められ、その供述の信用性は高いと考えられる。)等の関係証拠によれば、〈1〉女子トイレの個室において、被告人が、犯罪事実記載のとおり、飲酒酩酊のため抗拒不能の被害者に対し、わいせつ行為をした上で姦淫したこと、〈2〉被告人が女子トイレの個室から出た後に、同じ飲み会に参加していたBが入ってきて、犯罪事実記載のとおり、被害者に対し、わいせつ行為をした上で姦淫したこと、〈3〉その際、Bが被害者の口に接吻した頃には、近くにいた被告人が、Bに対し、「キスしすぎだよ」などと声を掛けていたこと、〈4〉Bが被害者に口淫させた頃には、被告人が、Bに対し、「便座に座らせたら、超やりやすいよ」などと言っていたこと、〈5〉その後、Bが被害者を姦淫したこと、〈6〉被告人は、5分強にわたって、Bが、口淫させたり、被害者に覆いかぶさって腰を5、6回振って姦淫したりしているのを近くで見続けていたこと、〈7〉姦淫後に、Bが、被告人に対し、「俺ら兄弟だな」と話していたこと、〈8〉さらに、被告人及びB以外にも、同じ飲み会に参加していたC及びDも女子トイレ内に現れて、被害者は、服が乱れた状態で写真を撮影されるなどしたことが認められる。
 2 検察官は、被告人とBの共謀後の被告人によるわいせつ行為について、Bの供述に基づいて、被告人も、Bと一緒に、被害者の膣内に自己の指を挿入した上、自己の陰茎を口淫させるなどしたと主張する。これに対し、被告人は、自己の姦淫後にしたわいせつ行為について、Cらが現れた後になって、被害者にキスしただけである旨供述している。
 Bの姦淫の際の被告人のわいせつ行為を立証する証拠は、Bの供述しかないところ、Bは、捜査段階では、被告人が口淫させたかどうかについては、断言ができないと述べ(乙8)、それ以上に具体的な供述をしていたとはうかがわれない。にもかかわらず、公判廷では、「被告人が口淫させていたのは覚えている。被害者が床に尻をついて便座にもたれ掛かって、少し上を向いた状態で口が半開きのような状態になっていて、その半開きになっている口に被告人が自分の陰茎を入れて、その後に続いて自分も同じように口淫させてしまった」などと特段の理由の説明もなく供述を詳細化させている。Bには、自らの従たる地位を強調するため、被告人の行為に関し誇張した供述等をするおそれがあることを踏まえると、Bの供述に基づいて、被告人のわいせつ行為を認定するのは困難である。
 3 そこで、被害者の供述調書等に基づいて認定した事実を踏まえて犯罪の成立について検討すると、被告人には自己の姦淫に関し準強姦罪が成立するだけでなく、被告人が、Bの姦淫に関し、「キスしすぎだよ」「便座に座らせたら、超やりやすいよ」などと、Bによる姦淫を煽るような発言をしていたと認められることや、Bを制止することなく、ある程度の時間にわたってBの姦淫行為等を近くで見続けていたことに照らすと、Bと意思を相通じて現場において共同して被害者を姦淫したと認めるのが相当であり、被告人には集団準強姦罪が成立する。
 4 なお、本件では、被告人及びBの各姦淫の時刻を証拠上、具体的に特定するのは困難であるところ、弁護人は、飲み会の後半頃である午後10時25分頃に被告人が飲み会の席で友人と騒いでいる映像を根拠に、被告人が自己の姦淫後にいったん飲み会に戻ったと指摘する。しかし、被告人が、自己の姦淫後にBが姦淫した際には女子トイレにいたことは争いがなく、証拠上も明らかであるから、弁護人の指摘する事実は、集団準強姦罪の成立には影響しない。
(法令の適用)
罰条
準強姦の点 刑法178条2項、177条前段
集団準強姦の点 刑法178条の2(178条2項)
 包括一罪と評価し、刑法10条により一罪として重い集団準強姦罪の刑で処断することとする。
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の処理 刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)
(量刑の理由)

(求刑 懲役6年)
刑事第3部
 (裁判長裁判官 楡井英夫 裁判官 髙橋正幸 裁判官 清水拓二)

わいせつ教員の処分歴共有…他教委で再雇用防止

 教員から相談があると、まず依願退職で懲戒処分を回避する可能性を検討します。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170722-00050073-yom-soci
わいせつ教員の処分歴共有…他教委で再雇用防止
(写真:読売新聞)
 わいせつ問題を起こした教員が処分歴を隠して別の自治体で採用される例が後を絶たないことから、文部科学省は、都道府県教育委員会が教員免許の更新状況を把握するために運営している「教員免許管理システム」を改修し、自治体の枠を超えた処分歴の共有化に乗り出す。

 文科省は、児童や生徒にわいせつ行為をした教員を原則、懲戒免職とするよう各教育委員会に通知している。教員が懲戒免職や分限免職禁錮以上の刑を受けると免許は失効し、官報に氏名などが載る。しかし、他の教委によるチェックは行き届いていない。免許失効となった教員が免許状を「紛失した」などと偽って返納しないまま、別の自治体で採用されることがある。

原判決懲役4年の強姦被告事件の控訴審において、原判決後に被害者に420万円支払い、示談が成立したことや、被害者が、執行猶予判決を望んでいること等を考慮して懲役3年保護観察付執行猶予5年とした事例(宮崎支部H29.6.8)

2項破棄

福岡高等裁判所宮崎支部平成29年6月8日
 上記の者に対する強姦被告事件について、平成29年2月3日宮崎地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官内田武志出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役3年に処する。
この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予し、その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。
原審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由
 主任弁護人木坂理絵の控訴趣意は、量刑不当の主張である。
 論旨は、被告人を懲役4年に処した原判決の量刑は重すぎて不当であり、刑の執行を猶予すべきである、というのである。
 そこで検討すると、本件は、A音楽祭りに参加するため陸上自衛隊の駐屯地内の宿舎に宿泊していた陸上自衛官である被告人が、同じく上記音楽祭りに参加するため同宿舎に宿泊していた被害者に対し、暴行脅迫を加え、反抗を抑圧して姦淫したという強姦の事案である。
 原判決は、酔余の犯行であることがうかがわれ、高い計画性などは認められないものの、自己の性欲を満たすためだけの身勝手な犯行動機に酌量すべき点がないこと、暴行の程度が強度とはいえないが、被害者の恐怖心や羞恥心といった感情につけ込んだ卑劣な犯行であること、本件犯行により被害者が被った精神的苦痛は相当大きいものであり、犯行結果が重大であることを犯情事実として指摘した上、刑の公平性の観点から同種事案(単独で、知人等に対し、凶器を用いずに強姦したもの1件の事案で、量刑上特に考慮すべき前科がないもの)の量刑傾向を踏まえて検討すると、本件は同種事案の中で決して軽い部類に属する事案とはいえないと判断し、これに加えて、一般情状として、被告人が不合理な弁解に終始して真摯に反省している様子が見られないこと、被害者が被告人に対する厳しい処罰感情を抱いていることなどもそれなりに重視せざるを得ないと指摘し、被告人に前科前歴がないこと、本件が有罪となれば被告人が免職の懲戒処分を受けることにより相応の社会的制裁を受けると考えられること(なお、禁鎖以上の刑に処する判決が確定すれば、自衛隊法38条2項により当然失職するから、原判決の上記説示は正確とはいえないが、退職手当が不支給となることが見込まれることなど、相応の社会的制裁を受けると考えられることには変わりがない。)など被告人にとって酌むべき事情をも最大限考慮しても懲役4年は免れないと判断して、前示の刑に処したものである。
 原判決の上記量刑判断は、以下の点を除いて、おおむね相当であり、結論においては当裁判所も支持できる。
 すなわち、原判決が「事実認定の補足説明」の項で説示する被害者の原審公判供述の内容によれば、被告人は、既に消灯時間が過ぎている時間帯に、被害者の方から折り返しの電話をかけてきたので、被害者に対し、「下に降りてきて直接会って話さないか。」などと言い、被害者に何度断られても同じことをしつこく言い続けたところ、最終的に被害者もこれに応じて中央階段を下りてきたこと、中央階段踊り場で被害者に会い、「直接会って話してみたかった。」「やっと会って話せるね。」などと言ったこと、「もうちょっと近寄ってほしい。」と言って、近づいてきた被害者にいきなり抱き着いたこと、「やめてください。」と言っておなか辺りを両手で押すようにしてきた被害者に対し、「いいじゃん。」などと言いながらキスをしたこと、顔を左右に振って抵抗し、後ずさりして壁に背中が付くようになった被害者に対し、更にキスをして、直接胸を揉み、パンツの中に手を入れて陰部を触るなどしたこと、その際、被告人の体を押し返すようにして「やめてください。帰ります。」と言った被害者に対し、「騒いだら人が来るぞ。人に見られるぞ。」などと言ったこと、その後、原判示の暴行により本件強姦に至ったことが認められるから、上記の事実経過に照らせば、被告人が被害者を呼び出した当初から強姦ないし強制わいせつの犯意を有していたとは考え難く、中央階段踊り場で被害者と会い、会話やわいせつ行為をする過程で徐々に犯意を形成していったものとみるのが自然である。原判決が被告人の犯意発生時期をどのように認定したのか判文上は判然としないが、「高い計画性などは認められない」とした原判決の説示が当審説示と同旨をいうものであれば是認できる。そうであれば、被害者が、被告人の誘いに応じて、消灯時間経過後に、あえて被告人に会いに行ったことが、被告人に対し、被害者も被告人に好意を持っているのではないかとの期待を抱かせ、犯行の遠因となった側面があることは否定できず、このような事情がなかった事案と比較して、被告人に対する非難の程度は若干低くなるというべきである。原判決がこの点をどのように評価したのか定かではないが、その「量刑の理由」において、身勝手な犯行動機に酌量すべき点はないとして触れていないことに照らすと、特に被告人に有利な事情としては考慮しなかったものと考えられるから、原判決の量刑を不当ならしめるものとまではいえないものの、いささか適切さを欠くというべきである。
 そうすると、本件の非難可能性に関する評価は幾分低下するものの、その点を踏まえても、軽い部類に属する事案とはいえないとする原判決の判断が不合理であるとはいえない。
 所論は、本件犯行に計画性は認められないこと、暴行脅迫の程度が同種事案と比較して重いとまではいえないこと、被告人が免職の懲戒処分を受ける見込みであること、被告人に前科前歴がないことなどを指摘するが、これらはいずれも、原判決が考慮済みの事情である。
 そうすると、原判決の量刑は、その宣告の時点においてはやむを得ないものであって、これが重すぎて不当であるとはいえない。
 しかしながら、当審における事実取調べの結果によれば、(1)原判決後、被告人が、被害者に対し、420万円を支払い、被害者との間で示談が成立したこと、(2)被害者は、被告人が本件の有罪確定により懲戒免職となること、被告人に幼い子供らがいること等の事情を考慮して、本件について被告人を宥恕し、執行猶予判決を望んでいること、(3)被告人は、遅まきながらも公訴事実を認めて反省の態度を示すに至ったことが認められる。
 ところで、原審段階では無罪を主張して公訴事実を争い、原審で有罪判決を受けたため、控訴審段階では一転して公訴事実を認めて示談を試み、減刑を目指すような投機的な防御活動については、原審に主張立証活動を集中させ、控訴審の役割を原審の当否の事後的審査にとどめた現行刑訴法の枠組みにそぐわず、原審を軽視する風潮を助長しかねないから、これを原審段階で同様の情状立証がなされた場合と同等に評価することは、一般的には相当でない。しかし、本件において、被告人が、原判決後とはいえ、被害者に対し、この種慰謝料としては相当な額の金員を支払って示談を成立させ、被害者が被告人を宥恕するに至っていることは、被害者の精神的被害について、遅ればせながらも一定程度回復させたものと評価でき、かかる行為は被告人の反省の表れともいえるから、このような被害回復に向けた努力を量刑上全く考慮しないとすることは、被告人にとっても酷であり、被害者救済を助長するという刑事政策的見地からも好ましくはない。その上、原審段階で被害者との間で示談交渉が進まなかったのは、専ら原審弁護人の弁護方針に基づくものであって、被告人は当初から被害者との示談交渉を希望しており、原審において保釈された後は原判決を受ける前から当審主任弁護人に示談交渉の相談をしていたことも認められるから、上記示談成立の事実及び被害者の宥恕について、原審で有罪判決を受けたことを契機になされた投機的防御の結果であると断じることもできない。また、本件の証拠関係は、客観的証拠に乏しく、被害を訴える被害者供述の信用性が、これを否定する被告人供述を踏まえてもなお信用できるかが問題となり、その信用性判断に当たっては、種々の補助事実や間接事実の認定・評価を要するという構造となっており、その認定判断が容易な事案とはいえないこと、原判決は、原審弁護人が被害者供述の不合理性をいう根拠として主張した事実の一部につき一定限度で認定していることからすると、被告人は、当審においても、事実誤認を主張することにより引き続き無罪の主張をする余地もなくはなかったと考えられる。それにもかかわらず、被告人が、当審において、公訴事実をすべて認めて被害者に謝罪をし、その慰謝に努めたことは、前記の被害弁償の事実とも相まって、被告人の真摯な反省の情に基づくものというべきである。
 以上によれば、前記説示に係る原判決後の情状は、当審において斟酌することも許容されるというべきである。そして、そもそも、前記のとおり原判決の犯情評価は、それのみでは量刑判断を不当ならしめるほどではないものの、被告人に対する非難可能性が低下すべき事情について適切に評価されているとは言い難く、この点においてやや重すぎるといえることを踏まえた上で、当審において妻が被告人の監督を誓約していること、強姦罪は被害者の性的自由を侵害する罪であるから、精神的苦痛を受けた被害者が自ら被告人を宥恕している事実は一般情状であっても相当程度の重みを有する事情というべきであり、現に原判決が参照した同種事案の量刑傾向のうち、被害者との示談が成立している事案についてはおおむね執行猶予付きの判決が言い渡されていることも併せて考慮すれば、現時点においては、被告人に対し、実刑判決を言い渡すことは重きに失するものといわざるを得ず、その刑の執行を猶予するのが正義に適うものと認められる。
 よって、刑訴法397条2項により原判決を破棄し、同法400条ただし書を適用して更に次のとおり判決する。
 原判決が認定した犯罪事実に原判決が適用した罰条を適用し、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処することとし、情状により刑法25条1項を適用してこの裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予することとし、なお本件の罪質に照らして、再犯防止の観点から、被告人に対しては性犯罪者処遇プログラムを実施するのが相当であること、女性である被告人の妻とは別に被告人に対する助言指導を行う監督者が必要であると考えられること等を考慮し、刑法25条の2第1項前段を適用してその猶予の期間中被告人を保護観察に付することとし、刑訴法181条1項本文により原審における訴訟費用を全部被告人に負担させることとして、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 根本渉 裁判官 渡邉一昭 裁判官 諸井明仁

