児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

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児童ポルノ・児童買春1件で逮捕された場合の標準弁護士費用

 逮捕されてもされなくても、刑事処分としては、罰金50万円程度
 件数が増えた場合は相談します。

着手金 40万円
報酬金 
 罰金の場合 0円
 起訴猶予の場合 40万円
預かり金   0円

エアドロップ痴漢は、わいせつ電磁的記録記録媒体公然陳列罪・頒布罪(刑法175条1項)か卑わい行為(福岡県迷惑行為防止条例6条1項2号)か

「女性のわいせつな画像を同県糸島市の男性(34)のアイフォーンに送信した疑い。」ということで、送信した画像が、刑法のわいせつな画像であって誰彼無く送信した場合は、わいせつ電磁的記録記録媒体公然陳列罪ないしは頒布罪が成立して、卑わい行為には該当しない可能性があります。
 

条解刑法
不特定又は多数の人への交付・譲渡等であるから,不特定かつ多数の場合のみでなく,不特定かつ少数の場合も,特定かつ多数の場合も,それに該当する。たまたまl名の顧客に交付・譲渡等したに過ぎない場合であっても,それが不特定又は多数の人に対して交付・譲渡等する意思でされたものであれば,頒布に該当する(東京高判昭47・7・14判タ288-381,東京高判昭62・3・16判時1243-141)
・・・
わいせつ図画頒布等被告事件
東京高等裁判所判決昭和47年7月14日
東京高等裁判所判決時報刑事23巻7号136頁
       判例タイムズ288号381頁
 所論は、原判決がその第一の一、二において、わいせつ図画頒布の事実を認定し、これに刑法第百七十五条前段を適用しているけれども、もともと「頒布」とは不特定または多数人に対し無償で交付することをいうのであるが、本件において頒布を受けたのは孝平という特定人であるから、特定人に対する無償交付は「頒布」ということはできない。これを頒布行為であるとした原判決は法令の解釈適用を誤つたもので、判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。
 よつて案ずるに、わいせつ図画の頒布罪が成立するためには、わいせつ図画を不特定または多数人に無償交付することを要することは所論のとおりであるが、不特定または多数人に対してなす目的のもとに無償交付がなされるかぎり、特定の一人に対して二回の無償交付をなしたに止まる場合といえども、これを「頒布」行為というを妨げないと解するのが相当である。これを本件についてみるに、原判決挙示の判示第一の一、二関係の諸証拠を総合すると、本件わいせつ写真集は、定也にたのまれて、被告人が自分の分をも含めて三千部を印刷の営業部長に依頼して作成したものの一部であり、被告人はパチンコ店「」で同店々員孝平に対し八ミリのわいせつフィルムを賃貸したいと申し入れたことがあること、被告人が「牡丹」に来るとき、いつも黒皮製の鞄の中の紙袋に、わいせつブック、春画をもつていたこと、孝平は他の店員から、被告人が他の店員にもわいせつ物を売りに来たことがあると聞いたことがあること、被告人が孝平に交付したものと、同種のものを矗士にも販売していること、などの諸事実が認められ、これらの事実を総合すると、被告人にはわいせつ図画を不特定または多数人に対して交付する目的があつたと認定するのが相当である。このような目的のもとに関根孝平に対して本件図画を無償交付した以上、これを「頒布」行為と評価するに何ら間然するところはない。これと同旨に出た原判決には何ら所論のような法令の解釈適用の誤りはなく、論旨は理由がなく、採用できない。
・・・・
東京高等裁判所判決昭和62年3月16日
判例時報1243号141頁
       理   由
 本件控訴の趣意は、弁護人海部安昌、同相原宏各作成名義の控訴趣意書に記載のとおりであり、これに対する答弁は、検察官小林永和作成名義の答弁書に記載のとおりであるから、これらを引用する。
 一 弁護人海部安昌の控訴趣意第一(理由不備の主張)について
 論旨は、わいせつ図画販売罪が成立するためには、わいせつ図画を不特定又は多数の人に売ることが必要であり、一回の売渡しをもって右販売罪が成立するとするには、その売渡しが、不特定の人を相手方とするものであることのほか、不特定又は多数の人を対象とする反復の意思のもとになされたものであることが必要であるとされており、右要件は、判決の「罪となるべき事実」に判示されなければならないところ、原判決は、被告人が昭和六〇年一一月一〇日Aにわいせつビデオテープ二巻を売り渡した、という、A一人に対するただ一回の売渡しの事実を認定し、もって被告人がわいせつ図画を販売したものと判示しているが、右Aが特定人であれば右販売罪は成立しないのであるから、同人が不特定人であることの判示は不可欠であるのに、その旨の判示をしておらず、また、右売渡しが反復の意思をもってなされたことの判示もなく、原判決の右判示によっては、わいせつ図画販売罪の成立を認定するに由なきものであって、右の点において原判決には理由不備の違法がある旨主張する。
 そこで検討するに、刑法一七五条のわいせつ図画販売罪について有罪判決をするには、罪となるべき事実として、当該わいせつ図画を不特定又は多数の者に有償譲渡したという、「販売」にあたる事実を判示すべきであり、本件のように、当該行為が一人の者に対する一回の売渡しである場合には、それが不特定の者に対する売渡しであって、反復の意思でなされたものであることが明らかであるように判示すべきものと解されるところ、原判決は、罪となるべき事実として、「被告人は、静岡県浜松市丸塚町《番地略》所在のビデオテープのレンタル業『ビデオショップ甲田』店を経営している者であるが、昭和六〇年一一月一〇日ころ、同店前駐車場において、Aに対し、男女性交の場面等を露骨かつ詳細に撮影したわいせつのビデオテープ二巻を代金二万四〇〇〇円で売り渡し、もってわいせつの図画を販売したものである。」と判示しており、右判示事実自体からも、レンタル業とはいえ、ビデオテープを扱う店を経営する者である被告人が、本件わいせつビデオテープ二巻を客であるAに売り渡したものであり、原判決が「もってわいせつ図画を販売したものである」と認定判断しているように、右売渡しが、不特定の客に対する有償譲渡、すなわち、刑法一七五条にいう販売にあたるものであることを読みとることができるものというべきであって、原判決に所論の理由不備があるとはいえない。
 論旨は理由がない。
 二 弁護人相原宏の控訴趣意一(法令解釈の誤りの主張)について
 論旨は、刑法一七五条にいう販売とは、不特定又は多数の人に対する有償譲渡をいうところ、被告人が販売した相手先はAただ一人である上、同人は以前から甲田店の顧客であり、被告人はAから頼まれて、ビデオテープを販売したものであって、原判決は、刑法一七五条所定の販売の解釈を誤って適用したものである旨主張する。
 しかしながら、刑法一七五条にいう販売の意義は所論のとおりであるが、原判決挙示の関係証拠によれば、右Aが前記店の不特定の客の一人であること、被告人は、本件以外にも、同人に対し、あるいは他の者に対し、わいせつビデオテープを売り渡して利益をあげており、本件起訴にかかる売渡しもその一環であることが認められ、これがわいせつ図画の販売にあたることは明白であって、被告人の本件所為について、同条を適用した原判決の法令の解釈適用に誤りがあるとは認められない。
 論旨は理由がない。

福岡県迷惑行為防止条例(昭和三十九年福岡県条例第六十八号)
(卑わいな行為の禁止)
第六条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で次に掲げる行為をしてはならない。
一 他人の身体に直接触れ、又は衣服の上から触れること。
二 前号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
。。。。
福岡県迷惑行為防止条例逐条解説
ア「何人も」とは、「すべての自然人は」という意味であり、福岡県民に限らず、日本人で
あると、外国人であるとを問わない。
イ「公共の場所」とは、不特定かつ多数の者が自由に出入りし、又は利用し得る施設及び場所をいい、場所の属性ではなく状態で判断される。
例えば、公会堂、商店、遊技場デパート、ホテルのロビー、オートロック式ではないマンションの共用部分等が公共の場所に当たる。
ウ「公共の乗物」とは、不特定かつ多数の者が自由に利用し得る乗物をいい、有償又は無償を問わない。乗物の属性ではなく状態で判断される。
具体的には、電車、バス、ロープウェー、エレベーター等が公共の乗物に当たるが、多数人が利用するものの特定の者しか利用できない貸切バスは当たらない。
エ「正当な理由がないのに」とは、健全な社会常識から判断して認められる理由があるとはいえないことをいう。
オ「著しく」とは、社会的に容認し得ない程度に甚だしいものをいう。
カ「差恥」とは、恥ずかしく思う気持ち、恥じらいの感情であり、卑わいな行為によって惹起される性的差恥心を意味する。
キ「不安」とは、生命、身体、自由、名誉及び財産に対して、何らかの害が加えられるのではないかと心理的な圧迫感を抱くことをいう。
ク「覚えさせるような方法」とは、現実に相手方が差恥心又は不安を覚えたかどうかは問わず、社会通念として差恥心又は不安を覚えると認められる方法であれば足りる。
.第1項第2号関係
「卑わいな言動」とは、野卑でみだらな言動又は動作をいう。刑法第174条(公然わいせつ)より広い概念であり、わいせつに至らないもので性的道義観念に反し、他人に性的差恥心又は不安を覚えさせるものをいう。
例えば、人に対して恥ずかしくなるような卑わいな文言を言ったり、他人が身に着けているスカートを捲る行為等である。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/536576/
書類送検容疑は7月5日午後8時40分すぎ、同市営地下鉄空港線の電車内で、エアドロップで女性のわいせつな画像を同県糸島市の男性(34)のアイフォーンに送信した疑い。「受信した女性の反応が見たかった」と容疑を認めているという。

 被害男性は、電車内でスマートフォンを手にしながら周囲をうかがう不審な男性を発見。西新駅で降りた男性を追い掛け、110番した。署の調べに「何回か同じことをやった」と話しているという。

 県警によると、エアドロップ痴漢の被害相談は昨年2件だが、潜在被害はもっと多いとみられる。兵庫県内では逮捕者も出ている。署の宮原工生活安全課長は「軽い気持ちでわいせつ画像を送っても立派な犯罪行為」と強調した。

「意見に対する道の考え方 本規制は、13歳未満の青少年に自画撮り画像の提供を求める行為の内、強制わいせつ未遂に該当しない行為を規制するものであるため、国法との関係に問題はないと考えております。」

 北海道庁によると、13歳未満の青少年に対して裸画像を求めるのは、強制わいせつ罪(176条後段)未遂にならないそうです。


素案
第2 改正の概要
児童ポルノ等の提供を求める行為を禁止するための改正
(1)改正の理由
青少年がだまされたり、脅されたりして、自身の裸の画像をスマートフォン等で撮影させられた上、電子メールやSNS等で送信させられる、いわゆる「自画撮り被害」が増加していますが、現行法令では青少年に対して自画撮り画像を求める行為を禁止する規定がなく、青少年の画像提供を未然に防止することが十分にできていません。
このため、不当な手段等により青少年に対して自画撮り画像を求める行為を新たに罰則付きで規制するための改正を検討しています。
(2)改正の内容
青少年に対し、次のいずれかの不当な手段等により児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいいます。)の提供を求める行為を罰則付きで禁止します。
① 18歳未満の青少年に対して、
・拒まれたにも関わらず、更に求める。
・威迫して求める。
・欺いて求める。
・困惑させて求める。
・対償を供与し、若しくはその供与の約束をして求める。
② 13歳未満の青少年に対して求める。

奥村が送った意見
13歳未満の青少年に対して求める。行為を罰金で処罰することについて他人に裸体画像を撮影送信させる行為は強制わいせつ罪のわいせつ行為と評価されている
  裁判例
東京地裁H18.3.24
松山地裁西条支部H29.1.16
高松地裁丸亀支部H29.5.2
高松地裁H28.6.2
札幌地裁H29.8.15
岡山地裁H29.7.25
 札幌地裁H29.8.15は9歳児童に平穏に乳房陰部露出させる姿態とらせて撮影させた行為を強制わいせつ罪(176条後段)
 としている。脅迫はない。
 これが強制わいせつ罪(176条後段)だとすると、13歳未満の青少年に対して求める行為は強制わいせつ罪(176条後段)未遂(法定刑懲役6月~10年)であって、既に国法で厳重に対応されていることになる。
 この行為について青少年条例で罰金で処罰するというのは、条例の守備範囲を越えるし、懲役10年の刑を罰金にして軽く処罰することになって妥当性にも欠ける。

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/dms/ss/bosyuukekka.pdf

(別記第2号様式 道民意見提出手続の意見募集結果)
令和元年6月5日 ~ 令和元年7月5日
北海道青少年健全育成条例の一部を改正する条例(素案)についての意見募集結果
意 見 の 概 要
13 歳未満の青少年に自画撮り画像を求める行為は、強制わいせつ未遂に該当し、既に国法で厳重に対応されている。

