児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童と交際している場合の児童ポルノ製造罪

 青少年条例違反の真剣交際と同じです。
 森山野田は違法性阻却だと説明しますが、青少年条例の真剣交際の判例を引っ張ってきて構成要件に該当しないと主張すべきです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160802-00000056-asahi-soci
児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)の疑いで逮捕し、発表した。「間違いありません」と容疑を認めているという。
 少年課によると、容疑者は4月中旬と6月中旬、静岡県東部在住の10代女性の自宅で、女性が18歳未満と知りながらみだらな行為をし、その様子を携帯電話の動画機能で撮影した疑いがある。女性の知人からの通報で発覚した。容疑者は女性について「旅行先で知り合い、交際していた」などと話しているという。
 警視庁の滝沢幹滋・警務部参事官は「捜査結果を踏まえ、厳正に対処する」とのコメントを発表した。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」
P99
第7 条第3 項の罪は、児童に第2 条第3 唄各号に掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写して当該児童に係る児童ポルノを製造する行為について、描与される児童の尊厳を害することにかんがみ、新たに処罰の対象とするものです。
この場合において、たとえ描写される児童が当該製造について同意していたとしても、当該児童の尊厳が害されていることは否定できず、また、児童を性的行為の対象とする風潮が助長され、抽象的一般的な児童の人格権が害されるといえますので、第7 条第3 項の罪が成立します。
もっとも、ごくごく例外的に児童と真撃な交際をしている者が、児童の承諾のもとでその楳体の写真を撮影する等、児童の承諾があり、かつこの承諾が社会的にみて相当であると認められる場合には、違法性が阻却、犯罪が成立しない場合もあり得ます

P197
Q47 児童ポルノの製造については、どのような場合が処罰されるのですか。
A
児童ポルノの製造については、2 つの面から処罰の規定を置いています。
まずーっ目は、児童に児童ポルノの姿態をとらせ、これを写真撮影等して児童ポルノを製造する行為についてです。この場合、行為者がどのような目的であっても(他人に提供等する日的がなくても)、処罰されることになります(第7 条第3 項)。
このような行為は、当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず、かつ、流通の危険性を創出する点でも非難に値するので、2004 年の改正で、このような行為について処罰する風定を新設しました。
これは、児童に第2 条第3項各号に掲げる姿態をとらせた上、これを写真等に描写し、よって当該児童についての児童ポルノを製造する行為が、児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為に他ならないことから、これを処罰するものであり、第一次的には描写対象となる児童の人格権を守ろうとするものです。
加えて、ひとたび児童ポルノが製造された場合には、流通の可能性が新たに生ずることとなり、このような場合には児童を性的行為の対象とする社会的風潮が助長されることになるので、このような意味において、抽象的一般的な児童の人格権もその保護の対象とするものです。
なお、ここにいう「姿態をとらせ」 とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しません
P199
Q48
被写体となる児童が児童ポルノの製造に同意していたとしでも、第7 条第3 項の罪は成立するのですか。目的を問わず、児童ポルノの製造(いわゆる単純製造)を処罰することにすると、交際中の高校生どうしが相手の裸体の写真を撮影する行為まで処罰されることになってしまいませんか。
A
第7 条第3 項の罪は、児童に第2 条第3 項各号に規定する姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写してその児童についての児童ポルノを製造する行為について、その児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず、かつ、流通の危険性を創出する点でも非難に値するので、新たに処罰の対象とするものです。
この場合において、たとえ捕写される児童がその製造について同意していたとしても、その児童の尊厳が害されているといえますし、そもそも、この児童の同意は、この児童の判断能力が未成熟なことに基づくものであると考えられますので、当罰性が認められ、第7 条第3項の罪が成立すると解されます。
お示しの事例のように、児童が、真撃な交際をする相手による写真撮影を承諾する場合のように、製造者と描写される児童との関係、描写される児童の承諾の有無及びその経緯(社会的相当性)等から、刑法上の違法性が認められない等の理由により、犯罪が成立しない場合もあると考えられます。
このことは、法案の中で具体的な文言として明記されているものではありませんが、刑法の一般理論によって犯罪が成立しないとされる問題です。つまり、児童ポルノに限らず他の刑罰規定に関して犯罪が成立しない事由を具体的な文言として明記されていなくても、刑法の一般理論によって犯罪が成立しない場合があります。この点、犯罪が成立しない個々具体的な場合を明記することは困難であり、また実際的でもありません。したがって、ことさら犯罪が成立しない場合を明記しなくても、刑法上の違法性が認められない等との理由により犯罪が成立しないとの解釈が当然に導かれると考えています。