Aが全裸となった被告人の長男B(当時10歳,小学5年生)に対し,ビニール紐でその手足を縛るように命じたが,被告人において躊躇したため,Aがビニール紐でBの手足等を縛った上,ビニール紐を用いて,同人の身体を同所の雨樋に縛り付け,翌15日午前5時ころ,被告人がBにおいて自ら前記緊縛を解いて2階自室に戻っているのを認めるや,そのころ全裸の同人を再度ベランダに連れ出し,前記Aがしたのと同様の方法によりビニール紐でBの手足などを縛り,布製ガムテープを口やその周辺に貼り付けた上,ビニール紐を用いて同人の身体を雨樋に縛

Aが全裸となった被告人の長男B(当時10歳,小学5年生)に対し,ビニール紐でその手足を縛るように命じたが,被告人において躊躇したため,Aがビニール紐でBの手足等を縛った上,ビニール紐を用いて,同人の身体を同所の雨樋に縛り付け,翌15日午前5時ころ,被告人がBにおいて自ら前記緊縛を解いて2階自室に戻っているのを認めるや,そのころ全裸の同人を再度ベランダに連れ出し,前記Aがしたのと同様の方法によりビニール紐でBの手足などを縛り,布製ガムテープを口やその周辺に貼り付けた上,ビニール紐を用いて同人の身体を雨樋に縛り付けて,同日午前9時30分ころまで同所に放置し,その後,そのころ,夫Cが一度Bの緊縛を解いたものの,引き続き同日午前11時ころ,被告人が,ベランダにいるCに命じ,同人をして前と同様にBの手足等をビニール紐で縛った上,同人の身体を雨樋に縛り付けて,同所に放置し,同日午後4時ころ,Aが前記緊縛の緩みを認め,Bの身体各部をビニール紐で縛り直し,さらに,布製ガムテープを全身に巻き付けた上,同テープを用いてBを雨樋に縛り付け,同月16日午前11時ころまで放置するとともに,この間,同月14日午後4時ころゼリー状の飲食物をBに与えたのみで,緊縛状態のBに飲食物を与えなかった。という傷害致死罪の犯罪事実(岡崎支部H25.1.20)
 折檻の場合は、強制わいせつ罪にならないようです。

       傷害致死被告事件
【事件番号】 名古屋地方裁判所岡崎支部平成15年1月20日
       理   由
(罪となるべき事実)
被告人は,Aと共謀の上,平成12年10月14日午後4時ころ,愛知県西加茂郡甲町乙丙番地丁所在の被告人方2階ベランダにおいて,Aが全裸となった被告人の長男B(当時10歳,小学5年生)に対し,ビニール紐でその手足を縛るように命じたが,被告人において躊躇したため,Aがビニール紐でBの手足等を縛った上,ビニール紐を用いて,同人の身体を同所の雨樋に縛り付け,翌15日午前5時ころ,被告人がBにおいて自ら前記緊縛を解いて2階自室に戻っているのを認めるや,そのころ全裸の同人を再度ベランダに連れ出し,前記Aがしたのと同様の方法によりビニール紐でBの手足などを縛り,布製ガムテープを口やその周辺に貼り付けた上,ビニール紐を用いて同人の身体を雨樋に縛り付けて,同日午前9時30分ころまで同所に放置し,その後,そのころ,夫Cが一度Bの緊縛を解いたものの,引き続き同日午前11時ころ,被告人が,ベランダにいるCに命じ,同人をして前と同様にBの手足等をビニール紐で縛った上,同人の身体を雨樋に縛り付けて,同所に放置し,同日午後4時ころ,Aが前記緊縛の緩みを認め,Bの身体各部をビニール紐で縛り直し,さらに,布製ガムテープを全身に巻き付けた上,同テープを用いてBを雨樋に縛り付け,同月16日午前11時ころまで放置するとともに,この間,同月14日午後4時ころゼリー状の飲食物をBに与えたのみで,緊縛状態のBに飲食物を与えなかった。
その結果,Bに敗血症などの傷害を負わせ,同月16日午前11時ころ,同所において,同人を前記病変によるショックにより死亡させた。

]浴槽内に正座させた同人の頭からシャワーの水をかけ、途中で同人の服を脱がせて全裸にし、その肩付近まで水を溜めるなどの暴行を加え、よって、同人に硬膜下血腫等の傷害を負わせ、同日午前一一時三七分ころ、同市本郷〈番地略〉所在の病院において、同人を硬膜下血腫を伴う脳腫脹により死亡するに至らしめた。傷害致死の犯罪事実(土浦支部H21.2.18)

