児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

弁護士に聞いた!5分で分かる著作権―「Twitter」「鼻歌」の著作権は?ゴーストライターの著作権はどうなるの?

 にわかに信じがたいことですが、アディーレ法律事務所 岩沙好幸弁護士によれば「名乗り出なければ「依頼者が著作者」!」だそうです。
 権利の帰属の問題と、訴訟上の推定とがごっちゃになっています。

著作権法第14条(著作者の推定) 
著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。
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作花文雄「詳解著作権法第3版」P182
著作者となるのは著作物を「創作した者」である(第2条第l項第2号)。著作物を創作した者とは,当該著作物が具有する創作性を形成した者である。また,自己の思想・感情を様々な表現手段(文字,記号,形状,色彩, 音など)や表現手法を用いて客観的に表現するに際して, 当該表現に自己の個性を具現化した者が著作者であるとも言える。作家や画家など著作物を創作することを職業とする者だけではなく,著作物を創作した者は誰でも著作者となることができる。
著作物を創作した者でない者はたとえ当該著作物の創作に要する経費を全て負担したとしても,自らが著作者となることはできない(契約により著作権の譲渡を受けることは可能)。同様に,このような著作物を創作して欲しい旨を一般的,抽象的に指示しただけでは著作者となることはできない。
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著作者としての法的保護を受けるために,行政官庁への届け出等の一切の手続きは必要ない(無方式主義) 。当該著作物の著作者であることの証明については,第14条の規定により,著作者名の表示をしている者が著作者と推定されることとなっており,この規定により著作権に係る訴訟において,著作者についての挙証責任を相手方に転換することができる。相手方は当該者が真実の著作者でないことを立証すれば,当該推定は覆る。

加戸守行「著作権法逐条講義 六訂新版」
P142
まず本条は、著作者の推定規定でございまして、著作権訴訟における著作者としての挙証責任を著作者から相手方に転換した規定であります。一般に、訴訟を提起しますと、権利を侵害されたと主張する者が真実の著作者であるかどうかということは、その訴訟を提起した側で立証する必要があります。ところが、私が何月何日にどこでこの本を書きましたといっても、証拠が何もなければ、立証することは不可能に近いわけであります。そこで、例えば出版物に著者として名前が出ていれば、その人を著作者と推定し、著作者でないと主張する側が反対の立証をしなさいという規定が本条であります。


P144
本条で、「著作物の著作者と推定する」といいますのは、先程申したように訴訟法上の挙証責任の転換でありますから、相手方が反証を挙げなければ著作者名表示が法律上優位に立って真実と認められるということです。ただ、著作者であることの立証が難しい以上、著作者でないことの立証はより困難と考えられますから、推定が覆されるのは、よほどの場合に限られましょう。本条の場合には、二通りの法律効果がありまして、第1が民事上の訴訟、例えば著作権侵害を理由とする損害賠償請求訴訟の場合に、表示者が著作者として訴訟を提起すれば、原告適格が自動的に認められますし、逆に盗作を理由とする訴訟の場合には、盗作品に著作者名の表示がある者が被告適格を推定されるということになります。第2は、刑事上の告訴、例えば著作権侵害の告訴をする場合にも、被害者である告訴権者の推定についても本条の効力が及ぶということです。

http://news.ameba.jp/20140423-127/
某音楽家の件の影響でしょう、「ゴーストライター」に世間の注目が集まっています。楽曲だけでなく、小説など文筆業の世界でもゴーストライターは存在します。さて、このゴーストライター著作権はどのように考えればいいのでしょうか。アディーレ法律事務所 岩沙好幸弁護士にお話を伺いました。

■名乗り出なければ「依頼者が著作者」!

――そもそもゴーストライターは、著作権法上からはどういう存在になるのでしょうか?

岩沙弁護士 その作品をゴーストライターに依頼した者(以下、「依頼者」といいます)が、著作者であると表示されている場合は、著作権法第14条により、依頼者がその作品の著作者であることが推定されるので、依頼者が著作者となります。

ですので、ゴーストライターは、名乗り出ない限り、法律上、著作者とはなりません。

――なるほど。ゴーストライターが表に出ない限りは、依頼者が著作者なのですね。

岩沙弁護士 ただし、ゴーストライターが、自身が著作者であると主張した場合には、依頼者とゴーストライターのどちらが「実質的にその作品を創作したといえるか」で著作者が判断されます。

誤字、脱字の修正や、大まかなコンセプトを伝えるだけなど、依頼した側の創作への関与が希薄な場合、著作権法第14条の推定は覆り、法律上、ゴーストライターが著作者であると判断されるでしょう。