児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

通常態勢

通常態勢
平日は通常態勢
事務所は平日09:30〜17:30です。
それ以外は弁護士が下記の電話で対応します。

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ことし奥村が関与した刑事控訴審の破棄率は57%

刑事控訴審の戦績
今年はこれまで5件の判決を受けていて
  控訴棄却3(大阪高裁1 福岡高裁1 東京高裁1)
  破棄減軽4(大阪高裁2 名古屋高裁金沢支部1 東京高裁1)
になっています。
 破棄率は57%くらいか。
 司法統計では取下を除くと破棄される割合は12%です。

 量刑と量刑事情を把握していれば、1審で足りなかった主張・立証を見極めることができるので、減軽される確率が上がります。

刑事平成27年度61  控訴事件の終局総人員  原裁判所別終局区分別
第61表
総数 6987
破棄 589
控訴棄却 4321
取下げ 1144

児童ポルノ・児童買春事件のメッカは万世橋ではなく池袋・新宿じゃないか。

警視庁の統計から
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/jokyo_tokei/tokei/
第106表 少年の福祉を害する犯罪の法令別送致人員(警察署別)
を集計してみました。

 全福祉犯の件数でソートしてあります。

順位 H25 全福祉犯総数 児童買春 児童ポルノ H26 全福祉犯総数 児童買春 児童ポルノ H27 全福祉犯総数 児童買春 児童ポルノ H28 全福祉犯総数 児童買春 児童ポルノ
1 池袋 35 11 2 池袋 50 11 14 池袋 56 7 9 池袋 30 7 6
2 新宿 30 3 2 新宿 26 3 2 新宿 29 4 1 新宿 29 7 3
3 渋谷 24 3 1 光が丘 23 - 2 綾瀬 23 4 5 綾瀬 22 2 2
4 大塚 18 3 3 渋谷 18 2 - 渋谷 19 1 1 渋谷 18 - 2
5 光が丘 16 - 3 本所 18 1 2 板橋 18 3 3 板橋 17 5 2
6 蔵前 14 - - 板橋 13 4 2 光が丘 17 - 1 町田 13 - 6
7 本所 14 1 - 町田 13 1 6 大塚 12 1 2 城東 12 - 1
8 町田 13 5 3 大塚 12 1 3 竹の塚 12 1 4 四谷 10 - 7
9 成城 11 1 1 竹の塚 12 1 4 本所 11 1 2 竹の塚 10 - 7
10 三鷹 11 - 8 武蔵野 12 1 1 昭島 11 1 1 万世橋 9 2 1
11 万世橋 10 1 - 尾久 11 4 - 蔵前 10 1 1 蒲田 9 2 2
12 駒込 10 - - 万世橋 10 - 1 万世橋 9 - 3 光が丘 9 - -
13 荒川 10 - 5 中央 10 - 2 赤坂 9 1 2 日野 9 1 4
14 竹の塚 10 - 5 原宿 10 - 2 志村 9 - 1 愛宕 8 - 6
15 綾瀬 10 2 - 駒込 10 1 - 西新井 9 - 6 荏原 7 2 2
16 杉並 9 3 1 小松川 10 2 1 三鷹 9 3 3 高井戸 7 4 3
17 巣鴨 9 1 6 赤坂 9 3 1 荏原 8 5 2 深川 7 2 3
18 小松川 9 - 1 田園調布 9 2 3 池上 8 - 1 本所 7 - -
19 東大和 9 3 - 四谷 9 - 2 四谷 8 1 2 飾 7 3 2
20 調布 9 1 2 野方 9 4 - 王子 8 - - 三鷹 7 3 1
21 田園調布 8 - - 綾瀬 9 3 2 練馬 8 1 2 品川 6 - 4
22 原宿 8 4 1 目黒 8 2 - 戸塚 7 2 - 玉川 6 2 1
23 牛込 8 1 - 練馬 8 - - 小金井 7 3 4 大塚 6 1 1
24 荻窪 8 5 1 蔵前 8 1 - 武蔵野 7 - 6 蔵前 6 2 1
25 板橋 8 1 - 昭島 8 2 3 南大沢 7 2 - 西新井 6 1 1
26 武蔵野 8 - - 小平 8 - 3 東京湾 6 - 4 小平 6 3 -
27 中央 7 - 2 三鷹 8 1 2 世田谷 6 1 2 東村山 6 2 1
28 世田谷 7 - 3 町 7 - 4 玉川 6 - 1 築地 5 - -
29 尾久 7 3 1 三田 7 - 3 野方 6 - 4 赤坂 5 - 1
30 深川 7 - 7 高井戸 7 2 1 高井戸 6 5 - 大森 5 1 3
31 神田 6 - 1 荒川 7 1 1 本富士 6 - 1 世田谷 5 2 1
32 碑文谷 6 - 1 深川 7 1 2 尾久 6 - 4 王子 5 - -
33 四谷 6 3 1 東大和 7 3 - 亀有 6 1 1 石神井 5 2 -
34 野方 6 3 - 大森 6 4 - 田無 6 - 2 田無 5 - 1
35 高島平 6 - 1 蒲田 6 1 1 町田 6 1 1 武蔵野 5 1 4
36 麻布 5 - - 巣鴨 6 - 5 ?町 5 - 3 八王子 5 1 -
37 東京湾 5 1 - 田無 6 - - 月島 5 1 2 ?町 4 2 1
38 蒲田 5 - 1 多摩中央 6 1 1 杉並 5 1 - 三田 4 1 1
39 玉川 5 1 - 愛宕 5 - - 巣鴨 5 - 3 高輪 4 1 -
40 高井戸 5 - 1 大崎 5 2 - 千住 5 3 2 池上 4 - 1
41 練馬 5 1 - 荏原 5 - 3 深川 5 1 - 東京空港 4 2 2
42 石神井 5 1 1 代々木 5 - - 城東 5 - 1 北沢 4 2 1
43 下谷 5 2 - 中野 5 - 1 多摩中央 5 2 2 成城 4 3 -
44 南千住 5 - 2 高輪 4 - 1 中央 4 - 3 碑文谷 4 2 1
45 西新井 5 1 2 品川 4 - 1 築地 4 - - 戸塚 4 1 -
46 昭島 5 1 1 池上 4 - - 愛宕 4 - - 本富士 4 - -
47 小金井 5 - - 北沢 4 - - 三田 4 - 2 滝野川 4 3 -
48 高輪 4 - 1 碑文谷 4 1 - 麻布 4 2 - 上野 4 - 1
49 品川 4 1 1 牛込 4 1 - 東京空港 4 1 1 尾久 4 1 1
50 大井 4 - 1 荻窪 4 - - 代々木 4 1 - 向島 4 1 2
51 大崎 4 1 - 本富士 4 - - 牛込 4 3 1 亀有 4 1 -
52 荏原 4 1 - 滝野川 4 1 1 荻窪 4 - 2 府中 4 - 2
53 池上 4 1 1 志村 4 - 1 富坂 4 1 1 小金井 4 - 2
54 北沢 4 - 1 上野 4 1 - 赤羽 4 2 - 神田 3 2 1
55 戸塚 4 1 1 南千住 4 - 1 高島平 4 - - 中央 3 - 1
56 滝野川 4 - - 千住 4 1 - 上野 4 3 - 田園調布 3 - 2
57 王子 4 1 - 亀有 4 - - 荒川 4 - 1 牛込 3 - 1
58 赤羽 4 2 - 西 4 1 - 東大和 4 1 1 中野 3 - 2
59 城東 4 - - 小岩 4 2 - 小平 4 1 2 目白 3 - 2
60 東村山 4 2 1 立川 4 - - 東村山 4 - - 赤羽 3 1 -
61 多摩中央 4 1 1 小金井 4 1 3 八王子 4 1 - 志村 3 - -
62 町 3 - 2 調布 4 2 - 神田 3 - 3 練馬 3 - 1
63 丸の内 3 - 3 五日市 4 - 2 高輪 3 - - 浅草 3 - -
64 築地 3 - - 福生 4 - 2 品川 3 1 1 南千住 3 - 1
65 愛宕 3 - 1 丸の内 3 - 2 大井 3 - 1 荒川 3 1 2
66 三田 3 - - 神田 3 - 2 大森 3 - 1 小岩 3 - 1
67 赤坂 3 - 1 築地 3 - - 北沢 3 - 2 青梅 3 1 -
68 大森 3 - - 麻布 3 - - 成城 3 - - 福生 3 - 3
69 東京空港 3 - 2 大井 3 2 - 目黒 3 - - 高尾 3 - 1
70 目黒 3 - 2 東京空港 3 - 2 碑文谷 3 1 - 南大沢 3 2 1
71 富坂 3 - - 世田谷 3 - 1 原宿 3 - 3 多摩中央 3 - 1
72 本富士 3 - 1 玉川 3 - - 南千住 3 - 1 丸の内 2 - 1
73 志村 3 - - 成城 3 - - 向島 3 - 3 月島 2 - 1
74 上野 3 - - 戸塚 3 - - 小松川 3 2 - 大井 2 - -
75 向島 3 - 2 赤羽 3 - - 立川 3 1 - 大崎 2 - 1
76 小岩 3 - 1 浅草 3 - 1 日野 3 1 1 原宿 2 1 1
77 田無 3 - 1 西新井 3 - - 田園調布 2 - - 代々木 2 - 1
78 久松 2 - - 城東 3 - 1 中野 2 - - 野方 2 - 1
79 月島 2 - 1 飾 3 - - 駒込 2 2 - 杉並 2 - 1
80 代々木 2 - - 東村山 3 1 1 滝野川 2 - 1 荻窪 2 1 -
81 中野 2 - 1 南大沢 3 - - 石神井 2 2 - 千住 2 1 -
82 目白 2 - 1 月島 2 - - 下谷 2 1 - 小松川 2 - -
83 亀有 2 - - 東京湾 2 - 1 浅草 2 - 1 西 2 - 1
84 飾 2 - - 杉並 2 - - 小岩 2 - 2 昭島 2 - -
85 西 2 1 - 富坂 2 - - 府中 2 - - 立川 2 - 1
86 立川 2 - - 目白 2 1 - 調布 2 - 1 調布 2 - -
87 府中 2 1 - 王子 2 - - 福生 2 - 1 五日市 2 - 1
88 小平 2 1 - 高島平 2 - - 高尾 2 1 1 久松 1 - -
89 青梅 2 - - 下谷 2 1 - 丸の内 1 - - 麻布 1 - -
90 五日市 2 - - 向島 2 - 1 久松 1 - 1 東京湾 1 - -
91 福生 2 - - 府中 2 1 1 大崎 1 - 1 目黒 1 1 -
92 八王子 2 - - 青梅 2 - - 蒲田 1 - 1 富坂 1 - -
93 南大沢 2 - - 八王子 2 - 1 目白 1 - 1 駒込 1 - -
94 日野 2 - 1 久松 1 - - 飾 1 - - 巣鴨 1 - 1
95 浅草 1 - - 石神井 1 - - 西 1 - - 高島平 1 - -
96 千住 1 - - 高尾 1 - - 青梅 1 1 - 下谷 1 - 1
97 高尾 1 - - 日野 1 - 1 五日市 1 1 - 東大和 1 - 1
98 大島 - - - 大島 - - - 大島 - - - 大島 - - -
99 新島 - - - 新島 - - - 新島 - - - 新島 - - -
100 三宅島 - - - 三宅島 - - - 三宅島 - - - 三宅島 - - -
101 八丈島 - - - 八丈島 - - - 八丈島 - - - 八丈島 - - -
102 小笠原 - - - 小笠原 - - - 小笠原 - - - 小笠原 - - -

大阪府青少年健全育成条例36条違反の罪(深夜同伴)は、青少年と知らなかった場合には処罰されないから、「17歳だとは思わず、年齢は後になって知った」という弁解が通れば起訴されない。

 過失処罰の条例52条は、36条には適用されていないので。

http://digital.asahi.com/articles/ASK9D622DK9DPTIL027.html
大阪・ミナミで深夜に少女(17)を連れ回したとして、大阪府警は13日、俳優のkさん(33)を府青少年健全育成条例違反の疑いで書類送検する。捜査関係者への取材でわかった。同条例は、深夜や未明に保護者の承諾なしで18歳未満を連れ回すことを禁じている。一方、kさんは府警の任意の事情聴取に「17歳だとは思わず、年齢は後になって知った」と話しているという。

 捜査関係者によると、kさんは5月8日深夜から翌9日未明、ミナミの2店で知人らと飲酒し、少女を同席させた疑いがもたれている。府警は同席者や少女らに話を聴いた結果、kさんが18歳未満の少女と知りながら一緒にいたと判断した。府警は少女の母親からも話を聴き、承諾なしの外出だったことを確認。少女は同席していた別の男性が呼び出し、kさんとは初対面だったという。

 同条例では16歳以上18歳未満の男女について午後11時から午前4時の間、保護者の承諾なしに連れ出すことを禁じている。違反した場合、30万円以下の罰金が科せられる。

 kさんはNHKのドラマの収録のために大阪に来ており、少女と一緒に酒を飲んだ後、宿泊先のホテルに連れて行って性的行為をしたとされる。写真週刊誌「フライデー」が問題を報じた6月、所属事務所は無期限の活動停止にした。その後、kさんは少女側と示談した。立場を利用して関係を強制したと認定できないなどとして、府警は児童福祉法違反(淫行させる行為)容疑には問えないと判断したという。

大阪府青少年健全育成条例
http://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00000487.html
(夜間の連れ出し等の禁止)
第三十六条 何人も、保護者の委託を受け、又は承諾を得た場合その他の正当な理由がある場合を除き、第二十五条各号に掲げる者の区分に応じ、当該各号に定める時間に当該青少年をその住所若しくは居所から連れ出し、又はその住所若しくは居所以外の場所に同伴し、若しくはとどめてはならない。
(平一七条例一一〇・追加、平二〇条例八五・旧第三十条繰下、平二三条例一〇・旧第三十七条繰上)
第四十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十四条第一項、第十七条第一項、第二十条第一項若しくは第二項、第二十三条第一項若しくは第二項、第二十四条第一項、第三十五条から第三十七条まで又は第三十八条第二号の規定に違反した者
第五十二条 第三十四条、第三十七条第二号若しくは第三号又は第三十八条第一号、第三号若しくは第四号の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第四十七条、第四十八条又は第四十九条第一号の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