 強制わいせつ罪の雰囲気ではないですよね。

       傷害致死被告事件
水戸地方裁判所土浦支部判決平成12年2月18日
【掲載誌】  判例タイムズ1072号257頁
       理   由

 (被告人の身上・経歴及び犯行に至る経緯等)
 被告人は、大阪府に住む両親のもとで育てられたが、小さいころから短気な性格で、小学校五、六年生のころから中学生を相手に喧嘩をするようになり、また、中学校時代は真面目に登校せず、午前中喫茶店で時間をつぶしてから登校するといった生活を送っていた。その後、被告人は、昭和五二年四月、大阪府立高校に進学し、在学中に、窃盗事件を起こしたり、暴走族に所属したりしたため退学処分になりかけたことがあったが、何とか同校を卒業した。
 高校卒業後、被告人は、大阪市内でホテルの調理師などとして稼動していたが、昭和六〇年八月に最初の結婚をし、そのころから工員として会社に勤めるようになったものの一年位で辞め、その後パチンコなどをして遊び暮らしているうちに知り合った的屋から紹介されて、芸人や歌手等を全国の劇場等に斡旋派遣する興行師として働くようになった。そして、被告人は、最初の妻との間に二人の娘をもうけたものの、平成四年四月に協議離婚し、長女の花子(以下、「花子」という。)を引き取り育てることとなった。
 その後、平成八年一二月ころ、被告人は、興行先で丙野冬子(以下、「冬子」という。)と知り合って交際を始め、平成九年一月ころから、大阪府大阪狭山市内において、同女とその長男の一郎(平成五年一〇月八日生。以下、「一郎」という。)及び花子とともに暮らすようになり、同年一二月には冬子との婚姻届をするとともに、一郎と養子縁組をし、しばらくの間、被告人の母親のマンションで生活したが、その後妻子とともにここを出て、母親と別れて生活するようになった。
 ところで、被告人は、再婚して母親のマンションで生活するようになったころから、当時三歳の一郎が寝小便をしたり、言い付けを守らなかったりすると怒ったり体罰を加えたりしていたが、母親と別居するようになってからは、子供を厳しくしつけると称して、主に一郎に対して、前よりいっそう叩いたり殴ったりするようになり、そのため、同人の身体には火傷や痣等の生傷が絶えない状態であった。また、被告人は、一郎のみならず妻の冬子に対しても些細なことから度々暴力を振るっていたため、耐えかねた同女は、一郎の通っていた保育所に保護を求めたり、富田林子ども家庭センターのケースワーカーに相談するなどし、同年一一月に被告人から家を追い出された際には、一郎とともに八尾母子ホームに避難したが、一〇日余り経ってから被告人が迎えに来たため、一郎とともに帰宅することにした。このようなことがあってから、被告人は、しばらく暴力を控えていたが、半年ほど経つと、再び一郎に対し、殴る蹴るの暴力を振るい始めたほか、べランダに正座させたり食事を与えなかったりするようになった。
 また、被告人は、いわゆるサラ金から借金をして、競輪、競馬、パチンコなどのギャンブル等に使い、借金の額が冬子名義の分と合わせて約二〇〇万円位になり、その返済に窮したことから、平成一〇年夏ころ、一家で夜逃げ同然に大阪を離れて関東方面に移り住むことにしたが、その移動中に宿泊したホテルにおいて、言うことをきかない一郎を水風呂の中に入れて折檻し、同人を溺れかけさせたことがあった。被告人は、以前から、一郎が自分になつかず、言うことを聞かないため、自分の娘の花子と比べて可愛くないと思っていたが、右の水風呂の一件があった後は、一郎がますます被告人になつかなくなったため、被告人も、一郎を憎らしく思うようになった。
 こうして、被告人は、同年九月ころから、茨城県水戸市内のマンションに妻子とともに住み、同市内で新聞拡張員として働くようになったが、そのころから、被告人の一郎に対する虐待行為は激しさを増していった。そして、同月中旬ころ、被告人が、言うことをきかない一郎をまたもや水風呂の中に入れて正座させた後、居室内に連れていって殴打し、その弾みで家具に身体をぶつけるなどして気を失った同人の頭部にポットの熱湯をかけるなどの暴行を加えて、同人に急性硬膜下血腫等の傷害を負わせ、このため、同人は、同市内の病院に九日間入院した。その際、親による幼児虐待の疑いを抱いた医師らの通報により、水戸児童相談所が、被告人に対して一郎を虐待していたとしてその一時保護を申し出たが、被告人はそのような事実はないとして、右申し出を拒否した。
 被告人は、同年一一月ころ、勤務先を変え、同県土浦市内で新聞拡張員として働くことにし、一家で同県取手市白山〈番地略〉所在の△△マンション三〇一号室に転居したが、このころから被告人の一郎に対する虐待行為は更に激しくなり、ことに食事に関しては、家族そろって夕食を食べるときにも、同人にだけは子供部屋で残り物を一人で食べさせたり、時には一日中何も食事を与えない場合もあった。そのため、一時は二〇キロ近くあった同人の体重は十四、五キロにまで減少し、空腹に耐えかねた同人が近所の食料品店でパンを万引きしたことさえあった。また、被告人は、家族で外食などに出かける際にも、一郎一人を子供部屋に残し、留守中に同人が冷蔵庫の中の物を食ベることができないようにするため、子供部屋に鍵をかけて出られないようにしていた。
 母親である冬子は、このような状況に胸を痛めていたものの、被告人に逆らって一郎を庇うと、自分まで暴力を振るわれるばかりか、被告人の一郎に対する虐待行為がより激しいものになることを恐れ、それよりも同人が被告人の言うことをきくようになればよいのだという気持ちから、結果的に被告人に同調して一郎を叱りつけるようになっていった。
(犯罪事実)
 被告人は、平成一一年四月五日午前八時過ぎころ、一郎及び冬子との間にもうけた生後約三か月の子を前記△△マンション三〇一号室の自宅に残し冬子や花子らとともに外出したが、いつもは子供部屋に鍵をかけて一郎が出られないようにしておくのを、この時はたまたま鍵をかけ忘れたため、同人は、被告人らがいなくなると、空腹の余り台所に行って冷蔵庫の中を漁り、レトルト食品のカレー等を見つけてこっそりと食べた。
 被告人は、同日午前九時一五分ころ帰宅し、一郎が留守中に盗み食いをした痕跡を認めるや立腹して、台所において、「何でそんなことしたんや。何で言うこと聞かんのや。」などと同人を怒鳴りつけながら、力をこめてその顔面を数回にわたり平手で殴打し、その弾みで同人を転倒させて後頭部等を床面に強く打ち付けさせた上、腹部付近を足蹴にし、さらに、泣きながら「お父さんごめんなさい。」と謝る同人を浴室に連れてゆき、その身体を持ち上げて空の浴槽内に放り投げ、その頭部等を浴槽内壁面等に打ち付けさせた上、その顔面を数回にわたり平手で殴打した後、浴槽内に正座させた同人の頭からシャワーの水をかけ、途中で同人の服を脱がせて全裸にし、その肩付近まで水を溜めるなどの暴行を加え、よって、同人に硬膜下血腫等の傷害を負わせ、同日午前一一時三七分ころ、同市本郷〈番地略〉所在の取手協同病院において、同人を硬膜下血腫を伴う脳腫脹により死亡するに至らしめた。

強制わいせつ罪の成立には「性欲を満たす意図」が必要かどうかが争われた刑事裁判で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は、検察側、弁護側双方の意見を聞く弁論を10月18日に開くことを決めた。

 弁護人は報道で知る。
 奥村の上告趣意書は「簡潔」です。

上告理由第1 判例違反・法令違反~強制わいせつ罪に性的意図は不要とした点 5
1 原判決が性的傾向不要としたのは誤りである 5
2 被告人には性的意図が全くなかったこと 6
3 強制わいせつ罪の保護法益は純粋な被害者の性的自由ではなく、わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)と定義されていること 8
4 学説も傾向犯説が通説であること 9
(1)最判s45までの学説状況 9
(2)最判s45以降の学説状況 36
西原春夫「強制猥褻罪における主観的要素」刑法判例百選Ⅱ各論[第二版] 36頁 61
5 判例違反~傾向犯の判例最判s45.1.29)にあからさまに敵対していること 62
最判S45.1.29 62
①広島高裁h23.5.26*5(強制わいせつ罪(176条後段)) 62
東京高等裁判所H28.2.19*6(強制わいせつ罪(176条前段)) 62
③広島高裁岡山支部H22.12.15*7(強制わいせつ罪(176条前段)) 63
福岡高裁h26.10.15*8(強制わいせつ罪(176条後段)) 63
⑤東京高裁h13.9.18*9(強制わいせつ罪(176条前段) 64
6 性的意図不要説を採っても結局違法性判断で性的意図を考慮せざるを得ないこと 64
7 実務上の弊害 64
①処罰範囲が不明確 65
②不要説だと「わいせつ」の定義が定まらないこと 65
③乳幼児の保護に欠ける 69
強要罪との区別 70
東京高等裁判所H28.2.19 70
広島高裁岡山支部H22.12.15 70
8 まとめ 70
広島高裁h23.5.26(強制わいせつ罪(176条後段)) 71
福岡高裁h26.10.15(強制わいせつ罪(176条後段)) 71
上告理由第2 法令違反・判例違反~強制わいせつ罪の「わいせつ」の定義を「被害者の性的自由を侵害する行為」とした点 72
1 原判決 72
2 わいせつの定義についての判例違反(最判s26.5.10 名古屋高裁金沢支部S36.5.2 東京高裁h22.3.1) 72
3 強制わいせつ罪の保護法益は純粋な被害者の性的自由ではないこと 73
4 保護法益を個人の権利と解したとしても、性的意図不要という結論にはならないこと 86
5 弊害 87
①処罰範囲が不明確 87
②乳幼児の保護に欠ける 89
6 まとめ 89
上告理由第3 法令違反・判例違反(第1の2と3は牽連犯) 91
上告理由第4  法令適用の誤り・判例違反(第1の1の強制わいせつ罪と判示第1の2の製造罪は観念的競合) 96
1 はじめに 96
2 刑法54条1項の「一個の行為」の意味 99
3 罪数判断は、訴因の比較により、訴因外の事実は考慮されない。 107
4 わいせつ行為(176条)とは 108
東京高裁H22.3.1 108
仙台高裁H21.3.3 108
札幌高裁H19.8.28 109
阪高裁H22.3.26 110
5 児童ポルノ製造罪が立件されない場合の撮影行為の法的評価=わいせつ行為 113
最高裁s45.1.29*17(但し、性的傾向を欠くので強要罪。) 113
東京高裁s56.1.27*18 113
東京高裁H18.10.11*20 114
東京高裁H22.3.1*21 114
東京高裁H22.3.1 114
仙台高裁H21.3.3 115
阪高裁H23.5.20 115
6 わいせつ罪に加え児童ポルノ製造罪を立件した場合の罪数処理 116
①仙台高裁H21.3.3*25 118
名古屋高裁h22.3.4*26 119
③高松高裁h22.9.7*28 120
④広島高裁h23.5.26*29(訴因変更) 121
⑤大阪高裁H23.12.21*30(原判決 神戸地裁H23.3.18*31)~提供目的製造罪 121
⑥大阪高裁h25.6.21*32 121
7 被告人の行為 122
仙台高裁H21.3.3 125
8 最決h21.10.21*33(児童淫行罪と児童ポルノ製造罪)の射程について 127
(1)本件は提供目的製造罪であること 127
(2)児童淫行罪の実行行為は「性交・性交類似行為」であるのに対して、強制わいせつ罪の実行行為は「わいせつ行為」であって、しかも撮影=わいせつ行為であるという重なり具合であること 127
名古屋高裁h22.3.4 128
高松高裁h22.9.7 129
阪高裁H23.12.21 129
(3)一事不再理効が広くなるという指摘について 131
(4)通常伴わないという指摘について 133
東京高裁H22.3.1 134
仙台高裁H21.3.3 134
9 東京高裁h24.11.1*36の射程について 135
10 警察統計でも、13歳未満への製造罪は強制わいせつ罪(176条後段)が伴うものがほとんどであること 140
11 提供目的製造罪と強制わいせつ罪(176条後段)とを観念的競合とする判例(大阪高裁H23.12.21)違反 143
12 観念的競合の判断基準についての判例最判s49.5.29)違反 144
13 まとめ 145
上告理由第5 法令違反・判例違反~判示第1の2は「性交類似行為」にあたらない

http://www.yomiuri.co.jp/national/20170720-OYT1T50107.html
性欲満たす意図「必要」見直しか…強制わいせつ
2017年07月20日 20時01分
 強制わいせつ罪の成立には「性欲を満たす意図」が必要かどうかが争われた刑事裁判で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は、検察側、弁護側双方の意見を聞く弁論を10月18日に開くことを決めた。
 大法廷の弁論は判例変更などをする場合に開かれるため、年内にも言い渡される判決では、「性欲を満たす意図」が「必要」とした1970年の最高裁判例が見直される公算が大きい。