意見に対する道の考え方※
本規制は、13 歳未満の青少年に自画撮り画像の提供を求める行為の内、強制わいせつ未遂に該当しない行為を規制するものであるため、国法との関係に問題はないと考えております。

器物損壊と強制わいせつ罪が観念的競合とされた事案(奈良地裁H30.12.25)

「被告人は精液を被害者の衣服に付着させる認識・認容がなかったので,準強制わいせつ及び器物損壊の故意がなかった」という主張でした。
 非接触型の場合は、わいせつ性を争ってください。

奈良地方裁判所
平成30年12月25日刑事部判決

       判   決
 上記の者に対する準強制わいせつ,器物損壊被告事件について,当裁判所は,検察官荒神直行及び弁護人福島至(私選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文

被告人を懲役2年に処する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。


       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,平成30年6月5日午前6時37分頃から同日午前7時12分頃までの間に,京都府××番地所在の××鉄道株式会社××駅から奈良市××番地の×所在の同社××駅までの間を走行中の電車内において,乗客のY(当時23歳)が睡眠中のため抗拒不能の状態にあるのに乗じ,自己の陰茎を露出して手淫し,同人に向けて射精して自己の精液を同人の着衣に付着させ,もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をするとともに,同人が着用していた同人所有の黒色ジャケット(損害額約1万円相当)を汚損して他人の物を損壊した。
(証拠の標目)《略》
(争点に対する判断)
1 弁護人は,被告人が行った客観的な行為は争わないものの,(1)被告人は精液を被害者の衣服に付着させる認識・認容がなかったので,準強制わいせつ及び器物損壊の故意がなかった,(2)仮にそれらの故意があったとしても,被告人の行為は準強制わいせつ罪の実行行為に該当しない旨を主張する。
2 関係証拠によれば,被告人は,電車内の座席の端に座って眠っていた被害者のすぐ横に立ち,被害者の方に身体の正面を向けた上で,陰茎を露出し,左手で陰茎をしごいて自慰行為を行って射精し,射出した精液が被害者の上着の右袖上腕部に付着したこと,射精した時,被告人と被害者の距離は約15センチメートルであったこと(甲6写真第6号),被告人は射精前に自慰行為を中断することは考えず自慰行為を続け,射精直前に精液が被害者の着衣に付着しないように左手を陰茎の前に差し出したが,この行為を除き,射精前に自慰行為をやめたり身体や陰茎を被害者以外の方向に向けたりするなど,精液が被害者の着衣に付着することを防ぐ方策をとらなかったことが認められる。
 関係証拠をみても,被告人が被害者の着衣に精液を付着させる意欲又は意図を持っていたとは認められない。しかし,精液は陰茎が向いている方向に射出されることに加え,射精のタイミング,射出される精液の量又は精液の飛散する範囲等を十分に制御することは困難であることを踏まえると,射精時の被告人と被害者との位置関係など前段で述べた状況下においては,射出した精液が被害者の着衣に付着する可能性が極めて高かったことは客観的にみて明らかであった。たしかに,被告人は射精直前に精液が被害者の着衣に付着しないように左手を陰茎の前に差出した。しかし,この行為は,コンドームで陰茎の先を完全に覆うなどの措置とは異なり,射出する精液が被害者の着衣に付着する可能性を失わせる程度の措置ではなく,この行為によってその可能性がなくなったと認識するとは考え難い。被告人は,自慰行為に夢中で,自慰行為の最中被害者の着衣に精液を付着させようとも付着させまいとも思っていなかったと述べる。仮にこの供述が真実であったとしても,射出した精液が被害者の着衣に付着する可能性が極めて高かったことは客観的にみて明らかであったことに照らせば,自慰行為の結果射精し,精液が被害者の着衣に付着する可能性を認識していなかったとは到底考え難い。したがって,自慰行為を始めてから射精するまでの間,被告人が自慰行為の結果射精し,精液が被害者の着衣に付着する可能性を認識していたと認められる。
3 準強制わいせつ罪が成立するためには,わいせつな行為が特定の相手方に対して行われることが必要である。陰茎が被害者の方を向き,かつ,陰茎と被害者が極めて近い距離にあったことに加え,被告人はコンドームで陰茎の先を完全に覆うなど射出する精液が被害者の着衣に付着する可能性を失わせる程度の措置をとることなく自慰行為に及んで射精したので,電車内であったことを考慮しても,被告人の行為は被害者という特定の相手方に向けられたわいせつ行為であるといえる。したがって,被告人の行為は準強制わいせつ罪の実行行為に該当する。
4 前述のとおり,自慰行為を始めてから射精するまでの間,被告人が,自慰行為の結果射精し,精液が被害者の着衣に付着する可能性を認識しており,その上で自慰行為に及んだと認められる。そして,被告人の行為がわいせつ行為に該当すること,全く面識のない被告人の精液が付着すると被害者の着衣の効用が害されることはいずれも明らかである。また,被告人は被害者が寝ていることを認識した上で,被害者が寝ているからこそ被害者のすぐ横に立ち被害者の方を向いて自慰行為に及んだので,被害者の抗拒不能に乗じたことも明らかである。したがって,被告人は少なくとも準強制わいせつ罪及び器物損壊罪の未必の故意を有していたと認められる。
(法令の適用)
罰条
 準強制わいせつの点 刑法178条1項、176条前段
 器物損壊の点 刑法261条
科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段,10条(重い準強制わいせつ罪の刑で処断)
刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 被害者が電車内で睡眠中であることに乗じた卑劣で悪質な犯行態様である。被害の程度も軽くなく,被害者が被告人の厳重処罰を望むのは当然である。被告人に精液を被害者の着衣に付着させる意欲や意図があったとは認められず,かつ,射精直前に一応精液の付着を防ぐ行為には出ており,これらの点は量刑上意味がある。しかし,被告人は平成26年に駅構内での盗撮行為によって罰金20万円に処せられたにもかかわらず,より悪質な本件犯行に及んだので,非難の程度は高く,同種再犯の可能性も否定できない。しかし,被告人は行為自体を認めた上で,反省の態度を示し,再犯防止に向けた治療に取り組んでいる。また,前記罰金前科以外の前科前歴はない。すると,今回は執行猶予付きの判決が相当である。 
(求刑 懲役2年)
平成30年12月25日
奈良地方裁判所刑事部
裁判官 中山登

「これまでは児童買春・ポルノ禁止法に基づき、わいせつ画像が残っていないと検挙できなかったが、条例改正により提供を求める行為のみで摘発が可能になった。」というのは製造罪の既遂時期を誤解している。

 国法・条例の関係からは、製造罪が成立するときは条例の要求罪は成立しないという解釈を前提にしてると思うのですが、製造罪の既遂時期は、児童の裸が最初に媒体に記録された時なので、児童のカメラ(スマホ等)で撮影したときですから、児童が撮影している場合には、要求罪は成立しません。
 「これまでは児童買春・ポルノ禁止法に基づき、わいせつ画像が残っていないと検挙できなかったが、条例改正により提供を求める行為のみで摘発が可能になった。」というのが条例改正する警察の本音なんでしょうね。ちゃんと製造罪の立件を目指した方がいいですよ。

製造罪の既遂時期
sextingの場合「製造をしたのは、自分の写真を撮った児童ではなくポーズをとらせた者であるというように解されております。」という木村光江部会長の発言 - 児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

裸の「自画撮り」女子高生に要求 容疑の男 書類送検
2019.07.22 読売新聞
 女子高生に「自画撮り」した裸の画像を送るように要求したとして、福岡県警西署は22日、千葉県船橋市の会社員の男(51)を福岡県青少年健全育成条例違反容疑で福岡地検書類送検した。2月施行の改正条例では、中高生らにわいせつな画像の提供を求める行為を禁じる条項が新設されたが、適用は初めて。

 発表では、男は2月12日、ツイッターで知り合った福岡県内の女子高生(16)が18歳未満と知りながら、無料通話アプリで、「胸のアップを送って」「写メ(写真付きメール)売ってもらう感じです」などとメッセージを送り、児童ポルノの提供を求めた疑い。「間違いない」と容疑を認めている。

 男は裸の画像など十数点を受け取り、女子高生が指定する口座に4000円を振り込んだ。女子高生がツイッター上で「パパ活」を募集しているのを警察がサイバーパトロールで見つけて補導し、発覚した。
・・・
わいせつ画像要求:初摘発 千葉の容疑者書類送検 西署 /福岡
2019.07.23 毎日新聞
 18歳未満と知りながら女子高生にわいせつ画像を提供するよう求めたとして、西署は22日、千葉県船橋市の会社員の男(51)を福岡県青少年健全育成条例違反(児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)容疑で福岡地検書類送検した。2月に同条例が改正されてから初の適用という。

 送検容疑は2月12日、インターネット上で知り合った福岡県内の女子高生(16)にわいせつな動画や画像を送信するよう求めたとしている。

 署員が2月、インターネット上の書き込みを見て、女子高生と接触して発覚した。会社員の男は4000円を振り込んで14点の画像を入手したが、既に削除していた。

 これまでは児童買春・ポルノ禁止法に基づき、わいせつ画像が残っていないと検挙できなかったが、条例改正により提供を求める行為のみで摘発が可能になった。【浅野孝仁】
〔福岡都市圏版〕

刑事裁判資料第291号「性犯罪被害者の心理等に関する参考資料」最高裁判所事務総局

 閲覧のみの部分と、謄写許可の部分があるんですが、極めて基礎的な内容です。
 改正刑法の附帯決議に「裁判官に対して、性犯罪に直面した被害者の心理等についての研修を行うこと。」とあるので、一応やりましたよという程度の内容です。

[024/040] 193 - 参 - 法務委員会 - 20号 平成29年06月16日
真山勇一君 私は、ただいま可決されました刑法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・こころ、民進党新緑風会公明党日本共産党日本維新の会及び沖縄の風の各派並びに各派に属しない議員山口和之君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    刑法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 性犯罪は、被害者の心身に長年にわたり多大な苦痛を与え続けるばかりか、その人格や尊厳を著しく侵害する悪質重大な犯罪であって、厳正な対処が必要であるところ、近年の性犯罪の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするための法整備を行うという本法の適正な運用を図るため、本法の趣旨、本法成立に至る経緯、本法の規定内容等について、関係機関等に周知徹底すること。
 二 刑法第百七十六条及び第百七十七条における「暴行又は脅迫」並びに刑法第百七十八条における「抗拒不能」の認定について、被害者と相手方との関係性や被害者の心理をより一層適切に踏まえてなされる必要があるとの指摘がなされていることに鑑み、これらに関連する心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進するとともに、これらの知見を踏まえ、司法警察職員、検察官及び裁判官に対して、性犯罪に直面した被害者の心理等についての研修を行うこと。
 三 性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の過程においては、被害者のプライバシー、生活の平穏その他の権利利益に十分配慮し、偏見に基づく不当な取扱いを受けることがないようにするとともに、二次被害の防止に努めること。また、被害の実態を十分に踏まえた適切な証拠保全を図ること。
 四 強制性交等罪が被害者の性別を問わないものとなったことを踏まえ、被害の相談、捜査、公判のあらゆる過程において、被害者となり得る男性や性的マイノリティに対して偏見に基づく不当な取扱いをしないことを、関係機関等に対する研修等を通じて徹底させるよう努めること。
 五 起訴・不起訴等の処分を行うに当たっては、被害者の心情に配慮するとともに、必要に応じ、処分の理由等について丁寧な説明に努めること。
 六 性犯罪が重大かつ深刻な被害を生じさせる上、性犯罪被害者がその被害の性質上支援を求めることが困難であり、その被害が潜在化しやすいという性犯罪被害の特性を踏まえ、第三次犯罪被害者等基本計画等に従い、性犯罪等被害に関する調査を実施し、性犯罪等被害の実態把握に努めるとともに、被害者の負担の軽減や被害の潜在化の防止等のため、ワンストップ支援センターの整備を推進すること。
 七 刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十四号)附則第九条第三項の規定により起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置についての検討を行うに当たっては、性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の実情や、被害者の再被害のおそれに配慮すべきであるとの指摘をも踏まえること。
 八 児童が被害者である性犯罪については、その被害が特に深刻化しやすいことなどを踏まえ、被害児童の心情や特性を理解し、二次被害の防止に配慮しつつ、被害児童から得られる供述の証明力を確保する聴取技法の普及や、検察庁、警察、児童相談所等の関係機関における協議により、関係機関の代表者が聴取を行うことなど、被害児童へ配慮した取組をより一層推進していくこと。
 九 性犯罪者は、再び類似の事件を起こす傾向が強いことに鑑み、性犯罪者に対する多角的な調査研究や関係機関と連携した施策の実施など、効果的な再犯防止対策を講ずるよう努めること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ各委員の皆さんの御賛同をお願いいたします。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41694930V20C19A2CR0000/
性犯罪被害、初の研修資料 国会決議受け最高裁作成
2019/2/25 9:38
性犯罪被害への理解を深めようと、最高裁精神科医の講演録や裁判官との質疑応答をまとめた研修資料を初めて作成し、全国の裁判所に配布したことが、分かった。被害者の心理を十分理解していない判決があるとの指摘もあり、性犯罪を厳罰化する改正刑法の成立に伴う国会の付帯決議は、心理学の知見を踏まえた裁判官らへの研修を求めていた。