大阪府青少年健全育成条例の解説h26
【趣旨】
保護者以外の者が、保護者の委託又は承諾を得ずに、青少年を夜間に自宅から連れ出したり、外出したまま帰宅させずに自宅以外の場所に同伴したりとどめたりすることは、その行為そのものが
犯罪性を帯びる場合もあることから、すべての者に対して、青少年の夜間の連れ出し等を禁止するものである。
【解説】
本条は、すべての者に対し、保護者の委託又は承諾を得た場合その他正当な理由がある場合を除いて、夜間に青少年を、その住所若しくは居所から連れ出し、又は同伴し、若しくはとどめることを禁止する規定である。
この規定に違反すると、第49条第1号の規定により30万円以下の罰金に処せられる。
本条の適用に当たっては、青少年に対する加害等の具体的な危険性は要件としないが、青少年を健全な成長を阻害する行為から保護するという本条例の趣旨・目的を踏まえ、行き過ぎた規制とならないよう慎重に判断すべきである。
なお、制限時間前に行われた「連れ出し」、「同伴」、「とどめ」の行為が、継続した状況で制限時間に至って認知された場合も、本条違反としての要件を構成する。
ア 「何人も」とは、府民はもとより、旅行者や滞在者を含み、また成人であるか否かを問わず、現に大阪府内にいる全ての者をいう。業として行うか否か、あるいは個人として行うか組織的に行うかを問わない。
イ 「保護者」とは、第4条第2項に同じ。
ウ 「保護者の委託を受け、又は承諾を得た場合」について、委託や承諾の確認方法は条文上は明記していない。
保護者から承諾書をとるほか、青少年団体などが主催するキャンプ等の行事については、申込書に保護者の署名捺印を求めるなどが考えられる。また、それ以外の場合では、保護者に連絡をとって委託や承諾の有無を口頭で確認することが考えられる。
エ 「その他の正当な理由」としては、次に掲げる場合など、社会通念上正当な理由と認められるものが挙げられる。
・ 本人又は保護者の急な病気や事故等により、保護者に確認することが不可能な場合
・ 災害や事件・事故等に遭遇した青少年を助ける等、偶発的な理由により、結果として同伴することになった場合等
オ 「第 25条各号の区分に応じ、当該各号に定める時間」とは、第25 条で区分された次に掲げる時間である。
・ 16歳未満の者:午後8時から翌日の午前4時まで
・ 16歳以上18歳未満の者:午後11時から翌日の午前4時まで
カ 「住所」とは、生活の本拠であって法律関係を処理する場合の基準となる場所をいい、「居所」とは、生活の本拠ではないが、人がある期間継続して居住する場所をいう。
「その住所若しくは居所以外の場所」については場所的限定はない。
キ 「連れ出し」とは、青少年をその住居、居所から離れさせることであり、その手段方法は問わない。したがって、携帯電話やメール等を利用して呼び出したり、若しくは第三者を介して行う行為も該当する。
ク 「同伴」とは、現に同行し又は同席する等、青少年と同一の行動を取っていることをいい、青少年が単独であるか複数であるかは問わない。また、青少年が既に夜間に外出している状態を利用し、更にその状態を継続させる行為も含まれる。
ケ 「とどめ」とは、連れ出している、あるいは既に外出している青少年を、その住居、居所以外の場所に置くことであり、その手段は問わない。
コ 上記「連れ出し」「同伴」「とどめ」のいずれも、青少年の意思には関係がない。
青少年の意思に反し、あるいは意思の確認をしないで、これらの行為をすることはもとより、青少年が自らの意思で連れ出しに応じて外出し、同一の行動を取り、又はとどまっている場合も本条の連れ出し等に該当する。
判例等】
■昭和49年11月20日釧路家裁決定(北海道青少年健全育成条例保護事件)
<争点>
19歳の少年が、保護者の依頼または承諾を得ず、17 歳の少女を自宅に宿泊させて肉体関係を結び、深夜同伴した行為は、北海道青少年健全育成条例第11条第2項にいう「青少年を同伴」する行為に該当するか。
<判決要旨>
「正当の理由のない」とは、青少年の福祉を害するおそれのあるような一定の反社会的、反倫理的な形態の深夜同伴を意味するものと解され、より具体的には、青少年を犯罪に誘う目的や、偽計・威迫を用いる等、その動機・目的・手段・態様等において反社会的と評価される深夜同伴をさすものというべきであるが、その判断にあたつて慎重になされるべきと考えられる。
本件記録によれば、少年の居室に宿泊した後少年は少女と同棲するに至り、双方の両親もこれを認め、現在は内縁に等しい間柄にあることが認められる。
以上の事実によれば、本件の肉体関係は交際を継続中の既に婚姻能力もある男女のありふれた性的関係で反社会性なく、深夜同伴もこれに付随したものに過ぎず、加えて少女が間もなく満18歳に達する者であることを考慮すれば、本件各事実が、同女の福祉に影響を与えたものとは到底認められない。
■昭和51年9月25日釧路家庭裁判所決定(北海道青少年健全育成条例保護事件)
<争点>
19歳の少年が、A運転の自動車に16歳の少女を乗車させて午後11時から翌日の午後0時25分頃まで路上を走行していた行為は、北海道青少年健全育成条例第11条第2項にいう「青少年を同伴」する行為に該当するか。
<判決要旨>
同条例の規定自体よりして処罰対象となる「青少年の深夜同伴」行為とは、「保護者の依頼を受け、またはその承認を得ない等正当な理由がない青少年の深夜同伴行為」であることは明らかであるが、それは一見すると極めて抽象的定義となつているものの、同条例の制定目的が「青少年の福祉を阻害するおそれのある行為を防止し、その健全な保護育成を図る」(1条)ことにあるとされることをも考慮するときには、「青少年の福祉を阻害」するに至る危険性が認められ、かつその行為の態様等の諸般の事情が社会倫理的秩序において許容されないものと認められる場合を指称すると解するのが相当である。
よって本件記録を見るに、少女と少年は幼馴染の間柄であるが、同女が午後10時30分ころ歩行中、A運転の乗用車の助手席にいた少年より声をかけられたため、実家に帰ろうと考え、「乗せていって」と頼み、少年らもこれに応じたので乗車し、その後Aが少年に「親方のところに寄って行く」といい、少年より「いいべ」と尋ねられたが、そんなに時間がかからないと考え、「いいよ」と了承して走行中警察官に発見された旨の記載がある。
以上の事実によれば、深夜歩行中の少女を発見した少年が不審に思つて声をかけ、少女からその実家まで乗車させてほしいとの依頼に応じて乗車させ、少女の承諾のもとに途中寄道をしたというものであつて、かくの如き行為をもって到底「青少年の福祉を阻害」するに至る危険性があるとは認めがたく、またその行為の態様等諸般の事情からして社会倫理的秩序において許容されないものとなし難いことも明らかであるから、少年の本件所為は同条例第11条第2項に該当しない



52条
【趣旨】
本条は、いわゆる年齢知情特則である。
青少年に対する禁止規定をより実効的なものにするため、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、過失がない場合を除き、処罰をまぬがれない旨を平成20年の改正で新たに追加している。
年齢知情特則の対象を3つの行為に限定しているのは、これらの行為はいずれも青少年の身体、健康に直接危害あるいは悪影響を及ぼし、青少年の人権を不当に侵害するものであり、青少年の健全な成長を阻害する顕著なものであるという理由から、青少年を保護するという条例の実効性をより高めるために、過失犯処罰規定を設けることとした。
【解説】
本条は、次の3つの青少年への禁止行為に違反した者が、当該青少年が18歳に満たない者であることを知らなかったとしても、それを理由として処罰を免れることができないことを規定したものである。
○青少年に対するみだらな性行為及びわいせつな行為の禁止(第34条)
○青少年への勧誘行為の禁止(第37条第2号及び第3号)
性風俗営業の従業員等になるよう勧誘してはならない。
・ホストクラブ等の客になるように勧誘してはならない。
○場所の提供及び周旋の禁止(第38条第1号、第3号、第4号)
青少年に対して次の行為が行われることを知りながら、又は青少年が次の行為を行うことを知りながら、場所を提供したり周旋してはならない。
・みだらな性行為やわいせつ行為
覚せい剤の使用
・シンナー等の使用
ア「過失のないとき」とは、例えば、青少年に対して年齢確認をした際に、当該青少年が年齢を詐称した身分証明書や他人の身分証明書を示した場合等で、社会通念上、違反者の側に過失がないと明らかに認められる場合が考えられる

動物の愛護及び管理に関する法律違反被告事件の量刑と量刑理由

動物の愛護及び管理に関する法律違反被告事件の量刑と量刑理由

改訂版動物愛護管理業務必携
 第六章 罰則

第四十四条
1 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
2  愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、百万円以下の罰金に処する。
3  愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。
4  前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一  牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二  前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの
解説
本条は、本法の目的である動物の愛護の根幹を揺るがす動物への虐待や遺棄を禁止し、それらの行為に対する罰則を定めた規定であり、本規定による保護法益は本法の目的そのものであると考えられる。
正当な理由のある場合、又は社会通念上多くの人が納得し得る目的の下に、その目的の範囲内でのみ殺すことは認められるものであって、本条は「みだりな」殺傷を禁止し、その違反に罰則を科している。
本条第2項に規定される「虐待」とは、本条第4項各号に掲げる愛護動物に対して、一般的に、不必要に強度の苦痛を与えるなどの残酷な取扱いをすることと考えられる。動物の虐待には、積極的虐待(暴力を加える、恐怖を与える、酷使等) とネグレクト(健康管理をしないで放置、病気を放置、世話をしないで放置等)がある。
本条第3項に規定される「遺棄」とは、本条第4項各号に掲げる愛護動物を移転又は置き去りにして場所的に離隔することにより、当該愛護動物の生命・身体を危険にさらす行為のことと考えられる。
[改正点]
愛護動物の殺傷等に対する罰則|こついては、度々強化されてきたところであるが、依然として悪質な事例が後を絶たないことから、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金から、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金へと大幅に引き上げられた。
また、愛護動物の虐待及び遺棄に対する罰則についても、50万円以下の罰金から、100万円以下の罰金に引き上げられるとともに、これまでの虐待の定義(みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等)が、例示として示されている範囲が狭く、一般的に虐待と考えられる事案であっても、本項の動物虐待罪の適用が難しかったことから、改正法においては、その具体的な事例を広範に明記することとしたものである。

動物の愛護及び管理に関する法律違反被告
福岡地方裁判所平成14年10月21日
       主   文
 被告人を懲役6か月に処する。
 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
 訴訟費用は被告人の負担とする。
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成14年5月6日午後11時10分ころから同月7日午前3時20分ころまでの間,福岡市a区bc丁目d番e号fコーポg号の被告人方(当時)において,愛護動物である猫1匹の尾及び左耳を波板切りはさみで切断してみだりに傷つけた上,その頸部をひもで絞めつけ,自宅付近のh川の水中に投げ捨ててみだりに殺した。
(法令の適用)
1 判示の行為は動物の愛護及び管理に関する法律27条1項,4項1号に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役6か月に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
2 訴訟費用は刑事訴訟法181条1項本文により,全部被告人に負担させる。
(量刑の理由)
本件は被告人が猫を虐待して殺害し,同時にその模様をインターネットの掲示板サイトで実況中継した動物の愛護及び管理に関する法律違反の事案である。
 被告人は,犯行当日拾ってきた猫に対する虐待を実行して,その模様をインターネットで実況中継するため,有名掲示板サイトに新たに掲示板を立ち上げ,「猫祭り開催しますか」「血だよ,血塗れ。それがなければ面白くないだろうが」などと書き込んで,インターネット上で虐待方法の意見を求め,その書き込みに答える形で,尾,続いて左耳を波板切りはさみで切断して判示の虐待行為を行うとともに,その状況をデジタルカメラで撮影し,その残虐な画像をインターネットで同時に公開した。そして,「もう飽きちゃったんで一気に〆てもいいですか」などと書き込み,ひもで宙づりにした猫の尾や後ろ足を下に引っ張ってその頸部を絞め付けた上,第二次世界大戦での脱走兵の処刑写真を真似て「私は敗北主義者です」と書いたCDRディスクを首吊り状態の猫の首にかけて撮影して,その画像を公開し,さらに,「近所の川に投げ込むよ」「死体捨てに行ってきます」などと書き込んだ後,猫を自宅アパート近くの川の中に投げ捨てて殺害したものである。インターネットの掲示板という無責任な仮想空間において,悪意を相互に増幅させながら,動物虐待・虐殺行為を現実に実行して見せたもので,悪質な犯行である。
 その動機について,被告人は,猫に餌を与えたところ糞をされ,これを友人らから裏切られたつらい経験に重ね合わせて憤激したためと説明しているが,被告人の犯行時の掲示板への書き込み内容からすると,動物愛護に対する反感や猫の虐待行為自体を面白がって行っていたものと認められ,何ら酌量すべき点はない。
 本件犯行がインターネットで実況中継され,被告人の犯行を見ながら,これを止めようにも手の届かないところで動物虐待・虐殺行為が現実に進行したことで,良識ある多数の人々には不快感,嫌悪感を超えた深い精神的な衝撃を与えた。しかも,本件に追随する模倣犯,愉快犯の出現の危険も高めたものであり,社会に与えた悪影響は大きい。
 以上のとおり,本件犯行は動物の命を弄び軽んじた悪質な犯行であり,その社会的影響も大きく,動物の愛護及び管理に関する法律の立法目的に照らせば,被告人の刑事責任は決して軽くない。
 他方で,インターネット上でも本件が被告人の犯行であることが突き止められて,被告人のみならずその家族までもが,そのプライバシーに関する情報まで公にされた結果,様々な嫌がらせを受けていわば「さらし者」にされており,社会的制裁としても行き過ぎた制裁を既に受けていること,被告人には前科前歴はなく,本件犯行により動物の愛護及び管理に関する法律違反の事件としては異例の長期の身柄拘束を受けたこと,被告人は人間関係が苦手で社会的にも未熟な青年であり,捜査当初は猫は死んでおらず逃げていったなどと虚偽の弁解をしてみたものの,最終的には事実を認め,本件犯行に及んだ自分の心の中の闇と向かい合い,反省していることなど酌むべき事情もあるので,その刑の執行を猶予し,社会内での更生の機会を与えることとする。
(求刑:懲役6か月)
[検察官酒井博史,弁護人名和田茂生各出席]
平成14年10月21日
福岡地方裁判所 第2刑事部
裁判官   冨田敦史

動物の愛護及び管理に関する法律違反被告事件
広島地方裁判所判決平成24年11月22日
       主   文

 被告人を罰金60万円に処する。
 未決勾留日数中30日を,その1日を金5000円に換算してその刑に算入する。
 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。

       理   由

(犯罪事実)
 被告人は,平成24年8月9日頃,広島市南区(以下略)被告人方において,飼養していたねこ1匹に対し,拳骨で頭部を数回殴るなどして,下唇剥離等の傷害を負わせ,もって愛護動物をみだりに傷つけた。
(証拠)
(法令の適用)
罰条 動物の愛護及び管理に関する法律44条1項
刑種の選択 罰金刑選択
未決勾留日数の算入 刑法21条
労役場留置 刑法18条
訴訟費用の処理 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1 被告人は,これまでもねこを虐待したことがあるのに,広島市動物管理センターからねこを譲り受けて,ねこを傷つけるという本件虐待行為に及んでおり,動物愛護の精神に著しく欠ける行為を行っている。
2 他方,被告人は本件犯行後,知人に連絡するなどしてねこを病院に運び治療を受けさせており,虐待され傷害を負ったねこはすっかり元気になったこと,被告人は本件以後に動物を愛護する活動を行っているNPO法人の関係者と関わりを持つなどして動物虐待の問題性を理解し,今後は動物を愛護して生活することを誓っていることなどの事情がある。
3 検察官は,本件について懲役刑を求めているが,本件はねこ1匹に下唇剥離等の傷害を負わせたことだけが起訴された事案である。被告人が自認している他の虐待行為は,起訴されていない余罪であるから,その事実を実質的に処罰する趣旨で量刑することはできず,被告人に同種前科もないことなどによれば,上記1の事情を踏まえても,本件については罰金刑を選択するのが相当である。
4 なお,被告人には資力がなく,高額の罰金を科すと労役場に留置されることも予想されるが,被告人がねこを引き取った上で虐待した上記の経緯等を踏まえると,ねこ1匹に回復可能な傷害を負わせた事案の中では比較的悪質な事案といえるから,上記1,2で述べた事情等を総合考慮し主文のとおりの罰金刑に処するのが相当と判断した。
(求刑 懲役6月)
(検察官 岡部頌平,弁護人 片山千絵 出席)
  平成24年11月22日
    広島地方裁判所刑事第1部
           裁判官  上岡哲生

動物の愛護及び管理に関する法律違反被告
伊那簡易裁判所平成15年3月13日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 法律時報78巻10号82頁

       主   文

 被告人を罰金15万円に処する。
 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

       理   由

(罪となるべき事実)
被告人は,長野県上伊那郡A町B番地及びその周辺土地において「C乗馬牧場」を経営し,同所に設置された厩舎において被告人が所有・管理する愛護動物である馬2頭(クォーターホース1頭,シェトランドポニー1頭)を飼育していた者であるが,平成13年3月9日ころから同年4月11日までの間,上記馬2頭に対し,死馬2頭が放置されていた上に馬糞の清掃もなされていない不衛生な環境の下,十分な給餌をせず栄養障害状態に陥らせる虐待を行ったものである。
(証拠の標目)
省略
(補足説明)
1 弁護人は,「2頭の馬の給餌を減らしていたこと及びその結果として2頭の馬の各体重が減少していたことは事実であるが,『伏せ』の調教課程として給餌を通常の約半分に減らしていたにすぎないし,結果として2頭の馬も衰弱などしていなかったから,虐待には該当しない。」旨主張し,被告人もこれに沿う供述をしている。
2 動物の愛護及び管理に関する法律27条2項に規定する「虐待」とは,愛護動物の飼育者としての監護を著しく怠る行為を指すものであり,その代表的な行為として「みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる行為」が例示されているものと解される。したがって,必ずしも愛護動物が「衰弱」していなければならないものではなく,著しく不衛生な場所で飼育し,給餌又は給水を十分与えず愛護動物を不健康な状態に陥らせるといった行為も,上記「虐待」に該当するものと言うべきである。
これを本件においてみると,確かに,平成13年4月11日前後の時点における2頭の馬の体重の正確な測定値は記録に残っていない。しかしながら,①平成13年3月2日にヘイキューブ(30キログラム入り)12袋が本件牧場に配達(なお,これは,牧場の地主であるDがA町役場から「牧場に餌がほとんどない。」と告げられて手配したものである。)され,さらに同月28日にもヘイキューブ(30キログラム入り)1袋をDが上記牧場に持参したものであるところ,同年6月ころに上記牧場に残存していたヘイキューブは7袋(内1袋は使いかけのもの)(総量約202.7キログラム)であったから,平成13年3月2日から同年4月11日までの間に使用されたヘイキューブの量は約187.3キログラムと推定できる(平成13年4月11日に馬2頭が保護されて以降は上記牧場には飼育馬が1頭も存在しない状況となったから,同年6月時点で残存していたヘイキューブの量が上記保護時点における残存量と推定できる。)。そうすると,この間の1日当たりの平均飼料使用量は約4.57キログラムとなるが,保護馬2頭分の飼料必要量として算出される1日当たりの平均量約11.3キログラムをかなり下回っていると言える。②次に,その結果として,保護されたクォーターホースは,ボディコンディションスコア1(削痩)もしくはスコア2(非常にやせている)と判定され,栄養消耗症と推定されている。また,保護されたシェトランドポニーは,上記スコア3(やせている)もしくはスコア4(少しやせている)と判定され,栄養失調症と推定されている。③さらに,被告人は,毎日上記牧場にいるわけではなく,自分が仕事等の用事がある時には別の人物に給餌及び給水をしてもらう必要があったが,世話を依頼していたEは平成13年1月下旬まででその役目を辞め,その後に「電話した時に世話をしてくれ。」と依頼していたFも2回しか上記牧場に赴いていない(しかも,1回は馬に与える餌がなかった状態である。)。そして,その他に上記牧場で馬の世話を継続的に行っていた者もいないのであるから,少なくとも平成13年3月9日から同年4月11日までの間,被告人が上記牧場において給餌・給水を含む馬の世話をきちんと行っていなかった蓋然性は高いと言わざるを得ない。④また,平成13年4月7日の時点における厩舎の状況を見ても,周囲の馬糞が除去されず,しかも厩舎内及びその手前に死んだ馬2頭(しかも腐敗が進行していたものである。)がそのまま放置されており,建物自体もボロボロと言っても過言ではないものである。保護された馬2頭は,そのような厩舎内に,それほど長くない綱(1メートル前後)で繋がれた状態にあったことに鑑みれば,極めて不衛生な状況下で飼育されていたと言わなければならない。⑤その上,被告人は,平成13年4月28日,生きている馬2頭の所有権の譲渡をGから求められ,それほど強く反対することもなくこれに応じている。このことは,被告人自身が今後適切に馬を飼育していくことはできないと認識していたことを推認させる。以上の諸点を総合考慮すると,被告人は,本件2頭の馬に対し,十分な給餌をせず結果的に不健康な状態(栄養障害状態)に陥らせた上,著しく不衛生な状況下で飼育していたものであって,馬の調教の事実の有無・内容を検討するまでもなく,愛護動物の飼育者としての監護を著しく怠っていたと評価せざるを得ない。したがって,被告人は動物の愛護及び管理に関する法律27条2項に規定する「虐待」を行ったと認定するのが相当である。
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも動物の愛護及び管理に関する法律27条2項に該当するが,これは1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により1罪として犯情の重いクォーターホースに対する虐待罪の刑で処断することとし,所定刑期の範囲内で被告人を罰金15万円に処し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
本件は,乗馬牧場を経営していた被告人が,そこで飼育していた馬2頭に対し,極めて不衛生な状況下で,十分な給餌をせず栄養障害状態に陥らせたという事案であり,生命ある動物を苦しめた被告人の行為は非難されなければならない。特に,上記2頭の馬は,5年以上もの間,被告人の下で飼育されてきており,十分な餌を与えられなくなっても,被告人を信頼して従順に空腹に耐えていたであろう様子を想像すると,まことに不憫である。
これらの点を考慮すると,被告人の刑事責任を軽視することはできない。
しかしながら,被告人が上記2頭の馬の世話を適切に行えないようになったのは,傷害ないし病気の影響で被告人の体が不自由になったことと無関係ではないと推察され,この点は酌む必要があること,上記2頭の馬は栄養障害状態には陥ったが,シェトランドポニーは未だ栄養消耗状態にまでは陥ってはいなかったこと等,被告人に有利に斟酌できる事情も認められるので,これら諸般の情状(なお,上記牧場においては平成13年1月20日前後に2頭の馬が死亡しているが,その死因は解明されておらず,本件公訴事実においても問擬されていないから,この点を量刑に当たって反映させることは許されない。)を総合考慮して,主文のとおり量刑した。
よって,主文のとおり判決する。
(出席検察官 大井良春)
(出席弁護人 鷲見皓平)
(求刑 罰金30万円)
平成15年3月13日
    伊那簡易裁判所
        裁 判 官       藤   田   昌   宏