被告がオンライン上のデータ保存サービスを利用し、画像閲覧のためにアクセスするアドレスは被害者だけに送信していたと指摘。「不特定多数の人が画像データを認識できる状態ではなかった」と判断した。(大阪高裁H29.6.30)

 公然陳列罪の既遂時期は不特定又は多数の者が閲覧可能になった時です。掲示板サイトに児童ポルノ画像を上げたがurlをばらまいていない(誰も閲覧していない)時点で既遂にした判例(大阪高裁)もあります。
 判決書はもらえました

 

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
(平成二十六年十一月二十七日法律第百二十六号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H26/H26HO126.html
(私事性的画像記録提供等)
第三条  第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2  前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
3  前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

邸宅侵入,公然わいせつ被告事件について「本件現場資料が混合資料である疑いを払拭することができず,被告人が本件犯行を行ったことについては合理的疑いが残るから,本件公訴事実については,証明が十分でない」として逆転無罪とした事例(大阪高裁h29.4.27)

大阪高等裁判所
平成29年4月27日第1刑事部判決
       判   決
契約社員 Z1 昭和62年○○月○○日生
 上記の者に対する邸宅侵入,公然わいせつ被告事件について,平成28年9月21日大阪地方裁判所支部が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官竹中ゆかり出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文

原判決を破棄する。
被告人は無罪。
       理   由
 本件控訴の趣意は,弁護人久保田共偉作成の控訴趣意書に記載されたとおりであり,これに対する答弁は検察官竹中ゆかり作成の答弁書に記載されたとおりであるから,これらを引用する。
 論旨は,事実誤認の主張である。
第1 控訴趣意について
1 控訴趣意の要旨
 原判決は,被告人が,原判示の邸宅侵入,公然わいせつを行ったとの事実を認定して,有罪としたが,被告人はそのような行為を行っておらず,無罪であるから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある。
2 当裁判所の判断
(1)本件公訴事実の要旨
 本件公訴事実の要旨は,「被告人は,正当な理由がないのに,平成27年2月22日午後9時41分頃,原判示のマンション(以下「本件マンション」という。)に,1階オートロック式の出入口から住人に追従して侵入し,その頃,同マンション1階通路において,不特定多数人が容易に認識し得る状態で,自己の陰茎を露出して手淫し,引き続き,同マンション2階通路において,前同様の状態で,自己の陰茎を露出して手淫した上,射精し,もって公然とわいせつな行為をした」というものである。
(2)原審の経過等
ア 原審において,被告人は,本件犯行を行っておらず,防犯カメラの画像に残された犯人が着用していた帽子や眼鏡は持っていないなどと供述して,犯罪の成立を争った。
イ 原審の証拠構造
(ア)本件犯行そのものに関する証拠
 本件犯行そのものに関する証拠として,本件犯行を目撃したという本件マンションの住人の警察官調書(原審甲2),精液様のものが本件マンション2階通路から採取されたこと等を記録した本件マンションの実況見分調書(原審甲5),上記精液様のものは精液であるとする鑑定書(原審甲7),犯行状況を撮影した防犯カメラの映像を録画したDVDを添付した捜査報告書(原審甲10)等が取り調べられた。
(イ)被告人と犯行を結びつける証拠
a 証拠方法
 被告人と犯行を結びつける証拠としては,被告人の自白や目撃者の犯人識別供述はなく(被告人が犯行直後に犯行を自白した弁解録取書はあるようであるが,検察官が被告人質問中で言及しているだけで,証拠請求はされておらず,また,上記目撃者は犯人の識別供述をしていない。),上記精液様のもののDNA型が被告人のDNA型と一致するとする下記2つの鑑定のみである。
(a)捜査段階に大阪府警察本部刑事部科学捜査研究所(以下「科捜研」という。)所属のZ2(以下「Z2鑑定人」という。)によって行われた上記精液様のもののDNA型鑑定の結果を記載した鑑定書(原審甲7)及び同人の原審公判供述(以下「Z2鑑定」という。)並びに科捜研所属のZ3によって行われた被告人の口腔内細胞のDNA型鑑定の結果を記載した鑑定書(原審甲9)及び同人の原審公判供述(以下「Z3鑑定」という。)
(b)原審段階でZ4大学Z5学部教授Z6医師(以下「Z6鑑定人」という。)によって行われた上記精液様のものと被告人の口腔内細胞のDNA型鑑定の結果を記載した鑑定書2通(原審職2、3)及び同人の原審公判供述(以下「Z6鑑定」という。)
b 鑑定の手法及びその結果
 各鑑定の手法及びその結果等は以下のとおりである。 
(a)Z2鑑定及びZ3鑑定
 大阪府堺警察署所属警察官が,本件直後に,本件マンションの2階通路上に貯留していた精液様のもの(以下「本件現場資料」という。)を綿棒(以下「本件綿棒」という。)で採取し,滅菌バッグに封入した上,一旦,同警察署の証拠品係の冷蔵庫に保管し,鑑定のため科捜研に持ち込んだ。
 Z2鑑定人は,本件綿棒の一部を切り取って精液検査を行い,さらに,残部の一部を切り取って,本件現場資料につき,Identifiler Plus(以下「IDP」という。)により,STR型検査及びアメロゲニン型検査を行った。
 その結果は,15座位のSTR型及びアメロゲニン型の全てについて,Z3鑑定による被告人の口腔内細胞のそれと一致した。
(b)Z6鑑定
 Z6鑑定人は,本件綿棒の残部を2か所切り取り,一般的な抽出キットと,膣内容を拭った資料(膣スワブ)専用キットを使用して,各別に,本件現場資料につき,DNA抽出処理を行った上,それぞれについてIDPによりSTR型検査及びアメロゲニン型検査を行った。その結果は,Z6鑑定人が別途行った被告人の口腔内細胞についての検査の結果と,14座位のSTR型とアメロゲニン型は一致したものの,D19S433の座位については,本件現場資料のアリール型は「14,15.2,14.2」だったのに対し,被告人の口腔内細胞のそれは「14,15.2」であり,本件現場資料には,被告人の口腔内細胞にはない「14.2」が含まれていた。なお,Z3鑑定においても,被告人の口腔内細胞のD19S433座位のアリール型は「14,15.2」であり,Z2鑑定における本件現場資料の同座位のアリール型も同様であって,いずれも「14.2」は含まれていない。
 上記のとおり,Z6鑑定の検査結果は,D19S433座位のアリール型に関して,本件現場資料にはアリール型「14.2」が含まれるのに対して,被告人の口腔内細胞にはそれが含まれない点で異なっているが,同鑑定では,これは,本件現場資料が生殖細胞であることから,精子のもとになる精原細胞が出来る過程で1反復単位分抜けた変異精原細胞が形成され,それが減数分裂して精子となったことによるものと考えられ,本件現場資料のDNA型は,被告人の口腔内細胞のDNA型と同じと判定されるから,本件現場資料は被告人に由来するといえるとされている。
ウ 原審弁護人の主張
 原審弁護人は,Z6鑑定は,本件現場資料のD19S433座位に被告人の口腔内細胞にはないアリール型「14.2」が含まれているのは,精原細胞が出来る過程で1反復単位分抜けた変異精原細胞が形成され,それが減数分裂して精子となったことによるものと考えられると説明しているが,被告人に変異精原細胞が生じていることを裏付ける根拠はなく,Z6鑑定人の説明によっても,そのようなことが起こるのは真実の父子何万組に1件というのだから,そのような確率のものを,具体的根拠がないまま本件に当てはめることはできず,本件現場資料には他者のDNAが混在している可能性が否定できないから,被告人と犯人が同一であると認定することはできないと主張した。
(3)原判決の判断
 原判決は,関係証拠によれば,何者かが本件犯行を行ったことが認められるとした上,Z6鑑定人はDNA型鑑定を実施する上で十分な知識を有していると認められ,Z6鑑定の内容にも特段不合理な点はないとして,同鑑定の信用性を肯定し,原審弁護人の主張を排斥して,被告人が本件犯行を行ったと認定した。
(4)当審の経過等
ア 被告人が原判決を不服として控訴をし,原判決はZ6鑑定の評価を誤っており,本件現場資料は混合資料の可能性があると主張した。
 当審では,検察官及び弁護人が証拠請求した文献(当審検書1,当審弁1)を取り調べ,さらに,Z6鑑定人の証人尋問(当審検人1)を実施した。
 なお,検察官は,捜査段階の被告人の供述調書について,証拠請求をする予定はない旨釈明した。
イ Z6鑑定人は,当審公判廷において,次のとおり供述した。
 「Z2鑑定と異なる型が検出されたのは,検査した綿棒の部位が違うからである。精液は血液などのように一様に混ざっているものではなく,ある部分には,新たに生じた変異を持った細胞が偏って存在しているが,他の部分にはそれが存在しないことは十分あり得る。」