強制性交罪は加害者による「暴行や脅迫」がなければ成立しない。被害者側は「恐怖から反射的に動けなくなることが多いのに、抵抗しなかったのは暴行、脅迫がなかったためだと認定する判決がある」として、被害者の心理を理解していないと訴えている。刑法改正の議論では暴行・脅迫要件の削除も議題になったものの、最終的に見送られた。

最高裁によると、研修資料は、性犯罪被害者のケアに取り組む精神科医小西聖子・武蔵野大教授ら専門家が2017年、司法研修所の刑事実務研究会で講演した内容がメインで、200ページを超える。

小西教授は講演で、多くのケースで自分より体の大きい加害者に直面すると、被害者は恐怖で体が凍り付くと強調。強いショックから感情や感覚がまひし、被害状況を記憶できないケースもあるとした。

さらに多くの被害者が心的外傷後ストレス障害PTSD)になり、裁判で「なぜ抵抗しなかったのか」と問われるのに苦痛を感じたり、拒めなかった自分が悪いと自責の念を抱いたりして、警察に被害を申告しない事例が多数あると説明した。

資料には裁判官との質疑応答も掲載。被害者が傷つくのを防ぐにはどうすればいいかとの質問に、臨床心理士は「被害者は法廷に立つだけでも相当なエネルギーを使う。心情を理解したということを判決で示してもらいたい」と答えた。

最高裁は昨年、全国の地、高裁と家裁に計約850部を配布。小西教授は取材に「裁く側の無知は許されない。全ての裁判官に資料を活用してほしい」と話した。〔共同〕

平成30年3月
刑事裁判資料第291号
性犯罪被害者の心理等に関する参考資料 最高裁判所事務総局

はしがき
本書は,性犯罪被害者の心理等を理解するために有益と思われる近時の資料をとりまとめ,執務の参考に供することとしたものである。
第1 「平成28年度刑事実務研究会(被害者配慮) 」及び第2 「平成2 9年度刑事実務研究会2 (裁判員2) 」は,司法研修所の研究会において, 性犯罪被害者の支援に長年携わっ~ている医師及びI の講師が行った講演の講演録である。
第3 「性犯罪の罰則に関する検討会」は, 法務省において,性犯罪の罰則の在り方について検討するために平成26年10月から平成27年8 月まで開催された検討会であり,本書には,性犯罪被害者や被害者支援団体関係者等からのヒアリングが実施された第2回議事録及び第3回議事録を掲載している。
第4 「法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会」は,性犯罪に関する刑法の一部改正について調査審議するために,平成27年1 1月から平成28 年6月まで法務省法制審議会に設置された部会であり,本書には,性犯罪被害者や被害者支援団体関係者等からのヒアリングが実施された第6回会議議事録を掲載している。
第5 「第193回国会参議院法務委員会jは, 平成29年6月16日に
成立した「刑法の一部を改正する法律」(平成29年法律第72号)の審議において,性犯罪被害者等を参考人として行われた参考人質疑の会議録を掲載している。
平成30年3月
最高裁判所事務総局刑事局
・・・・・・・・・

目次
第1 平成28年度刑事実務研究会(被害者配慮)
講演「被害者の心理と刑事裁判」講演録・・・・・・1
同資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
第2 平成29年度刑事実務研究会2 (裁判員2)
講演と意見交換「性犯罪被害者の心理と刑事裁判」講演録・・・・・59
同資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97
第3  性犯罪の罰則に関する検討会
 第2回議事録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 第3回議事録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第4法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会第6回会議議事録・・・・・・・・・・・・・・179
第5 第193回国会参議院法務委員会
会議録第20号(右綴じ) ・・・・・・・・・・・・218

長野県子どもを性被害から守るための条例の検挙事例は、刑事確定訴訟記録法で略式命令を閲覧すれば把握できます。

 
 ラブホテルに宿泊同伴した事例でも、深夜同伴罪で罰金になっています。威迫欺き困惑がない青少年との性的行為は、この地域では適法行為ということになります。

長野県子どもを性被害から守るための条例の規制項目の解説
【威迫等による性行為等の禁止】
第17条第1項
何人も、子どもに対し、威迫し、欺き若しくは困惑させ、又はその困惑に乗じて、性行為又はわいせつな行為を行ってはならないb (罰則: 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)
l 「何人も」とは、県民はもとより、旅行者、滞在者を含み、年齢、性別、国籍等を問わず長野県内にいる全ての者をいう。また、行為者が子どもの場合でも本条違反に該当するが、第20条(適用除外)の規定により罰則は適用しない。
2 「子ども」とは、18歳未満の者をいう。
なお、婚姻の有無は問わない。
3 「威迫」とは、暴行、脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により、心理的威圧を加え、相手方に不安の念を抱かせることをいう。
4 「欺き」とは、嘘を言って相手方を錯誤に陥らせ、又は真実を隠して錯誤に陥らせる行為をいう。
5 「困惑」とは、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう。
6 「困惑に乗じて」とは、困惑状態を作為的に作り出した場合だけではなく、既に子どもが何らかの理由により困惑状態に陥っており、それにつけ込んで(乗じて)性行為等を行う状況をいう。
7 「性行為」とは、「性交及び性交類似行為」と同義である(昭和40年7月12日新潟家裁長岡支部決定)。『性交類似行為』とは、実質的にみて、性交と同視し得る態様における性的な行為をいい、例えば、異性間の性交とその態様を同じくする状況下におけるあるいは性交を模して行われる手淫・口淫行為・同性愛行為などであり、児童買春・児童ポルノ禁止法における性交類似行為の解釈と同義である。
8 「わいせつな行為」とは、「いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的差恥心及び嫌悪の情をおこさせる行為」をいう(昭和39年4月22日東京高裁判決)。
具体的には、陰部に対する弄び・押し当て、乳房に対する弄び等がこれにあたる。

「性被害防止条例」摘発 県警、4件目も発表せず 昨年10月に書類送検
2019.01.31 信濃毎日新聞
 県警が昨年10月、「県子どもを性被害から守るための条例」違反(深夜外出の制限)の疑いで、1人を書類送検していたことが30日、分かった。2016年11月に罰則規定を含め同条例が全面施行して以降、摘発は4人目。県警は17年、同容疑で初めて2人を摘発した際は概要を発表したが、今回は昨年8月の3人目の摘発時と同様、「任意捜査の事件は原則発表しない」として詳細を明らかにしていない。

 概要は県の「子ども支援委員会」に報告される見通しだが、審議は非公開で行われている。犯罪の構成要件などを巡って議論があった条例の運用が、外部から検証しにくい状況が続いている。

 条例は保護者の委託や同意、正当な理由がなく子ども(18歳未満)を深夜(午後11時~翌午前4時)に連れ出す行為などを禁止し、違反した場合は30万円以下の罰金を科すとしている。

 県警は今回の事件について、発生日時、場所、容疑者や被害者の性別、年齢などを明らかにしていない。県警少年課は「任意捜査の事件は原則的に公表していない」とした上で、「個別に内容を検討した結果、公表する事案ではないと判断した」としている。条例を担当する県次世代サポート課は、今回の事件について「承知していない」としている。

 過去の摘発は、いずれも深夜外出の制限容疑で、17年4月に2件、18年8月に1件あった。17年は前橋市茨城県の男性2人が書類送検され、このうち前橋市の男性は略式命令を受けて罰金30万円を納付。茨城県の男性は略式起訴後に自殺した。18年摘発の男性は書類送検され、略式命令を受けて罰金を納付した。

 県警は、17年の2件は条例を初適用した事件のため「再発防止の観点から公表した」と説明している。

 条例は深夜外出の制限のほか、大人が18歳未満の子どもを「威迫」「欺き」「困惑」させて性行為やわいせつ行為をすることなども禁止し、違反者には2年以下の懲役または100万円以下の罰金を科すと規定。制定過程では「捜査機関が、自由な恋愛など個人の内心に踏み入る危険性がある」との指摘が法律の専門家などからあった。

①児童Aを脅迫して性交求めた行為を強要未遂とし、②児童Aを脅迫して乳房露出画像を送らせた行為を強要罪とし、包括一罪とした事案(千葉地裁H31.2.22)

①は強制性交未遂、②は強制わいせつ罪とする裁判例もあるのに、軽い罪名で起訴されているので、実刑にはなりません。



強要未遂,強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
千葉地方裁判所判決平成31年2月22日
 被告人を懲役2年に処する。
 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1 ■■■(当時16歳)の性行為を撮影した動画を入手したと装って同人を脅迫し,被告人との性交等に応じさせようと考え,
 1 平成30年11月5日午後2時34分頃から同日午後8時8分頃までの間,千葉市若葉区(以下略)千葉市□□消防署△△出張所において,被告人の使用する携帯電話機から,アプリケーションソフト「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,前記■■が使用する携帯電話機に,「あなたの,はめどり見してもらったけど」「なら動画はまわるけど」「やってくれるなら動画消してあげる」「口でいかしてくれたら本番はないかもねー」「じゃー明日フェラ動画撮らせて」「ゆうこと聞けないなら回すからいいや」等のメッセージを送信し,いずれもその頃,■■■において,前記■■にこれらを閲覧させ,被告人との性交及び前記■■が口淫する様子を動画撮影させることを要求し,その要求に応じなければ,同人の名誉に危害を加えかねない旨を告知して同人を脅迫し,もって同人に義務のないことを行わせようとしたが,同人が同月6日に警察に届け出たため,その目的を遂げなかった。
 2 同月5日午後4時10分頃から同日午後7時54分頃までの間,前記千葉市□□消防署△△出張所において,被告人の使用する携帯電話機から,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,前記■■が使用する携帯電話機に,「今日暇だから自撮りでも送ってよ」「むねとかね」「あーいいんだー」「まわっても」等のメッセージを送信し,いずれもその頃,前記■■において,前記■■にこれらを閲覧させ,同人の胸を撮影した画像の送信を要求し,その要求に応じなければ,同人の名誉に危害を加えかねない旨を告知して同人を脅迫し,同人を怖がらせ,よって,同日午後7時37分頃から同日午後7時59分頃までの間,3回にわたり,同人に,乳房を露出するなどした姿態をとらせ,これを同人の携帯電話機で撮影させた上,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,その画像データ3点を被告人の使用する携帯電話機に送信させ,もって前記■■に義務のないことを行わせた。
第2 前記■■が18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午後7時59分頃,前記■■■において,前記■■にその乳房を露出させる姿態をとらせ,これを同人の使用する携帯電話機で撮影させた上,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,その画像データ1点を被告人の使用する携帯電話機に送信させ,その頃,前記千葉市□□消防署△△出張所において,上記画像データを受信して同携帯電話機の記録装置に記録させて保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である前記■■に係る児童ポルノを製造した。
(証拠の標目)
 以下,括弧内の甲乙の番号は,証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。
判示事実全部について
・ 被告人の公判供述
・ 被告人の検察官調書(乙3)
・ ■■■の検察官調書(甲2-ただし,不同意部分を除く。)
・ 電話聴取書(甲3)
・ 写真撮影報告書(甲4,5,8)
・ 捜査報告書(甲7)
(法令の適用)
 被告人の判示第1の1の所為は刑法223条3項,1項に,判示第1の2の所為は同項にそれぞれ該当するが,これらを包括して一罪として処断することとし,被告人の判示第2の所為は児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号に該当するところ,判示第2の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 被告人は,自己の性欲を満たすため,被害女児の性行為を撮影した動画を入手したと装い,当時16歳の被害女児に対し,被告人との性交に応じること,被害女児が口淫する様子を動画撮影させること,被害女児に乳房を露出するなどした姿態をとらせ,これを撮影した画像データを送信することなどを要求し,これらの要求に応じなければ,被害女児の性行為を撮影した動画を拡散させるなどのメッセージを伝えて脅迫し,上記画像データを被告人の使用する携帯電話機に送信させて保存し,児童ポルノを製造したものである。動機が自己中心的で身勝手極まりなく,態様も執拗で卑劣なものである。被害女児は本件被害に遭い,多大な恐怖心や羞恥心を抱くなどの精神的苦痛を被っており,将来にわたる精神的な悪影響も懸念されるところであって,被害結果を軽視することはできない。被害女児は,被告人側からの示談の申入れを拒絶し,被告人を厳重に処罰するよう求めているが,上記のような被害結果等に照らすと,その心情も十分に理解できるところである。そうすると,被告人の刑事責任については決して軽く見ることができない。
 もっとも,これまで前科がなく,21歳と若年の被告人が,素直に事実関係を認めて反省の態度と更生の意欲を示し,精神科クリニックに通院するなどして再犯防止に努めていること,被告人と同居している母親が,当公判廷に出廷し,被告人の監督を誓約したこと,本件が発覚したことで,自業自得とはいえ,被告人の名前等が広く報道され,消防士の職を懲戒免職されるなど,既に大きな社会的制裁を受けていることなど,被告人のために酌むべき事情もある。
 そこで,以上の事情を総合考慮した結果,被告人を主文のとおりの懲役刑に処してその刑事責任を明確にした上で,今回に限りその刑の執行を猶予して,被告人に社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断した。
(求刑 懲役2年)
  平成31年2月22日
    千葉地方裁判所刑事第3部
           裁判官  高橋正幸