数回の強制わいせつ罪(176条後段)につき、「被告の行為が、七月の刑法改正で性交類似行為も対象になった強制性交等罪(旧強姦(ごうかん)罪)に該当すると主張。「強姦罪に等しい評価をすべきだ」と厳罰を求め・・・求刑10年。」という被害者参加代理人の意見

 
 刑法改正の強制性交等罪は遡及適用されません。
 そこまでいうなら強制性交等罪に併合罪加重した処断刑期の上限をとって求刑30年にしておくべきですね。
 常識的には、強制わいせつ罪(176条後段)の併合罪加重した上限の15年としておけばいいじゃないかな。

強制わいせつ男 懲役5年を求刑 地裁飯田支部公判
2017.09.09 中日新聞
 【長野県】勤務先の小学校で女子児童にわいせつな行為をしたとして強制わいせつの罪に問われた元講師の論告求刑公判が八日、地裁飯田支部であった。検察側は懲役五年を求刑、被害者の弁護側は同十年を求め結審。判決は十月二十三日。
 検察側は論告で「被告が自己の欲求を満たすために犯行に及び、教育界全体の信頼も失墜させた。被害者は現在も精神的に大きなダメージを受けている」と指摘。被害者の弁護側は、被告の行為が、七月の刑法改正で性交類似行為も対象になった強制性交等罪(旧強姦(ごうかん)罪)に該当すると主張。「強姦罪に等しい評価をすべきだ」と厳罰を求めた。
 被告の弁護側は、被告と被害者のメールのやりとりから「被害者は好意を持っていた」と主張。「反省の態度を示し再犯の可能性も低い」と執行猶予付きの判決が相当とした。このほか、論告弁論に先立ち被害者の両親らが意見陳述した。

「被害児童が実母Aの要求を拒めないことに乗じ」という関係の同一児童に対する2回の児童淫行罪を併合罪とした事例(山形地裁H29.7.4)

 普通、児童淫行罪を包括一罪にしますから、処断刑期は13年のはずです。 
 児童買春罪と児童淫行罪が観念的競合になっています。普通児童買春罪は立てないですけど。

児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,児童福祉法違反被告事件
山形地方裁判所平成29年7月4日刑事部判決
       判   決
 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,児童福祉法違反被告事件について,当裁判所は,検察官佐藤浩由及び弁護人(国選)神永夕貴各出席の上審理し,次のとおり判決する。
(罪となるべき事実)
 被告人は,■(以下「被害児童」という。)が18歳に満たない児童であることを知りながら、
第1 被害児童が実母■(以下「A」という。)の要求を拒めないことに乗じ,Aに対し,現金等を対償として供与する旨約束をして,平成27年11月16日午前9時58分頃から同日午前11時31分頃までの間,山形県東根市α×丁目×番××号所在の「ホテルb」×××号室において,A立会の下,被害児童(当時13歳)の臀部に自己の陰茎を擦りつけるなどして,被害児童に,自己を相手に性交類似行為をさせ,もって児童買春をするとともに,児童に淫行をさせる行為をした
第2 被害児童が実母Aの要求を拒めないことに乗じ,Aに対し,現金を対償として供与する旨約束をして,児童買春及び淫行の相手方として同児童を連れてくるように依頼し,その依頼を受けたAにその旨決意させ,Aをして,平成28年9月2日午前10時頃,山形県天童市β△丁目△番△△号所在の「c γ店」駐車場内に被害児童(当時14歳)を連れてこさせた上,同日午前11時7分頃から同日午後零時28分頃までの間,山形市δ□丁目□番□□号所在の「ホテルd」□□□号室において,A立会の下,被害児童に対し,ゲーム機及びゲームソフト(販売価格合計1万5260円)を対償として供与して被害児童と性交し,もって児童買春をするとともに,児童に淫行をさせる行為をした
第3 Aと共謀の上,同日午前11時19分頃から同日午前11時27分頃までの間,前記「ホテルd」□□□号室において,被害児童(当時14歳)に被告人の陰茎を触らせる姿態及び被害児童の胸部を露出させた姿態などをとらせ,これらを被告人が使用するタブレット端末の動画撮影機能を使用して動画撮影し,その動画データ1点を同端末に記録させて保存し,もって他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した
ものである。
(証拠の標目)《略》
(適用法令)
1 罰条
第1のうち
 児童買春の点 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条,2条2項3号
 児童に淫行をさせる行為の点 児童福祉法60条1項,34条1項6号
第2のうち
 児童買春の点 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条,2条2項2号・1号
 児童に淫行をさせる行為の点 児童福祉法60条1項,34条1項6号
第3 刑法60条,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項2号・3号
2 科刑上一罪の処理
第1,第2 いずれも刑法54条1項前段,10条(1罪として重い児童福祉法違反罪の罪で処断)
3 刑種の選択
判示各罪 いずれも懲役刑を選択
4 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い第2の罪の刑に加重)
5 刑の執行猶予 刑法25条1項
6 訴訟費用 刑事訴訟法181条1項本文(負担)
(量刑の理由)
 
平成29年7月4日
山形地方裁判所刑事部
裁判官 兒島光夫

警察官の職務を偽計により妨害する行為は偽計業務妨害か?

 刑法の先生の指摘を受けましたので、資料を集めておきます

 違法薬物の疑いを持って追跡等する警察官の行為を、強制力を行使する権力的公務だとすると、判例によれば、偽計業務妨害罪にはならないことになります。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170908-00050147-yom-soci
覚醒剤に見せかけた白い粉入りの袋を、警察官の前でわざと落として逃走し、パトカーを出動させる――。
 そんな騒動を動画に収め、動画投稿サイト「ユーチューブ」に公開していた夫婦が、8日、福井県警に偽計業務妨害の疑いで逮捕された。再生回数を増やして広告収入を伸ばすために、悪質ないたずらを働いたとみられている。

 逮捕されたのは同県越前市、自称広告業の男(31)と妻(28)。2人とも容疑を認めているという。

 発表によると、2人は共謀。男が8月26日午後4時頃、JR福井駅前の交番近くで、白い粉が入った袋をポケットから取り出し、警察官の前で落として突然逃走。約150メートル先で取り押さえられるなどし、警察官ら約30人とパトカー複数台が出動する騒動を起こし、正常な業務の遂行を妨害した疑い。妻は一部始終を撮影していた。

判例コンメンタール刑法 原田國男

(4) 公務と業務との関係
判例の動向
この点に関する最高裁判所判例は以下のものがある
最大判昭和26.7.18
争議中の労働者が現行犯人逮捕に赴いた警察官に対して、スクラムを組み労働歌を高唱て気勢をあげた事案において、業務妨害罪の業務の中には、公務員の職務は含まれないから、その執行に対し、かりに、暴行又は脅迫に達しない程度の威力を用いたからといって、業務妨害罪が成立すると解することはできないとした。〕
最判昭35.11.18
国鉄の事業ないし業務について、権力的ないし支配的門用を伴うものではなく、その実態は、まさに民営鉄道と同様であるから、その業務を業務妨害罪の対象から除外するのは相当でなく、国鉄職員の行う公務の執行に対する妨害は、その妨害の手段方法の如何によっては公務執行妨害罪のほか、業務妨害罪が適用されるとした。〕
最判昭41.11.30
国鉄の行う事業ないし業務の実態は、運輸を目的とする鉄道事業ないし業務であり、権力的作用を伴う職務ではなく、民営鉄道のそれと何ら異なるところはないから、国鉄職員の行う現業業務は、業務妨害罪の業務に含まれ、これに対する妨害に対し、業務妨害罪又は公務執行妨害罪の保護を受け、民営鉄道の業務との聞に、法律上の保護に差異があることは、憲法14 条に違反しないとした。〕
④最決昭62.3.12
本件において妨害の対象となった職務は、新潟県議会総務文教委員会の条例案採決等の事務であり、なんら被告人らに対して強制力を行使する権力的公務ではないのであるから、右事務は威力業務妨害罪にいう「業務」に当たるとした。〕
⑤ 最決平4 ・11 ・27 (猫の死骸を消防本部の消防長案の机の引き出し内に入れておき、消防長に発見させるなどした行為について威力業務妨害罪の成立を認めた。消防本部の消防長が行う事務処理が非権力的公務であって「業務」 に当たることを明示していないが当然の前提としている。〕
⑥最決平12 ・2 ・17 (公職選挙法 の選挙長の立候補届出受理事務は、強制力を行使する権力的公務でないから、右事務は偽計・威力業務妨害罪の「業務jに当たるとした。〕
⑦ 最決平14 ・9 ・30 刑集56 ・7 ・395 (動く歩道を設置するため、通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得して退去させた後、通路に残された段ボール小屋等を様去することなどを内容とする環境整備工事は強制力を行使する権力的公務ではないから、威力業務妨害罪にいう「業務」に当たるとした。〕
大審院判例としては、次のものがあり、絞に公務が業務に含まれないとした

最高裁判例の射程
現在の最高裁判例の考え方は、公務のうち、強制力を行使する権力的公務は、業務妨害罪の業務に、あたらず、公務執行妨害罪の公務として、同条による保護を受け、前記公務以外の強制力を行使しない権力的公務及び非権力的公務は、業務妨害罪の業務に当たるとともに、公務執行妨害罪の公務にも、当たり、両罪による保護を受けるというものであろう(永井敏雄・判解刑昭62年76) 。

       威力業務妨害被告事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷決定平成14年9月30日
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集56巻7号395頁
       裁判所時報1325号341頁
       判例タイムズ1105号92頁
       判例時報1799号17頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 警察時報59巻2号73頁
       現代刑事法5巻11号88頁
       ジュリスト1241号92頁
       ジュリスト臨時増刊1246号146頁
       ジュリスト1297号158頁
       判例評論542号42頁
       法学教室271号116頁
       法曹時報56巻6号166頁

       主   文

 本件各上告を棄却する。

       理   由

 被告人両名の弁護人大口昭彦,同向井千景,同森川文人及び同萱野一樹の上告趣意は,違憲をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ,本件における威力業務妨害罪の成否について職権で判断する。
 2 以上の事実関係によれば,本件において妨害の対象となった職務は,動く歩道を設置するため,本件通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得し,これらの者が自主的に退去した後,本件通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事であって,強制力を行使する権力的公務ではないから,刑法234条にいう「業務」に当たると解するのが相当であり(最高裁昭和59年(あ)第627号同62年3月12日第一小法廷決定・刑集41巻2号140頁,最高裁平成9年(あ)第324号同12年2月17日第二小法廷決定・刑集54巻2号38頁参照),このことは,前記1(8)のように,段ボール小屋の中に起居する路上生活者が警察官によって排除,連行された後,その意思に反してその段ボール小屋が撤去された場合であっても異ならないというべきである。
 3 さらに,本件工事が威力業務妨害罪における業務として保護されるべきものといえるかどうかについて検討する。
 本件工事は,上記のように路上生活者の意思に反して段ボール小屋を撤去するに及んだものであったが,前記1の事実関係にかんがみると,本件工事は,公共目的に基づくものであるのに対し,本件通路上に起居していた路上生活者は,これを不法に占拠していた者であって,これらの者が段ボール小屋の撤去によって被る財産的不利益はごくわずかであり,居住上の不利益についても,行政的に一応の対策が立てられていた上,事前の周知活動により,路上生活者が本件工事の着手によって不意打ちを受けることがないよう配慮されていたということができる。しかも,東京都が道路法32条1項又は43条2号に違反する物件であるとして,段ボール小屋を撤去するため,同法71条1項に基づき除却命令を発した上,行政代執行の手続を採る場合には,除却命令及び代執行の戒告等の相手方や目的物の特定等の点で困難を来し,実効性が期し難かったものと認められる。そうすると,道路管理者である東京都が本件工事により段ボール小屋を撤去したことは,やむを得ない事情に基づくものであって,業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法的瑕疵があったとは認められない。

【事件番号】 最高裁判所第1小法廷決定昭和62年3月12日

【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集41巻2号140頁

       最高裁判所裁判集刑事245号735頁

       裁判所時報955号67頁

       判例タイムズ632号107頁

       判例時報1226号141頁

       労働判例500号39頁

【評釈論文】 警察研究59巻10号49頁

       警察時報42巻9号115頁

       ジュリスト889号62頁

       ジュリスト臨時増刊910号162頁

       別冊ジュリスト117号46頁

       捜査研究36巻8号52頁

       判例タイムズ637号44頁

       月刊法学教室84号78頁

       法曹時報40巻7号201頁

       法律のひろば40巻7号41頁

       主   文

 本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人森川金寿外八名の上告趣意のうち、憲法二八条違反をいう点は、実質は単なる法令違反の主張であり、その余は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
 なお、原判決の是認する第一審判決の認定によれば、本件において妨害の対象となつた職務は、新潟県議会総務文教委員会の条例案採決等の事務であり、なんら被告人らに対して強制力を行使する権力的公務ではないのであるから、右職務が威力業務妨害罪にいう「業務」に当たるとした原判断は、正当である(最高裁昭和三一年(あ)第三〇一五号同三五年一一月一八日第二小法廷判決・刑集一四巻一三号一七一三頁、同昭和三六年(あ)第八二三号同四一年一一月三〇日大法廷判決・刑集二〇巻九号一〇七六頁参照)。

最高裁判例解説刑事篇昭和62年度60頁 昭和59年(あ)第627号建造物浸入、威力業務妨害被告事件昭和62年3月12日 永井敏雄

強制力説の採用
以上の公務振り分け説に属する各説のうち、本決定は、強制力説を採用したものと見られるが、同説について述べるに先立って、他の説について検討しておこう。
まず‘ 現業説は、余りにも多くのものを威力業務妨害罪の対象から除いてしまっており、累積されている下級審の裁判例(学校等につき威力業務妨害罪の成立を認めるもの)とも相反し、他の説に比較すれば、実務的には難点が大きいものと考えられよう。
次に、民間類似説は‘伸縮自在である点に問題があるとも言える。例えば、学校については、内容重視型の民間類似説によっても、威力業務妨害罪の対象になるものとされており、koの点は一般に異論がないものと考えられているようである。しかし、内容重視の立場をもう少し徹底させ、そこで行われる授業内容や学校の設置目的などにまで踏み込んでいけば、司法研修所税務大学校、警察学校等をどのように評価すべきかが問題になり、内容重視型の民間類似説の中でも見解が分かれてくるのではないかと思われる。また、外観重視型の民間類似説にしても‘「類似性」というものを振り分けの基準としている以上、判断する者によって具体的な結論を異にするおそれもあり、だれにでも理解されやすい一義的な基準を示すという観点からすれば、やや難点があると言えるであろう
そこで、強制力説について見ると、この見解は、強制力の有無という振り分けの基準が他の説に比して明瞭である。また、公務の一部を威力業務妨害罪の対象から除こうとするのは、もともと「公権力の行使」と「経済活動を含む業務」とは、明らかにその本質を異にするという視点に発するものと思われ、そうしてみると、「公権力の行使」の最も端的な発現形態である「強制力」に着目し、これを公務振り分けの基準とすることは、右の視点にもよく符合していると言うことができるであろう。そして、強制力説の基本的な理由付けは、「強制力を行使する権力的公務」は、通常それにふさわしい「打たれ強さ」を備えており、威力ないし偽計で抵抗されたとしても格別の痛痒を感じないから、あえて威力業務妨害罪によって保護するまでのこともないという点にあるものと思われるが、右の考え方は、常識的にも受け容れやすいのではないかと考えられる。
本決定はいわゆる事例判例としての性格上、必ずしも判例の理論的な立場を明示したものとまでは言えないであろうがその説示に照らすと、本決定の背後には、右強制力説のような考え方が存在しているものと思われる。
従来の足尾鉱業所事件上告審判決及び摩周丸事件上告審判決においては、国鉄の輸送業務が威力業務妨害罪にいう「業務」に当たることの理由付けとして、「権力的作用の欠如」と「民間類似性」という二つの事項が掲げられていた。このため、実務の一線においてはこの種の問題を処理するに当たり、右二つの事項を併用する手堅い処理か多く見られたが、それには十分合理的な理由があったと言うべきであろう。
本決定は、従来の説示から一歩を進め、判別碁準として重要なものは、「強制力の欠如」であることを示したものと解される。もっとも、この「強制力の欠如」を判別基準に置く考え方は、決して新しいものではなくその実質的な内容は、従前の判例中に既に盛り込まれていたものと考えられる。すなわち、本決定は、従来「権力的作用の欠如」と言われていたものの実体が「強制力の欠如」である旨若干敷術するとともに、従来述べられていた「民間類似性」が外観重視型の民間類似説のそれに近いものであり)れが補助的ないし説明的な概念として用いられていたことを示したものと考えられる。その意味で、本決定は、県議会委員会の条例案採決等の事務が問題となった本件事案に即して、従来の説示を若干具体化したものと理解されるであろう。

