児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

FC2創業者弟ら逮捕ーー動画サイト「運営者」も生配信の「共同正犯」になるのか?

 判例のホットさとしては、サーバーが(わいせつ規制が弱い国の)外国法人の場合に、その国から流せば適法であって、日本刑法も適用されないのに、それに日本人が加担するとどうして日本刑法が適用されるのかという国外犯の問題の方が興味深い。

 共謀共同正犯かどうかを聞かれても、共謀があればそうだし、共謀がなければそうでないしとしか言えないわけだが、画像掲示板の投稿者と管理者の関係で、共謀肯定説と否定説の裁判例があったので紹介しておいた。

編集前の原稿
▼見出し
「FC2動画」創業者弟らが逮捕・なぜ「共犯」と言えるのか?
●奥村先生のコメント
 公然わいせつ罪(刑法174条)には国外犯規定(刑法2〜3条)が適用されませんので、外国のサーバーを用いて外国で(=実行行為が少しも日本国の領域で行われないで)公然わいせつ行為を行っても、日本刑法の公然わいせつ罪は適用されません。従って、今回の事件も、全く日本国外における行為として行われていれば、日本で処罰されることはありません。
 もっとも、共犯の場合は、実行行為者の犯罪地が共犯者全員の犯罪地となると解されています(幇助につき最決H6.12.9)ので、共謀関係があることを前提とすれば、共謀共同正犯の1人が国内で公然わいせつ行為を行えば、共犯者全員(アメリカ法人の関係者も含む)に国内犯として公然わいせつ罪を適用することができます。(実際に外国にいる者に対して日本警察が捜査を行い、日本で裁けるかというのは別問題です。)
 参考までに、わいせつ電磁的記録記録等送信頒布罪について、国内のダウンロード販売業者と外国のサーバー管理者との間に共謀共同正犯を認めた判例(最決H26.11.25)が出ており、インターネット時代に対応して解釈が変わってきています。

 なお、報道によると、国内からわいせつ行為を生中継した者との共謀共同正犯の容疑で逮捕されたとうかがえますが、違法画像の投稿者と管理者の間に共謀共同正犯が成立するかは事実関係にもよりますが極めて微妙な問題です。
 裁判例にも、名誉毀損罪について「本件画像を投稿した者において,本件掲示板を開設・管理する者が画像の投稿を呼びかけていることを認識しつつ, これに呼応して本件各犯行を敢行したもので、あったことからすると, そこに共同正犯成立の前提となる意思の連絡ないし相互利用補充関係を肯定することも可能である。 したがって,被告人は,本件画像を投稿した者とともに,共同正犯の責任を負うものといわなければならない」とするもの(東京地裁H18.4.21)と、児童ポルノ公然陳列罪につき「被告人と各投稿者らとの間には,上記の内容の電子掲示板が開設されていることの認識と,これに対して投稿者らが児童ポルノを 送信して記憶蔵置させ,これがインターネットを通じて不特定の第三者に閲覧 可能であることを相互に認識していたにとどまり,具体的に相手の行為を利用 して各投稿者が送信蔵置させた児童ポルノを不特定の第三者に閲覧させること についての意思の連絡があったとは言い難い。」とするもの(名古屋地裁H18.1.16)があります。

http://www.bengo4.com/topics/3022/
FC2創業者弟ら逮捕ーー動画サイト「運営者」も生配信の「共同正犯」になるのか?
今回の事例では、サイトの運営者と動画の配信者が「共謀した」として逮捕されたようだが、一般的に、動画配信サイトの管理者と、そのサイトを利用して生中継をする人が、「共謀」していると言えるものなのだろうか。わいせつ問題にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。