 「15の座位については,それぞれ大体10種類以上のアリール型が存在する。したがって,親子や一卵性双生児でない任意の2人を検査した場合,確率的に,どの座位においても2種類以上のアリール型がないというようなことはあり得ない。必ず,3種類,最大4種類のアリール型が検出される。本件において,D19S433座位についてだけ3種類のアリール型が検出され,他の14の座位の中に3種類以上のアリール型が検出されたものがないことは,本件現場資料が1人分由来であることを示している。採取元が配偶子であることを考えれば,新規に生じた変異と考えるべきである。」
 「15種類の座位のうち,14種類が同じだけれども最後の1種類が違うという事例を経験したことはないし,計算上,そういうことはまずないと思う。」
 「日本人集団における型の出現頻度を調べたデータを使えば,15座位について一致した場合それぞれの座位で最もありふれた型を持った個人の存在頻度ですら計算上4兆7000億分の1になる。したがって,15のうち1つが矛盾するのであれば,14だけを使うという考え方もあるが,それでは非科学的になるから,他の検査キットを用いるというのが鑑定の基本的な態度になる。今回は,警察の鑑定によって本件現場資料が精子であることは証明されているため,変異であると考えられるから,IDPによる検査で十分と判断し,それ以上の検査をしなかった。」
(5)当裁判所の判断
 Z6鑑定及び当審におけるZ6鑑定人の説明をもってしても,本件現場資料が混合資料である疑いを払拭することができず,被告人が本件犯行を行ったことについては合理的疑いが残るから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるといわざるを得ない。
 その理由は,以下のとおりである。
ア 本件において,被告人の犯人性を立証するための証拠は,本件現場資料について行われたDNA型鑑定であるZ2鑑定及びZ3鑑定とZ6鑑定のみである。したがって,被告人と犯人の同一性は,上記鑑定の信頼性にかかっている。
 このうち,Z2鑑定及びZ3鑑定の結果自体には,特に疑問な点はない。
 しかし,一般には,資料が1人分由来のものであれば,1つの座位に3種類以上のアリール型が出現することはないのに,Z6鑑定においては,本件現場資料のD19S433座位に3種類のアリール型が出現しており,かつ,本件現場資料が採取されたのは,本件マンションの通路上という,DNAの混合が生じてもおかしくない場所であるから,本件現場資料には,2人分以上のDNAが混入しているのではないかとの疑いが生じる。そして,その疑いが払拭されない限り,Z2鑑定も,混合資料の一部が当初のオリジナルな型以外の形式で再現されたものである可能性を否定できないことになるから,結局,上記Z2鑑定の信頼性も,Z6鑑定の信頼性にかかっている。
イ Z6鑑定及びZ6鑑定人の当審公判供述によると,本件現場資料のD19S433座位に3種類のアリール型が出現しているにもかかわらず,本件現場資料が1人分由来のものであり,かつ,そのDNA型がD19S433座位にアリール型「14.2」を持たない被告人の口腔内細胞のDNA型と一致するとする根拠は,結局,次の点に要約できるものと理解できる。
(ア)本件現場資料では,D19S433座位以外の14の座位から3種類以上のアリール型が検出されていないところ,他人のDNAが混合しているのに,他の14の座位から3種類以上のアリール型が出現しないというのは,14の座位全てが一致する別人が存在するということで,確率の上でも,これまでの経験からも考えられないから,本件現場資料は,1人分由来のものと見るべきである。
(イ)本件現場資料は精子であるところ,精子のもとになる精原細胞については,一定割合で,反復単位が1反復単位分抜けた変異精原細胞が形成されるから,これが減数分裂することにより,反復単位が1反復単位分抜けた精子が形成されることがあるが,被告人の体細胞のD19S433座位のアリール型は「14,15.2」であるから,本件現場資料から検出されたアリール型「14.2」はそのような変異により生じたものと考えられる。
ウ しかし,上記説明は,刑事裁判の事実認定に用いるためのものとしては,十分なものとはいえない。
 まず,(ア)の点については,親子や一卵性双生児でない任意の2人を検査した場合,14種類の座位が一致し,1種類の座位のみが一致しない確率が相当に低いことは,Z6鑑定がいうとおりであろう。したがって,本件現場資料が,1人分に由来する可能性が高いこともZ6鑑定がいうとおりだと思われる。しかし,仮に,本件現場資料が,混合資料だとしたら,混合する資料のDNA型や資料の量のいかんにかかわらずそのように言えるかは疑問である。すなわち,混合した資料の数や量次第では,15の座位全てにおいて,混入したDNAの全ての型が一様に同程度の鮮明さで検出されるとは限らないのではないか,換言すれば,混入したいくつかのDNAの量に差異があれば,中には微量のため検出されないアリール型が生じるのではないか,また,逆に,重畳効果により1つの資料に含まれる以上にその存在が強調されるアリール型もあるのではないか,その結果,外観上,多くの座位で一人分に由来するように見える,もととなるDNA型とは異なるDNA型が出現・検出される可能性があるのではないかなどという疑いを禁じ得ない。Z6鑑定は,資料が混合された場合,そこに含まれるアリール型が全て同様に検出されることを前提としているものと思われるが,そのように考えるべき明確な根拠は示されていない。
 のみならず,Z6鑑定のこの点に関する見解は,若干場面を異にするとはいえ,15座位のうち14座位のアリール型が一致すれば同一性を肯定するという考えを前提とするものということができ,もちろん,こうした見解も十分あり得るものと思われるが,現在の刑事裁判の実務は,IDPによるDNA型検査の結果を人の同一性識別に使用するためには,15座位のアリール型の一致を求めるという慎重な運用をしているのが一般と思われるから,この見解は,現在の実務の一般的な運用を超えるものがあるようにも思われ,他に,十分な根拠がない限り,直ちには採用し難いものと考えられる。
 そこで,(イ)の点が上記の十分な理由になり得るかという観点から検討すると,精原細胞で突然変異が起こる可能性があり,また,その場合,反復単位が1反復単位分抜けた精子が形成される可能性が高いことについては,同旨の文献も存在しており(当審検書1,同弁1),Z6鑑定の説明は,本件の状況をよく説明するものということができる。しかし,Z6鑑定においても,それ以上に,本件において,突然変異が生じたことを積極的に示す根拠は示されていない。上記文献の中には,そのような突然変異が起こる確率は1座位につき0.2%程度とするものもあり,15座位全体として見ても,突然変異が起こる確率はさほど高いものではないと考えらえるから,他にこれが生じたことを認めるに足りる積極的な根拠がないのに,本件において,そのような現象が起きたと断じることには躊躇を感じざるを得ない。そして,実際,本件において,そのような積極的根拠は見当たらないし,被告人の精原細胞に突然変異が起きているものがあることを裏付ける証拠もない。
 なお,Z6鑑定人は,同鑑定人が鑑定の対象とした資料が精子であることを前提に上記のような説明をしているが,同鑑定人自身は,本件現場資料が精子であるかどうかの検査はしておらず,確かに,Z2鑑定人は,本件綿棒の一部を切り取って,細胞を染色した上で,顕微鏡で確認したところ,精子以外に特異な細胞を認めなかったと供述しているが(Z2鑑定人の原審公判供述),現に本件現場資料についてのZ2鑑定とZ6鑑定の検査結果は異なっているのだから,本件現場資料が均一なものであるとの保証はなく,Z6鑑定で用いたDNA抽出方法も,膣内容を拭った資料(膣スワブ)専用キットを用いた場合ですら,主に精子核DNAが回収できるというにすぎないものであるから(鑑定書(原審職2)),上記前提が確実に成り立つものであるかも疑問である。
 Z6鑑定の上記説明は,本件現場資料が被告人の精液に由来するものだとした場合,本件現場資料は被告人に由来するものであるとのZ6鑑定の最終結論を矛盾なく説明するものではあるけれども,本件現場資料が混合資料である可能性を,合理的疑いなく排除できるだけの積極性まで有するものではないといわざるを得ない。
エ 結語
 以上によれば,Z6鑑定及び当審におけるZ6鑑定人の説明をもってしても,本件現場資料が混合資料である疑いを払拭することができず,被告人が本件犯行を行ったことについては合理的疑いが残るから,本件公訴事実については,証明が十分でないといわざるを得ない。それなのに,原判決は,被告人が本件犯行を行ったと認定したから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるといわざるを得ない。
 論旨は理由がある。
第2 破棄自判
 そこで,刑訴法397条1項,382条により原判決を破棄した上,同法400条ただし書により,被告事件について,当裁判所において更に次のとおり判決する。
 本件公訴事実の要旨は,前記のとおりであるが,前記のとおり,同事実については犯罪の証明がないから,刑訴法336条後段により被告人に対し無罪の言渡しをする。
 よって,主文のとおり判決する。
平成29年4月27日
大阪高等裁判所第1刑事部
裁判長裁判官 福崎伸一郎 裁判官 野口卓志 裁判官 酒井英臣

改正刑法施行前の性行為(準強姦容疑)について施行前に示談した場合でも起訴される可能性がある

改正刑法施行前の性行為(準強姦容疑)について示談した場合
 俳優さんの事件が準強姦容疑として報道されたので再掲しておきます。
「既に法律上告訴がされることがなくなっているもの」というのは告訴取消等をいいます。それ以外は改正法施行前の事件でも、非親告罪になりますので、告訴前に示談して告訴しなかった場合については、法律上は起訴可能です。
 相当額を支払ってちゃんと示談したのを起訴されることはないと思うのですが、時々裁判例で見かけるのは、立場を利用して「10万円20万円で示談した」みたいのは、示談しても起訴される可能性が残ると思います。