朝山 刑事篇平成14年度163頁 平成10年(あ)第1491号威力業務妨害被告事件
(1) 「業務」と公務に関する判例理論
アこの問題に関する判例には変遷がみられるが,その到達点は,最ー小決昭62・3・12刑集41巻.. 2号140頁(新潟県議会委員会事件)に示されている。すわち,この判例は,新潟県の職員団体の関係者ら約200名が新潟県議会の総務文教委員会室に乱入し,条例案の採決等を妨害したという事案について,「原判決の是認する第一審判決の認定によれば,本件において妨害の対象となった職務は,新潟県議会総務文教委員会の条例案採決等の事務であり,何ら被告人らに対して強制力を行使する権力的公務ではないのであるから,右職務が威力業務妨害罪にいう『業務』に当たるとした原判断は,
正当である。」と判示した。

ィ上記判例は,公務を強制力を行使する権力的公務とそれ以外の公務とに区別した上,前者については,威力業務妨害罪にいう「業務」に当たらず,妨害が暴行又は脅迫に達した場合に限って,公務執行妨害罪(刑法95条)が成立するのに対し,後者については,威力業務妨害罪にいう「業務」に当たり,妨害が暴行又は脅迫に逹した場合には,公務執行妨害罪の成立も(注6)(注7)認めるという立場に立つことを明確にしたものである。この考え方は,公務と業務に関する限定積極説の中の強制力説といわれており,最二小決平12・2・17刑集.. 54巻.. 2号38頁においても踏襲され,公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務が「業務」に当たると判断されるとともに,「偽計」による妨害の事案についても,適用されている。
ウ限定積極説の強制力説に立つ判例理論は,次のような点に,実質的根(注11)拠を求めることがでぎると考えられる。すなわち,怖制力を行使する権力的公務は,「威力」ないし「偽計」で抵抗されたとしても,通常それにふさわしい「打たれ強さ」を備えているから,格別痛痒を感じず,あるいは, 自らこれを排除する強制力を備えているから,あえて業務妨害罪によって保護されるまでもないのに対し,強制力を行使する権力的公務以外の公務は,そのような「打たれ強さ」ないし強制力を備えていないから,民間の業務と同様に,業務妨害罪によって保護される必要がある。公務に対する妨害が,「威カ」の程度を超え,「暴行又は脅迫」に達した場合には,公共のサービスに対する保護として,公務執行妨害罪によって手厘く保護することに合理性がある,というのである。
エ 上記の判例理論に対しては,強制力を行使する権力的公務に対して「偽計」で抵抗した場合に業務妨害罪の成立を認めないのは,公務に対する(注12)保護に欠けるとの批判も存するが,威力業務妨害罪に関する限りは,学説上も大方の支持を得ていると思われる。

刑事篇平成12年度19頁 平成9年(あ)第324号 業務妨害被告事件 平成12年2月17日 朝山芳史
p34
権力的公務に対する「偽計」による妨害の事例は、これまで判例に現われたものがなく、実際にも想定しにくいが、警察官が被疑者を逮捕しようとしたところ、偽計(例えば、変装)によって抵抗したような事例、あるいは、証拠物の捜索差押えに赴いた警察官に対して、被疑者が捜索の現場でその対象となった証拠物を隠匪して、捜索を妨害するような事例がこれに当たるであろうか(注二六)0 しかし、強制力ある行為にとっては、その対象者からの偽計による抵抗も、当初からいわば折り込み済みの職務の対象であり、そのような抵抗をいちいち別罪に問うことは、予定していないのではないかと思われる(注二七)。そもそも、強制力を行使する権力的公務に対して「偽計」により抵抗しても、それがある程度功を奏して「妨害」の程度に逹し得るかは疑問であって、そのような行為を処罰するまでもないという考え方も十分成り立ち得るであろう。修正積極説の論者は、権力的公務は、偽計に対しておよそ無力であるというが(注二八)ヽ「偽計」は、必ずしも相手を錯誤に陥れる性質のものばかりではないから、権力的公務は、偽計と分かった時点でこれを排除することができると考えられるので、偽計に対して必ずしも無力ではなく、
一定の「打たれ強さ」を備えていると考えることもできよう(注二九)0

p41
本決定の意義
本決定は、判例④と同様の見解に立って、選挙長の行う立候補届出受理業務が強制力を行使する権力的公務ではないとの理由で、業務妨害罪にいう「業務」に当たるとし、これと同旨の原判決の判断を是認したものである。
すなわち、本決定は、従来の判例理論を選挙長の行う立候補届出受理業務にも適用して業務妨害罪の成立を認めたという点で、事例的意義を有するものである。と同時に、これまで最高裁判例に現われた事案は、全て威力業務妨害の事案であったところ、本決定は、従来の判例理論を威力と偽計の双方を用いて業務を妨害した事案にも適用したという点で、新たな判断を示したものと解される。強制力を行使する権力的公務以外の公務について偽計業務妨害罪が成立し得ることは、判例③(摩周丸事件判決)においても、一般論としては判ホされていたところであるが具体的事案においてこの点を確認したのは、本決定が初めてであると思われる
本決定は、強制力を行使する権力的公務について偽計による妨害が行われた事案ではないから、修正積極説を否定したとまではいえず、権力的公務について偽計による妨害があった場合における偽計業務妨害罪の成立の余地を否定したものとはいえないであろう。しかし、本決定は、業務妨害について統一的に強制力を行使する権力的公務であるか否かによって成否を判断しており、修正積極説とは立場を異にするものと理解することができよう。
その理由は、本決定自体からは必ずしも明らかでないが、前記判例③を引用判例に挙げていることからしても、右判例の一般論を踏襲したものと解されよう。

h29.7.20発生の内妻の娘に対する監護者性交罪の逮捕事例(福岡県警)

 数回あるようですが、
 7/13の性交は児童淫行罪でしか起訴できない。
 性交は監護者性交罪、口淫させるのは監護者口腔性交罪、乳房もむは監護者わいせつ罪とかで罪名が細分化される。
 保護法益は性的自由になるが、包括一罪にされそうな感じ

法務省刑事局付今井將人 「刑法の一部を改正する法律」の概要 研修830号
4監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪(刑法179条)を新設すること
(1)概要及び趣旨
ア本法により,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪(刑法179条) として, 18歳未満の者を現に監護する者がその影響力があることに乗じてわいせつな行為又は性交等をした場合について,強制わいせつ罪又は強制性交等罪と同様の法定刑で処罰する規定が新設された。
イこれまで,実親,養親等の監護者が18歳未満の者に対して性交等やわいせつな行為(以下,両者を合わせて「性的行為」という。)を継続的に繰り返し,監護者と18歳未満の者との性的行為が常態化している事案等においては, 日時,場所等が特定できる性的行為の場面だけを見ると,暴行及び脅迫が認められず, また,抗拒不能にも当たらないため,刑法上の性犯罪として訴追することが困難なものが存在していた。
もっとも, 18歳未満の者は,一般に,精神的に未熟である上,生活全般にわたって自己を監督し保護している監護者に経済的にも精神的にも依存しているところ,監護者が,そのような依存・被依存ないし保護・被保護の関係により生ずる監護者であることによる影響力があることに乗じて18歳未満の者と性的行為をすることは,強制わいせつ又は強制性交等と同様に, これらの者の性的自由ないし性的自己決定権を侵害するものであるといえる。
そこで, このような事案の実態に即した対処を可能とするため,本法により,刑法176条から178条までの罪とは別に,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設することとされた。
(2)要件
ア「監護する」とは,民法820条に親権の効力として定められているところと同様,監督し,保護することをいい, 18歳未満の者を「現に監護する者」とは, 18歳未満の者を現に監督し,保護している者をいう。
「現に監護する者」に当たるといえるためには,本罪の趣旨に照らし,法律上の監護権の有無を問わないが,現にその者の生活全般にわたって,衣食住などの経済的な観点や,生活上の指導監督などの精神的な観点から,依存・被依存ないし保護・被保護の関係が認められ,かつ,その関係に継続性が認められることが必要であると考えられる。
具体的には,
①同居の有無,居住場所に関する指定等の状況
②指導状況,身の回りの世話等の生活状況
③生活費の支出などの経済的状況
④未成年者に関する諸手続等を行う状況
などの諸事情を考慮して, 「現に監護する」といえるかどうかという観点から判断されるものと考えられる。
イ「現に監護する者であることによる影響力」とは,現にその者の生活全般にわたって,衣食住などの経済的な観点や,生活上の指導監督などの精神的な観点から,現に18歳未満の者を監督し,保護することにより生ずる影響力をいう。
したがって, 「現に監護する者であることによる影響力」には,ある特定の性的行為を行おうとする場面における,その諾否等の意思決定に直接影響を与えるものだけではなく,被監護者が性的行為に関する意思決定を行う前提となる人格,倫理観価値観等の形成過程を含め,一般的かつ継続的に被監護者の意思決定に作用を及ぼし得る力が含まれるものである。
ウ「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」とは, 18歳未満の者に対する「現に監護する者であることによる影響力」が一般的に存在し, 当該行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で,性的行為をすることをいう。
その上で,被監護者である18歳未満の者を現に監護している者は,通常,当該18歳未満の者に対し,このような影響力を及ぼしている状態にあるといえるので,一般的には, 「現に監護する者」であることが立証されれば,当該性的行為の行為時においても, 「現に監護する者であることによる影響力」を及ぼしていたこと,すなわち, 「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」いたことが認定できることとなる。
したがって, 「乗じて」といえるためには,通常は,性的行為に及ぶ特定の場面において,影響力を利用するための具体的行為は必要ない。
エ本罪の趣旨に照らし,本罪の成否を論ずるに当たり, 18歳未満の者の性的行為に対する同意の有無は問題とならず,外形的に18歳未満の者が性的行為に同意していたとしても,本罪の成否は妨げられないと考えられる。
したがって, 18歳未満の者が性的行為に同意があったとの行為者の誤信は,故意の存否には影響しないものと考えられる。
(3) 監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設することに伴う改正
監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪について,強制わいせつ罪
又は強制性交等罪等と同様に,いわゆるビデオリンク方式による証人尋問(刑訴157条の4第1項1号)及び被害者特定事項秘匿制度(刑訴290条の2第1項1号),犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律7条の損害賠償命令(同法23条1項2号イ)並びに心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察に関する法律によるいわゆる医療観察制度(同法2条1項2号)の対象犯罪とされた。

監護者性交容疑、内縁の夫を逮捕 改正法、県内初適用 /福岡県
2017.09.07 朝日新聞
 内縁の妻の娘と性交をしたとして、南署は6日、福岡市内の会社員の男(25)を監護者性交等容疑で逮捕し、発表した。容疑を認めているという。
 県警によると、男は7月20日午前1時ごろ、福岡市内の自宅で、同居する内縁の妻の娘(17)と性交した疑いがある。娘は7月20日以前にも、複数回にわたり同様の被害を受けたとみられるという。
 同罪は7月に改正された刑法で新設され、署によると、今回が県内で初めての適用だという。同罪は、暴行や脅迫がなくても、親などの生活を支える者がその影響力を利用し、18歳未満の子どもに性交した場合に適用される。
・・・・・・・


監護者性交等容疑 会社員の男を逮捕 福岡南署
2017.09.07 西日本新聞
 福岡南署は6日、監護者性交等容疑で福岡市内の会社員の男(25)を逮捕した。
 逮捕容疑は7月20日午前1時ごろ、市内の自宅で、40代の交際女性の娘(17)が未成年と知りながらわいせつな行為をした疑い。「間違いない」と容疑を認めているという。
 署によると、男は女性や娘らと同居。娘から事情を聴いた学校関係者が行政機関を通じて署に情報提供したという。性犯罪を厳罰化した改正刑法で新設された監護者性交等容疑での逮捕は県内で初めて。
 監護者性交等罪は、被害者が18歳未満で加害者が親など影響力の強い「監護者」である場合、暴行や脅迫がなくても処罰できるようになった。

性同一性障害者の胸触る 男に罰金30万円(神戸地裁h29.9.6)

 法文では「人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動」なので、相手方の性別は関係ありません。
 判例は「卑わいな言動」=「社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいう」とするので、オッサンの胸とか尻を触っても該当する可能性があります。
 とすると、性同一性障害の方を「女性」と扱った事例でもないので、珍しくないと思います。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷決定
【判決日付】 平成20年11月10日
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集62巻10号2853頁
       裁判所時報1471号372頁
       判例タイムズ1302号110頁
       判例時報2050号158頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 ジュリスト1433号114頁
       法曹時報63巻10号2545頁
 弁護人古田渉の上告趣意のうち,憲法31条,39条違反をいう点については,公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和40年北海道条例第34号)2条の2第1項4号の「卑わいな言動」とは,社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいうと解され,同条1項柱書きの「公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し,正当な理由がないのに,著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような」と相まって,日常用語としてこれを合理的に解釈することが可能であり,所論のように不明確であるということはできないから,前提を欠き,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であり,被告人本人の上告趣意は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
というべきである。これと同旨の原判断は相当である


北海道警察本部「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」逐条解説
(4) 「卑わいな言動」とは、いやらしく、みだらな言語、動作で、通常人の性的しゅう恥心を害し、嫌悪感を催させ、又は不安を覚えさせるに足りる言語、動作をいう。

https://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/201709/0010530305.shtml
判決によると、男は昨年3月13日午前1時ごろ、同区の飲食店で、GIDの診断を受け女性として暮らす男性=当時(46)=の胸を服の上から触った。
 男は公判で「男性の胸を触る理由も動機もない」などと無罪を主張。弁護側は、男性が店内にいた知人にその場で被害を訴えていなかった点などを踏まえ、男性の供述が不合理であるなどとしていた。
 市原裁判官は判決で、「男性から『女性ホルモンの注射をして胸も膨らんでいる』と言われ、からかうような意味を込めて胸を触ったとしても不自然ではない」と指摘。男性が知人に被害を伝えなかった点は、「GIDの男性が胸を触られたことが犯罪に当たるのか分からない中、被害を訴えなかった心情は十分理解できる」と述べた。
 男性は昨年4月に須磨署に被害を相談。同署は男を書類送検し、神戸地検が昨年12月に同条例違反罪で在宅起訴した。関係者によると、GIDにより戸籍と異なる性で生活する人を被害者とし、同条例違反罪で立件するのは珍しいという。
 GID学会理事長の中塚幹也・岡山大大学院教授は「男性の心情面まで理解した判決。痴漢やわいせつ被害を訴えられないGIDの患者がいるという実情をとらえた点も評価できる」と話した。

http://www6.e-reikinet.jp/cgi-bin/hyogo-ken/D1W_resdata.exe?PROCID=361908889&CALLTYPE=1&RESNO=72&UKEY=1504829619056
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
(卑わいな行為等の禁止)
第3条の2 
1 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
追加〔平成28年条例31号〕

眞田寿彦「連続的な犯罪と告訴の及ぶ客観的範囲~名古屋高裁金沢支判平成24年7月3日高等裁判所刑事裁判速報集平成24年201頁を題材に~」警察学論集70巻09号

 保護法益が性的自由で、強制わいせつ罪(176条後段)が1回1回併合罪になっているのだから、2件あるのだから、告訴も2つ取っておくというのは常識

判例番号】 L06720332
       強制わいせつ,傷害,準強姦被告事件
【事件番号】 名古屋高等裁判所金沢支部判決/平成24年(う)第19号
【判決日付】 平成24年7月3日
【掲載誌】  高等裁判所刑事裁判速報集平成24年201頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 警察学論集65巻11号175頁
       警察公論67巻10号88頁
       研修773号17頁
       創価法学43巻1号145頁
       法学新報122巻3~4号241頁
       刑事法ジャーナル35号177頁

