児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

島本元気検事「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」の概要

島本元気検事「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」の概要
 1項2項で承諾のレベル下げたのに、13歳でも相手方と対等なら完全承諾可能としたのは矛盾しますよね。
 「なお、本稿中、意見にわたる部分は私見である。」とありますが、法務省の逐条説明のパクリです

島本元気検事「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」の概要(その1)警察公論2024.1月号
イいわゆる性交同意年齢の引上げ(改正後の刑法176条3項及び177条3項)
(ア)趣旨及び概要
改正前の刑法176条後段・177,条後段においては、13歳未満の者に対して性的行為をすること自体が処罰の対象とされていた。
これは、強制わいせつ罪・強制性交等罪が、性的自由・性的自己決定権を保護法益としており、性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力がない場合には、暴行を受けるなどの意思決定に影響を及ぼすような状況がなかったとしても、性的行為をすること自体によって保護法益が侵害されると考えられるところ、13歳未満の者は、行為の性的な意味を認識する能力が欠け、性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力がないとされたためであると考えられる。
もっとも、性的行為に関して有効に自由な意思決定をするための能力の内実としては、
○行為の性的な意味を認識する能力
だけでなく、
○行為の相手方との関係において、行為が自己に及ぼす影響について自律的に考えて理解したり、その結果に基づいて相手方に対処する能力
が必要であると考えられる。
その上で、これらの能力は、年齢とともに心身が成長し、社会的な経験を積み重ねることによって向上していくものと考えられ、心理学的・精神医学的知見を踏まえると、これらの能力が十分に備わるとみることができる年齢は、早くとも16歳であると考えられる。
すなわち、
○13歳未満の者については、前者の能力が備わっておらず、有効に自由な意思決定をする前提となる能力が一律に欠ける
○13歳以上16歳未満の者については、前者の能力が一律に欠けるわけではないものの、後者の能力が十分でなく、相手方との関係が対等でなければ、有効に自由な意思決定ができる前提となる能力に欠ける
と考えられる。
そこで、改正法においては、
○16歳未満の者については、性的行為について有効に自由な意思決定をする前提となる能力が十分備わっているとはいえないことから、その者に対して性的行為をすること自体で処罰されることとなる年齢を「13歳未満」から「16歳未満」に引き上げつつ、
○13歳以上16歳未満の者に対する性的行為については、相手方との間に対等な関係がおよそあり得ず、有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠ける場合に限って処罰する観点から、当該13歳以上16歳未満の者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者を処罰対象とすることとされた(改正後の刑法176条3項・177条3項)。
なお、13歳以上16歳未満の者に対する性的行為についての改正後の刑法176条及び177条の適用に関しては、衆議院法務委員会及び参議院法務委員会において、附帯決議が付されている*5。
(イ) 「その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る」の意義
「その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者」とは、13歳以上16歳未満の者の生年月日の前日から起算して5年以上前の日に生まれた者をいう。
13歳以上16歳未満の者において、行為者が「その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者」であることを認識していることは不要である。