現行法
第一八〇条(親告罪
 第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、適用しない。

改正後
http://www.moj.go.jp/content/001224163.pdf
第百七十八条の二及び第百八十条を削る。
(経過措置)
第二条この法律の施行前にした行為の処罰については、なお従前の例による。
2この法律による改正前の刑法(以下「旧法」という。)第百八十条又は第二百二十九条本文の規定により告訴がなければ公訴を提起することができないとされていた罪(旧法第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した旧法第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪を除く。)であってこの法律の施行前に犯したものについては、この法律の施行の際既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除き、この法律の施行後は、告訴がなくても公訴を提起することができる。
3旧法第二百二十九条本文の規定により告訴がなければ公訴を提起することができないとされていた罪(旧法第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した旧法第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪を除く。)であってこの法律の施行前に犯したものについてこの法律の施行後にする告訴は、略取され、誘拐され、又は売買された者が犯人と婚姻をしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、この法律の施行の際既に附則第四条の規定による改正前の刑事訴訟法(昭和二十
三年法律第百三十一号)第二百三十五条第二項に規定する期間が経過しているときは、この限りでない。
4旧法第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した旧法第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪であってこの法律の施行前に犯したものについてこの法律の施行後にする告訴の効力については、なお従前の例による
・・・
法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会
要 綱 ( 骨 子 ) 修 正 案
http://www.moj.go.jp/content/001185581.pdf
一及び二の適用範囲
一及び二に係る規定(以下「改正規定」という。)により非親告罪化がされる罪であって、改正規定の施行前に犯したものについては、改正規定の施行の際既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除き、改正規定の施行後は、告訴がなくても公訴を提起することができるものとすること
・・・
http://www.moj.go.jp/content/001183733.txt
第5回会議(平成28年3月25日開催)
ただいま,御説明がございましたように,事務当局において要綱(骨子)第四のとおり法改正をする場合,その適用範囲をどのようにすべきかという問題について検討され,改正法の施行前に行われた行為につきましても,一定の場合を除いて非親告罪として取り扱うこととするのがよいのではないかと考えるに至ったということでございます。
  この点につきまして,改正法施行前に行われた行為についても,非親告罪として取り扱うことの当否等を中心に御意見のある方はお願いしたいと思います。
  いかがでございましょうか。
○小木曽委員 今の事務当局の御説明をなぞるようなことになりますけれども,一つは憲法の問題があります。遡及適用の問題ですが,新たな罪を作るわけではなく,また,告訴がなければ裁判ができないということであったもの,すなわち国家の刑罰権自体はあるけれども,被害者への配慮からその処罰意思が確認できなければ裁判をしないという制度であったものを,被害者の処罰意思を訴訟条件としないという制度にするという変更ですから,これは憲法第39条の規定する事後法の禁止条項には触れないと思います。
  そうすると,あとは立法政策の問題になるわけですが,この資料31を見ますと,従来の法制度では,遡及適用しないというものもありますし,それから今回は大きな改正でもありますので,法が施行されるときを基準に将来的に適用するという考え方もあるだろうと思いますけれども,他方で,改正の趣旨が被害者の負担軽減ということであれば,施行前に犯された罪についても適用するという提案も否定されるものではないと考えます。
  また,罪は罪として成立するわけですので,告訴がなければ訴追されないという被疑者の期待を保護する必要があるかというと,そのような必要はないと考えることができるのではないかと思います。
○井田委員 今の小木曽委員のお考えと基本的に同じだと思うのですけれども,一言私の意見を申し上げます。手続法規定の適用に関する原則論から言えば,やはりそれは法律の施行と同時に,今現在,進行中の手続にそのまま適用するというのでなければいけないと思います。たとえ犯罪自体は施行日以前の出来事であったとしても,実体法ではなく手続法に関する法改正なのですから,遡及適用ということにならない。また,それは「改正」であり,非親告罪化という形でよい方向に法の規定を変えるという前提で考えるのですから,それはもう施行と同時にすぐ適用するのが当然で,そうでなければ筋が通らないことになるだろうと考えます。これが原則論ではありますが,ただし,仮にそれが行為者の側の正当な法的利益を侵害するというのであれば,ただちに施行するのは適切ではない,ちょっと待ちましょうということになるのだと思います。
  そこで,ここでの問題は,果たして行為者側にとって自分の犯罪が親告罪であるということが,果たして正当な法的利益であるとして主張できるものであるのかどうかということになります。
  確かに,一定の事実上の利益があることは否定できないかもしれません。しかしそれは法改正により実現される被害者側の正当な利益と拮抗して,それを凌駕するような正当な利益とは言えないでしょう。公訴時効期間の延長とか,そもそも公訴時効の廃止とかでさえ,潜在的被疑者の正当な法的利益を害するものではないというのが,平成22年の刑訴法一部改正の前提であり,またそれは最近の最高裁判例によっても支持されているのです。そうであるとすれば,親告罪であるということはますます法的に保障されているような利益ではないと考えなければならないと思います。
  ただもう既に施行前に告訴の可能性がなくなっているようなものについてはどうかということになると,確かに公訴時効の場合とは違います。既に公訴時効が完成している場合にはそもそも公訴権がない,訴訟追行権が消滅しているということで,これを法改正により復活させることはできないとも考えられる。これに対して,告訴の可能性が事実上なくなったという場合だと別に公訴権がなくなるとか,訴訟追行権がなくなるということではないということにもなりそうなのです。それはそうなのですけれども,法的安定性という見地から,それを再び動かすまでのことはないので,そういう事件については除きましょうというのが一つの考え方であり,政策的な判断としてはそれが適当であろうと考えられるのです。
○宮田委員 私は逆に,これは実体法の条文ではないとしても,刑法典の中に定められている部分であり,その重要な変更であるということを考えますと,過去の昭和22年改正,昭和33年改正の例などもございますので,同様に不遡及でいくべきではないかと考えます。
  確かに実体法上の条文ではありませんが,例えば立件されていない事案について示談がされる,あるいは告訴しないと話が付いているような事例などは,十分あり得るかと思います。こういうものは絶対に掘り起こさないという政策についての確約でもあればよろしいのですが,非親告罪化されることによって,一旦示談してもうお話が付いていたものについて,あまりいい例ではないかもしれませんが,示談金を更に取得しようとする乱用的意図で被害が届けられることも出てき得るのではないでしょうか。加害者が,自ら進んで被害者との関係を修復する動きをしたものについて,それが掘り起こされて起訴されるというようなことがあってはいけないのではないか。
  そういう意味で,非親告罪化は,公訴時効と違って,実体的な判断に関わってくるような部分もあるように思われるのです。
  犯罪を犯した方の側の立場の不安定性というのが免れないことを考えますと,遡及には反対の立場を取りたいと思います。
○橋爪幹事 1点,質問がございます。今,宮田委員の方からも御指摘がございましたが,本日配布の資料31番では,刑法の一部改正につきまして,非親告罪化に関する先例を2点御紹介いただいておりますが,昭和22年改正も昭和33年改正も,ともに非親告罪化については「なお従前の例による」旨の経過規定が設けられておりますので,今回の改正については,これらの先例とは趣旨が異なるという説明が必要になってくるかと存じます。もし事務当局の方でお分かりであれば,昭和22年改正,昭和33年改正の趣旨につきまして,ご教示いただければと存じます。
○中村幹事 それでは,事務当局から御説明申し上げます。この親告罪であったものが非親告罪化されるという改正があった場合に,改正法施行前の行為についてそれを適用するかどうかといいますのは,先ほど申し上げたとおり,理論的な問題というよりも,むしろ政策的な判断の問題ではないかと考えているところでございますけれども,その上で個々のそれぞれの法改正の際に,それぞれの政策判断がそれぞれなされたということかなと思っております。
  その上で申し上げますけれども,昭和22年の刑法改正についてでございますけれども,これは現行の日本国憲法が制定されたことに伴いまして,刑法が改正されたというところでございます。そのうちの一つとして,暴行罪につきまして,従前は親告罪であったものが,非親告罪とされるとともに,法定刑につきまして引き上げられるという改正がされています。これにつきまして,経過規定では,この改正以外の部分につきましても含めた上で,なお従前の例によるとされたものでございます。
  このときの暴行罪の非親告罪化の趣旨でございますけれども,当時の説明などを見てみますと,このように要は単なる暴行でとどまる場合については,その訴追というのを被害者の意思如何に係らしめるのを適当とするという考え方に立っていたということなのですけれども,この憲法が新しいものとなり,民主主義体制の下においては,暴力というのはやはり否定する必要があろう,傷害を伴わない暴行と言えども軽微な罪ということではなく,国家として処罰する必要があるだろうという趣旨から,非親告罪化し,法定刑が引き上げられたというものであると承知しておりまして,そうであるとするならば,今回の非親告罪化につきましては,被害者が告訴するかどうか判断を迫られるというその負担の軽減であるというところとは,非親告罪化の趣旨が異なるという説明は可能なのかなと思っております。
  また,昭和33年の輪姦的形態による強姦罪につきまして,非親告罪化されましたけれども,このときもこの法律の施行前の行為については,なお従前の例によるという形で,施行前の行為については非親告罪化しないという扱いがされたところでございます。このとき,このように判断されたのがなぜであったのかというところにつきましては,必ずしも明確でないところもあるわけでございますけれども,当時の輪姦的形態でなされる強姦罪等が非親告罪化された趣旨につきましては,この輪姦的形態でなされる強姦罪というのは,非常に凶悪なものであり,その訴追については被害者の利益のみによって左右することは適当でないと考えられたものと説明されているところでございまして,先ほど申し上げた今回の非親告罪化の趣旨とは異なるということは言えるのではないかと考えるところでございます。
○橋爪幹事 ありがとうございました。今,御説明を伺いますと,これまでの先例が統一的な論理的根拠に基づいているわけではないよう,過度に先例を重視する必要はなく,飽くまで今回の立法趣旨に従って個別的に判断をすれば足りるように思いました。
○池田幹事 先ほど宮田委員からも御指摘がありました,告訴がされて取り消されたわけではないけれども,告訴をしないという取決めが被害者との間でなされているという事案は,確かに存在するのだと思います。ただ,そういう事件について,非親告罪化したからといって,検察が被害者の意思の如何を問わず起訴するということにはならないのだということが,非親告罪化をする方針について賛成する際にも議論されていたと思います。つまり,そのような事案が仮にあるとしても,実務上,個別的に対応がなされるのであって,全ての事案が直ちに起訴されるということにはならないものと理解をしております。
○森委員 今,池田幹事に代わりにお答えいただいたような気がいたしますけれども,確かに以前も申し上げましたとおり,検察官としましては非親告罪化されたとしましても,被害者の意思を尊重して処分を考えていくという点は,何ら変わるところがないと考えております。ですので,ちょっと宮田委員がおっしゃった事案とは異なりますけれども,例えば被害者がもういいですと言って告訴しませんと言って不起訴になった事案につきまして,検察官の方がそれを新たに掘り起こして,被害者の意思に関係なく起訴してしまうというようなことはまずないと思っていただいていいと思います。
  それから宮田委員がおっしゃったのは,被害者がもう告訴しません,示談が成立しているので告訴しませんと言って事件化されなかったような改正法施行前の事案について,被害者がやはり処罰してほしいと言い出した場合,その事案が立件されることになるとしたら,被疑者の立場から見た場合問題ではないかということだったかと思うのですけれども,その点につきましては,現行法の下でも告訴が一旦なされて取り消されたのではなく,元々告訴がないのであれば,改めて被害者がやはり処罰してほしいということで告訴をすれば,それは処罰の対象になりますので,現行法の下と非親告罪化した後の対応とで何ら変わるところはないと考えております。
○塩見委員 私も非親告罪化して,それを遡及させるという御提案に賛成を致します。こだわるというか,細かいことを申しますと,暴行罪のときと非親告罪化の趣旨が異なるというお話が出ましたけれども,刑罰を引き上げて,それに伴って非親告罪化しているという点では,やはり今回も一緒ではないのかという気はしております。
  第1回目の刑事法部会におきまして,私が申して佐伯委員から御批判を受けたことなのですけれども,非親告罪化を支持する理由としまして,やはり重く処罰される,そういう重い責任評価を受けるに至った性犯罪であることが挙げられると思います。そういう場合にはやはり刑事訴追を被害者の意思に委ねるのは妥当でないという点がやはり私はあると考えますので,暴行罪の場合と今回の場合とは違いますと割り切るというのは,ちょっと抵抗感を感じないわけではありません。
  いずれにしましても,結論的には,被害者保護の観点から,親告罪ではなくて非親告罪にするという要請が政策的判断として強いということで,すぐに適用した方がよいという判断は支持できると思います。そういう意味で御提案に賛成したいと考えております。
○山口部会長 ほかにいかがでしょうか。
  今日のところはこれでよろしゅうございましょうか。ありがとうございました。
  それでは,事務当局におかれましては,ただいまの御意見を参考に更に御検討いただきたいと思います。
  では,本日の審議はこれをもちまして終了ということにさせていただきたいと思います。
  次回でございますが,次回につきましては冒頭で御議論いただきましたように,ヒアリングについて,日程等を含めて事務当局と検討させていただきたいと思いますので,委員・幹事の皆様には,追って御連絡することとさせていただきたいと思います。
  なお,本日の会議の議事につきましては公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を公表することにさせていただきたいと思いますが,そのような取扱いでよろしゅうございましょうか。
(一同異議なし)
○山口部会長 ありがとうございました。では,そのようにさせていただきます。
  では,これをもちまして終了といたします。本日はどうもありがとうございました。
−了−