1 事案の概要
被告人甲は
第1 平成23年6月24日午後l1時40分頃、某市内のビジネスホテル310号室において、被害者A(当時10歳)に対し、自己の陰茎を口淫させるなど強いてわいせつな行為をした(以下「第1事実」という。)
第2 同月25日午後10時40分頃、前記ホテル404号室において、Aに対して、自己の陰茎を口淫させるなど強いてわいせつな行為をした(以下第2事実という。)
という、同一の犯人が連続する2日間にわたり同一の被害者に対して敢行した強制わいせつ事件3)である。
2告訴に至る経緯
甲は、被害者A及びその姉Bの実母である乙と交際していたが、次第にA・Bを性的な対象として考えるようになり、乙にも協力させ、逮捕時までの数年間にわたり、A・B両名に対しわいせつ行為等を繰り返していた。
A・Bの両名は、同居する母親乙の助けを得るどころか、乙からも甲のわいせつ行為等の相手となるように指示されるなどしていたことから、いずれも当初はその被害に耐えていた。しかし、度重なるわいせつ等の行為に耐えかねたBが第三者に被害を告白したことを契機に事件が発覚し、通報を受けた警察が児童相談所と協力して直ちにA・B両名を保護するとともに、Bに対する罪で甲・乙両名を逮捕し、捜査した結果、関係者の供述により、前記のとおり、甲がAに対しても繰り返しわいせつ行為を行っていたことが判明した。
警察では、Aに対する関係では、直近かつ最終の被害であって、裏付け捜査を含む事実関係の解明作業が比較的容易に進行しつつあった第2事実から立件送致することを企図し、Aの唯一の法定代理人であった乙が甲の強制わいせつ罪全般につき共犯者として捜査の対象(被疑者) とされていたため、刑事訴訟法232条により、Aの祖母であるCに被害状況を説明し、同人から告訴状を徴求した。
なお、Cは、A・Bらとは別居しており、警察から連絡を受けるまでは、甲がA・Bに対してわいせつ行為等をしていた事実を全く知らなかった。
3判示内容(本稿に関連する部分のみ抜粋。ただし、人名、犯行日時等については本稿のそれと統一した表記に置き換えている。)
Cが本件告訴状を作成した同年(平成23年) 7月18日以前に作成されている被害者の警察官調書によれば、既に被害者への同月16日の事情聴取等の結果、被告人甲が、被害者の実母である乙と共謀して、被害者に対する第1事実及び第2事実の各強制わいせつ行為に及んだという嫌疑が警察官に発覚するに至っていたものである上、Cの警察官調書によれば、警察官がCに被害者に対する本件被害状況を説明して、親権者である乙の告訴権行使が不可能であることを理由に、Cに告訴状の作成を求めたというのであるから、警察官及びCが被害者に対する前記両事実についての告訴を念頭に置いていたのであれば、本件告訴状に両日の被害について告訴する記載がなされているのが自然であるのに、実際にはあえて同年6月25日ころにわいせつ行為を受けたという被害事実に限定して記載がされていることに照らすと、本件告訴状による告訴は、第2事実についてのものと解する
のが相当であって、第1事実についてまで告訴意思を表示しているとみることはできない。所論は、Cの前記検察官調書には、Cが本件告訴状作成当時の気持ちについて、第2事実以外でも被告人が被害者に対してわいせつな行為をした事実があるのであれば、当然その事実についても処罰してほしいと思っていた旨の記載がされているというが、その記載からは、Cが本件告訴状を作成した当時には、第2事実以外の被害については認識していなかった事実が推認されるのであって、前記判断を左右するものではない。


Ⅲ問題の所在
孫に対して2日間連続して行われた各強制わいせつ行為につき、孫が捜査における取調べや公判における証人尋問を受けることによって更にその心身に大きな負担を受けることには耐えられないとして、告訴は一切しないという判断はあり得たかもしれない。しかし、2日目の強制わいせつ行為については処罰を求めつつ、初日の強制わいせつ行為については処罰を求めないという判断は通常考え難い。現に、Cは、本件告訴状による告訴をした当時からいずれのわいせつ行為についても処罰を求める意思であった旨明確に述べ、本判決でも述べられているように、その旨録取された検察官調書4)が証拠としても採用されていたのである。それにもかかわらず、文言上も告訴対象を第2事実(2日目の強制わいせつ行為)に限定したとは必ずしも解されない本件告訴状5)による告訴につき、第1事実(初日の強制わいせつ行為)について告訴意思を表示したものとは解されないとして同事実に対する告訴の効力を改めて否定した本判決の結論には大きな違和感を覚える6)。
告訴状に係る前記解釈は本件限りの事例判断であったとしても、本件は、同一の犯人が、連続する2日間に、同一の被害者に対して、同一のホテル内で同じような態様のわいせつ行為を行っていた事案であることから、包括一罪と評価される余地も十分にあった。仮に包括一罪と評価された場合には、証拠関係は全く同一でありながら、Cの告訴の効力は第1事実にも及ぶという結論になったものと考えられる7)。
実務的には、同一の犯人によって同一の被害者に対し同一の態様で連続的に敢行された犯罪について、その罪数を併合罪と評価するか包括一罪と評価するか判断が微妙な事案が多数存在し、その区別の基準について明確なものがあるとは言い難い8)。そのような中で、この微妙な罪数評価によって告訴の存否、ひいては訴訟条件の存否が決せられるという結論が果たして妥当なのであろうか。
この同一犯人による同一被害者に対する同一態様の連続的な犯罪のように微妙な罪数評価を伴う事案においては、訴訟条件の存否をめく.って実務上非常に悩ましい問題が生じている。そこで、本稿では、訴訟条件のうち、まずは告訴の及ぶ客観的範囲の問題につき、罪数論と手続法との関係を踏まえつつ、現実的妥当性を有する結論を導くことができないのか検討することとする9)。

強制わいせつ罪(176条後段)等につき 匿名起訴を許容した事例(金沢地裁h29.9.4)

 報道されていない罪名で法定合議のようです。
 氏名を全く匿名にすると、被害者が何人いるのかわからなくなることがあります。

匿名起訴 女児にわいせつ 35歳に懲役5年=石川
2017.09.05 読売新聞
 小学生女児にわいせつな行為をしたなどとして強制わいせつ罪などに問われた被告(35)に対し、金沢地裁田中聖浩裁判長)は4日、懲役5年(求刑・懲役6年)の判決を言い渡した。

 判決によると、被告は1月、富山県や石川県の駐車場に止めた車の中で、女児計2人(いずれも当時7歳)に対してわいせつな行為をし、その様子を撮影。2月には別の女児(当時8歳)をわいせつ目的で連れ去ろうとした。田中裁判長は「被害者が幼いことにつけ込んだ卑劣きわまりない犯行だ」と述べた。
 金沢地検は再被害の可能性を考慮して、被害女児の実名を伏せて起訴。地裁はこれまで、適否の判断を留保していたが、
 田中裁判長はこの日、「再被害の恐れを考慮したもので、違法ではない」と匿名での起訴を認めた。

強制わいせつ罪につき「私的な情報を教えてもらい、男性が好意を抱かれていると誤信した可能性がある」として無罪とした事例(名古屋地裁h29.9.5)

https://mainichi.jp/articles/20170906/k00/00e/040/001000c
「自分に好意を抱いていると誤信した可能性があり、女性の意思に反していたとまでは言えない」として無罪を言い渡した。検察側は懲役2年を求刑していた。
 判決理由で田辺三保子裁判官は「女性は隣に座った男性に名前や勤務先を教えており、周囲に助けも求めなかった」と指摘した上で「私的な情報を教えてもらい、男性が好意を抱かれていると誤信した可能性がある」と結論付けた。(共同)


