児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

福田正信「出会い系サイト規制法」に係る法的論点等に関する若干の考察 講座警察法第2巻P588

 非出会い系サイトに拡大することを一応検討しているようです。

(3)六条各号列記部分では、「児童」という規定があるが、当該規定は、「サイトの文面上の表記が、『児童』である」ことを意味し、各号列記以外の部分に「何人も」とある通り、その者が現実に「児童」であることを要しない。例えば、非児童(大人)がそのことを秘して、「サイトの文面上」、「児童」としての自分との「性交等の相手方となるよう誘引」する行為は、現行法六条二号に掲げる行為に該当する。
また、児童が「児童である」ことを秘して、「サイトの文面上」、「非児童」としての自分との「性交等の相手方となるよう誘引」する行為を行っても、同号違反の罪(一六条)は成立しない。これは、法六条に規定する行為が禁止される理由が、同条各号に掲げる行為は、出会い系サイト上の「児童を誘引する」書き込みを見た不特定多数の児童がこれに応じて連絡したり、又はこれを真似して同様の書き込みを行ったりするおそれがあるという点において、児童一般に児童買春等の犯罪被害遭遇の危険を及ぼす行為であるということにあり、したがって、児童としての書き込みがあるか否かが決定的だからである。
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不正誘因罪と児童買春罪との関係
出会い系サイト規制法は、児童買春の予備的行為を処罰することで、より児童の保護を厚くする規定としての意味があると考えるのが素直であろう。」との見解がある。この見解によれば、不正誘引罪の非児童(大人)処罰規定は、児童買春罪の予備罪ということになるが(注13)、そのように解すべきであろうか。
ただ、これを肯定すると、児童の買春行為を処罰しているのは児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春法」という。) であり、児童買春法と本法とは法目的を異にしているにもかかわらず、児童の買春行為の予備的行為を本法により処罰することになるので、不自然と思われる。
この点については、予備罪は一般に目的犯とされているところ、不正誘引罪は条文上「目的」が構成要件とされていないので、「目的犯」でないことは明らかである。また、前述のとおり、不正誘引罪の趣旨は、個々の児童ではなく児童一般に犯罪被害を及ぼす危険な行為の処罰であり、児童買春罪の実行行為の前段階行為の処罰ではない。
よって、不正誘引罪の非児童(大人)処罰規定は、児童買春罪の予備罪ではないと思われる
注13)このような見解の帰結は、実務上重要な罪数処理の際に顕在化する。すなわち、大人が、不正誘引罪を行った後、当該誘引行為に係る児童に対して児童買春罪を行った場合、前者が後者に吸収されて児童売春罪一罪のみが成立することになり、再逮捕の可否、一事不再理効の範囲等の場面で影響を及ぼすことになるυ
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非出会い系サイトの規制の可否
出会い系サイトではないが、当該サイトの利用に起因した児童の犯罪被害が相当程度発生しているサイト事業者に対する規制については、本法の改正時の検討会において議論がなされたものの、当時は、総数で、出会い系サイトによる犯罪被害児童数のほうが、非出会い系サイトによるそれよりも大幅に多かったため、見送られた経緯がある。ただ、本法の改正及び本法施行規則の改正による児童でないことの確認方法(一一条)の厳格化により、平成20年以降は、総数で、非出会い系サイトによる犯罪被害児童数が出会い系サイトによるそれを上同っており、かつ、時を経るにつれ、その差が拡大している。
そこで、本法の構成を前提とした上で、本法の改正により、出会い系サイト事業以外のサイト事業を新たに規制対象に加えることが立法上可能か問題となる。
この点については、規制内容、当該サイトに起因した犯罪被害児童数の今後の状況(いわゆる立法事実)、非出会い系サイト事業の類型化如何等によるので一概には言えない。
ただ、本法が出会い系サイト事業を規制する実質的根拠が「児童に犯罪被害を及ぼす危険性」にあることからすると、ある類型のサイト事業につき定義上及び犯罪統計上同種の危険性を見いだしうるかが本法での規制対象としうるか否かのメルクマールになるものと思われる。