小出恵介さんを任意聴取 17歳少女と飲酒しホテル
2017.07.13 テレビ朝日 ワイド!スクランブル 報道/ニュース/ニュース 
小出恵介さんを任意聴取。17歳少女と飲酒しホテルで過ごし性的行為を行ったとされている。大阪府青少年健全育成条例では、深夜などに保護者の承諾なく、18歳未満の少年少女を連れ回すことを禁止している。大阪府警は、準強姦容疑などの立件も視野に捜査をしている。大阪府警は、小出さん側と少女の示談が成立したこともあり、条例違反容疑で書類送検の方針。

【番組放送時間】
2017/07/13 10:25 ~ 2017/07/13 12:00

【コーナー】 ANN NEWS
放送時間: 2017/07/13 11:45:00 ~ 2017/07/13 12:00:00
出演者: 下平さやか,藤原百花,油田隼武,前田万里奈,小島佑樹,進優子,朝日健一
富士ソフト株式会社

長野県子どもを性被害から守る条例(深夜同伴)違反の被疑者が自殺

 信濃毎日新聞が、被疑者の遺族と被害者の保護者に接触しています

遺族への本紙の取材によると、スマートフォンの出会い系アプリで少女と知り合い、2回会った。深夜になったのは、親が仕事で家にいない時間を少女が指定したためという。
 男性は「相手の嫌がることは一切してない」と話していた。だが、「仕事を失い、悔やみながら人生を送るのがつらい」という内容の言葉をパソコンに残し、自室で首をつった。
 少女の母親は、自殺を知った娘が2時間以上泣き続けたことや、父親を早くに亡くし、寂しさがあったことを証言している。

「(少女は)大きな心の傷を負っているのではないかと心配している。数年といった長期的な支援が必要だ」というのは深夜同伴によるものではなく、自殺の影響ですよね。

「長い支援必要」支援委で検証 子どもの性被害条例 /長野県
2017.07.13 朝日新聞社
 昨年施行された「県子どもを性被害から守る条例」を初めて適用した事件を、県子ども支援委員会が12日、被害者の心のケアなどの観点から検証した。県警の担当者が初めて出席した。

 検証したのは、県警が4月、18歳未満の少女を深夜に連れ出したとして、同条例違反(深夜外出の制限)の疑いで男ら2人を書類送検した二つの事件。支援委員会の求めに応じて県警少年課の担当者が出席し、事件の概要や事情聴取の経過などを説明した。個人情報を扱うため、非公開で議論した。

 このうち1件では、書類送検された茨城県の男性地方公務員が死亡。県警は自殺だったと明らかにした。児童精神科医で、支援委員会の木村宜子会長は「(少女は)大きな心の傷を負っているのではないかと心配している。数年といった長期的な支援が必要だ」と指摘した。

 長野地検は男性地方公務員が死亡した経緯などについて「プライバシーの点からコメントを控える」としていた。
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県「性被害」条例違反2事件検証 阿部知事「良い運用へ努力」
2017.07.13 信濃毎日新聞
 阿部守一知事は12日の記者会見で、「県子どもを性被害から守るための条例」違反(深夜外出の制限)で県外の男性2人が摘発されたことについて、条例の運用状況を検証する「県子ども支援委員会」の議論などを踏まえ、「しっかり検証し、条例の運用が良い方向になるよう努力していく」と述べた。

 県警は4月、ともに同条例違反容疑で茨城県前橋市の男性2人を書類送検。いずれも18歳未満を「威迫」や「困惑」させて行う性行為などを禁じた17条の処罰規定ではなく、18条の「深夜外出の制限」で摘発した。このうち、茨城県の男性が同罪で略式起訴された後に自殺した。

 「深夜外出」という「外形」が整えば立件できる18条について、知事は「家庭に戻りたくない子どもが外出しているからといって、みんな処罰の対象になるわけではない」と説明。「構成要件を明確化しないといけない中で、どこかで線引きしないと罰則がまったく適用できなくなる」とした上で、「問題があれば改善していくことが重要」との考えも示した。
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県「子ども性被害防止」条例、施行1年 阿部知事が会見 県民運動再構築へ 罰則初適用言及回避
2017.07.08 信濃毎日新聞
 18歳未満を「威迫」や「困惑」させて行う性行為などへの処罰規定を盛った「県子どもを性被害から守るための条例」が7日、施行から丸1年を迎えた。阿部守一知事は同日の記者会見で「総合的な対策によって子どもを性被害から守っていく思いを新たにしている」と述べ、「青少年サポーター」制度を改善するなどし、性被害防止に向けた県民運動を再構築する意向を示した。

 一方、県警が昨年11月施行の罰則を初めて適用し、同処罰規定とは別の「深夜外出の制限」の疑いで4月に書類送検した茨城県の男性が自殺したことについては「個別事案についてはプライバシーの問題もあり、公の場における議論は慎重な対応が必要」として言及を避けた。

 知事は罰則について「他県の条例と比べれば、かなり絞り込んだものになっている」と説明。警察による恣意(しい)的な捜査を懸念する声もあるが、知事は「条例は子どもの人権を守ることが基本」と強調した。条例の検証については、子どもの人権という観点から「県子ども支援委員会」で「しっかり議論いただいている」とした上で「検証の中で仮に必要な対応を求められれば、より良い制度、運用がされるようにしていく」と述べた。ただ、捜査の妥当性については「県警に言ってもらう話」とした。

 罰則を巡っては、犯罪の構成要件をより限定的に明確化すべきだとする指摘の一方、処罰対象の拡大などを求める声がある。知事は条例に盛られた見直し規定について「現時点で直ちに見直しを行うことは考えていない」とした。

 県民運動の担い手として新設したボランティアの青少年サポーターが、当初の目標2千人に対して600人余にとどまっている点では「具体的に期待する役割や活動をはっきりさせ、県民に参加してもらえる仕組みに改善していきたい」との考えを示した。
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「性被害防止」条例の深夜外出制限 県「他県より限定的」 男性自殺では詳細情報示さず 県会委
2017.07.04 信濃毎日新聞
 「県子どもを性被害から守るための条例」違反(深夜外出の制限)の疑いで書類送検された茨城県の男性が5月に自殺したことを巡り、県は3日の県会県民文化委員会で、条例の制定趣旨が「性被害の防止」であり、「他県よりも限定的に運用されると理解している」との見解を示した。委員からは、摘発事例について「より詳細な情報がなければ、議会としてチェックできない」などの意見が出た。

 県条例の18条2項は、保護者の委託や同意、正当な理由がなく、18歳未満を深夜(午後11時~午前4時)に連れ出すなどの行為を禁止。違反者には30万円以下の罰金を科す。他県の青少年健全育成条例にも同様の規定がある。

 同委員会で寺沢功希委員(信州・新風・みらい)は、自殺に至る経緯や男性の生前の発言、両親の思いなどを報じた本紙の報道を念頭に、「2人の関係が続いたとしても、深夜に連れ出すことは条例違反か」と質問した。

 高橋功・次世代サポート課長は、他県の条例が「青少年の健全育成の観点」で制定されていると説明した上で、県条例は「深夜に外出している状況は(18歳未満に)性被害が及ぶ危険性が高く、予防規定として(18条を)置いている」と述べた。「恋人関係には当たらないとの判断の下、(県警は)書類送検したと理解している」とも答弁した。ただ、県警の判断に関し、根拠は示さなかった。

 県側は、県警が初めて書類送検した男性2人と、少女らの居住地域や年齢などを示した資料を提示した。毛利栄子委員(共産党)がより詳しい情報を求めたが、県は「プライバシーへの配慮」を理由に応じなかった。轟寛逸こども・若者担当部長は、処罰規定について「直ちに見直すつもりはない」とした。

 一方、警察委員会では小林伸陽委員(同)が男性の自殺に触れ、「冤罪(えんざい)や行き過ぎた捜査が心配」と指摘。条例の運用状況を検証する「県子ども支援委員会」などに、県警が詳細な情報を提供するよう求めた。三石昇史生活安全部長は「プライバシー保護や二次被害防止に配慮し、できる範囲で努力する」とした。
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検証・県「子ども性被害防止」条例1年(1)=安部哲夫氏 「深夜外出制限」適用に課題
2017.07.02 信濃毎日新聞
 18歳未満を「威迫」や「困惑」させて性行為することなどへの処罰規定を盛った「県子どもを性被害から守るための条例」が県会で成立して1日で1年。4月には、保護者の同意なく深夜に18歳未満を連れ出したとして、県警が条例の「深夜外出の制限」違反容疑で、男性2人を初めて書類送検したが、このうち1人が5月に自殺していたことが明らかになっている。捜査が個人の内心に踏み入る危険性や、子どもを取り巻く環境の変化など、さまざまな意見が交わされた同条例。運用の透明性や課題について、条例に関心を寄せてきた人たちは今どう考えているのか。5人に聞く。