 サイトで知り合った男性を自宅上げると、承諾ありと誤信するのもやむなしという判決があります。田邊三保子裁判長東京地裁h28.318

強制わいせつ被告事件東京地方裁判所判決平成28年3月18日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文
 被告人は無罪。
       理   由
第1 公訴事実の要旨
 本件公訴事実の要旨は,①被告人は,□□□□□(当時23歳,以下「A」という。)に強制わいせつ行為をしようと考え,平成27年4月12日午前3時頃から同日午前4時頃までの間,東京都□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□A方において,Aに対し,「おまえに断る権利なんかない。」「そういう態度をとるならそれなりの対応をする。」「おとなしく言うことをきけば何もしない。」などと申し向けて,被告人の要求に応じなければAの身体名誉等に危害を加えかねない気勢を示して脅迫し,同人の腰に手を回して身体を押さえ付け,その着衣を脱がせて,ベッド上に押し倒すなどの暴行を加えて,その反抗を困難にさせた上,同人の乳房をなめるなどし(以下「第1事件」という。),②被告人は,□□□□(当時30歳,以下「B」という。)に強制わいせつ行為をしようと考え,平成27年4月19日午後8時50分頃から同日午後9時25分頃までの間,さいたま市□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□被告人方において,Bを布団上に押し倒して,その着衣を脱がせ,その頭部を押さえ付けるなどの暴行を加えて,その反抗を困難にさせた上,その陰部に指を挿入して弄び,自身の陰茎を口淫させるなどした(以下「第2事件」という。)というものである。
第2 被告人の供述及び弁護人の主張
 被告人は,公判廷において,第1事件について,Aに対し説教をしたことはあったが,脅迫はしていない,Aは着衣を自ら脱いでおり,Aの身体を押さえ付けたり,ベッドに押し倒したりはしていない,Aの乳房を舐めたことはあったが同意があった,第2事件について,Bを押し倒したり,着衣を脱がせたり,頭部を押さえ付けたりはしていない,Bの陰部を指で開いたり,口淫をしてもらったことはあるが,いずれも同意があったと供述する。これを受けて弁護人も,第1事件については,Aに暴行及び脅迫を加えたことはなく,わいせつ行為に関してはAの同意があった,仮にわいせつ行為等に関するAの同意がなかったとしても,被告人はわいせつ行為等についての同意があると誤信していた,第2事件については,Bに暴行を加えたことはなく,わいせつ行為に関してはBの同意があった,仮にわいせつ行為等に関する同意がなかったとしても,被告人はわいせつ行為等についての同意があると誤信していたから,被告人はいずれも無罪である旨の主張をする。
第3 第1事件について
1 関係各証拠から認定できる事実
 関係各証拠によれば,以下の事実が認定できる。
(1) Aと被告人は,ビジュアル系バンドの愛好者が利用するインターネット上の掲示板のうち,「こんな人いたら神」という,利用者同士が望む条件であれば実際に会うことを目的としたスレッドで知り合った。当該スレッドでは,食事やカラオケを目的とする書き込みが見られるほか,性交や援助交際を目的とする書き込みが存在した。Aは,平成27年4月10日(以下特段の記載がない限り,日付は平成27年のものを指すものとする。),「明日の夜会える性格落ち着いてる長身麺さんいましたら!@小柄細身色白ぎゃ」と書き込んで相手を募集し,被告人は同日当該募集に応え,Aと被告人の連絡が開始された(なお,かかる書き込みにいう「麺」とは,ビジュアル系バンドをしている男性を,「ぎゃ」とは,ビジュアル系バンドを好む女性をそれぞれ意味する。)。その後,Aと被告人は,互いに携帯電話のアプリを用いてメッセージを送り合ったり,アプリの通話機能を用いて通話をするなどして,待ち合わせの時間及び場所に関するやり取りをし,同月11日午後10時30分頃,待ち合わせ場所であった駅(以下「C駅」という。)で落ち合った。
(2) 被告人は,Aとカラオケ店へ行くなどした後,同日午後11時52分頃から54分頃までの間に,路上において,Aの顔を含む上半身の写真をAに無断で6枚撮影した。その後,Aは,被告人の後を追うように歩いたが,同月12日午前0時10分頃,C駅付近にあるコンビニエンスストアに立ち寄り,同店の店員に対し,「警察に通報してください。」「外を見ないでください。」というようなことを言い,30秒あまりで店を出たが,同店員は,なぜ通報するのか事態を飲み込むことはできず,警察への通報は行わなかった。被告人は,このときコンビニエンスストアの外から店内の様子を見守るなどしていた。
(3) Aは,同日午前0時16分頃,別のコンビニエンスストアに寄った。そして,Aと被告人は,同日午前0時48分頃,A方があるマンション内に入り,被告人は,同日午前11時35分頃,同マンションを後にした。
(4) Aは,同日午前11時41分頃,男性の友人に対し,「恥は承知なんやけれども聞いてほしいことがあって,時間あるときに聞いてほしい。。。 変な人に脅されてて言うこと聞かないといけない状況になってしまいつらい」と連絡した。被告人は,同日午後4時16分頃から午後5時54分頃までの間,Aに対し,「あのあとまた寝たの?」「寝たら頭射たいのなおた?」等とメッセージを送信した。Aは,同日午後6時13分頃から同月13日午前0時頃まで前記友人とドライブに出かけ,その際,出会い系サイトで出会った男性と御飯に行く約束をしたが,男性の約束についての認識との食い違いから男性と口論になり,男性にA方まで来られたと告げた。
(5) Aは,同月13日午後2時30分頃,警察に行き,ストーカー被害に遭っている旨告げ,その後わいせつ行為を受けた旨の被害申告をした。
2 A及び被告人の供述について
(1) Aの供述内容
ア Aは,被告人からA方で会わないかという提案を受けたが,初対面の人を家に入れることには抵抗があったのでA方で会うことは断り,C駅近くの飲食店などで食事をしようと考え,待ち合わせのためにAの携帯電話番号を被告人に教えた。
イ Aは,被告人と合流し,被告人の提案で一緒にカラオケ店へ行ったところ,被告人に太ももを触られたり,事務所に所属してバンドをしているという被告人の話に疑問を持ったりしたことから,被告人にうそをつく人は信頼できないことや被告人の顔が好みでないことを告げ,帰宅する旨を伝えた。これに対し,被告人は怒り出し,元々家に行く約束だったなどとAを責めた。
  Aと被告人はカラオケ店を出て歩いていたところ,Aが自宅に来ないよう被告人に何度か告げ,これに対して被告人は,「それなりの対応をする。」「こっちにも考えがある。」というようなことを言った。Aは,これまでインターネット上の掲示板において相手の個人情報を掲載する,いわゆる晒し行為を見た経験があったことから,被告人の発言やいきなり怒り出す様子を受けて,被告人が自分の個人情報について晒し行為を行うかもしれないと考え,心配になった。その後被告人が携帯電話を不自然に高い位置で持っていたことがあったため,Aは,盗撮されているのではないかと心配になり,被告人に対し,「写真撮ってますか。」と尋ねたところ,被告人は,「撮っていない。」と言った。Aは,交番に行って助けを呼ぼうと考えたが,被告人が違う方向に歩いて行ったため,被告人の後を追いかけた。Aは,助けを呼ぶためコンビニエンスストアに入り同店の店員に対し付きまとわれているので警察の人を呼んでほしい旨を告げて店外に出たところ,店外でAを待っていた被告人が「余計なことをするとこっちにも考えがある。」「それなりの対応をする。」などとAに対し告げてその場を立ち去ったため,被告人の後を追いかけた。さらにAは,別のコンビニエンスストアに入り,トイレの中から携帯電話で警察に通報しようとしたが,携帯電話の電池が切れていたため通報できず,コンビニエンスストアを出た。その後,Aと被告人は別のコンビニエンスストアに行き,被告人は外にAを待たせて同店に入り,Aと被告人はA方へ到着した。
  カラオケ店からA方に移動するまでの間,被告人はAの態度や性格について何度も怒鳴るなどしていた。
ウ 被告人は,A方においても,1時間から2時間程度Aの態度や性格を責め,Aは泣いて反論したが,被告人に屁理屈で言い返され反論できなくなった。その後,ベッドに座っていた被告人は,Aを被告人のひざの上に向かい合って座るように言い,拒否したAに対し,「お前には断る権利はない。」「そういう態度を取るならそれなりの対応をする。」「余計なことをしなければ,こっちからは危害は加えない。」などと言ってAの態度を責め,恐怖を感じたAは被告人のひざの上に向かい合って座った。被告人は,被告人のひざの上に向かい合って座っていたAの腰を被告人の手で被告人のひざの方に押さえつけてAが離れられないようにしてキスをした上,Aをベッドの上に押し倒し,Aのワンピースとキャミソールを脱がし,ブラジャーを外して,胸を触ったりなめたりした。Aは,この間,「やめてください。」などと言ったり,被告人の体を押し返したり,被告人の膝に乗せられる状態から何度も離れたりして,泣きながら必死に抵抗し,さらにAがカンジダに罹患していることを告げたところ,被告人はわいせつ行為をやめた。
  Aと被告人は同じベッドで,Aの頭の方向が被告人の足の方向になるような態勢で,Aが壁側,被告人が床側の位置で横になった。
エ 4月12日午前9時頃,Aは,目覚めた被告人から誘われ一緒にゲームをするなどした。Aは,被告人に早く帰ってもらいたかったため,体調が悪い旨を伝え,被告人は昼頃A方から帰った。
(2) 被告人の供述内容
ア 被告人は,これまで当該掲示板に「会いたい」と書き込んでいる女性と性的接触ができていたことから,Aの書き込みを見て,Aと口淫や性交を含む性的接触をすることができると考え,Aに連絡を取った。
  Aは,被告人との通話の中で,交際相手に振られて落ち込んでいるからなぐさめてほしい,自宅で料理を作ると言ったため,被告人はA方で一緒にご飯を食べることを提案し,Aは「そうですね。」と答え,被告人はA方に行ってもよいという意味だと解釈した。なお,被告人は,Aとの通話の中で,Aの姓は聞いていなかったが名は聞いた。
イ 被告人とAはC駅で待ち合わせをした上,カラオケ店に入った。Aは,カラオケ店から出た後,態度が急に冷たくなり,使えない人だ,歌のテンポがずれている,顔がタイプではないなどと告げ,「家に行くのはどうしようかな。」と言った。これに対し,被告人は,もう帰るつもりで,「今回Aさんがなぐさめてほしいというふうに言ってきたのに,人のことをばかにしたりとか家に行くことをドタキャンしようとしてくるなんて,性格悪いよね。」「そういう,人を物扱いするような失礼な対応をするなら,こっちにも考えがある。」などと厳しい口調で言い,駅の方へ歩き出そうとした。すると,Aは被告人の手首をつかみ,「どこへ行くんですか。」と聞き,Aの手を振り払って駅の方へ歩き出した被告人の後をついてきて,「今日は何か自分勝手なことばかり言ってごめんなさい。」と何度も謝ったため,被告人は帰宅するのをやめた。なお,このとき被告人は,後で裁判沙汰などになったときのためにAに伝えずにAの上半身の写真を撮影した。
  被告人は,A方に行ってはいけないとAから言われておらず,Aは渋々ながらも了承している様子であると感じていたため,A方に行った。
ウ 被告人は,A方でAの学生時代の元交際相手について相談を受け,Aに振られる原因があったのではないかとAに説教をしたところ,Aは少しだけ涙目になり落ち込んでいる様子になったため,A方の家賃が高いのではないかと話題を変えた。Aが「そうですね,けっこうきついですね。」と答え,被告人は,「2万円あったら,イチャイチャしてくれる。」と尋ねたところ,Aは無言でうなずいた。被告人はこのときに初めて性的接触の対価の話をしたが,それは元々お金を払わなくても性的接触ができると考えていたためであった。被告人は,Aの顔に自身の顔を近づけたところ,Aが嫌だと言わなかったので,Aと互いにベッドの上に座り向かい合った状態でキスをし,Aの胸を触った。Aは,被告人が手伝うなどしながら,ワンピースとブラジャー,ストッキングを脱いだ。さらに,被告人は,Aとキスをしながら胸を触るなどし,この際,Aは「恥ずかしい。」「緊張する。」などと言い,積極的ではなかったものの,嫌がっている様子はなかった。被告人とAがベッドで横になった後,被告人はAの胸をなめ,手をAの臀部に伸ばしたところ,Aが「下はカンジダだからだめです。」と言い,さらにAのパンツを脱がせようとしたところ,Aが拒絶したため,Aのパンツを脱がすことをあきらめた。被告人は,Aに口淫を何度か要求したが,Aが断ったためAとこれ以上性的接触をすることをあきらめた。
  その後,被告人とAは同じベッドで,Aの頭の方向が被告人の足の方向になるような態勢で眠った。
エ 翌朝目覚めた被告人はAを誘い一緒にゲームをするなどした。被告人は,Aに2万円を支払うよう言われたが,Aが口淫すらしてくれなかったことから,2万円を支払うことはできないと答えたところ,Aに無言でにらみつけられた。被告人は,「Aから何かしてこない限りは,こっちも何もしない。」と告げ,A方を後にした。
(3) A及び被告人供述の信用性
ア Aの供述は,被告人が初対面の男性であったことや被告人のカラオケ店での態度などから自宅に上げることを嫌がっていたAが,被告人から「それなりの対応をする。」「こっちにも考えがある。」などと言われたことなどから,インターネット上に個人情報が晒されるリスクを恐れ,被告人の要求を強く拒否できなくなり,コンビニエンスストアの店員に助けを求めるなどしたが奏功せず,結局被告人を自宅に連れてきてしまい,不本意ながらもわいせつ行為をされてしまったというもので,その一連の経緯に特段不自然とまでいうべき点はなく,その供述内容もコンビニエンスストアに設置された防犯カメラの映像や同店の店員及び直接にAから相談を受けた友人の供述,被害申告をした事実などと整合するものである。確かに,Aが,C駅の交番に赴かなかった,コンビニエンスストアの店員や客,路上の通行人らに事情を説明するなどして助けを求めなかった,A方の場所を知らない被告人を結果的にA方まで案内した,A方に入ってからも110番通報をしなかったという点は,被告人の性的接触を容認していなかったとすれば不可解な言動とも考えられるが,そのような行為に出なかったということも,被告人の行動に恐怖を感じ,混乱していた状況下においては十分理解し得ることであって,Aの供述の信用性を全面的に否定するものではないから,Aの供述は大筋では信用できるというべきである。
  しかし,Aがカンジダに罹患していたことを被告人に伝えたところ被告人がAへの性的接触をやめるに至ったという供述は,第3回及び第4回公判期日での証言時には供述せず,第6回公判期日における被告人質問での同趣旨の被告人供述を受けて,第7回公判期日におけるAの証人尋問に至って初めて供述したものである。これに加え,被告人が胸を触った後下着を脱がそうとしたことなどの供述は,他にも被害者がいるということを聞かされた後の検察官の取調べにおいて初めて明らかにした事実であることからすれば,A方におけるAと被告人の言動に関するAの供述は,供述の機会を増すごとに詳細の度も増しており,このような供述経過や,Aは被告人の言動を受けて多少なりとも動揺していたと考えられることからすれば,A方におけるAと被告人の言動に関するAの供述が細部に至るまで全面的に信用できるのかについては疑問が残る。
  そうすると,Aの供述は基本的に概ね信用でき,大要Aの供述通りの事実が認定できるものの,A方におけるAと被告人の言動に関する点は細部に至るまですべてAの供述のとおり直ちに認定することは困難といわざるを得ない。
イ C駅付近からA方に向かう際のAと被告人の行動に関する被告人の供述は,大筋において関係各証拠やAの供述とも整合している部分が少なくなく,全ての点において,殊更に虚偽を述べているものとまでは認められない。しかし,後述するように,明らかに不合理な内容を述べている点などもあり,これらについては,必ずしも被告人供述のとおり認定することはできない。すなわち,元々被告人がA方に来ることをAが了承していたとする点は,Aと被告人が待ち合わせてからすぐにA方に向かうなどの行動に出ていないことや,カラオケ店を出てからも1時間弱の時間をかけてA方に向かっており,途中立ち寄ったコンビニエンスストアではAが店員に警察への通報を依頼していることと整合しない。また,Aと被告人との間に援助交際の合意があったとする点について,被告人の供述を前提にすると,C駅付近からA方まで行くまでの間Aと被告人とは険悪な雰囲気にあったにもかかわらず,A方に至るまで援助交際の話は全く出ず,A方において家賃の話などをきっかけとして援助交際の話が突然出てきて,Aと被告人が具体的な援助交際の内容を定めず,Aは口淫も性交も行わないつもりであったにもかかわらず2万円という対価で援助交際の合意をし,後に援助交際の内容を巡ってトラブルが生じたということになるが,これら援助交際の経緯や内容は不自然極まりないものである。そうすると,Aと被告人との間の事前の約束の内容に関する被告人供述は信用できず,被告人が供述するようにAが積極的に性的接触に応じていたとは認められないから,A方におけるAと被告人の行動に関する被告人供述も信用できない。
ウ そこで,これらのA及び被告人の供述並びに関係各証拠に照らして,本件において認定できる事実関係の経過は,大要以下のとおりである。
  Aは,被告人との通話中にA方で会わないかという提案を断り,後に被告人と合流して,カラオケ店に行った。カラオケ店において,Aと被告人は険悪な雰囲気になり,互いに言い合いになった。C駅付近を歩いていた際,Aは自宅に来ないよう被告人に何度か告げ,これに対して被告人は,「それなりの対応をする。」「こっちにも考えがある。」というようなことを言い,Aから離れる方向に歩きだし,Aはその後を追った。途中,Aはコンビニエンスストアで同店店員に警察への通報を依頼するなどし,被告人はAの性格等を責めるなどしながら,Aと被告人はA方に到着した。被告人は,この時点で,Aの電話番号,住所,Aの姓名のうちAから言われた名を知っており,Aの上半身を盗撮した写真を所持し,Aも自分の写真を撮られたかもしれないと感じていた。被告人とAはA方においても言い合いを続け,被告人のひざの上に向かい合って座るという申し出を拒否したAに対し,「お前には断る権利はない。」「そういう態度を取るならそれなりの対応をする。」「余計なことをしなければ,こっちからは危害は加えない。」というようなことを言ってAの態度を責め,結局Aは被告人のひざの上に向かい合って座った。被告人は同態勢のAの腰を被告人の手で被告人のひざの方に押さえつけてAが離れられないようにしてキスをした上,Aをベッドの上に押し倒し,Aの服を脱がして,胸を触ったりなめたりした。Aは被告人のわいせつ行為に対し,多少なりとも抵抗を示し,さらにカンジダに罹患していることを告げたところ,被告人はわいせつ行為をやめた。その後,Aと被告人は同じベッドで横になった。被告人は,翌朝A方内でAを誘って一緒にゲームをするなどし,A方を出た。
3 強制わいせつ罪の構成要件該当性について
 強制わいせつ罪における脅迫・暴行は,わいせつ行為を行うに必要な程度に抗拒を抑制する程度・態様の脅迫・暴行を要すると解される。被告人は,C駅付近からA方に向かう際,Aに対して,「それなりの対応をする。」「こっちにも考えがある。」というようなことを述べ,A方においても,Aの態度等を責めるなどした状況下で,「お前には断る権利はない。」「そういう態度を取るならそれなりの対応をする。」「余計なことをしなければ,こっちからは危害は加えない。」というようなことを述べ,被告人のひざの上に向かい合って座っていたAの腰を被告人の手で被告人のひざの方に押さえつけてAが離れられないようにしてキスをした上,Aをベッドの上に押し倒したことが認められることからすれば,そもそもC駅付近からA方に向かう際に被告人の発言を受け不安に思っていたAが,A方において,更なる被告人の発言に接し,被告人による晒し行為を怖れることも十分あり得ることであって,かかる被告人のA方における行為は,客観的にみて,わいせつ行為を行うに必要な程度に抗拒を抑制する程度・態様の脅迫・暴行にあたる。確かに,上記各文言の内容自体は,Aの身体に危害を加えることや晒し行為を行うことを明示するものではなく,被告人がA方において有していたAの個人情報も,Aの住所や携帯電話番号,Aから告げられたAの名,Aの上半身の写真数枚にとどまっていたことからすると,被告人の発言が晒し行為をするという意思を明らかにしたものと直ちに解釈することはできない。しかし,Aはインターネット上の掲示板において,晒し行為を実際に見たことがあり,Aと被告人との関係も険悪になっていたことに加え,Aの住所や携帯電話番号,実際の名を被告人に知られており,Aの写真を被告人に撮られたかもしれないと思っていたことは認められる。そして,A方において被告人と二人きりの状態で上記発言を受けたことからすれば,Aが被告人から身体的な危害を加えられることや晒し行為を畏怖し,これに伴う前記暴行もあいまって,被告人のわいせつ行為を受け入れざるを得なくなったと認めることができる。被告人のAに向けた発言は曖昧ではあるものの,害悪の告知と評価でき,強制わいせつ罪にいう脅迫にあたることが否定されるものではない。
 さらに,Aの胸をなめるといった被告人の行為がわいせつ行為にあたることは明らかであるし,Aと被告人が1時間弱もの時間をかけてC駅付近からA方に向かい,Aが途中コンビニエンスストアに立ち寄り,同店店員に助けを求めていること,Aは被告人がA方を立ち去った直後にAの友人に対して相談を持ちかけていることからすれば,被告人のわいせつ行為について,Aの同意はなかったと認められる。
4 強制わいせつ罪等の故意について
 検察官は,被告人には強制わいせつ罪の故意も認められると主張する。しかし,以下のとおり,被告人に強制わいせつ罪等の故意があったと認定するには合理的な疑いが残るというべきである。
 Aが書き込みを行った掲示板には,性的な接触を求める書き込みが見られ,Aも自身の身体的特徴を挙げるなどして書き込んだことに加え,Aが被告人と会うことに応じたことからすれば,Aが被告人と通話をしていた中で被告人がA方に来ることを拒んでいたとしても,Aと被告人がC駅付近で会った時点で,被告人自身は,Aが被告人を含む他の男性との性的接触を容認していると受け止めていたといえる。
 確かに,Aと被告人とがカラオケ店に行った後,両人の関係が険悪になった事実は認められる。しかし,被告人が「それなりの対応をする。」「こっちにも考えがある。」と言ったのは,Aが被告人に対し,うそをつく人は信頼できないことや被告人の顔が好みでないこと,帰宅することを告げた後であって,Aと性的接触を行うことを期待していた被告人としては,Aの発言に腹が立って,反論するという意図でこれらの発言をした可能性があり,被告人とAとの間での単なる口論の一端と解する余地がある。そして,上記各文言の内容自体が,直接身体に危害を加えることや晒し行為を行うことを明示するものではなく,被告人がその後Aに対して強い暴行を加えていないことや,被告人が当時有していたAの個人情報は,Aの携帯電話番号,Aの姓名のうちAから告げられた本名かどうかはわからない名に過ぎず,これらの個人情報のみをインターネット上に晒す行為の報復や嫌がらせ等としての有効性には限度があると考えられることからすれば,被告人の認識として,Aに対して危害を加えたり晒し行為を行ったりするという意図があった,もしくはAに対して晒し行為を含めた危害を加えかねない気勢を示してAを脅そうという意図があったとまで認定するには,合理的な疑いが残るというべきである。
 そして,Aと被告人は1時間弱もの時間をかけてC駅付近からA方に向かっているものの,この間において被告人が前記文言でAを非難しつつ,一時は立ち去るそぶりをみせたにもかかわらず,Aは被告人の後を追うなどしていたことも認められる。被告人はAがコンビニエンスストアの店員に通報依頼をしていたことやAが別のコンビニエンスストアにおいて携帯電話で110番通報をしようとしていた事実を認識していたとはいえない。このような状況下で,最終的にAが被告人をA方まで案内したことからすれば,被告人としては,一時は被告人とAとの関係が悪化したとしても,被告人の粘り強い説得によって,Aが最終的には被告人による性的接触を容認したという認識を抱いた可能性は否定できない。
 さらに,A方における被告人のAに向けた発言は,被告人が前述のAの個人情報に加えてAの住所やAの写真を所持していた状況を踏まえても,この段階に至っても晒し行為を実行することを明らかにする旨の発言ではなく,これまで被告人がAに対して言い続けてきた内容と同旨の発言に終始していたことからすれば,この時点における被告人の言動を,晒し行為を行う意図があって,もしくはそれを示す意図があって行った発言と認めるには合理的な疑いが残る。また,その後被告人の要求を再三断るAに対して,被告人は激しい暴行を加えるなどの行動に出ていないことからすれば,被告人にAの身体に危害を加える意図があったと評価することも困難である。そして,Aは,A方において被告人の行為に対して多少なりとも抵抗を示したことは認められるものの,認定できる事実によればAの抵抗がどれほど明示的で迫真的なものであったかは明らかでない。Aの供述を前提にしても,泣きながら抵抗を示すという様子などは多義的に捉え得るものであって,泣いていることを被告人が認識できない可能性や,それぞれの口論の延長での感情的な高ぶりのあらわれと受け取る可能性もある。また,抵抗の丙容は,「やめてください。」と何度も言う,被告人を押し返したり,被告人の膝の上から何度か降りるというもので,強い抵抗とまでは直ちに評価することも困難である。そうすると,被告人は,Aがかかる程度に抵抗する様子を認識していても,AがA方に被告人を案内したことから,最終的にはAが性的接触には同意しており,Aの抵抗のように見える言動もAの心の迷いや羞恥心などから生じたものと誤解する可能性は否定できない。被告人が強制わいせつ行為の後に,すぐにA方を立ち去るなどの行為に出ず,Aと同じベッドで睡眠を取り,翌朝に提案してA方でゲームをしたりして過ごしてからA方を後にし,その後Aの体調を気遣うかのようなメッセージを送信したという行動も,上記の誤信の可能性を裏付けるものである。
5 小括
 以上によれば,被告人の行為は,強制わいせつ罪の客観的構成要件に該当するものの,わいせつ行為に先立つ暴行・脅迫の時点において,被告人が性的接触についてAが同意していると誤信していた合理的な疑いが残る。これに加え,この程度の暴行についてはAに同意があると被告人が誤信していた合理的な疑いが残り,また,脅迫の意図があったと認定するにも合理的な疑いが残る。したがって,被告人には強制わいせつ罪はもとより,暴行罪及び脅迫罪も成立しないというべきである。
第4 第2事件について
1 関係各証拠から認定できる事実
 関係各証拠によれば,以下の事実が認定できる。
(1) Bと被告人は,ビジュアル系バンドの愛好者が利用するインターネット上の掲示板のうち,「はぐちゅーのみ」という,抱き合ったり,キスをする人を募集するスレッドで知り合った。Bは,4月16日,「今から会える麺さんいたら@巨乳ギャ」と書き込んで相手を募集し,被告人は同月17日当該募集に応え,Bと被告人の連絡が開始され,同月19日チャット上のやり取りで同日に会うことが決まった。
(2) Bと被告人は互いに携帯電話のアプリを用いてメッセージを送り合い,同日の午後7時頃から午後8時頃にかけて,以下のようなやり取りをした。Bが降車すべき駅がどこかを尋ねて被告人が答えないというやり取りが見られた後,Bが「じゃぁ帰る」「だってこわいもん」などと送っているのに対し,被告人は度々アプリの通話機能を用いて発信しながら,電話に出ないBに対し,「そういうのやめてよ。ずっと待ってたのに」「理由も不安にならないようにしっかり話したよ?理不尽すぎ」「本当は電車乗らず,移動してないっておちでしょ」「マジあり得ない。」「場所聞くだけ聞いて来ないとか,釣りするつもり満々だよね」などと送り,最終的にBは「釣りじゃないし」などと返事をし,被告人の発信に応えて被告人と通話した。
(3) Bは,同日午後9時42分頃,「はぁー最悪だー」とネット上に書き込んだ。
  Bは,警察から連絡を受けて,5月14日に告訴した。
2 B及び被告人の供述について
(1) Bの供述内容
ア Bは,当該募集に応えた他の男性と4月16日実際に会い,インターネットカフェで,抱き合ったり,キスをしたり,口淫をしたりした。しかし,嫌な気持ちになったため,性的接触をもうしたくないと感じていた。Bは,同月17日に被告人と通話する中で,同月16日に他の男性と抱き合ったり,キスをしたり,口淫をしたりしたこと,不快で嫌な気持ちになったので,抱き合うことやキスをも含めた性的接触はもう当分したくないことを伝えていた。
イ Bは,被告人とチャット上で同月19日に会う約束をした後,被告人と通話しBの職場近くの駅で待ち合わせをしようと約束した。Bが駅に着いて被告人に着いた旨チャットで連絡すると,被告人は,Bとの通話の中で,Bに対して駅の改札に入り,埼玉方面に向かう埼京線に乗るよう指示をした。Bは,埼玉方面行きの埼京線に乗ったが,被告人が降車駅を教えないことから,不安で怖い気持ちになり,□□駅で下車した。被告人が,怒っているようなニュアンスのチャットをしてきたり,何度も発信してきたため,Bは,被告人が逆ギレしたり逆恨みしたりしてBの個人情報について晒し行為をするのではないかと恐怖感を抱き,通話に出た。被告人は,その通話の中でBに対して埼玉方面の電車に乗るよう指示し,Bが被告人方に行くのは嫌という内容の意思を伝えたところ,被告人方には行かない,飲食店もある旨伝え,Bの性的な行為はしないかという内容の質問に対しても何もしないと答えた。Bは,被告人と会って気分を落ち着けてもらおうと考え,再度埼京線に乗り,被告人の指示に従い□□□駅で下車した。Bは,被告人の通話の指示に従い,飲食店に行くつもりで□□□駅から歩いて行くと,自転車を持って立っている被告人を見つけた。Bは,その場所が人通りもない暗い道であったことから逃げられないと感じ,自転車の後ろに乗るよう指示した被告人に対し,一度は断ったものの,最終的には自転車に二人乗りをし,Bと被告人は被告人方に着いた。
ウ Bと被告人は,被告人方のソファーの両隣に座り,ゲームをしていたところ,被告人が急にBのあごを持ってキスをし,服の上からBの胸を触り,Bに対して布団に行くよう指示をした。Bが移動して布団に座ったところ,被告人はBの両肩をもってBを押し倒し,Bの服をすべて脱がした。Bは「入れるのはやめて。」と言ったが,レイプされるかもしれないという恐怖感から抵抗できなかった。被告人は,Bの胸を直接触り陰部に指を入れ,Bが何度も「やめて。」と言って被告人の腕を掴んで指を陰部から出したところ,被告人はBに対し口淫を要求した。Bが被告人の股の間に座り,何もせずにいたところ,被告人は,Bの頭をつかんで被告人の陰茎をBの口に近付け,Bに15分くらい口淫をさせ射精した。Bは,しばらくしてから,被告人に帰る旨を伝え被告人方を出て,被告人とは被告人方の近くの通りで別れた。
(2) 被告人の供述内容
ア 被告人は,これまで当該掲示板に書き込んでいる女性と性的接触ができており,Bの書き込みを見て,Bと口淫や性交を含む性的接触をすることができると考え,Bに連絡を取った。被告人は,同月17日のBとの通話の中で,Bには被告人方で会うという話をしていた。
イ 被告人は,同月19日,携帯電話で誘導してBを自宅近くまで呼び出し,被告人とBは自転車に二人乗りをするなどして,被告人方に着いた。
ウ 被告人は,被告人方でBから,同月16日に他の男性とマンガ喫茶で会い,口淫したことを聞いた。Bは,その男性は自分のことを気に入ったが,自分はその男性のことをあまり気に入らなかったと自慢していた。被告人は,Bにキスをし口淫を要求したところ,Bは「いいよ。」と同意した。Bは,被告人の手伝いもあったが,自ら服を脱いだ。被告人がBの陰部を指で広げたところ,Bが「下はだめ。」と言ったことから,被告人はBの陰部を触るのをやめた。Bは,被告人の陰茎を口淫し,被告人はBの口内に射精した。Bは終始嫌がっているそぶりを見せず,口淫の際には被告人の陰茎を手淫するなど積極的な態度を示していた。被告人は,性的接触が終わった後,Bを外まで送った。
(3) B及び被告人供述の信用性
ア Bの供述は,Bが降車すべき駅を被告人から教えてもらえなかったことから不信感を抱いたBが,被告人が怒っているようなニュアンスのチャットをしてきたり,何度も発信してきたことなどから,インターネット上に個人情報が晒されるリスクを恐れ,被告人の要求を強く拒否できなくなり,結局被告人方に行ってしまい,不本意ながらもわいせつ行為をされてしまったというもので,その一連の経緯に不自然な点はなく,その供述内容も被告人とのチャットのやり取り,事件直後に「最悪だー」との書き込みをしその後被害申告をした事実などと整合するものである。確かに,Bは,□□駅から再度埼京線に乗車してからは比較的抵抗なく被告人方の近くまでたどり着き,その後被告人に出会ってから被告人方近くのガソリンスタンドなどで助けを求めなかった,110番通報をすることもなかったという点は,被告人の性的接触を容認していなかったとすれば不可解な行動とも考えられるが,被告人方の近くまで比較的抵抗なくたどり着いたのは,Bの供述を前提にすれば,被告人方ではなく飲食店に向かうつもりだったのであって不自然とはいえないし,被告人に出会ってから助けを求めたり通報するという行為に出なかったということも,不安に思っていたところに突然夜道に被告人が現れて恐怖を感じ,以降混乱していたという状況下においては十分あり得ることである。また,被告人に対して二日前にBの書き込みに反応した男性と抱き合ったり,キスをしたり,口淫をしたりしたことを伝えている点も,被告人と性的接触をしようと考えていなければ不可解な行動にも見えるが,Bの供述を前提にすれば,他の男性と性的接触を持ったことを伝えたのは被告人と会う前であって,そのことを伝えるのみならず,その際に不快で嫌な気持ちになったので,性的接触はもう当分したくないとも告げているのだから,不自然とはいえない。そうすると,これらの点は,Bの供述の信用性を全面的に否定するものではないから,Bの供述は基本的には信用できるものというべきである。
  しかし,Bの供述にはやや不明瞭な点が見られる。特に,Bの供述を前提とすれば,被告人方において被告人がBの陰部に指を入れた行動に対し,恐怖に怯えながらも被告人の腕を掴むなど一応の抵抗を示しているというのであるから,他にも口淫をはじめとした被告人の様々な性的な行動に対して抵抗を示してもよいはずであるが,その様子がBの供述からは判然としない。そして,Bは事件後速やかに被害を申告せず,警察に被害を申告したのも警察から連絡を受けたことをきっかけとして事件の約1か月弱後であったことからすれば,Bの事件に関係する記憶自体が十分固定化せず劣化している可能性が残るというべきである。また,Bが被告人の行動を受けて多少なりとも動揺していたとも考えられる。そうすると,被告人方における,Bや被告人の言動,Bの当時の心境が細部に至るまでその供述どおり全面的に信用できるものとはいい難い。
  以上より,Bの供述は,基本的に信用でき,大要Bの供述通りの事実が認定できるものの,被告人方におけるBと被告人の言動に関する点は細部に至るまですべてBの供述のとおり認定するには疑問が残る。
イ Bが被告人方にたどり着くまでの経緯などについての被告人供述は,客観的証拠とも符合し,不自然な点もないから,大要信用できるというべきである。しかし,Bと被告人との間で当初からBが被告人方に行くという合意ができていたという供述は,被告人方から遠く離れたBの職場近くの駅を待ち合わせ場所にしていること,Bが不安を感じるなどして□□駅で一度降車していることと整合せず,不自然である。また,Bが被告人方において被告人の性的接触の誘いにすんなり応じたという供述は,Bが□□駅で一度降車するなど被告人方にたどり着くまでに躊躇が見られるとともに,被告人方を出て間もなく「最悪だー」とネット上に書き込んでいることと整合せず,不自然である。そうすると,Bと被告人との間の事前の約束の内容に関する被告人供述は信用できず,被告人が供述するようにBが積極的に性的接触に応じていたとは認められないから,被告人方におけるBと被告人の行動に関する被告人供述も信用できない。
ウ そこで,これらのB及び被告人の供述並びに関係各証拠に照らして,本件において認定できる事実関係の経過は,大要以下のとおりである。
  Bは,被告人と通話する中で,同月16日に他の男性と抱き合ったり,キスをしたり,口淫をしたりしたこと,不快で嫌な気持ちになったので,抱き合うことやキスをも含めた性的接触はもう当分したくないことをあらかじめ伝えていた。Bは,被告人の指示によって,Bの職場の近くの駅から埼京線に乗り,途中□□駅で一度下車するなどしながら,□□□駅で下車し,歩いて被告人方の近くまで行き,被告人と会った。Bは,被告人が運転する自転車に二人乗りをし,Bと被告人は被告人方に着いた。Bと被告人は,被告人方のソファーの両隣に座り,ゲームをしていたところ,被告人が急にBのあごを持ってキスをし,服の上からBの胸を触り,Bに対して布団に行くよう指示をし,Bが布団に移動して座っていたところ,被告人はBの両肩をもってBを押し倒し,Bの服をすべて脱がした。Bは「入れるのはやめて。」というようなことを言い,被告人は,Bの服を脱がせると,Bの胸を直接触り陰部に指を入れ,Bが被告人の腕を掴んで陰部から指を出したところ,被告人はBの頭部を押さえ付け口淫をさせ射精した。
3 強制わいせつ罪の構成要件該当性について
 被告人は,「マジあり得ない。」「場所聞くだけ聞いて来ないとか,釣りするつもり満々だよね」などのメッセージをBに送り,何度か通話機能の発信を繰り返すなどした状況下で,被告人方において,いきなりキスをし,布団に座っていたBを布団に押し倒し着衣を脱がせ,Bの陰部に指を入れ,Bの頭部を押さえ付けて,被告人の陰茎を口淫させるなどしたことが認められることからすれば,被告人のチャット上の発言等を見て,晒し行為の具体的な危険を感じたとは考えられないもののいくばくかの恐怖を感じていたBが,被告人と二人きりの被告人方において,客観的に見て,被告人の上記暴行によって,被告人のわいせつ行為を受け入れざるを得なくなったという事実が認められるから,被告人の被告人方における行為は,わいせつ行為を行うに必要な程度に抗拒を抑制する程度・態様の暴行にあたる。
 そして,Bの陰部に指を入れ,被告人の陰茎を口淫させるといった被告人の行為がわいせつ行為にあたることは明らかである上,Bが,被告人と会う前に他の男性と二日前に性的接触をした際,不快で嫌な気持ちになったので,抱き合うことやキスをも含めた性的接触はもう当分したくないことをあらかじめ伝えていたこと,Bが□□駅で一度降車するなど被告人方にたどり着くまでに相当の躊躇が見られるとともに,被告人方で着衣をすべて脱がされた際性交については明確に拒絶していること,被告人方を出た後「最悪だー」とネット上に書き込んだことからすれば,上記被告人のわいせつ行為について,Bの同意はなかったと認められる。
4 強制わいせつ罪等の故意について
 検察官は,被告人には強制わいせつ罪の故意も認められると主張する。しかし,以下のとおり,被告人に強制わいせつ罪等の故意があったと認定するには合理的な疑いが残るというべきである。
 Bが書き込みを行った掲示板は,抱き合ったり,キスをする人を募集するスレッドであって,Bは,自身の身体的特徴を性的な表現を用いて書き込んだことに加え,Bが被告人と会うことに応じていたことからすれば,Bと被告人が会うことを約束した時点では,被告人自身はBが被告人を含む他の男性との性的接触を容認していると受け止めていたといえる。確かに,Bは,被告人と通話する中で,二日前に他の男性と性的接触をした際,不快で嫌な気持ちになったので,抱き合うことやキスをも含めた性的接触はもう当分したくないことをあらかじめ伝えてはいたが,Bが最低限抱き合うことやキスをする相手を求める旨の書き込みを行い,被告人と会うことを容認したことに加え,当該書き込みに応えた他の男性と抱き合ったり,キスをしたり,口淫をしたりしたことも伝えていたことからすれば,被告人が,他の男性と同様に,自分もBに対する性的接触ができるのではないかと期待を抱くのは自然なことといえる。
 また,確かに,Bが□□駅で一度降車するなど,被告人方へ行くのに躊躇していた様子は見受けられる。しかし,Bは□□駅から再度埼京線に乗って以降,被告人方へ行くことを躊躇するようなチャットを行った形跡はなく,Bの供述によっても,比較的抵抗もなく被告人方の近くまでたどり着き,一度は拒否する姿勢を見せたものの最終的には被告人が運転する自転車に二人乗りをし,被告人方に入っていることからすれば,被告人の説得によって,最終的にはBが被告人による性的接触を容認して被告人方に入ったとの認識を被告人が抱くことは否定できない。
 そして,Bは,被告人方において終始強い抵抗を示しておらず,抵抗の際に示している言動も「入れるのはやめて。」という性交を拒否する発言や陰部への指入れを拒否する動作であって,これらの抵抗は口淫その他のわいせつ行為ならば拒否はしないという趣旨にも理解できるのであって,被告人としては,Bが職場の近くの駅から□□□にある被告人方までわざわざ来たことや被告人方でも一緒にゲームをするなどしていたことから,Bの抵抗もBの心の迷いや羞恥心などから生じたものと誤解する可能性は否定できず,それゆえ,Bに拒否された行為をそれ以上は行わず口淫に移行したと解することもできる。また,頭部を押さえ付けるという暴行は一見するとやや強度な暴行と見受けられるものの,当該表現には幅があり一概に強度な暴行とは評価できず,頭部を押さえて口淫をさせるという行為を合意の下で行うこともあり得ることからすれば,当該行為について,被告人としては合意の下での性的接触の一環であって,不当な有形力の行使としての暴行とは認識していなかった可能性がある。
5 小括
 以上によれば,被告人の行為は,強制わいせつ罪の客観的構成要件に該当するものの,わいせつ行為に先立つ暴行の時点において,被告人が性的接触や有形力の行使についてBが同意していると誤信していた合理的な疑いが残る。したがって,被告人には強制わいせつ罪はもとより,暴行罪も成立しないというべきである。
第5 結論
 以上によれば,本件はいずれも犯罪の証明が不十分であって,犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により無罪の言渡しをする。
(求刑 懲役3年6月)
  平成28年3月18日
    東京地方裁判所刑事第10部
        裁判長裁判官  田邊三保子
           裁判官  高森宣裕
           裁判官  高田浩平

