児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

京都新聞「大人の条件 20→18歳 第4部 ガールズ・デイズ Hello baby(1) 宿った命 高3オメデタ 祝ってね」

 この京都新聞朝刊記事の「体育実技求めた」「休学させた」という部分に各社が反応したようです。
 青少年の性行為は「青少年淫行罪」として禁止することしか考えてなくて、条例に違反しない行為で妊娠した場合については空白でした。

青少年の健全な育成に関する条例
(淫いん行及びわいせつ行為の禁止)
第21条 何人も、青少年に対し、金品その他財産上の利益若しくは職務を供与し、若しくはそれらの供与を約束することにより、又は精神的、知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて、淫いん行又はわいせつ行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、淫いん行又はわいせつ行為を教え、又は見せてはならない。
(場所の提供又は周旋の禁止)
第22条 何人も、次の各号に掲げる行為が青少年によつて行われ、又はこれらの行為が青少年に対して行われることを知つて、場所を提供し、又は周旋してはならない。
(1) 淫いん行又はわいせつ行為
(2) と博
(3) 暴行又は脅迫
(4) 麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の使用
(5) トルエン又は酢酸エチル、トルエン若しくはメタノールを含有するシンナー、接着剤若しくは塗料の不健全な使用
(6) 催眠、鎮痛又は鎮がいの作用を有する医薬品の不健全な使用
(7) 飲酒又は喫煙

◎大人の条件 20→18歳 第4部 ガールズ・デイズ Hello baby(1) 宿った命 高3オメデタ 祝ってね〓
2016.06.15 朝刊 1頁 本版 (全1,333字) 
 中は紙切れが1枚。昨年12月、京都市の自宅に封筒が届いた。白紙の休学届だった。3年のミユさん(18)=仮名=は高校の仕打ちに驚いた。当時、妊娠6カ月。4歳上の交際相手と話し合い、産むことに決めていた。
 ≪サヨウナラ18の夏よ…≫とツイッターにつぶやいた、高校最後の夏休み。海辺で友達とはしゃぎ、駆け抜けたまぶしい日々。夏の終わり、妊娠に気付いた。
 2学期、養護教諭に打ち明けた。助言は「もし堕ろすなら早く決めないと」。「転倒したら危ない」との理由で、教職員で情報が共有された。
 「みんなと一緒に卒業したいです」と学校側に伝えた。≪息止めたらおなかちょっとだけ動いてる≫≪ママ大好きって言われたい≫
 クラスメートに打ち明けると、「一緒に卒業しよな」と励まされた。区役所でもらった母子手帳。≪明日の検診楽しみすぎる≫。胎児は順調で、担任も廊下ですれ違うと「体調はどうや」と気遣ってくれていた。
 そこに届いた高校からの休学届。「妊娠しただけで犯罪とか悪いことをしたわけじゃないのに」。母(49)は「高校は評判が落ちるのを恐れているのかな。この子は何を言われても貫き通す。世間を敵に回しても、私だけでも応援したい」。そう思った。

 クリスマスイブ、四者面談があった。教頭は「今は学業ではなく赤ちゃんを考えるべき」と休学を勧める。担任は「卒業させてあげたい気持ちと、安全に産むことを優先してほしい気持ちと半々。何かあった時に後悔しても後戻りできない」と葛藤していた。

 「友達と卒業したい」。ミユさんは繰り返した。母は「娘の気持ちを尊重したい。責任はこちらで取ります」と伝えた。穏やかな雰囲気で、その場で結論は出なかった。

 年が明け、新学期を翌日に控えた夜。副校長から母に電話があった。「お嬢さんはどういうつもりか知りませんが、無理して学校に来ても卒業できません」。体育の成績「1」が理由という。2学期の体育は体がだるく、見学が多かった。3月までに補習が必要で、「体育は補習も実技です」。よく考えてください。そう念を押された。

 ミユさんは体育の補習を受けた先輩の言葉を思い出した。「グラウンド30周、筋トレ1時間、シュート100本」。気分がすぐれない日が続く。「ベイビーちゃんがいるのに実技はやばい。2月にはもっとしんどくなっているはず」。4月が出産予定日。おなかの赤ちゃんの命が最優先、もちろん。でもどうして休学しなくてはいけないの。どうして、友達と一緒に卒業できないの?

 「実技以外でも補習はできるんじゃないかしら」。母は妊娠した生徒を通わせないようにする学校の態度のかたくなさ、周囲や世間の無理解に落ち込んだ。「元気出せ!」。逆にミユさんが明るく声をかけた。

 18歳は未成年だが、女性のみ16歳から婚姻で民法上の成年となる。社会制度上も少女から大人の女性への階段はぐらぐら揺らぐ。恋をして産むとき、女性には教育や仕事との選択、婚姻や家制度の重みがのしかかる。10代少女の目を通して、子育てを巡る大人社会の矛盾や課題を描く。(24面に関連記事)=5回掲載、2回目からは第2社会面に掲載予定です
注)見出しの〓はハートマーク
【写真説明】
高校3年。妊娠は順調でおなかが目立ってきた
京都新聞社

◎大人の条件 20→18歳 第4部 妊娠生徒に体育要求 出産か 学業か 迫られる二者択一 朱雀高 文科省、対応を批判
2016.06.15 朝刊 24頁 本版 (全1,424字) 
 京都府立朱雀高(京都市中京区)が1月、妊娠7カ月の3年女子生徒(18)に対し、卒業の条件として体育の実技をするよう求めていたことが分かった。保護者や本人の意向に反し、一方的に休学届も送りつけていた。学業か出産かの二者択一を迫る学校の対応に、文部科学省は「妊娠と学業は両立できる。本人が学業継続を望む場合、受け止めるべき。子育てに専念すべきとなぜ判断したか分からない。周囲の協力を得ながら育児するのは働く女性も高校生も変わらない」と批判している。