児童ポルノ等の提供を求める行為(福岡県青少年健全育成条例)により、千葉県の男性を検挙した事例

 児童の提供目的製造・提供罪の教唆みたいな感じになりますが、注文販売というのは予想される関与者であるのに国法では放任されている行為です。
 千葉県では規制されてないという点も強調してください。
 福岡県条例を千葉の人に押しつけるというのは無理でしょう。公布もされないのに。電話による卑わい行為の高裁判例がありますが、ネットにはそぐわない。
 結局、画像が送られている場合は、製造罪が成立して、要求罪は成立しない。

児童ポルノ提供を女子高校生に求める 容疑で千葉県の会社員男を書類送検 福岡西署
2019/7/22 12:30
西日本新聞
 福岡西署は22日、県青少年健全育成条例違反(児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)の疑いで、千葉県船橋市に住む会社員の男(51)を書類送検した。送検容疑は、2月12日未明、自宅からスマートフォンを使って福岡県篠栗町在住の女子高校生(16)に「こちらは、関東だから会うというよりは振り込みとかの支援を考えています」「そちらの写メ売ってもらう感じです」などとメッセージを送信し、児童ポルノの提供を求めた疑い

裸の「自画撮り」女子高生に要求 容疑の男 書類送検
2019.07.22 読売新聞
 女子高生に「自画撮り」した裸の画像を送るように要求したとして、福岡県警西署は22日、千葉県船橋市の会社員の男(51)を福岡県青少年健全育成条例違反容疑で福岡地検書類送検した。2月施行の改正条例では、中高生らにわいせつな画像の提供を求める行為を禁じる条項が新設されたが、適用は初めて。
 発表では、男は2月12日、ツイッターで知り合った福岡県内の女子高生(16)が18歳未満と知りながら、無料通話アプリで、「胸のアップを送って」「写メ(写真付きメール)売ってもらう感じです」などとメッセージを送り、児童ポルノの提供を求めた疑い。「間違いない」と容疑を認めている。
 男は裸の画像など十数点を受け取り、女子高生が指定する口座に4000円を振り込んだ。女子高生がツイッター上で「パパ活」を募集しているのを警察がサイバーパトロールで見つけて補導し、発覚した。
読売新聞社

福岡県青少年健全育成条例の手引き平成31年3月
児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)第31条の2 何人も、青少年に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。次号において同じ。)の提供を行うように求めること。
(2) 青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること。
【要旨】本条は、すべての者に対して、青少年に、自身の姿態が描写された児童ポルノ又はその情報を記録した電磁的記録その他の記録の提供を当該青少年に不当に求める行為を禁止した規定である。
【解説】1 「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、求める相手方である青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ等をいう。
したがって、他の青少年の姿態が描写された児童ポルノ等を求めた場合については、該当しない。
また、どのような表現が「児童ポルノ」に該当するかについては、要求文言とその前後のやりとりを総合的に判断し、該当性の判断を行うこととなるが、その要求に青少年が応じてしまった場合、児童ポルノ禁止法第2条第3項に該当する児童ポルノが提供されることが社会通念上明らかに認められることが必要である。
2 「提供を行うように求める」とは、児童ポルノ禁止法第7条第2項に規定する「提供」を行うように求めることであり、当該児童ポルノ等を相手方において利用し得べき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいい、具体的には、有体物としての児童ポルノを交付するよう求めたり、電磁的記録を電子メールで送信するよう求める行為がこれに当たる。
3 「拒まれたにもかかわらず」とは、青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めた者が、当該青少年による拒否の意思が示され、それを認識しているにもかかわらずということをいう。
したがって、やりとりの記録などから拒否されたと認識していることが明らかである場合のほか、社会通念上、青少年の意思表示が拒否したと認められるものであり、かつ、それが児童ポルノ等の提供を行うように求めた者に到達していることが明らかである場合には、拒否されたと認識していたということができる。
4 「威迫」とは、他人に対して言語挙動をもって気勢を示し、不安の感を生じさせることをいう。
「脅迫」と異なり、他人に恐怖心を生じさせる程度のものであることを要しない。
なお、「威力」との差異に関し、公職選挙法第225条第1号の「威力」とは「人の意思を制圧するに足りる勢力」、同3号の「威迫」とは「人の不安を抱かせるに足りる行為」をいい、両者の違いは、人の意思を制圧するに足りる程度の行為であるかどうかにあるものと解すべき」であると判示している(昭和42年2月4日最高裁第2小法廷判決)。
5 「欺き」とは、他人を錯誤に陥れ、虚偽の事実を真実と誤認させることをいう。
真実でないことを真実であるとして表示する行為で、虚偽の事実を摘示する場合と真実の事実を隠ぺいする場合とが含まれる。
6 「困惑させ」とは、困り戸惑わせることをいい、暴行脅迫に至らない程度の心理的威圧を加え、又は自由意思を拘束することによって自由な判断を制限することをいう。
相手方に威力を示す場合、義理人情の機微につけ込む場合、その他相手方を心理的に拘束し得るような問題を持ち込む場合などが考えられるが、いずれにしても、相手方に対する言動のほか、相手方の年齢・知能・性格、置かれた環境、前後の事情などを総合して判定する。
7 「対償を供与し、若しくはその供与の約束をする」とは、児童ポルノ等の提供に対する反対給付としての経済的な利益を供与、又はその約束をすることをいう。
「対償」は、現金のみならず、物品、債務の免除も含まれ、金額の多寡は問わない。
【罰則】
○ 30万円以下の罰金又は科料(第38条第4項)
【関係法令】○公職選挙法第225条○児童ポルノ禁止法第2条、第7条
【参考判例】昭和61年12月2日高松高裁判決(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例事件)本件は、被告人が数回にわたり徳島県所在の自宅から香川県にあるA方に電話をして、同人の妻のBに対し「あんたが好きです。会ってほしい。」などと反覆して申向け、もって同女に著しく不安又は迷惑を覚えさせるようなことをしたという事案であるところ、原審は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38-84-年12月23日香川県条例50号) 10条、11条1項は香川県の区域内における行為に対して適用されるのが原則であって、区域外の行為に本件条例を適用するには特段の根拠の存在することが必要であるが、本件被告人の行為は区域外でなされたものであり、本件条例を適用する特段の根拠はないとして、被告人は無罪としたのであるが、条例は当該地方公共団体の区域内の行為に適用されるのが原則であるものの、本件のように当該地方公共団体の区域外から区域内に向けて内容が犯罪となる電話をかける行為に及んだ場合には、電話をかけた場所のみならず、電話を受けた場所である結果発生地も犯罪地と認められるのであり、このように犯罪の結果発生地が香川県にあるとされる以上、行為者は直接的かつ現実的に香川県に関わりを持ったものというべく、香川県民及び滞在者と同様に本件条例が適用されるものと解すべきである。
なお、本件条例12条は本件’ 条例が適用される通常の場合の行為者として「県民及び滞在者」を挙げて適用上の注意しているに過ぎないと解すべく、同条を根拠として本件条例が適用される行為者のを直ちに限定することは相当でない。
た、原審は、香川県民及び滞在者以外の者に本件条例を適用し処罰すると、本件条存在、内容を了知することが不可能若しくは著しく困難なことから、行為に際し違の認識すら持ち得ない者が処罰される結果を招くというが、故意の内容に違法性のは必要がないのみならず、本件被告人は、一般通常人におけると同様、本件違法性識に欠くる所はなかったものと認められるから、右の結果が不合理であるとはいえない。

福岡県
平成30年2月23日
自画撮りに関する青少年健全育成条例改正の検討事項について

10年齢の知情性について
本条例は、第38条第7項で、条例上の特定の罰則規定については、年齢の知情性がなくとも処罰可能とする規定を置いているが、本禁止規定は、第38条第7項の規定の対象外とすべきと考える。つまり、要求を行う者に、相手が青少年だという認識が無かったと認められる場合は、処罰できないこととなる。本規定は、「当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること」を禁止するものであり、相手方が青少年であると認識できるような事実が全くない場合には適用できない。~これは、「自画撮り被害」が相手を直接確認できないインターネット上のやりとりの中で行われることが想定され、やりとりの相手が青少年だと認識していない者にまで本規定を適用することは過剰な規制と考えられるためである。>

吉田利広「いわゆる「投稿サイト」の管理者らについてわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の共謀共同正犯の成立を認めた事例(平成30年9月11日大阪高等裁判所判決(弁護人上告中) ・裁判所ウェブサイト登載)研修853号

 吉田検事が注5で挙げた文献で紹介されている判例は、全部弁護人奥村の事件です。
 奥村事件では、
  東京高裁H16.6.23は管理者の単独正犯説(共謀否定)
  東京高裁H30.2.6は東京高裁H16.6.23に従い管理者の単独正犯説(共謀否定)→上告中(第一小法廷)
となっていて、東京高裁H16.6.23に対する「被告人が直接児童ポルノの蔵置を他人に働きかけたのであればともかく,そのような直接的行為を認めることができない事案においては,児童ポルノ蔵置後の不作為を問題とすることが不可欠であり,他人により蔵置された児童ポルノを削除等する保障人的地位・作為義務をプロパイダに認めた理論的根拠が示されていないなどという批判がされている(山口・前掲「プロバイダの刑事責任」115頁)」という批判を、第一小法廷山口厚判事自身がどう処理するかが見物です。

第1 はじめに
インターネット上のウェブサイトで画像等の投稿を受け付け,不特定多数の者に閲覧させる, いわゆる「投稿サイト」が多数開設され, その中には,投稿されたわいせつ画像を有料会員に閲覧させることにより利益を得ているものもあり, 近時, このようなサイトを管理.運営する者の刑事責任が問題となっている○
本判決は,投稿サイトを管理運営する法人の実質的相談役等である被告人2名について, わいせつ動画の投稿者との共謀によるわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の成立を認めたものであり,事例判断ではあるものの,実務上参考となると思われることから,紹介する次第である。
なお,本判決には, わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の成否のほか,公然わいせつ罪の成否及び証拠採用に関する訴訟手続の法令違反(注1)等の論点も含まれているが,本稿では,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の成否に関する部分に限って紹介する。
また,本稿中,意見にわたる部分は, もとより筆者の私見である。
・・・・・・・・・
第5おわりに
プロバイダの刑事責任については, 「違法コンテンツをプロバイダが自ら積極的に利用するために, たとえばアップロードを事実上,推奨するような状況の下で,蔵置された違法コンテンツをあえて放置したような場合において, きわめて例外的に」刑事責任が認められるとする見解が有力に主張されているが,作為犯なのか不作為犯なのか,正犯なのか共犯なのか,共犯として共同正犯なのか常助犯なのかなどという点が問題とされている(注5)。
そのような中で,投稿サイトを管理・運営する被告人らについて,投稿者(実行犯) との黙示の意思連絡によるわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の共謀共同正犯の成立を認めた本判決は注目すべきものであるが,同種事案について,今後の裁判所の判断を注視していく必要がある。
(注5)大コンメンタール刑法第三版9巻52頁参照。
また,参考文献として,例えば,山口厚「プロバイダの刑事責任」(情報ネットワーク法学会他編「インターネット上の誹誇中傷と責任」111頁以下),佐伯仁志「プロバイダの刑事責任」(堀部政男監修「プロバイダ責任制限法実務と理論」161頁以下)等がある。

