児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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強姦致傷被告事件(姦淫なし 示談 前科なし)懲役3年執行猶予5年(長野地裁松本支部h24.4.19)

強姦致傷被告事件
長野地方裁判所松本支部平成24年4月19日判決
被告人を懲役3年に処する。
この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。
       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,平成23年10月31日午前2時15分ころから,友人のY並びに同人とその数時間前にナンパしたA(当時17歳)及びBと4人で,後記カラオケ店である長野県飯田市<以下略>所在のa株式会社b営業所×××号室においてカラオケに興じ、その際,カラオケの採点ゲームの罰ゲームとしてテキーラを飲むなどしていたところ,前記Yがいやがる前記Bに対してわいせつ行為を始めたことに触発され,前記Aを強いて姦淫しようと企て,同日午前6時ころから同日午前6時45分ころまでの間,同室内において,同人に対し,断続的に,いきなりその身体に覆い被さったり,乳房を揉んだり,下着の中に手を差入れて陰部に指を挿入するなどの暴行を加え,その反抗を抑圧して,同人を強いて姦淫しようとしたが,同人が抵抗したことなどから,その目的を遂げず,その際,前記暴行により,同人に全治約3日間を要する右大腿打撲の傷害を負わせたものである。
(証拠)《略》
 なお,被告人は,わいせつ行為を開始した当初は姦淫行為に及ぶ意図はなかった旨述べるが,被告人が現実に行ったわいせつ行為の態様,わいせつ行為に至った経緯及び被告人が当公判廷で「自分の欲望のまま行動した」旨述べていることなどからして,「何がなんでも強姦してやろう」という強度のものではないにせよ,当初から強姦の犯意があったものと認める。 
(法令の適用)
罰条 刑法181条2項(179条,177条前段)
刑種の選択 有期懲役刑
酌量減軽 刑法66条,71条,68条3号
執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
1 被告人に対する刑を決するに当たって重視すべき犯罪行為に関する事情は概ね上記罪となるべき事実記載のとおりであるが,必死に抵抗する被害者に対して,長時間にわたって,執拗に強度なわいせつ行為を繰り返した点は,量刑上,特に重視すべきである。また,被害者に与えた肉体的・精神的苦痛が大きいこと,本件動機や経緯に酌量の余地のないことは勿論である(なお,被害者に軽率な行動は見られるものの,量刑には影響しない。)。
 そうすると,姦淫行為自体は未遂であること(なお,これは被告人の意思によって中止した結果とは評価しない。),また,傷害結果が比較的軽微なものにとどまっているといった事情を考慮しても,実刑をもって臨むことも十分考慮すべきである。
2 しかし,被告人は被害者に対して示談金として150万円を支払い,被害者も寛大な判決を希望する旨の意思を示している。被告人は身柄拘束を経るなどして,被告人なりに反省を深めつつある。実母が当公判廷で監督を誓約している。被告人には,その性格の未熟さもあって,他人や場の雰囲気に流されやすいとか,共感性に乏しいといった問題点が根本にあるが,矯正教育が必要不可欠であるというほど犯罪傾向が進んでいるわけではない。
3 以上が,当裁判所が本件において量刑上考慮すべきと判断した事情とその評議結果である。これに,従来の量刑傾向も踏まえ,被告人に対し,酌量減軽した上刑を量定し,今回に限り社会内で更生する機会を与えることとする。
 よって,主文のとおり判決する。
(公判出席検察官 西本晃,吉田利広,谷口宗誠)
(私選弁護人 原正治(主任),同酒井信治)
(求刑 懲役5年)
平成24年4月19日
長野地方裁判所松本支部
裁判長裁判官 二宮信吾 裁判官 佐藤由紀 裁判官 菱川孝之