児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害児童自身が撮影する行為

 ときどきあるんですよ。
 こういうのも、擬律を固めておかなければならない。それを前提にして被告人の責任が決まるのだから当然。

 自発的に撮影する場合、「姿態とらせて」がないから3項製造罪(姿態とらせて製造)は成立しない。2項製造罪(特定少数)、5項製造罪(不特定多数)は成立しうる。 保護法益=個人的法益+社会的法益

 他者に指示されて撮影する場合、3項製造罪(姿態とらせて製造)、2項製造罪(特定少数)、5項製造罪(不特定多数)は成立しうる。
 被害者の承諾は、違法性阻却しない。
 「姿態とらせて」身分犯説によれば、真正身分犯として刑法65条1項なんでしょうか?>最高裁殿。
 名古屋高裁金沢支部h17.6.9は被害児童が共犯になる可能性を否定していない。自分で撮るとか、販売担当するとか、利益の分配を受けるとかの事情があれば、共犯ですよね。

名古屋高裁金沢支部h17.6.9
第3控訴趣意中,法令適用の誤り等の論旨について(控訴理由第1ないし第3,第6,第8ないし第10,第14)
(3)所論は,本件においては,被害児童が児童ポルノ製造に積極的に関与しており,共犯者であるのに,撮影者である被告人のみを処罰するのは不公平であり,憲法14条に違反するとする。しかし,本条の立法趣旨が,他人に提供する目的のない児童ポルノの製造でも,児童に児童ポルノに該当する姿態をとらせ,これを写真撮影等して児童ポルノを製造する行為については,当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず,かつ,流通の危険性を創出する点でも非難に値するというものであることからすると,児童は基本的には被害者と考えるべきである。そして,記録を検討しても,本件の被害児童が共犯者に当たるとすべきほどの事情は窺えず,また,被告人を処罰することが不公平で,憲法14条に違反するとも認められない。
2被害者の承諾による違法性が阻却されるとの所論について(控訴理由第6)
所論は,原判示第2の2の児童ポルノ製造罪について,被害児童の実勢な承諾・積極的関与があり,違法性を阻却するのに,児童ポルノ製造罪を認定したのは法令適用の誤りであるとする。しかし,法7条3項は,児童に法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真等に描写することにより児童ポルノを製造した者を罰する旨規定しており,その文言からしても,強制的に上記姿態をとらせることは要せず,被害児童が上記姿態をとること等に同意している場合を予定していると解されるし,上記の態様によって児童ポルノを製造することが,当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならないとして児童ポルノ製造罪が創設された趣旨からしても,被害児童の同意によって,違法性が阻却されるとは解されない。また,記録を検討しても,被害児童に,違法性を阻却するほどの真筆な承諾,積極的関与があったとも認められない。