児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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淫行(青少年条例)の際の年齢確認義務についても、「最低限,戸籍謄本、住民票の写L.免許証等の公的文書を確認するか,児童本人の本籍地の役場に問い合わせる等することが必要である」となるのか?

 児童福祉法の年齢確認義務についても判例はありますが、青少年条例違反の判例は見当たりません。
 青少年条例でこんな義務があることがどれだけ認識されているのかは疑問ですが、そういう規定があるので、淫行する際には確認してください。

栗原雄一「児童買春の罪と青少年育成条例の関係について」研修 644号115頁
4 関連問題 年齢知情に関する規定について
以上のように解しても,青少年に対する対償の交付等を伴わない淫行行為については,青少年条例の淫行罪処罰規定が,年齢知情に関する規定を含めて,効力を維持していることになる。この年齢知情に関する規定は,やや特殊な規定であるため,以下若干検討することとしたい。
年齢知情に関する規定は,児童買春法9条や多くの青少年条例のほか,児童福祉法60条3項や風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律49条4項にも存在する。児童買春法や青少年条例に関しては,この規定が何を意味する規定であるかを明示的に論じた学説,裁判例が見当たらないが,児童福祉法60条3項の解釈については,学説及び判例の蓄積がある。この点については,以下の3説が主張されている。
その1は,故意犯である児童福祉法60条1項(児章に淫行させる罪)及び同条2項(児童の福祉を害する罪)の構成要件を修正し,年齢についての認識の点につき,過失犯を処罰すると同時に,無過失に関する挙証責任を被告人側に課した点で,挙証責任の転換規定でもあるとする説である(団藤重光・「刑法綱要総論三版」338等)。
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ところで,児童福祉法60条3項,児童賀春法9条は,年齢知情に関する規定の適用対象を「児童を使用する者」に限定している。 このよ うな限定が付される理由については,児童を使用しようとする者には児童の年齢に関する調査確認義務があると考えられるため,使用者が処罰を免れようとするときは,その使用者本人において,年齢の調査 確認の手段を尽くしたにもかかわらず,児童であることを知り得なかったことを主張立証すべき責任を負うのだと説明されている(小泉祐康I 注解特別刑法7 (第2版) 「児童福祉法」70等)。
そして, この義務を尽くしたというためには,最低限,戸籍謄本、住民票の写L.免許証等の公的文書を確認するか,児童本人の本籍地の役場に問い合わせる等することが必要であるとするのが裁判例の大勢である(福岡高判昭52,12. 26刑裁資料229.3 25,長崎家裁昭34. 12.10下刑集1,12, 2600)。
これに対し,青少年条例の年齢知情に関する規定については,適用対象を使用者に限定するものは見当たらない。そのため,形式的には,全ての行為者につき年齢の調査確認の手段を尽くしたことの挙証責任が課せられているようにみえる。 しかし,淫行しようとする者は当然にその相手方の年齢を調査確認すべき義務があるといえるかどうかは微妙である。
したがって,実務的には,年齢知情に関する規定の適用を前提として,淫行罪により処罰しようとする場合には,「使用者性」に匹敵する事情を別途立証するのが相当であるろう。すなわち,当該青少年と知り合った経緯,当該青少年の体格,服装,言葉遣い等から,当該行為者において,当該青少年が18歳未満ではないかとの疑いを持ち得る客観的状況があったことを示す証拠を収集しておくべきこととなる。
法務総合研究所教官)