 性行為の承諾についての錯誤については、和姦の誤信として解説がありました。

判例コンメンタール刑法
5 承諾
( 1 ) 和姦
当然ながら被害者の承諾同意があれば本罪前段は成立しない。仙台高判昭30 ・3 ・2 高検速報35 は、被害者において、その姦淫前又はその中途においても、これに応じようとした意思が働いたと認められない場合は和姦ではなく強姦罪が成立するとした。もちろん、承諾がその場逃れのものである場合には真意に出たものではないから、承諾とはいえない(東京地判昭30 ・4 ・28東時6 0 5 ・142 、I可l沼43 0 11 ・28 東時19 ・11 0 248(") 。実務的には被害者の示諾があった、いわゆる和姦である、仮にそうでないとしても承諾があると誤信していたとの主張が多いが、要は暴行・脅迫の有無が争点であり、被害者の被害供述が信用できるか否かの事実認定の問題である。これらが深刻に争われる事例は姦淫行為と一体をなす程度の有形力の行使しかなく、被害者の抵抗がない場合などであろう。これ以上の暴行等がある事例で無罪となった例は寡聞にして知らない。


東京地判昭35 ・12 0 22 判タ17 ・1111 は、大学生である被告人が友人と、17歳の被害者を下宿に連れ込み、強姦したが、被告人としては化粧等から被害者を'玄人的な女と思い、被害者の言葉等から性交の承諾を得たと誤解したことが無理からぬ状況にあったとして無罪とした
東京高判昭49 ・9 ・26 高検速報2050 は、第1 審が同旨により無罪としたものを破棄して有罪とした。

判示事項 千葉県青少年健全育成条例違反保護事件において少年を第1種少年院に送致した決定に関し,同条例違反を非行事実として認定して保護処分に付することには「この条例の罰則は,青少年に対しては適用しない。」という同条例の規定の解釈を誤った法令違反があること等を理由とする抗告について,同規定は処罰を免除する規定であり,保護処分に付することは可能であるなどとして,これを棄却した事例[東京高裁平成28.6.22決定]