コンメンタール刑法第三版9巻52頁
⑤のプロパイダの刑事責任については,正犯なのか共犯なのか,正犯だとして作為犯なのか不作為犯なのか,不作為犯だとして作為義務の根拠は何かなどという点が問題とされており, ["違法コンテンツをプロパイダが自ら積極的に利用するために,たとえばアップロードを事実上奨励するような状況の下で,蔵置された違法コンテンツをあえて放置したような場合において,きわめて例外的に」刑事責任が認められるとする見解が有力に主張されている(山口厚「プパイダの刑事責任」情報ネットワーク法学会・テレコムサービス協会編・インターネット上の誹誇中傷と責任124).
なお, ドイツではプロパイダの不作為犯としての刑法上の責任を認める見解が主張されており(只木誠「インタネットと名誉段煩」現刑8巻47頁),プロパイダに削除要求がなされたが,それをあえて放置した場合には,積極的な陳列と同視し得ることを理由に,わいせっ物公然陳列罪の成立を認める余地があるとするなど,上記有力説よりも広い範囲でプロバイダ、の刑事責任を認める余地があるとする学説もある(伊藤ら・各論〔島田421頁,只木・前掲49良).
横浜地裁、平成15年12月15日判決(奥村徹「プロハイタの刑事責任判例の考察」前記インターネット上の誹訪中傷と責任149良〕は,被告人は,サーパコンビュータの記憶装置であるディスクアレイにiP掲示板」と称するインターネット!-のホームページを開設し管理運営するものであるが,インターネットに接続したコンピュータを有する不特定多数の者が送信した児童ポルノである画像合計22画像分を記憶・蔵置させたままこれらを削除せず,もって,児童ポルノを公然と陳列したという公訴事実について, ["児童ポルノ公然陳列罪において不作為の態様による犯罪の成立を否定すべき理由はな」いとして不作為による児童ポルノ公然陳列罪の成立を認めた.
 これに対する控訴審判決(東京高判平16・6・23. 奥村・前掲151頁以下ーなお,本判決については被告人が上告申立をしたが,最決平19・3・29公刊物本投載は,特段の理由を付することなく棄却している)は, I被告人の行為の作為・不作為性も問題とされているが,被告人の本件の犯罪に直接関係する行為は,本件掲示板を開設して,原判示のとおり不特定多数の者に本件児童ポルノ画像を送信さぜて本件ディスグアレイに記憶・蔵置させながら, これを放十置して公然陳列したことである.そして,本罪の犯罪行為は,厳密には,前記サーパーコンピュータによるみ;件ディスクアレイの陳列であって,その犯行場所も同所ということになる.したがって,この陳列行為が作為犯であることも明らかである.。」「確かに,被告人が,本件児童ポノレノを削除するなど陳列行為を終了さぜる行為に出なかった不作為も,陳列行為という犯罪行為の一環をなすものとして,その犯罪行為に含まれていると解される
が,それは,陳列行為を続けることのいわば裏返し的な行為をとらえたものにすぎないものと解される.Jなどと判示した上,作為義務の内容等が明示されていないとの控訴趣意に対しては, 「被告人の本件犯罪行為の主要なものは作為犯である上,所論のいう不作為についても,原判決は,被告人は,本件陳列行為の開始当初から,被告人に児童ポルノ画像の未必的な認識があったとしていて,この点を明確にしている.また,本件陳列の対象となっているのは,児童ポルノであって,犯罪行為を構成するものとしてすみやかに削除されるべきものであるから,削除義務の内容,根拠等も原判決の認定事実自体から明らかにされていると解することができる」などと判示した.
上記東京高裁判例に対しては, 被告人が直接児童ポルノの蔵置を他人に働きかけたのであればともかく,そのような直接的行為を認めることができない事案においては,児童ポルノ蔵置後の不作為を問題とすることが不可欠であり,他人により蔵置された児童ポルノを削除等する保障人的地位・作為義務をプロパイダに認めた理論的根拠が示されていないなどという批判がされている(山口・前掲「プロバイダの刑事責任」115頁).未だ判例・学説の蓄積が少ない論点であり,違法コンテンツに対する管理処分権限の有無や管理者の目的の有無等も検討した上,事案ごとに犯罪の成否を判断すべきであろう(本稿脱稿後,佐伯仁志「プロバイダの刑事責任」 プロバイダ責任制限法実務と理論施行10年の軌跡と展望別冊NBL141号161頁に接した).

自分の裸を撮影して公然陳列した児童の責任

 法文上は行為者から被害児童が除外されてないので、7条6項の公然陳列罪と7項の公然陳列目的製造罪になって、成人だと最高7年6月になる行為です。

7条
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 しかし、個人的法益侵害を強調すれば、大阪高裁H21.12.3・福岡高裁h29.3.15のように、被害者であって、児童ポルノ罪の犯罪主体にならないという見解もでてきます。

阪高裁H21.12.3
第3 控訴趣意中,法令適用の誤りの主張について
 論旨は,本件については,①岐阜県青少年健全育成条例23条2項の「わいせつな行為を教える」,又は同条1項の「わいせつな行為をし」に該当する条例違反の罪が成立するにすぎないのに,法7条3項の児童ポルノ製造罪の成立を認め,②(ア)被告人に,被害児童が正犯である法7条1項(提供罪)及び同条2項(提供目的製造罪)の教唆犯が成立し,同条3項の児童ポルノ製造罪に該当しないのに,同罪の正犯とし,(イ)仮に(ア)が認められないとしても,被害児童と被告人とは同条3項の児童ポルノ製造罪の共同正犯であるのに,被告人の単独犯とし,さらに,(ウ)被害児童の正犯性が否定されるとしても,被告人は教唆犯であるから共犯の従属性により不処罰であるのに,被告人を処罰した原判決には判決に影響することが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかしながら,①については,関係証拠によれば,原判示の犯罪事実を優に認めることができるから,本件について法7条3項の児童ポルノ製造罪が成立することは明らかである。
②については,同条各項の規定は,平成16年法律第106号による改正前の法に規定がなかったものであるが,旧法施行後の状況等にかんがみ,児童の権利の擁護を一層促進するため新たに犯罪化され,処罰の範囲が拡大されたものであるところ,対象となる行為は,いずれも法2条3項各号に掲げる児童の姿態を描写した児童ポルノを前提とするもので,当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取・性的虐待行為にほかならず,しかも,不特定多数の者に対する提供(法7条4項)及びその目的での製造等(同条5項)の罪ではもとよりその流通が予定され,特定少数の者に対する提供(同条1項)及びその目的での製造等(同条2項)の罪では流通の危険性が大きく,他人に提供する目的を伴わない製造罪(同条3項)にあっては描写された児童の人権を直接侵害する行為であり,流通性は小さいものの,その危険性を創出するものであるから,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長するごとになるため,児童を性的搾取・性的虐待の被害から擁護することを意図して上記各行為を処罰するものとしたのであって,当該児童は,原則的に,その被害者と位置付けられているというべきである。
そうすると,被告人が,携帯電話の下着売買募集のサイトで知り合った被害児童に対し,携帯電話のメールで,被害児童のポルノ画像を買い取る旨執ように働き掛けた上,指示して姿態をとらせた被害児童のポルノ画像を撮影・送信させて,自己の記録媒体に保存させたという本件について,(ア)の点は,被害児童が児童ポルノの提供(同条1項)及びその目的での製造(同条2項)の罪の正犯で,被告人はその教唆犯にすぎないとする点で,(イ)の点は,被害児童と被告人が他人に提供する目的を伴わない児童ポルノ製造罪(同条3項)の共同正犯であるとする点で、(ウ)の点は,被告人が教唆犯にすぎないという点で,いずれも誤っており,所論はいずれも採用することができない独自の見解というほかない。
 その他,所論が主張するところを検討しても,原判決には所論が指摘するような法令適用の誤りがあるとはいえない。
 論旨は理由がない。

福岡高裁h29.3.15
児童買春・児童ポルノ等処罰法は, 買春行為や児童ポルノの製造等に当たり, 当然存在する関与者としての児童につき処罰規定を設けていない一方,被害者としての児童を保護する観点から,種々の規定を設けており,児童を処罰しないとする立法趣旨が示されている。

https://digital.asahi.com/articles/ASM7K5SJKM7KOIPE028.html
少年課によると、女子中学生は、若者に人気の動画投稿SNS「ティックトック(TikTok)」で複数の友人に限り、自ら撮影した動画を公開。その後、不特定多数が見られる状態でティックトックに動画が公開されており、他の動画共有サイトでもアップされていたという。

・・・
https://digital.asahi.com/articles/ASM6G7GJJM6GOIPE02X.html?iref=pc_rellink
自画撮りの裸、送り続けた少女「簡単に人気者になれる」
2019年6月19日17時00分
 18歳未満の未成年者が、LINEなどを通じてやりとりする相手の要求に応じて自分の裸や下着姿を撮影した「自画撮り」が悪用されている。画像はネット上で拡散し、事件に発展することもある。SNSの普及により、未成年者らが気軽な交流に慣れ親しむ一方、その裏に潜む危うさに鈍感になっているようだ。

 「SNSの向こう側の優しい言葉に、乗せられてしまった。『流出させない』といっても、約束を守ってくれる保障なんてないのに」

 名古屋市の繁華街「錦三」地区で、記者が出会った横浜市の少女(17)は、昨夏まで、SNS上で見知らぬ相手に裸の画像や動画を送り、公開していた。今はそれを悔やんでいる。

 初めて送ったのは、中学1年生の時。「病んでる」と自身のSNSに書き込んだら、知らない男が「話、聞くよ」と返信してきた。

 それまでずっと自分に自信がなかった。学校では、男子生徒と打ち解けて話す女子生徒がうらやましかった。そんな悩みをぶつけると、男は優しい言葉で励ましてくれた。「君の写真が見たいな」。勇気を出して裸の写真を送ると、褒められた。その後も、SNS上の「かわいい」という反応を求めて、いろんな相手の求めに応じて裸の画像や動画を送り続けた。

 「手軽に撮れて、簡単に人気者になれる。抵抗感は薄れていった」。ツイッターに匿名で、際どい自画撮りをアップするようにもなった。画像への反響が多いほど、自分が認められている気がして、満たされた。周囲にも、同様のことをする友人がいた。

 だが昨夏、そのうちの一人の写真がアダルトサイトに転載されて悪用されていることを知り、画像をさらすことをやめた。「最初は不安だったはずが、次第に自画撮りを『危ない』と思えなくなってしまっていた」。少女はそう振り返った。(竹井周平)

宮城県青少年健全育成条例違反につき「二人は2回目に会った際に自動車内で性交に及び、かつ、3回目に会った際にも性的な行為に及んでおり、これらに照らすと、被告人が性交渉を目的として被害者と会っていた疑いは否定できない。しかしながら、二人は、5月頃や夏頃以降もFで日常的なやり取りを行っており、その後本件に至るまでの間に被告人が積極的に性的な行為を求めたようなところもなく、会った際には性的な行為以外のやり取りもしている。その上、被害者に対し本件当時に好意を抱いていたという被告人の供述を排斥することはできない。被告

宮城県青少年健全育成条例違反につき「二人は2回目に会った際に自動車内で性交に及び、かつ、3回目に会った際にも性的な行為に及んでおり、これらに照らすと、被告人が性交渉を目的として被害者と会っていた疑いは否定できない。しかしながら、二人は、5月頃や夏頃以降もFで日常的なやり取りを行っており、その後本件に至るまでの間に被告人が積極的に性的な行為を求めたようなところもなく、会った際には性的な行為以外のやり取りもしている。その上、被害者に対し本件当時に好意を抱いていたという被告人の供述を排斥することはできない。被告人や被害者のような年齢層の若者が交際する中で、性的な行為に至ることを期待したり、自然に性衝動などが生じることは通常のことであるし、被告人は、「彼氏がいい。」との被害者の言葉で性的な行為を止めていて、被害者の意向にも配慮している。このような事情にも照らすと、被告人は、専ら自己の性欲を優先したとまではいい難い。加えて、捜査段階において、被害者と被告人の従前の関係性について十分な捜査がされておらず、交際状況に関する証拠が欠けている。」という無罪理由(仙台地裁H30.2.8)


 強制わいせつ罪を無罪にした説明が主で、青少年条例違反については、理由が短めです。
 「第31条1項何人も、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」という法文の「わいせつな行為」が起訴された場合にも、
「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)
判例を意識して、「単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められない」かを検討しています。
 真剣な交際でなかったことについて検察官に立証責任があります。
 こういう交際関係にあっても、強制わいせつ罪で検挙されることがあることに注意しましょう。

仙台地方裁判所平成30年02月08日
 上記の者に対する強制わいせつ(予備的訴因 宮城県青少年健全育成条例違反)被告事件について、当裁判所は、検察官矢部良二及び髙山由子並びに私選弁護人薄井淳(主任)及び同草場裕之各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人は無罪。

