鹿児島地方裁判所判決
主 文
被告人を懲役8年に処する。
未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
理 由
(犯行に至る経緯)
被告人は,知人である被害者に無断で被害者宅の合鍵を作成していたところ,平成22年12月17日昼ころ,被害者宅で被害者を無理やり姦淫しようと考えた。そこで,被告人は,そのころ,犯行状況を録画し口止めにも利用するためビデオカメラを用意し,また,性玩具販売店,ドラッグストア及びホームセンターで犯行道具を買い揃え,被害者宅に向かった。
(犯罪事実)
被告人は,同日午後6時20分ころ,被害者を強姦するため,上記の合鍵を用いて鹿児島県内の被害者方に玄関ドアから侵入し,同日午後7時10分ころ,帰宅した被害者に対し,背後からその顔と頭を手で押さえつけるなどしてうつぶせに押し倒し,「静かにしろ。」などと言って両手でその首を絞めた上,その口,両目,両手首及び両足首にガムテープを巻き付けて縛り,その首にカッターナイフを押し当てて「暴れたら刺す。」と言うなどの暴行脅迫を加えて被害者を抵抗できない状態にし,そのころから同日午後11時45分ころまでの間,被害者に対し,ビデオカメラで撮影しながら,2回にわたって無理矢理姦淫していずれも膣内に射精し,その際,上記暴行により,被害者に加療約7日間を要する右前腕・胸部・口唇擦過傷,右口角腫脹,右上腕皮下出血の傷害を負わせた。
(証拠)
省略
(法令の適用)
省略
(量刑の理由)
本件犯行は,その時間,姦淫回数,態様,いずれの点においても通常想定される強姦以上に被害者の性的自由を侵害した恥辱的なものというほかなく,非常に卑劣で悪質である。また,完全に被害者の抵抗を奪った暴行脅迫の程度は強い。このように,本件犯行態様が通常想定される強姦を超えたものであったことから,被害者が受けた恐怖や恥辱感などの精神的苦痛も非常に大きなものになっている。また,犯行の計画性は高く,犯人が自分であると発覚しないようにしながら犯行をやり遂げようとする強固な意思も認められる。
他方,被告人に前科はなく,長年社会人,家庭人として真面目に生活してきたのであり,本件犯行の数か月前に1回女性を盗撮したことがうかがわれることを考慮してもなお,性犯罪の傾向が根深いとまでは認められない。また,被告人は,本件犯行の発覚によってそれまで築いてきた仕事や家庭をすべて失っているところ,刑事手続を経る中で被害者に多大な苦痛を味あわせてしまったことを理解し,反省を深めつつあり,再犯のおそれはそれほど認められない。
そこで,以上の事情を中心とする被告人のために有利,不利な諸事情を総合的に考慮して評議を尽くした結果,被告人を懲役8年に処するのが相当であるとの結論に至った。
(求刑 懲役15年)
平成23年7月7日
鹿児島地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 中牟田博章
裁判官 安永武央
裁判官 田中いゑ奈