立法事実が怪しいと思う。
刑法の準強制わいせつ罪及び準強制性交等罪について
改正前刑法では, 178条において準強制わいせつ罪及び準強姦罪を規定しており, まず, 1項において、
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて, わいせつな行為をした者は,第176条の例による。
とされており,同条2項において,
女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて,姦淫した者は,前条の例による。
とされていた。
これが平成29年の刑法改正により,準強制わいせつ罪を規定する1項については特に変更はなかったが, 2項は準強制性交等罪として
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて,性交等をした者は,前条の例による。
と改められ, 「女子」に限定されていたものが「人」とされることによって男性も含まれることになり,その行為態様についても,「性交等をした」に改められたものである。その理由等は,強制性交等罪で述べたのと同様である(本誌前号78頁以下参照)。
この準強制わいせつ罪及び準強制性交等罪は,暴行又は脅迫を手段として用いることなく,それ以外の方法で心神喪失や抗拒不能にさせたり,既にそのような状態になっていることを利用したりして, わいせつ行為や性交等に及んだ場合に成立する。 したがって,男性がそのような状態になってわいせつ行為の被害者になることはあり得るものの,心神喪失等に陥っている男性と性交等をなし得るのかは,やや想定し難いものがあろう