理由
第1 公訴事実及び争点等
 1 本件各公訴事実
  本件公訴事実のうち、主位的訴因は、「被告人は、A(当時17歳。以下「被害者」という。)に強いてわいせつな行為をしようと考え、平成28年11月8日午後6時30分頃(以下、年号はいずれも平成28年である。)、宮城県(以下略)E店屋上駐車場(以下「本件駐車場」という。)に駐車中の自動車(以下「本件車両」という。)内において、助手席に座っていた被害者に対し、いきなり覆いかぶさって助手席シートを倒し、その両乳房をもみ、乳首をなめ、更に下着の中に手を差し入れて陰部に指を挿入して弄ぶなどし、もって強いてわいせつな行為をした。」というものであり、予備的訴因は、「被告人は、11月8日午後6時30分頃、本件駐車場に駐車中の本件車両内において、被害者が18歳未満の者であることを知りながら、単に自己の性的欲望を満足させるため被害者の両乳房をもみ、乳首をなめ、更に下着の中に手を差し入れて陰部に指を挿入して弄ぶなどし、もって青少年に対しわいせつな行為をした。」というものである。
 2 争点等
  主位的訴因については、被告人が被害者に対して行ったわいせつ行為の内容のほか、〈1〉被害者がわいせつ行為に同意したか、〈2〉被告人がその同意があると誤信したかが争われ、予備的訴因については、〈3〉年齢の知情性及び〈4〉淫行行為の該当性が争われており、被害者の供述の信用性の評価が大きく対立している。
  (1) 検察官は、11月8日午後6時40分に被害者が友人のBに「助けて」というメッセージをFで送り、Bに会うなどして本件被害を打ち明け、同日午後9時15分にBが被害者の携帯電話機を使って警察に本件被害を伝え、その後被害者が警察署で事情聴取を受け、他方、被告人が同日午後10時48分以降に被害者に謝罪するメッセージを繰り返し送信するなどしているから、被告人が被害者に対し意に反する重大なことをしたことが合理的に推認でき、そうした事実等とも整合する被害者供述が信用できるとし、これに依拠して、被告人が主位的訴因のとおりのわいせつ行為を行ったことのほか、被害者は「やめてください。」と言うなど被告人による性的な接触を明確に拒む態度を示していたから、被害者の同意も、被告人に被害者の同意があるとの誤信もないと主張し、また、予備的訴因について、被害者は、本件以前に被告人に年齢などを伝え、本件時に被告人が被害者に対し、お金をあげるなどと伝えているから、被害者が18歳未満の者であることを知りつつ、被告人が単に自己の性的欲望を満足させるために本件を行ったことは明らかであると主張する。
  (2) 他方、弁護人は、被害者の供述には大きな変遷があり、供述内容も不自然不合理で全く信用性がないとして、その供述に沿うわいせつ行為の存在を争うほか、主位的訴因に対し、性的行為に至る経緯や心理的経過を含め具体的かつ自然に述べる被告人の供述は信用できるとして、〈1〉被害者は、被告人と性的な接触をすることについて同意していた、〈2〉仮に被害者の同意がなかったとしても、被害者は、当初は被告人との性的な接触を拒否する態度を示しておらず、その途中で「やっぱり彼氏がいい。」と言い出し、それ以降は性的な接触をしていないため、被告人には被害者の同意があるとの誤信があったと評価すべきであると指摘し、また、予備的訴因に対しても、被告人は、〈3〉被害者が18歳未満であることを知らなかった、〈4〉被害者に対する真摯な恋愛感情があり、それに基づき性的行為に及んでいるから、単に自己の性的欲望を満足させるための行為ではなかったと指摘して、被告人はいずれも無罪であると主張し、被告人も公判でこれに沿う供述をする。
  (3) 当裁判所は、概要、主位的訴因について、被害者の供述には、不自然な部分や自己に不都合な事実を隠そうとする供述経過等があるため、これに符合するようなメッセージ送信などの事実やBの供述があることに照らしても、被害者の供述を全面的に信用するのは難しく、被害者が被告人と性的な接触をした時点で、被害者の同意がなかったと認めるのはためらわれる上、少なくとも、被告人は、被害者が被告人と性的な接触をすることについて同意していたと認識していた可能性が排斥できず、被害者の同意に関し誤信があった合理的な疑いが残ること、予備的訴因については、交際状況に関する捜査が十分ではない上、捜査段階では年齢の知情性に関し何ら捜査がされていないところ、本件の証拠関係に照らすと、被告人が、被害者が18歳未満であることを知っていたと認めるには合理的な疑いが残り、さらに本件の性的な行為が条例が禁じる淫行行為に当たると認めるには合理的な疑いが残ることから、被告人はいずれも無罪と判断したので、以下、その理由を説明する。

