児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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非身分者が加功した監護者わいせつ事件(大津地裁R4.11.22)

非身分者が加功した監護者わいせつ事件(大津地裁R4.11.22)
 控訴していたようですが、確定したようです。
 刑事確定訴訟記録法で閲覧許可で出ましたが、westlawに出ていました。
 非身分者(知人A)の方が共犯と身分の問題ありということです。d1lawに出るみたいです。

裁判年月日 令和 4年11月22日 裁判所名 大津地裁 裁判区分 判決
事件名 監護者わいせつ、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号 2022WLJPCA11226004
 【罪となるべき事実】
 第3 被告人は、B(当時13歳)と同居してその寝食の世話をし、その指導・監督をするなどして、同人を現に監督する者であるが、Aと共謀の上、Bが18歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、令和4年3月4日から同月5日までの間に、前記A方において、被告人がBを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、同人の手を持ち、Aの陰茎を触らせたり、AがBの胸や陰部をなめたり、指で弄んだりするなどし、わいせつな行為をした(令和4年7月13日付け起訴状記載の公訴事実関係)。
 第4 被告人は、Aと共謀の上、B(当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和4年3月5日午前0時6分頃から同日午前6時26分頃までの間に、前記A方において、同児童に対し、被告人が同児童の腕を掴みながらAの陰茎を手淫させる姿態、Aが同児童の胸部や陰部をなめ、手指で弄ぶ姿態及び同児童の乳房、陰部を露出させる姿態をとらせ、これをAが使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影し、その動画データ4点を同携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって、児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した(令和4年8月12日付け起訴状記載の公訴事実第2関係)。
 【法令の適用】
 罰条 判示第1の行為 刑法60条、176条後段
 判示第2の行為 刑法60条、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項2号、3号
 判示第3の行為 刑法60条、179条1項
 判示第4の行為 包括して刑法60条、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項1号、2号、3号
 刑種の選択 判示第2及び第4の各罪につき懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重)
 未決勾留日数算入 刑法21条
 訴訟費用 刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)
 【量刑の理由】
 本件は、被告人が、共犯者である知人男性と共謀の上、当時11歳であった実の娘に対して強制わいせつに及び、同機会に児童ポルノを製造し、さらに、その約1年8か月後に、当時13歳であった同人に対して監護者わいせつに及び、同機会に児童ポルノを製造したという事案である。
 被告人は、本来、母親として、若年で判断能力が未熟である被害者を監護・養育すべき立場にありながら、共犯者からの求めに応じて、2回にわたり、被害者に対して、コーヒー牛乳に覚醒剤を混入させたものを飲ませるなどした上、強度のわいせつ行為に及び、その状況等の動画撮影までしたものであって、被害者の人格を蹂躙する卑劣極まりない犯行というほかない。被告人は、母親としての影響力を利用して、被害者が嫌がる様子を示しても、わいせつ行為をやめることなく、むしろ被害者の腕を掴んで共犯者の陰茎を触らせたり、被害者をなだめたりするなどして犯行に積極的に関与しており、被告人が重要な役割を果たしたことは明らかである。信頼を寄せていたであろう母親から被害を受けた被害者の精神的、肉体的苦痛が甚大であることは想像に難くなく、将来の健全な成長に対する悪影響も強く懸念され、犯行結果は重大である。弁護人は、被告人は共犯者に脅される等して犯行に及んだ等主張するが、関係証拠によれば、被告人は、好意を寄せていた共犯者との関係を継続したいがために同人の指示や要求に従っていたにすぎないと認められるのであって、動機、経緯に酌むべき事情は見当たらない。以上によれば、被告人の刑事責任は重大であるといわなければならず、被告人に対しては、実刑をもって臨むほかない。
 もっとも、被告人が事実を認めて反省の言葉を述べていること、被告人に前科前歴がないこと、被告人の子ら(被害者のきょうだいでもある。)が被告人の社会復帰を必要としていることなど、被告人にとって酌むべき事情もあるので、これらの事情も考慮した上で、主文の刑を量定した。
 (求刑 懲役4年6月)
 令和4年12月2日
 大津地方裁判所刑事部
 (裁判官 大嶋真理子)