 2014年に出産した18歳は府内72人、滋賀県内37人。仕事と育児、仕事と介護など、政治は「両立できる社会」や少子化対策をうたうが、学業と出産の両立はめったに言及されない。

 厚生労働省の「健やか親子21検討会」は2000年、「妊娠・出産により教育機会が妨げられないよう取り組む」との報告書を公表。識者から、性教育が妊娠予防に重点を置く弊害で初診の遅れや孤立を招いており、「産み育てるための性教育」への転換が必要との声もある。

 10代の妊娠に詳しい大阪府立大の大川聡子准教授(地域看護学)は「問題の背景は国や自治体のガイドラインがなく、各学校の対応に委ねられていること」とした上で、「妊娠した生徒の今後の可能性を広げるためにも、本人の学業継続への意向を踏まえ、本人に合った学ぶ環境を整えることが教育機関の役割だ。(そうでないと)『妊娠したら学業を続けられない』というメッセージにつながりかねない」と懸念する。

 スポーツ庁学校体育室は「体育の評価は実技だけではない」と、実技にこだわる朱雀高は認識不足と指摘する。学習指導要領にある評価の観点は運動技能含め知識や意欲など4点で、「妊娠や障害など考慮すべき一つ一つのケースを明記せずとも、現行の記述で生徒の人権に配慮した授業は行える。学習指導要領の趣旨が現場に周知されていないのなら残念」とした。

 女子生徒のかかりつけ医だった産科医は「妊娠すると腹部の痛みや出血、しんどい日も出てくる。妊婦に体育実技を要求するのは酷すぎる」と指摘。「学業には生徒の人生がかかっている。激しいスポーツは無理でも、見学やリポート提出など軽減措置を取れないのか。教諭には第二の親になってもらいたい」と柔軟な対応を求めている。

副校長「育児専念すべき。卒業するのは甘い」 府内高校、分かれる対応

 朱雀高の副校長(59)は京都新聞の取材に、「妊娠は本校が定める『特別な事情』ではない。体育の補習は実技しかなく、妊娠していても持久走などハードなことをやる必要があった」と語った。

 朱雀高では病気、生理を「特別な事情」と位置付け、体育を見学しても成績面で配慮している。妊娠を「特別な事情」に含めない理由について、副校長は「生徒の妊娠は今の社会の中でマイナスイメージがかなり強い。朝から夕方まで学業に取り組む全日制の趣旨にふさわしくなく、これは府民の要請だ」とした。

 その上で「妊娠すると子育てに専念すべきで、卒業するというのは甘い」との見解を示した。

 府教委によると、妊娠生徒への対応は各高校に任せている。府立高に30年以上勤務した元養護教諭(58)は「(妊娠した生徒の)体調を配慮し、体育を見学する代わりにリポート提出を求めていた」と振り返る。府立高でも対応が分かれており、「教育の機会均等」が保たれていないとの指摘もある。
【写真説明】
京都府内の20歳までに出産した母親の数(2014年)
京都新聞社

http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20160615000155
妊娠生徒に体育実技要求 京都の高校に批判殺到、対応見直しへ
 京都府立朱雀高(京都市中京区)が1月、妊娠7カ月の3年女子生徒(18)に対し、卒業の条件として体育の実技をするよう求めていたことが分かった。保護者や本人の意向に反し、一方的に休学届も送りつけていた。学業か出産かの二者択一を迫る学校の対応に、文部科学省は「妊娠と学業は両立できる。本人が学業継続を望む場合、受け止めるべき。子育てに専念すべきとなぜ判断したか分からない。周囲の協力を得ながら育児するのは働く女性も高校生も変わらない」と批判している。

 これに対し同高は15日、「学校の認識にかなり古い部分があった。見直さないといけない」として、今後、妊娠生徒への対応を改める意向を示した。

 副校長は4月、妊娠生徒に体育実技をするよう求めた理由について、取材に「妊娠すると子育てに専念すべきで、卒業するというのは甘い」「全日制では妊娠した生徒は学業から離れないといけない。府民の要請がある」などと説明。補習の実技として「持久走などハードなこと」を例示した。

 副校長の見解に対し、同高に苦情や問い合わせの電話が相次いでいるという。

 生徒は同級生と一緒に卒業することを希望していたが、休学届を学校側から渡され、休学している。

 また副校長は同日、「(妊婦にとって)学校が一つの壁だったのは認めざるを得ない。妊娠がマイナスイメージであってはならず、今後、改めないといけない」と述べた。

 京都府教育委員会高校教育課は15日、「高校には、それぞれの生徒の状況に応じて配慮するようにと繰り返し言っている。妊娠も、病気やけがと同様に配慮が必要」との見解を示した。妊娠した生徒の体育授業について「実技ではなく、リポート提出や軽微な体操で配慮できる」としている。

 スポーツ庁学校体育室は「体育の評価は実技だけではない」と、実技にこだわる朱雀高は認識不足と指摘する。学習指導要領にある評価の観点は運動技能含め知識や意欲など4点で、「妊娠や障害など考慮すべき一つ一つのケースを明記せずとも、現行の記述で生徒の人権に配慮した授業は行える。学習指導要領の趣旨が現場に周知されていないのなら残念」とした。

【 2016年06月15日 23時09分 】