第2 主位的訴因に対する当裁判所の判断
 1 前提事実
  証拠によれば、以下の前提事実が認められる。
  (1) 被告人と被害者は、3月頃、被告人がSNSを通じて被害者に対し連絡したことをきっかけに、Fでやり取りをするようになり、二人は本件以前に少なくとも5月頃及び夏頃(6月後半から7月中旬までの間)の2回会った。二人が会った際には、いずれも、被告人が運転する本件車両に被害者が乗り込み、被告人が被害者を自宅付近まで送り届けていた。なお、被告人と被害者は、本件に至るまで、被告人を「Y」と、被害者を「A’」と呼び合い、お互いの本名を教え合っていなかった。また、夏頃に会ってから本件当日までの間に、被告人と被害者が会うことはなかったが、その間、被告人と被害者のFでのやり取りは断続的に行われていた。
  (2) 被告人と被害者は、Fでのやり取りで本件当日に会うこととなり、二人は、11月8日午後6時頃、本件駐車場で待ち合わせた。その頃、被害者は、本件車両に乗り込み、被害者の用事を済ませるため付近の武道館まで本件車両で移動し、その用事を済ませた後、再度本件車両の助手席に乗り込み、被告人の運転で本件駐車場に戻った。
  (3) 被害者は、同日午後6時40分頃、Bに対し、「たすけて」というメッセージをFで送信したほか、同日午後7時4分頃にBと通話し(甲10)、その後、B宅に行き、Bに対し、本件車両内で被告人と性的な接触をしたことなどを相談した。また、被害者とBは、同日、警察に対し、被告人から強制わいせつの被害を受けた旨通報し、被害者は、同日午後9時50分頃から行われた本件駐車場の実況見分に立ち会うなどした(甲3)。
  他方、被告人は、同日午後10時48分頃以降、被害者に対し、「嫌な気持ちにさせてほんとに申し訳ありません。」「死刑でも何でもうけます。家族だけは助けてください。」などの内容のメッセージをFで送信し(甲10)、また、本件車両内に遺留された被害者の自宅のかぎの返還などに関し、被害者とメッセージのやり取りをした(甲11)。
 2 被害者の同意の有無等について
  以上を前提に争点について検討を加える。本件ではわいせつ行為の態様にも争いがあるが、より重要な争点である被害者の同意の有無等(前記〈1〉、〈2〉)を中心に検討を加えることとする。
  (1) 被害者供述の信用性
  ア 被害者は、公判において、概要、本件当日に本件駐車場に戻った後、本件車両から降りようとしたが、ドアが施錠されていたので、被告人に対し降りないのかと聞いたところ、被告人は被害者が座っていた助手席のシートをいきなり倒し、被害者に覆いかぶさり、被害者の両乳房を直接もみ、乳首をなめたため、被告人に「やめてください」と言ったり、被告人の手を払ったりした、被告人は行為を止めなかったので、自身の左脇に置いていたバッグの中で携帯電話機を操作して、Bに対し「たすけて」というメッセージをFで送信した、被害者は、被告人の手を払おうとしたが、被告人に手や足を使って押さえ付けられ、陰部に指を挿入された、被告人は被害者に対し陰茎をなめるよう言ったが、これに応じなかった、被告人が被害者の身体から離れた隙に、ドアのかぎを開けて降車し、走って逃げた、などと供述する。
  イ この点、性的な行為があったとされる時間帯に「たすけて」というメッセージをBに送信したことは、意に反する性的な行為を受けたとの供述をよく裏付けており、被害者が供述するような体勢でも、「たすけて」との単純なメッセージを送信する動作をすることは不可能ではないから、これ自体としても、被害者の意に反して被告人が性的な接触をしたことを一定程度推認させるものである。もっとも、突然被告人から助手席のシートを倒され、乳首をなめられるなどの性的被害を受け、振り払った手を被告人の手や足で押さえられたりする中で、バッグの中にあった携帯電話機を操作して、Fアプリを作動させて特定の者を選択してメッセージを送信する余裕があったかという点や、二人の体勢も含め性交渉のやり取りを具体的に述べる被告人の供述に比して、被害者は、必死に助けを求めた際の被害者と被告人の位置関係・姿勢や送信時の性行為の内容などについてあいまいな供述しかしていない点など、被害者の供述は、やや不自然さがぬぐえない。
  また、被害者は、Bに上記メッセージを送信したことに加えて、その送信から24分後に、Bに対し電話をかけ、その後同人と会って被告人との性的な接触があったことを相談し、同日中にBと共に警察に強制わいせつの被害を申告し、同日午後9時50分から警察の実況見分に立ち会うなどしている。Bは、この点、被害者が泣きながら電話をかけてきて、陰部を触られるなどの被害を訴えた旨供述しており(Bの供述は、このようなやり取りがあった限度では疑うべきところはない。)、犯行直後にBに被害を打ち明け、さほど時間を置かずに警察に被害申告した経過も、被害者の意に反する性的な接触があったこととよく整合する事実である。しかし、被害者の供述によると、シートを倒されて以降さほど長い時間被告人による性的な接触を受けていないとうかがわれる(被告人は駐車していた時間が10分か15分と述べる。)が、上記メッセージの送信時点では既に性的な接触があったはずであるから、その時点から電話をかけるまで24分もの時間を要したのは、当初の両乳房をもまれるなどしてから陰部に指を入れられるまでの一連の行為が意に反していたとすると、経過としてやや不自然さがある。一方、この点は、被告人が弁解するように、被害者が当初は被告人との性的な接触について拒絶の態度を示していなかったものの、途中から「やっぱり彼氏がいい。」と考えて、被告人との性的な接触を嫌がった被害者が動転し、本件車両を降りる前後にメッセージを送ったとしても、説明が付かないわけではないと思われる。また、後記エのとおり、被害申告しながら、ほぼ同時に被害者が被告人との関係性を隠すような行動をしたことは無視できない。
  ウ さらに、被害者は、本件以前の5月頃に被告人と会った際、被告人と車内で性交した旨供述する。この事実は、被害者に相当不利なものであるから、虚偽供述する理由はなく、被告人と被害者は5月頃に本件車両内で性交をしたと認められる(被告人は乳首をなめたりしたのにとどまるとして性交の事実を否定しており、この点が一致しないのは理解困難であるが、被告人の供述等を踏まえても、比較的濃厚な身体接触があったことに変わりはなく、性交したと認定することを妨げない。)。このほか、被告人と被害者が夏頃会った際、二人がキスした事実は被告人と被害者が一致した供述をしている上、被告人はその機会にも被害者の胸をなめたり、陰部に指を入れた旨供述するが、交際が浅い5月頃には被害者が被告人との性交を許したことに照らすと、この供述を排斥するのは困難である。このように、二人は過去2回会う度に本件車両内で性的な接触をした関係にあるから、本件当日も被告人が性的な接触に及ぶことは十分予想できる状況にある。そのような状況で被害者が本件車両に乗ったことや、シートに座っていた被害者のズボンを下げるには被害者の腰を上げるなどの動作を伴う方が容易であること、被害者は隙をついて逃げたというのに本件車両から降りた時点で膝まで下がったズボンを多分はいていたと述べていることも、被害者が被告人から性的な接触をされて嫌だったとの供述の信用性に疑いを生じさせる方向に働く事情である。
  この点、被害者は、5月頃の性交の際は彼氏がおらず、被告人と性交してもいいかなと思っていたのに対し、本件当時は、好きな人がいたので嫌だった旨供述する。被害者が当時17歳と若年であることや、被告人と最後に会ってから数か月が経過していることからすれば、被害者に既に好きな人がいたために、過去2回とは異なり、本件当時はそれに応じる意思を欠いたとしても不自然ではなく、その供述が不合理とはいえない。しかし、そのような被害者の心情を踏まえても、二人の従前の関係性等を考慮すると、本件当日において被害者が被告人との性的な接触を当初は受け入れ、途中から気持ちが変わって、被告人との性的な接触を嫌がったとの疑いが払拭できるわけではない。
  エ 加えて、被害者供述の信用性に疑問を差し挟むべき事情として、被害者が、本件直後に被告人との従前のFメッセージのデータを削除した点が挙げられる。一部が復元されたデータ(甲22)によれば、削除したデータの中には、知り合って以降の被告人との親密なやり取りが推認されるものがある。そして、被害者は、捜査段階において、夏頃に会って以降、被告人とFでのやり取りはなかったと述べ(弁24)、5月頃に被告人と性交した事実も供述していなかったところ、これらの事実を公判段階で初めて明らかにした。被告人は、捜査の早い段階で被害者と2回くらい性的な接触をした旨述べていたというのであり、従前の被害者と被告人との関係性は重要な事実であるから、被害者に対しても捜査官は必ずこれに関連する質問をするはずである。したがって、捜査段階では、被害者があえてこれを供述せず、また、被告人との良好な関係性を示すデータを消去したとしか考えられない。これらの事情からすれば、被害者は、本件直後や捜査段階において、何らかの自己に不利な事実を隠そうとしていたと認められる。そして、本件当日に警察に被害申告するのと並行してデータ消去等をしたことは、上記イの被害申告等の事実を、被害者供述を補強するものと扱うことにも疑問を生じさせる。
  オ その他、Bの公判供述によれば、被害者は、被告人の陰茎をなめた事実がないのに、本件当日及び翌日に、Bに対し、被告人の陰茎をなめさせられたと述べているから、Bが聞いた被害者の供述には、被害内容を誇張する部分があったとみる余地がある。また、被害者は、本件後に手首と足に痣があったと供述し、Bも、被害者から痣を見せられた上、痣の写真データをもらった旨供述しており、この点の両者の供述は一致するものの、これらの供述を裏付ける客観証拠はないほか、通常、被害者が警察に被害申告しながらその裏付けとなる痣について申告しないことは考えられないところ、12月18日の取調べで供述(弁28)するまで、被害者が捜査機関に痣を見せたり写真を提出したりした形跡はなく、痣に関する被害者供述にも不自然な面がある。
  カ そうすると、被害者供述の全体の信用性には疑問が残るといわざるを得ない。
  なお、検察官は、Bの公判供述は信用でき、これと一致する被害者の供述も信用できると主張する。しかし、Bと被害者の供述が一致するのは本件当日の出来事の一部にすぎない上、B供述の主要部分はBが被害者自身から聴取したことを基にしている。したがって、Bの供述は、独自に被害者供述を裏付けるようなものではなく、その聴取の仕方も、Bが誘導的な質問をして被害者が肯定か否定をするようなものであったとうかがわれるから、被害者供述の信用性を大きく支えるものではない。なお、B自身、被害者が本件前に被告人と性交していたことを知っていたら、被害者にそこまで協力しなかったと端的に述べているが、これも被害者が大げさに被告人との出来事を伝えたことをうかがわせる事情といえる。
  また、検察官は、被害者には虚偽供述をする理由がない旨も主張する。確かに、検察官が主張するとおり、被告人と被害者の本件以降のFでのやり取りの状況からすると、示談目的での虚偽供述の可能性は考えにくいものの、他方で、好きな人がいるのに被告人と性的な接触をした言い訳などとして、虚偽供述をする事態も全く考えられないわけではない。
  よって、検察官の指摘を踏まえても、被害者の供述の信用性に関する上記評価は変わらない。
  (2) 被告人供述の信用性
  ア 被告人は、公判において、概要、本件駐車場に戻った後、本件車両内において、被害者に対し、「好きな人いるの」と聞くと、被害者が「いないよ」と言ったので、被害者にキスをして、被害者の胸をもんだり胸をなめたりし、更にズボンの上から被害者の陰部を触ってから、ズボンを膝辺りまで脱がせて被害者の下着の中に手を入れ、直接陰部を触ったこと、すると、陰部を直接触り始めて少ししてから、突然、被害者が「彼氏がいい。」と言ったこと、そのため、びっくりして被害者のズボンをはかせ、被害者から「帰る。」と言われたので、「送っていくよ。」と言うと、被害者が「母親が迎えに来るからいい。」と言って降車し、被害者と別れたことなどを供述する。
  イ この点、被告人は、同日午後10時48分以降、被害者に対し謝罪するFメッセージを多数回送信しており、その中には「死刑でも何でもうけます。」との相当重大な事態が生じ、それに責任を感じなければ書かないような文面もある上、被告人と証人Cとのやり取りの中でも、「俺やっぱ生きていけないわ」などと重大な事態が生じた旨の認識を有しているかのようなFメッセージを送信しており、これらの事実からすると、被告人は、本件に関し、相当に罪の意識を感じていた様子がうかがえる。この点、被告人が述べるとおりであれば、交際相手がいないと考えていた女性と性的な接触をしたにすぎず、被告人のこれまでの交際状況等に照らし、常識的にはそれほど強い罪の意識を感じる必要はないから、これらの客観証拠は、被告人が供述する状況と矛盾するように見え、その供述の信用性に疑いを生じさせる。
  もっとも、被告人の供述を前提にしても、被害者に好きな人がいたから、性的な接触が実際には被害者の意思に反していて、これを重く受け止めたとの説明は一応可能である。すなわち、被告人の年齢や社会経験の乏しさに加えて、被告人が被害者の周辺人物や交遊関係を警戒していた心理状態も踏まえると、被告人が、結果的に被害者の意思に反する性的な接触を行ったことについて、結婚式を控えた自己の家族に迷惑がかかることも含め、強い焦りや罪悪感などを感じたことも、あながち理解できないわけではない。かえって、被告人は、本件当時、被害者から「彼氏がいい。」と言われた旨供述するが、この点は、被告人が被害者に送信したFメッセージの中に、「彼氏いたことも知らなくてすいません。彼氏いたからいないからとかの問題じゃないと思ってます。」との内容のものがあることと整合しないわけではない。
  そうすると、被害者とのメッセージのやり取りに関する心理描写を含め、詳しく述べる被告人の供述全体を信用できないとして完全に排斥することはできない。
 3 強制わいせつ罪の成否についての評価
  (1) 以上の検討からすると、被害者の供述を全面的に信用するのはためらわれ、被害者の供述から、被告人が被害者の陰部に指を挿入するなどした事実や、被害者が被告人から胸をなめられるなどした際に、「やめてください」と言うなどして拒否する態度を示した事実を認定するには合理的な疑いが残るといわざるを得ない。
  (2) さらに、被告人と被害者の関係をみると、被告人は、本件以前に被害者と2回会った際、いずれも被害者に拒否されずに性的な行為に及び、5月頃には性交にも及んでいる。そうすると、被告人は、本件当時も、被害者が性的な接触に応じることに強い期待があったと合理的に推認できる。この点、検察官は、被告人と被害者は性的な行為に及ぶことが当たり前の関係にはなかったと主張するが、少なくとも、二人が会った際に性的な接触に及ぶ可能性は相応にある関係にあったといえ、被告人としても、被害者と再び会えば性的な接触に至ることは当然期待していた状況にある。
  また、被告人と被害者は約半年間会っていなかったものの、Fでのやり取りを継続しており、それには日常生活に関する些細な内容も含まれているなど、ある程度親密な関係にあったと認められる。そして、本件以前の性的な接触は、いずれも被害者が被告人の車両に乗り、被告人が被害者を自宅付近まで送り届けるなどした際に、本件車両内において生じたものであるところ、本件も被害者が本件車両に乗り、被害者の用事のために被告人が送迎した後に、その車内で性的な接触が行われており、これらの事実経過はほぼ共通する。一方で、今回に限り、被害者と性的な接触を図るという被告人の強い期待感が解消されていたような特別の事情は証拠上うかがえない。
  さらに、被害者は、警察に被害申告しながらも、しばらくの間被告人に対し、処罰を求めるというよりは謝ってくれればよいというメッセージのやり取りを繰り返している。このことは、意に反して陰部に指を入れられたりする性的被害に遭ったことと矛盾はしないものの、一方で、被告人がいうように、被害者が性的な行為を受け入れている最中に彼氏がいることを思い出し、嫌悪感や躊躇を感じて性的な行為をやめたとしても、彼氏がいるのに性的な行為をしてしまったことの謝罪が問題になっているものとして、自然に理解できる。
  (3) 以上の事情からすれば、本件後の被告人の罪悪感の感じ方にはやや不自然さが残るにしても、本件当時、被告人は、被害者が被告人と性的な接触をすることについて、同意していると信じていたとしても、特に不合理であるとはいえない。
  したがって、被告人に対し、被害者に対する強制わいせつ罪が成立すると認めるには、合理的な疑いが残る。
第3 予備的訴因に対する当裁判所の判断
 1 被告人は、本件当時、被害者を大学生と思っており、被害者が18歳未満であるとは知らなかった旨供述する。一方、被害者は、5月頃に会った際に自分の誕生日の話になったことや、被告人から何歳かと聞かれて年齢を答えたことを供述する。
  確かに、被害者は5月が誕生月であるが、上記第2のとおり、被害者の供述は全体として信用性に疑問の余地がある上、SNSを通じて知り合い、本名も教え合っていない若者同士の関係性において、お互いの誕生日や年齢の話をすることについての明確な経験則など存在せず、その裏付けもないのに、被告人に年齢を教えたとの被害者の供述を直ちに信用することはできない。
 2 また、被害者は、3月頃に、被害者が制服を着用している写真(甲11)を掲載するSNSを見た被告人から連絡があった旨供述し、検察官もこの点を年齢知情の根拠として指摘する。しかし、被告人がSNSで被害者の写真を見たことがあったとしても、被告人が見た写真が甲11号証そのものであることに関する被害者供述には裏付けがないし、その写真がいつ撮影されたもので、どの程度の期間掲載されていたかの被害者の説明もない。また、その写真は、それ自体として18歳未満という認識を生じるような内容でもない。
  さらに、被害者は、本件以前に高校まで被告人に迎えに来てもらい、制服姿で会ったことがある旨供述し、他方、被告人は、3月頃、D大学の門の前へ行って被害者と会ったが、その際、被害者がコートを着ていて中に何を着ていたか分からなかったと供述する。この点、その敷地内には大学と付属高校が存在し、門の前だけでは被害者がどちらの学校に所属しているか直ちに判別できないし、前年度である3月頃の時点で被告人が制服姿の被害者を門の前まで迎えに行ったとしても、翌年度である本件当時の時点で、被害者が18歳未満であったとの認識を被告人が有していたことには当然にはならない。
  なお、被告人は、本件後に被害者から「高校にも行けない」旨のFメッセージを受け取ったのに対し、大学生ではないのかなどと聞き返したり驚いたりした形跡はなく、この点は被害者が高校生であることを被告人が認識していたとうかがわせる事情ではあるが、こうした事後のやり取りの状況のみから被告人が被害者の年齢を具体的に認識していたと推認するのは適当ではないと考える。
 3 そもそも、本件当時、被告人が被害者の年齢を知っていたかどうかについては、捜査段階において何ら捜査がされていないどころか、被害者と被告人との従前の関係性について、被害者側の供述を重視してこれを疑う姿勢が欠け、被害者が捜査官に示した以外に従前のFでのやり取りがあるかどうかを確認したり、削除されたFでのやり取りを復元することなどもしていない結果、本件以前のFでのやり取りなどの、二人の交際状況や年齢の認識に関する重要な資料となるはずの証拠が欠ける事態となっている。
  しかるに、この点に関する被告人と被害者の供述は対立していて、被告人が被害者の年齢を知っていたことを示す明確な証拠がない以上、被告人が被害者の年齢を認識していたとの事実を認定するには合理的な疑いが残るといわなければならない。
 4 もっとも、宮城県青少年健全育成条例41条6項は、当該青少年の年齢を知らないことに過失のないときを除き、年齢を知らないことを理由として、同条1項の規定による処罰を免れることはできない旨定めている。そこで、〈4〉の争点である「みだらな性行為又はわいせつな行為」の該当性についても以下検討する。
  宮城県青少年健全育成条例における「みだらな性行為又はわいせつな行為」とは、青少年を対象とした性行為やわいせつな行為を広く対象とするものではなく、(1)「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不正な手段により行う性交又は性交類似行為」、(2)「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」をいうと解される(昭和60年10月23日最高裁大法廷判決参照)。そして、これに該当するか否かは、行為当時の両者の年齢、性交渉に至る経緯、その他両者間の付合いの態様等の諸事情を考慮し、健全な常識を有する一般社会人の立場から決せられることになる。
  上記第2のとおり、被害者の供述は、全体として信用性に疑問の余地があり、被害者が供述するように、被告人が嫌がる被害者の手や足を押さえ付けるなどしたり、お金をあげるからと言った上で性的な行為に及んだりしたと認定することには合理的な疑いが残る。そして、被告人と被害者の年齢差、本件に至るまでのやり取りや関係性に照らして、その心身の未成熟に乗じた不正な手段(上記(1))により性的な行為に及んだと認めることは困難である。次に、(2)の点についてみると、被告人は4月に大学を卒業したばかりの23歳、被害者は5月に17歳になった高校2年生であり、交遊関係等が発展して交際することになっても不自然ではない年齢差である。被告人は、友人の交際相手を探す過程で被害者とSNSを通じて会うこととなったが、出会い系サイトなどを通じて交際を始めたわけではなく、知り合った際には、既に被害者には性行為の経験があったと解される。また、性交に至る経緯や付合いの状況についてみると、3月中旬に被告人と被害者が初めて会った際には(その頃に会ったとする被告人供述を排斥できない。)、車に乗せて世間話をした程度にすぎなかったが、その後はFでのやり取りを続け、5月頃に会った際には、二人は車に乗ってGで飲み物を買い、どういう人が好きかを被告人が被害者に聞き、被害者が年上の人が好きなどという会話をし、信号待ちの際には被害者が被告人に寄り添うこともあった。そして、被告人は、被害者方の近くまで送り届けた車内で、好きと言いながら被害者にキスをし、性交に至っている。また、二人は、また遊ぼうと約束して別れ、その後も、Fでのやり取りを続けた。夏頃にも二人は午後9時頃に会い、スーパーに寄るなどした後、車で被害者方の近くまで送り届け、その車内で、被告人が被害者にキスをし、胸をなめたり、陰部に指を入れるなどしたが、性交まではしなかった。その後、被告人と被害者は、Fで日常生活に関わるやり取りなどを繰り返した。本件の際も、Fでのメッセージを通じて午後6時に会うこととなったが、被害者の希望で、本件車両で武道館に行き、被害者の用事を済ませ、その後、本件駐車場に戻り、性的な行為に至っている。性的な行為の際には、被害者から積極的な性行為に及んでいないものの、当初は被告人の行為に特に拒絶的な態度を示しておらず(上記第2のとおり、被害者が当初から「やめてください」と言うなどして拒否する態度を示した事実を認定するには合理的な疑いが残る。)、被害者が「彼氏がいい。」と言うと、被告人は直ちに性的な行為を止めている。
  以上を踏まえて検討すると、二人は2回目に会った際に自動車内で性交に及び、かつ、3回目に会った際にも性的な行為に及んでおり、これらに照らすと、被告人が性交渉を目的として被害者と会っていた疑いは否定できない。しかしながら、二人は、5月頃や夏頃以降もFで日常的なやり取りを行っており、その後本件に至るまでの間に被告人が積極的に性的な行為を求めたようなところもなく、会った際には性的な行為以外のやり取りもしている。その上、被害者に対し本件当時に好意を抱いていたという被告人の供述を排斥することはできない。被告人や被害者のような年齢層の若者が交際する中で、性的な行為に至ることを期待したり、自然に性衝動などが生じることは通常のことであるし、被告人は、「彼氏がいい。」との被害者の言葉で性的な行為を止めていて、被害者の意向にも配慮している。このような事情にも照らすと、被告人は、専ら自己の性欲を優先したとまではいい難い。加えて、捜査段階において、被害者と被告人の従前の関係性について十分な捜査がされておらず、交際状況に関する証拠が欠けている。
  そうすると、本件の性的な行為について、被告人が被害者を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような行為をしたと認めるには、合理的な疑いが残るといわざるを得ない。
 5 以上によれば、予備的訴因の立証が尽くされたとは認められない。
第4 結論
  結局、本件各公訴事実については、主位的訴因及び予備的訴因のいずれについても犯罪の証明がないことに帰するから、刑事訴訟法336条により、被告人に無罪の言渡しをする。
(求刑 主位的訴因につき懲役2年、予備的訴因につき罰金30万円)
第2刑事部
 (裁判長裁判官 小池健治 裁判官 内田曉 裁判官 西村有紗