千葉県の解説書では、罰則適用しない趣旨がよくわかりません。
 決定でも千葉県の解説が構成要件非該当(s63)から「罰則不適用」(h25)と左右していると指摘されています。

s60千葉県青少年健全育成条例の解説
免責規定なし

s63千葉県青少年健全育成条例の解説
第30条 この条例に違反した者が青少年であるときは, この条例の罰則は,青少年に対しては適用しない。ただし営業に関し成年者と同ーの能力を有する青少年が営む当該営業に関する罰則の適用については, この限りではない。
追加 (昭和60年条例第36号)
〔要旨〕
本条は、罰則適用の例外規定である。本条例上青少年は、保護・育成の対象であり、いわゆる有害環境の責任を成人に求めているので、青少年が行った条例違反行為については、営業に関し成年者と向ーの能力を有する青少年が営む当該営業に関する罰則の適用を除いては、罰則を適用しないこととしたものである。
[解説)
l 営業に関し成年者と向ーの能力を有する青少年が営む当該営業に関する条例違反行為は罰則の適用がある。
2 婚姻成年は、本条の対象外である。
3 本条の罰則を適用しないことの法的意義は、次のとおりである。
犯はは、犯罪の構成要件に該当し、違法かっ有責な行為である場合に成立する。
本条の罰則を適用しないという意義は、青少年の造反行為は、構成要件にそもそも該当しないということである。
第13条の2と第20条第l項の関係で説明すると、第20条第1項の構成要件は、第13条の2の規定を受けて定まっているが、第20条第1項の構成要件は、本条の規定により、行為者(犯罪の主体)から青少年を除くものとして修正されている。
したがって、青少年の行為は、第13条の2の禁止規定に該当しでも第20条第l項の犯罪構成要件には該当しないこととなる。
ちなみに、少年法の関係でいえば、同法第3条第1項第1号ではな〈同項第3号に該当することになる。

h06
本条は,罰則適用の例外規定である。本条例上,青少年は保護・育成の対象であり,青少年健全育成の責任を成人に求めているので,青少年が行った条例違反行為については,営業に関し成年者と同ーの能力を有する青少年が営む当該営業に関する罰則の適用を除いては,罰則を適用しないこととしたものである。

h09
本条は,罰則適用の例外規定である。本条例上,青少年は保護・育成の対象であり,青少年健全育成の責任を成人に求めているので,青少年が行った条例違反行為については,営業に関し成年者と同ーの能力を有する青少年が営む当該営業に関する罰則の適用を除いては,罰則を適用しないこととしたものである。

h17
【解説】
本条は、罰則適用の例外規定である。本条例上青少年は、保護・育成の対象であり、青少年健全育成の責任を成人に求めているので、青少年が行った条例違反行為については、営業に関し成年者と同一の行為能力を有する青少年が営む当該営業に関する罰則の適用を除いては、罰則を適用しないこととしたものである。
 営業に関し成年者と同一の行為能力を有する青少年が営む当該営業に関する条例違反行為は罰則の適用がある。

       千葉県青少年健全育成条例違反保護事件
東京高等裁判所決定平成28年6月22日
       主   文
 本件抗告を棄却する。
       理   由

1 本件抗告の趣意は,要するに,①原決定は,千葉県青少年健全育成条例の解釈を誤って適用しており,決定に影響を及ぼす法令違反がある,②少年は,友人に命令されてやむなく本件非行に及んだものであり,本件非行事実の認定には重大な事実の誤認がある,③本件非行事実及び要保護性の判断を誤り,試験観察を経ずに第1種少年院送致とした原決定は,著しく重い処分であり不当である,というのである。
2 法令違反の論旨について
 (1) 原決定が認定した非行事実は,少年が,深夜,当時の少年方において,被害女性(当時17歳)が18歳に満たないものであることを知りながら,同人と,単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為をしたという,千葉県青少年健全育成条例違反(同条例20条1項。以下「本条例」という。)の事実である。
   本条例は,青少年に対し,単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為またはわいせつな行為をすることを禁止し(本条例20条1項),「この条例に違反した者が青少年であるときは,この条例の罰則は,青少年に対しては適用しない。」と定めているところ(本条例30条本文。なお,「青少年」とは「小学校就学の始期から18歳に達するまでの者」と定義されている(本条例6条1号)。),所論は,少年は当時17歳であったから,本条例違反を非行事実として認定して保護処分に付すことは,本条例30条本文の解釈を誤ったものであるというのである。
   この点について,原決定は,本条例20条は,青少年の性が欲望の対象とされやすいという社会的背景を前提に,性行為やわいせつな行為が未成熟な青少年に与える影響の大きさに鑑み,このような行為から青少年を保護するために定められたものであるところ,このような目的は,行為者が青少年か否かで異なるものではないこと,本条例20条1項が「何人も」と規定しているのは,その趣旨の表れと考えられること,本条例30条本文の規定は,行為者が青少年である場合に,構成要件該当性や違法性を阻却する規定ではなく,処罰を免除する規定であり,少年法が定める保護処分は,少年の保護,教育を目的とするもので,処罰ではないから,保護処分に付すことは可能であることなどを説示した上,少年に対し,本条例20条1項を適用して,前記のとおりの非行事実を認定し,少年を前記保護処分に付した。
 (2) 原決定の判断は概ね相当であり,当裁判所も是認することができる。
   所論は,①本条例30条本文は,「罰しない。」ではなく,罰則規定を「適用しない。」としており,処罰阻却事由と捉えることは,文言の解釈として不自然である上,そのように解すると,例外的に青少年でも本条例が適用される場合を定める同条ただし書の規定の意味がなくなる(すなわち,同条本文の場合でもただし書の場合でも,本条例に違反した青少年は「罪を犯した少年」(少年法3条1項1号)として保護処分に付され得ることになり,検察官送致の可能性の有無しか異ならないことになる。)こと,②本条例の制定過程における議論によれば,本条例は,青少年の性を欲望の対象とする大人の身勝手な行為を取り締まることを前提に,青少年が違反行為を行った場合は,補導等による対応を想定していたといえること,③昭和63年度版の本条例の解説によれば,本条例30条本文の規定は,行為者が青少年である場合には,構成要件該当性自体を排除しているものであるとの解釈が示されていること,④平成16年から平成26年まで,千葉県において,本条例違反で青少年を検挙したことは一度もないところ,本件は,当初,集団強姦の罪で逮捕,勾留されたが,捜査の結果,集団強姦での送致が難しかったことから,十分に検討することなく本条例違反での家庭裁判所送致となったものと思われることなどを指摘し,少年に対し,本条例20条1項違反の非行事実を認定して保護処分を言い渡すことはできないと主張する。
   しかし,まず,①について,本条例は,20条1項において,何人に対しても,単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為またはわいせつな行為をすることを禁止し,30条本文において,「この条例に違反した者が青少年であるときは」,罰則を適用しない旨を定めているのであって,このような本条例の文言の解釈として,30条本文が構成要件該当性が欠け,あるいは違法性を阻却するという趣旨ではなく,むしろ,処罰阻却事由ととらえる方がその文理に忠実であるというべきである。また,このような解釈をしても,刑事処分に処せられることを前提として検察官送致されることと保護処分に付されることとは,それぞれの性質に照らして意味あいが大きく異なるのであるから,同項本文とは検察官送致の可能性の有無が異なるだけであるといっても,同項ただし書の意味が失われることにはならない。②についても,所論が指摘する本条例の制定過程において,主として成人による行為を念頭において議論されていたとしても,必ずしも,青少年による本条例20条1項該当の行為を,本条例30条本文によって保護処分の対象とすることを許さない趣旨であるとは解されない。③についても,所論指摘のような解説もされている一方で,例えば,平成25年度版の同解説では,本条例20条1項の「何人も」について,「成人であると少年であるとを問わず,現に県内にいるすべての者」との解釈が示され,さらに,平成6年度版の同解説では,本条例30条について,「本条は,青少年に対する罰則のみの適用を除外するものであり,行為を合法化するものではない。したがって,青少年が本条例に違反した場合は,保護,補導の対象となる。」との記載もあるなど,本条例の解説は必ずしも一定の解釈を前提としたものとは解されない上,県の本条例の運用担当者の解釈がいずれであっても,本条例30条本文の趣旨を処罰阻却事由とみることの妨げとなるものではない。さらに,④についても,上記のとおり,本条例の解説に様々な解釈が示されていることなどの事情に照らすと,そもそも,本条例について一定の解釈を前提とした明確な運用方針があったとはいい難い上,所論が指摘するように,本条例違反による青少年の検挙実績がなかったとしても,青少年の性が欲望の対象とされやすいという社会的背景を基に,性行為やわいせつな行為から未成熟な青少年を保護するという本条例20条1項の趣旨に照らせば,本件を同項の非行事実に該当するとして保護処分の対象とすることが,他の事例と比較して不公平な取扱いであるとして許されないということはできない。また,本件においては,当初,集団強姦の被疑事実で逮捕,勾留された少年が,本条例20条1項の非行事実により送致されたという経緯が認められるが,このような経緯から,少年を上記非行事実により保護処分の対象とすることが不当であるともいえない。
 (3) 次に,所論は,原決定が,「単に自己の性的欲望を満足させる目的で」と非行事実に記載していることから,本条例20条1項違反の非行事実が成立するには,上記目的が必要であると解釈している点,及び条文上要求されている「不当な手段による」行為であることが認定されていない点について,本条例の解釈適用の誤りを主張する。
   しかし,本条例20条1項は,「何人も,青少年に対し,威迫し,欺き,または困惑させる等青少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段によるほか単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為またはわいせつな行為をしてはならない。」と定めているところ,少なくとも,少年がほか4名の者と共に被害女性を取り囲み,4名の者に続いて同女と性交したという本件非行事実が,単に自己の性的欲望を満足させる目的で行った性行為であって,本条項に該当することは明らかであるから,原決定の非行事実の認定はやや不正確であるものの,本条項違反の非行事実の成立に上記目的が必要であるという解釈を前提とするものとは解されない。また,不当な手段による行為であることが認定されていないという点については,条文上「不当な手段によるほか」と規定されていることからして,不当な手段によらなければならないものでないことは明らかである。
   よって,原決定が,少年に対し,本条例20条1項違反の事実を非行事実として認定し,保護処分に付した点に,本条例の解釈適用を誤った法令違反はなく,所論は採用できない。
3 重大な事実誤認の論旨ついて
  この点に関する所論は判然としない点があるが,要するに,少年は,不良グループの中心的存在であるA(以下「A」という。)から命令され,暴行を受けるなどしたため,やむなく本件に及んだものであり,少年には意思決定の自由がなかったのであるから,本件非行事実は成立しない,あるいは,本件非行事実を行うことについて故意がなかったという趣旨であると解される。
  関係証拠によれば,少年が,本件以前から,少年らの中で中心的存在であり粗暴性もあったAを恐れていたこと,本件の際も,Aがその場にいた少年らに被害者との性交を命じるような発言をしていたことが認められ,少年は,自ら積極的に本件非行に及んだものではないことが認められるが,少年に意思決定の自由が全くなかったという状況になかったことは,証拠上明らかである。また,Aに命じられて断りきれず,他の少年らに続いて本件非行に及んだとしても,少年と被害女性との間に真摯な交際等の関係があったわけではないから,「単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為」に該当することは明らかであり,また,この点に関する故意があったことも明らかである。結局,Aに命じられたという事情があったとしても,非行事実の重大性や少年の非行性の程度等を考える上で,少年が非行事実を行うことについて積極的ではなく,追従的であったとして,考慮されることはあるとしても,本件非行事実の成立自体を妨げる事情となるものではない。
4 処分の著しい不当の論旨について
 (1) 原決定は,本件処分の理由について,本件は,当時の少年方において,5名の男子少年で被害者を取り囲み,いわゆる野球拳を行った後,順次性的行為をさせられて心身ともに疲弊状態にあった被害者に対し,少年が性的行為に及んだものであり,前記のとおり,Aから指示されて本件非行に及んだものではあるとしても,Aに強い抵抗を示すことができず,被害者の気持ちを慮ることもなく,自己防衛のために本件非行に及んだという経緯や態様に酌むべき点は乏しく,被害者の苦痛や将来に与える影響等も考慮すると,本件非行を軽くみることはできないこと,前回,詐欺未遂(いわゆる振り込め詐欺の受け取り役)の事実で逮捕され,観護措置を経て,平成26年11月に保護観察処分となり,不良仲間との交際の禁止や就労の継続が特別遵守事項として定められたにもかかわらず,不良仲間と同居してスロット等の遊びを中心とする昼夜逆転の生活を送るようになる一方,担当保護司への来訪の約束を守らず,指導に応じないことが増えていく中で,本件非行に及んだこと,本件後,実兄の指導の下,不良仲間との関係を経ち,複数のアルバイトを試みるなどしたものの,結局,生活は安定しなかったこと,鑑別及び調査の結果によれば,少年は,主体性に乏しく,集団に追従的であり,自ら問題を設定してその達成に取り組むことが苦手であるとされていることなどの事情からすれば,少年が,これらの問題性を改善しない限り,再非行に及ぶ可能性が否定できず,少年の保護者による指導及び監督にも限界があることなどを指摘して,少年の要保護性は低くなく,社会内での処遇には限界があるといわざるを得ないとし,短期処遇の意見を付けた上,少年を,第1種少年院に送致するのが相当であると判断した。
 (2) この原決定の判断は,処遇意見を含め,概ね相当であり,当裁判所としても是認することができる。
   所論は,①本条例30条本文を処罰阻却事由であると解しても,本条例上,主体が青少年である場合には一定の配慮をしているのであるから,その趣旨をくみ取れば,本件非行事実は軽いものと評価すべきである,②少年は,前件時は保護観察制度について十分な理解をしておらず,現在では,保護観察中に本件非行に及んだことを後悔し,内省を深めており,試験観察への意欲を示している,③少年は,本件非行前後,土木作業員として真面目に勤務するなど一定の稼働実績をあげているのに,原決定はこの点を過小評価しており,少年自身,試験観察を希望し,実際に,補導委託先となる施設も存在するから,試験観察を行うべきであるなどと主張する。
   しかし,①について,条例上,罰則の適用が免除され,検察官送致が行えないことをもって,本件非行が軽いものと評価することはできない。②についても,少年が本件後に内省を深め,自己の問題を認識し,転居して交友関係を絶とうとするなどしていたことはうかがえるものの,原決定が認定するような従前からの経緯,鑑別及び調査の結果を踏まえると,少年が実際にその問題点を決められた枠組みのない中で自力で改善していくのは困難と思われ,一定期間,施設内での矯正教育が必要であるというべきである。また,③についても,少年が就労の意欲を持ち,少年なりに仕事を中心とした生活を送ろうとしていたことはある程度評価できるものの,他方,特別な事情もないのに短期間で仕事をやめるなど,実際に就労を試みながらなかなか生活が安定しなかったという点は軽視できないのであって,必ずしも試験観察を経ることが相当であるとはいえず,短期処遇の意見を付した上,第1種少年院送致とした原決定が著しく不当であるとはいえない。
5 よって,論旨はいずれも理由がないから,少年法33条1項により本件抗告を棄却することとして,主文のとおり決定する。
  平成28年6月22日
    東京高等裁判所第10刑事部
        裁判長裁判官  朝山芳史
           裁判官  永渕健一
           裁判官  市原志都

家庭の法と裁判10号p106
4検討
 各都道府県の条例において,本条例と同様の規定がある例は少なからず見受けられる。
しかしながら,そのような同種の条例の事例を含め,本件のような場合に,条例違反(青少年への淫行)を非行事実とする保護処分をすることが可能か否かについて, 直接判断された事例は見当たらない(なお,本条例と同様の規定をもつ福岡県青少年保護育成条例違反の事案に関する事例(最大判昭和60年10月23日刑集39巻6号413頁)において,「18歳に満たない少年が, 同じく18歳に達しない少女を淫行の対象としたときは,互いに性的行為についての判断・同意能力に欠陥があると法的にみなされている者同士の間における性的行為等として当罰性を欠き, また,相互に健全育成についての努力義務を負うとは考えられない者に,刑罰制裁を科することは適切でない」. 「もっとも,本条例の右罰則にふれない性的行為等であっても,「自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること」(少年法3条1項3号)に当たる状況にあるときは(中略)家裁の審判に付することができることはいうまでもない。」などとして.本件のような場合に, ぐ反として扱うことを前提としているとも解される長島裁判官の補足意見が付されている。)。
また,千葉県の担当者による本条例の解説をみると,本条例30条本文の趣旨については,時期によって異なる趣旨と解される記載がされており,条例制定者(立法者)の意思は必ずしも判然としない。
すなわち‘本条例の平成25年版の解説には,本条例30条の趣旨として,条例上,青少年は,保護.育成の対象であり,青少年の健全育成の責任を成人に求めているので,青少年が行った条例違反行為については, 罰則を適用しないこととしたものであると解説されており,平成6年版の解説でも, 同条について,青少年に対する罰則のみの適用を除外するものであり,行為を合法化するものではなく,青少年が本条例に違反した場合は,保護,補導の対象となる旨の記載がある◎他方,昭和63年版の解説には,青少年の違反行為は,構成要件にそもそも該当しないということであり,少年法の関係でいえば, |司法3条1項1号ではなく, 同項3号に該当する旨の解説がされたこともある。
なお,運用の実情は必ずしも明らかではないが.付添人弁護士の主張によると。
青少年については,本条例20条1項違反による検挙には消極的であったとのことである。
以上のとおり,本条例が禁止する青少年に対するみだらな性行為等を行った主体が, 「青少年」である場合における. 同事実を非行事実とする保護処分の適否については,必ずしも定まった見解等がないところ,本決定は,本条例の趣旨及び文理解釈の観点等から,青少年についても,本条例が定める青少年への淫行を非行事実とする保護処分が可能であるとの判断を示したものである。
この点については,前記のとおり,保護処分が可能とする積極説,消極説, いずれの考え方にも根拠があるものと思われるが,本決定が初めてこの点に関する解釈を示したことには, 同種事案を取り扱う上で,先例としての意義を有すると思われるため,紹介する次第である。

福祉犯罪の被害弁償につき、請求額1000万円のところ、250万円で示談した事例

 裁判例によれば、民事訴訟になれば認容額100万円くらいになるような事案でしたが、被害者に状況をよく聞くと、代理人に着手金を約100万円払っているということなので、そういうのを含めて交通費とか日当とかの諸経費を積算して250万円で示談しました。被害者の手元に100万円が残る計算です。