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[元「条例モデル検討会」座長 独協大教授 安部 哲夫氏]

<処罰対象限定の意味考えて>

 ―「条例モデル」を議論した県の検討会座長を務めた。条例の必要性、性格について改めてどう考えるか。

 「長野県は長い間、子どもの育成に地域が関わる県民運動を重視してきた。条例ありきではなく、住民の底力で子どもを育てる歴史的経緯がある。一方、運動が行き詰まり、他県のような条例があれば被害に対応できたという県警の歯がゆい思いもあった」

 「条例を検討する上で柱にしたのが教育と被害を受けた子どものケア、そして大人の行動規範を示すことだ。被害者には最初、被害意識がないことが多い。特に性病や妊娠などが伴う場合は後で非常に苦しむ。支援する公共の責任を明示する必要もあった」

 ―罰則について県は「極めて抑制的」な内容にしたと説明している。

 「17条で、『威迫』『欺き』『困惑』させて行為に及ぶなど、大人がしてはいけないことを具体的に例示して規範を示したことには意味があった。実際に適用されなくても、県民がこのような手段を用いてはならないとの問題意識を強く持ち、関心が高まることは望ましいことだ。犯罪としての構成要件を絞り込むほど警察にとって使いにくくなるのは当然で、これがぎりぎりのラインだろうというところで結論を示した」

 ―自由な恋愛に捜査が介入する懸念は依然残る。

 「確かに恋愛の形はさまざまだ。県警が具体的な運用基準をしっかり作れば、親が反対しているからといった理由で、継続的な1対1の関係に介入することはないだろう。行為者(加害者)が次々と女性と関係を持っている、複数と関係があるなど、あくまで子どもの健全な成長過程に照らして問題があるかが基準だろう」

 ―4月に罰則が初めて適用され、県外の男性2人が書類送検された。ともに18条の「深夜外出の制限」を適用したが、深夜外出という「外形」さえ整えば立件できる18条は抑制的と言えるのか。

 「18条は親の監護権の尊重を前面に出しており、一定の絞り込みはできている。親が認めていない場合、子どもは少年法の枠組みでも不良行為として補導対象になる。17条に比べて罰則は軽く、略式起訴で済むなど警察にとっては使いやすいだろう。子どもを保護するという視点もある。帰りが遅いからといって全てに網を掛けるわけではない」

 ―立件されたうち1人は事件を苦に自殺したとみられる。18条で処罰することに危うさはないのか。

 「18条は、時間という形式的なもので要件が固まっている。県警は実質的には17条での立件を目指したのだろう。正直、顕著な状況がなければ17条は認定しにくい。仮に18条が無限定的に適用できるというのであれば、限定的な機能を持たせる書きぶりが今後の課題で、どのように限定できるかの議論も必要になってくるだろう。条例の見直しは提案した県の責任で行うべきだが、見直しの働き掛けは県民レベルからあっていい」

 ―将来の厳罰化や適用範囲拡大を求める声も既に一部から上がっている。

 「それは条例の趣旨と違ってくる。条例ではあえて処罰対象を限定的にしたのだから、その意味を考えてほしい。そこは強調しておきたい」

 [あべ・てつお]

 独協大法学部教授。慶応大大学院博士課程満期退学。専門は刑事政策。「子どもを性被害から守るための条例のモデル検討会」元座長。茨城県青少年健全育成審議会前委員長。66歳。茨城県
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社説=性被害条例 県民に検証報告を示せ
2017.07.02 信濃毎日新聞
 県の「子どもを性被害から守るための条例」が成立から1年たった。反対意見を押し切って制定されたのに運用状況は不透明だ。
 一人の男性の自殺が波紋を広げている。条例に規定された深夜外出制限の違反容疑で書類送検されていた。

 条例は、保護者の委託や同意などがある場合を除き、18歳未満を深夜(午後11時~午前4時)に連れ出す行為を禁じている。違反は30万円以下の罰金だ。

 茨城県の地方公務員男性(当時23歳)は、1月下旬の深夜、南信地方の10代後半の少女を誘い出し、公園に駐車した自身の車に一緒に乗った疑いで摘発された。端緒は職務質問。県警が公表しているのはここまでだ。

 遺族への本紙の取材によると、スマートフォンの出会い系アプリで少女と知り合い、2回会った。深夜になったのは、親が仕事で家にいない時間を少女が指定したためという。

 男性は「相手の嫌がることは一切してない」と話していた。だが、「仕事を失い、悔やみながら人生を送るのがつらい」という内容の言葉をパソコンに残し、自室で首をつった。

 少女の母親は、自殺を知った娘が2時間以上泣き続けたことや、父親を早くに亡くし、寂しさがあったことを証言している。

 浮かび上がるのは、性被害が起きていなくても、深夜に親の許可なく一緒にいたというだけで処罰される現実だ。改めて処罰規定の妥当性が問われる。

 深夜外出制限は、18歳未満が自由意思で外出しようと、相手が恋人、友達であろうと関係なく適用対象になる。子どもの自由が過度に制約される。県弁護士会はそんな指摘もしてきた。

 問題は、摘発された事例が十分、検証されていないことだ。県が先月、条例の適用状況を報告した青少年問題協議会で事例の詳しい説明はなかった。

 条例にはもう一つ、処罰規定がある。威迫や欺き、困惑によって18歳未満に性行為やわいせつ行為を行ったり、行わせたりすることに対してだ。真摯(しんし)な恋愛でも捜査対象になると懸念されている。摘発例はないが、検証されなければ懸念は払拭できず、捜査の歯止めにもならない。

 条例は「施行の状況等を勘案しつつ検討する」という見直し条項を設けている。県は詳細な検証報告書を少なくとも1年ごとにまとめるべきだ。それを県民に示してこそ見直し条項が生きる。

自分の裸をツイッターで上げた児童を公然陳列罪で検挙した事例(京都府警)

 警察は、公然陳列罪の関係では、児童が正犯になるとしつつ、sextingの製造罪の関係では、児童は被害者だから正犯ではなく頼んだ方が正犯になる(高裁判例あり)という二枚舌構成です。
 付添人・弁護人が児童が被害者であるという高裁判例を主張すれば、児童は犯罪不成立になると思います。
 

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170714-00000033-kyt-l26
ツイッター児童ポルノ拡散 容疑で中高生ら8人書類送検
7/14(金) 23:26配信 京都新聞
 短文投稿サイト「ツイッター」などで、男児の裸の動画などを拡散させたとして、京都府警少年課などは14日までに、児童買春・ポルノ禁止法違反(公然陳列)など疑いで、横浜市の中学3年の男子生徒(15)ら中高生の男女7人と、東京都東村山市の無職男(26)を書類送検した。
 府警によると、男子生徒らは「小遣い稼ぎだった」、女子高生2人は「ツイッターの登録者(フォロワー)を増やしたかった」と容疑を認めているという。
 男子生徒らの書類送検容疑は、3月16日~4月19日、それぞれスマートフォンで、男児へのわいせつな行為が撮影された動画計31点(約3~10分)を動画共有アプリで公開し、ツイッターで視聴を呼び掛けるなどした疑い。
 女子高生2人は、昨年11月~今年1月、自身の裸の画像をツイッターで公開した疑い。
 府警によると、同アプリは、視聴数に応じてポイントが加算され、インターネットで使えるギフト券と交換できる仕組みという。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170714-00000114-jij-soci
イッターでポルノ動画拡散=少年少女ら書類送検京都府警など
7/14(金) 18:29配信 時事通信
 ツイッター上に児童ポルノ動画のリンクをアップロードしたなどとして、京都府警と福島県警などは14日までに、わいせつ電磁的記録媒体陳列などの容疑で、東京都の無職の男(26)と福島市や長野、愛知両県などに住む14~18歳の少年少女7人をそれぞれ書類送検した。

 いずれも「小遣い稼ぎのためだった」「ツイッターのフォロワー数を増やしたかった」などと容疑を認めているという。

 8人の送検容疑は昨年11月29日~今年4月19日、スマートフォンやパソコンを用いてツイッター上に児童ポルノの動画データのリンクをアップロードしたり、わいせつな画像を不特定多数の者に閲覧させたりした疑い。

 府警によると、少年らは、動画が閲覧されるとポイントが付与される「動画コンテナ」にポルノ動画をアップロードし、ツイッターにリンクを張り付けて拡散させ、最高で約4万円を手にしていた。少女2人はそれぞれ自分の裸の写真をツイッターにアップロードしていた。 

「被告人は, 自己の性的好奇心を満たす目的で, 平成28年5月13日,被告人方において,児童ポルノである前記第2記載の動画を記録したCD-R1枚を所持し た。」という単純所持罪の事例 大阪地判平29.3.27

 これは法文上そうなってますから。

「平成29年版 警察実務 重要裁判例」警察公論第72巻第8号付録2017立花書房
児童の陰部を着衣の上から触っている状況を撮影した動画が記録された記録媒体が, 「児童ポルノ」に該当するとされた事例大阪地判平29.3.27
公刊物未登載
第3被告人は, 自己の性的好奇心を満たす目的で, 平成28年5月13日,被告人方において,児童ポルノである前記第2記載の動画を記録したCD-R1枚を所持し
た。 (児童ポルノ所持)
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解説
なお,単純所持罪に関する規定である法7条1項には,括弧書で「(自己の意思に基づいて所持するに至ったものであり,かつ, 当該者であることが明らかに認められる者に限る。)」 といった文言が置かれている。
 この点に関し, 児童ポルノの入手経緯を具体的に立証できない場合,例えば,被告人方の捜索で児童ポルノ書籍が発見されたが, その書籍の入手経緯について被告人が黙秘し,他に入手経緯に関する証拠が得られなかった場合に,単純所持罪が成立しないのかといった疑問が考えられる。
しかし, この要件は,児童ポルノを一方的に送りつけられたような者まで処罰対象となるのではないかという懸念を払拭するために設けられたものであり, そのことからすれば。具体的な入手経緯の立証までが要求されるものではなく,単に被告人の意思に基づいて所持等していることが立証できればよいと解される。例えば, 当該書籍が被告人の使用する机の上で発見され,その各頁から被告人の指紋が検出されたなど諸般の事情から,被告人が当該児童ポルノをそれと認識して閲覧していることが立証できるような場合であれば, その入手経緯が不明だとしても,被告人の意思に基づいて所持するに至ったものと言え, 単純所持罪の成立を認めることができよう。