「投手は2017年12月にインターネットを介して知り合った女子高校生と関係を持った」という報道

 報道は夏休み前に持って来られますね。
 事件が古いので逮捕されないでしょう。

 弁解としては、
  18歳未満とは知らなかったとか
  真剣交際だったとか
  実害がない罪だとか
  わいせつの定義がない
  児童買春罪ができたので青少年条例は存在意義を失った
とか言ってみて。
 保護法益を理解した反省文とかも有効

最高裁判所判例解説刑事篇
昭和60年度201頁
福岡県青少年保護育成条例違反被告事件昭和60年10月23日
高橋省吾
前掲各裁判例が説示するように、刑法の強姦罪等は主として個人の性的自由を保護法益とし、その処罰の対象となる性行為も自由意思の制圧ないしこれに準ずる場合としているのに対し、本条例の淫行罪は青少年の特質にかんがみてその健全な育成を図る見地から、青少年の育成を阻害するおそれのある淫行を禁じ、たとえそれが青少年の同意に基づくものであったとしてもその相手方を処罰することにしたものであるから、両者は処罰の趣旨・目的、内容(対象となる性行為の態様)等を異にするというべきである。そして、本条例の淫行処罰規定の保護法益を右のように解する以上、右規定違反の行為について必要な捜査が行われ公訴の提起がなされたとしても、そのことが直ちに青少年の保護育成上有害であるとはいえないのであって、親告罪とするか否かは右規定のもたらす現実的影響、地方的特性等をも考慮した立法政策上の問題というべきものと思われる。
また、刑法一八〇条一項は、被害者の感情を考慮して強姦罪等を親告罪としているが、二人以上の者によって現場において強姦罪等が犯された場合(同条二項)や被害者に致死傷の結果を生じた場合(同法一八一条)には、被害者の感情を尊重すること以上に犯人を処罰することの必要性が大きいと考えられるところから、もはや親告罪とされていない。本条例の淫行罪は、前叙のとおり、強姦罪等とは罪質・保護法益を異にしている上(注一五)、青少年が合意の上で淫行をしたときには、その青少年が強姦罪等のそれと同様の被害者とはいえないと思われること、また、親告罪としたのでは、合意の上での淫行の場合、規制目的を達しえないことも考えられることなどに徴すると、本条例の淫行罪が青少年の告訴を要件としていないとしても、必ずしも刑法との整合性を欠いて不合理であるとはいえないと思われる。因みに、児童福祉法の淫行罪(同法三四条一項六号、六〇条一項)は非親告罪である。
(注一五)
本条例の淫行罪は、淫行は青少年にとってはそれ自体で健全育成に対する抽象的危険を招くものであるという認識に立った上で、青少年以外の者に対して、このような危険を回避すべき義務を課し、右義務違反に違法性を認めているものと解することもできよう(亀山継夫「児童に淫行をさせる罪(その二 研修三四七号六〇頁参照)
・・・
亀山継夫法務省刑事局青少年課長「判例研究 児童に淫行をさせる罪 その2」(研修347号60頁)
児童福祉法の淫行罪についての以上のような理解を前提とすると、条例の淫行罪の性格は、おのずから明らかになるといえよう。両者は、共に児童の健全な成長を保護法益とするものであるが、条例の性質上、後者は、前者に対する補充法的性格を有するものであること、後者が単に児童の淫行の相手方となることを構成要件としていること等からみれば、前者が「淫行」と「させる」の2要件によって、児童の健全な成長に対する現実の侵害ないしはそれに対する具体的危険を対象とするのに対して、後者は、児童が淫行をすることによる抽象的な危険を対象とするものと解する。
児童を相手方とする全く任意の性的交渉は、もし相手方が成人であれば単に不道徳な行為というにとどまるものであり、まして児童の側からの誘いかけがあったような場合には、その誘いに応じたというだけで処罰の対象となる点において広きに過ぎるという感があることは免れないが、これを前掲13ないし15の裁判例のように、構成要件的に限定しようとすると、児童福祉法の淫行罪との違いが明らかでなくなってしまい、ことに、15ないし18のような限定をすると、淫行を「させる」ということと同じになる。(自己が淫行の相手方となるか、第三者を相手方にさせるかという点に違いがあるという考え方もないではないが、これについては後述する。〉条例の補充的性格、青少年保護育成条例の趣旨、目的、条例の淫行罪の体裁等を総合して考えると、条例の淫行罪は、性道徳上社会的に是認されないような性的交渉は、おとなにとってはともかく、児童にとってはそれ自体で健全成長に対する抽象的危険を招くものであるという認識に立った上で、成人に対して、このような危険を回避すべき義務を課したものと解するのが最もすなおな見方であろう。

神奈川県青少年保護育成条例の解説h10
(みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第 19条
1何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せではならない。
3 第 1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、文は興奮させ、かつ、健全な常識を有する 般社会人に対し、性的しゅう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
一部改正(昭和 53年条例 38号)、一部改正(平成 8年条例 31号)

〔要旨〕
本条は、青少年に対してみだらな性行為若しくは、わいせつな行為をすること又はこれらの行為を教えたり、見せたりすることを禁止したものである。
解説
本条は、青少年を対象とした性行為等のうち、健全な育成を阻害するおそれがあるものとして社会通念上非難を受けるべきものを対象としているが、その行為の認定にあたっては動機、手段及び態様並びに当該行為が青少年に与えた影響等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断されるべきものである。
第 1項関係
(1) 「何人も」 とは、条例第 5条の解説のとおりである。
(2) 「みだらな性行為」については、条文の中でも規定されているが、 「結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交」の解釈としては、 「人格的交流のない性交」 を象徴するものであり、これをさらに詳しくいうと次の場合を指すものである。
① 青少年を誘惑し、威迫し、欺商し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為
② 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為
( 3 )本項の例としては、成人が、結婚の意思もないのに、青少年を言葉巧みに誘って、単に自己の情欲を満たすために性交じた場合や青少年の性器等を手でもてあそぶなどした場合などがこれに当たるが、結婚を前提とした真に双方の合意ある男女間の性行為は、該当しないものである。

https://news.livedoor.com/article/detail/16781369/
DeNA・投手が無期限の謹慎処分 女子高生と関係 青少年保護育成条例に抵触か
2019年7月16日 16時53分 デイリースポーツ
 DeNAは16日、投手(22)が神奈川県の青少年保護育成条例に抵触する可能性があるとして、同投手を無期限の謹慎処分にしたと発表した。
 球団によると、投手は2017年12月にインターネットを介して知り合った女子高校生と関係を持ったといい、本人も相手が高校生と認識していたと話しているという。

 投手は2015年秋のドラフトでDeNAから5位指名を受け、茨城・霞ケ浦高校から入団。17年10月3日の中日戦(横浜)でプロ初登板初先発し、5回を4安打無失点でプロ初勝利をマーク。将来を嘱望されたが、18年は右肩手術の影響から1軍での登板はなかった。
・・・
https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2019/07/16/kiji/20190716s00001173286000c.html
DeNA・が無期限謹慎処分 当時未成年の女性と関係 「本人は非常に反省」
[ 2019年7月16日 16:59 ]
 DeNAの三原一晃球団代表は16日、投手が17年12月に当時未成年の女性と関係を持っていたことが発覚し、条例違反で無期限謹慎処分を課したと発表した。「この場をお借りして、お相手の方、ご家族、ファンの皆さまに深くお詫び申し上げたいと思います」と謝罪した。
 7月14日に、投手が週刊誌の取材を受けたことで、球団に報告。複数回のヒアリングを重ね、事実と認めて発覚に至った。三原代表によれば、インターネットを介して知り合った女性で、当時高校生だったことを認識していたという。金銭面のやりとりはなかった。三原代表は「本人は非常に反省しており、事実関係も誠実に答えてくれました」と様子を明かした。

 謹慎中は自宅謹慎処分となり、練習にも参加しない。

 は茨城・霞ケ浦高から15年のドラフトでDeNAから5位指名を受け入団。17年10月3日にの中日戦ではプロ初登板初先発で初勝利をマーク。18年4月には右肩のクリーニング手術を受けた。1軍登板は1試合で1勝0敗、防御率0.00、今シーズンの1軍登板はない。

大阪府青少年健全育成条例を本年度中に改正する意向

 事件にならないので、大阪にも詳しい弁護士もいないわけですが、奥村は、困惑による大阪府条例違反の公判請求事件を2件担当しています。
 大阪府は、大法廷の第2類型は曖昧だから処罰しないという立法判断だったんだけどなあ。
 学説には、児童買春罪を国法で処罰するようになったのだから青少年条例は廃止すべきという立場もありますよね
 国法で議論すべきですね。

「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、
①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、
②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)

https://jp.reuters.com/article/idJP2019071001001769
大阪府の吉村洋文知事は10日の定例記者会見で、府青少年健全育成条例を本年度中に改正する意向を示した。18歳未満との性交渉などわいせつな行為を禁じた同条例の適用条件が、他都道府県に比べて厳しすぎるとの指摘を踏まえた。青少年健全育成審議会の提言を受けた上で来年2月の定例議会での改正案提出を目指す。

 大阪府によると、府青少年健全育成条例の該当部分は1984年の制定以来改正されていない。他の都道府県では、同意があっても18歳未満と真剣な交際以外でわいせつ行為をすることを禁じているが、府条例は脅したり、だましたりするなどの行為がないと処罰できない。

大阪府青少年健全育成条例
http://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00000487.html
(淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第三十九条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
二 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
(平三条例四二・旧第十八条繰下、平一五条例一八・旧第二十三条繰下・一部改正、平一七条例一一〇・旧第二十五条繰下、平二〇条例八五・旧第二十八条繰下、平二三条例一〇・旧第三十五条繰上・一部改正、平二六条例一三八・平二八条例七三・一部改正、平三〇条例六・旧第三十四条繰下)