児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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刑法改正草案におけるわいせつ文書の罪

 改正前の児童ポルノ法(99年法)とそっくりというか、ネット時代なのにメール送信やファイル共有に対する罪名を設けなかった点で、児童ポルノに関する行為として、刑法改正草案の罪名を安易に借用した気がします。

法制審議会 改正刑法草案 附 同説明書 刑法改正資料 6 法務省 1974年
第二四七条(わいせつ文書の頒布等〉
?わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然展示した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
?前項の行為に供する目的で、わいせつな文書、図画その他の物を製造し、所持し、運搬し、輸入し、又は輸出した者も、前項と同じである。

P221
第二四七条(わいせつ文書の頒布等)
本条は、わいせつな文書、図画その他の物の頒布等の罪に関する規定であり、現行法第一七五条に相当するが、「猥褻刊行物ノ流布及取引ノ禁止ノ為ノ国際条約」(昭和一一年条約第三号〉の趣旨に従い、現行法で処罰の対象となっている「頒布」、「販売」 及び「公然展示」 のほか、「業として貸与」する行為を処罰するとともに(第一項〉、これらの行為に供する目的で行われる「製造」、「運搬」、「輸入」又は「輸出」についても新たに処罰規定を設け、さらに、「所持」については、販売の目的による場合だけでなく、頒布、業としての貸与又は公然展示の目的による場合をも処罰の対象に加えることとした(第二項)。このうち、所持その他の準備行為に関する第二項については、性的表現の自由もまた表現の自由の一部として尊重すべきであり、その自由化を図ることが世界的な傾向であることからみて、現行法どおり販売目的の所持を処罰するだけで十分であるとする意見もあったが(総会修正案71)、わいせつ物の頒布等について処罰規定を残す以上は、その内容を合理的なものとする必要があること、製造、運搬、輸入及び輸出は、販売等の前段階の行為として所持と同等に評価することができるだけでなく、現行法のもとでも所持にあたる場合が大部分であること、わいせつフィルムの所持について明らかなように、販売の目的で所持したか賃貸あるいは映写の目的で所持したかによってその可罰性を区別する合理的な根拠はないことなどから、準備行為に関する処罰の範囲をいくらか広げることとされた。
なお、芸術上又は科学上の作品について、一定の条件のもとに本条の適用を除外する趣旨の特例を設けるかどうかも検討されたが、他の著作物と明確に区別することが困難な場合もあること、わいせつ概念の解釈及び正当行為に関する総則の規定(第二二条)の適用によって認められる限度で不可罰とすれば足りることなどから、格別の規定は設けないこととされた。

第二四七条(わいせつ文書の頒布等)
?わいせつな文書、図画その他の物を煩布し、販売し、業として貸与し、又は公然展示した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
?前項の行為に供する目的で、わいせつな文書、図画その他の物を製造し、所持し、運搬し、輸入し、又は輸出した者も、前項と同じである。
本条は、わいせつな文書、図画その他の物の頒布等の罪に関する規定であり、現行法第一七五条に相当するが、「猥褻刊行物ノ流布及取引ノ禁止ノ為ノ国際条約」(昭和一一年条約第三号)の趣旨に従い、現行法で処罰の対象となっている「頒布」、「販売」及び「公然展示」のほか、「業として貸与」する行為を処罰するとともに(第一項〉、これらの行為に供する目的で行われる「製造」、「運搬」、「輸入」又は「輸出」についても新たに処罰規定を設け、さらに、「所持」については、販売の目的による場合だけでなく、頒布、業としての貸与又は公然展示の目的による場合をも処罰の対象に加えることとした(第二項)。このうち、所持その他の準備行為に関する第二項については、性的表現の自由もまた表現の自由の一部として尊重すべきであり、その自由化を図ることが世界的な傾向であることからみて、現行法どおり販売目的の所持を処罰するだけで十分であるとする意見もあったが(総会修正案71)、わいせつ物の頒布等について処罰規定を残す以上は、その内容を合理的なものとする必要があること、製造、運搬、輸入及び輸出は、販売等の前段階の行為として所持と同等に評価することができるだけでなく、現行法のもとでも所持にあたる場合が大部分であること、わいせつフィルムの所持について明らかなように、販売の目的で所持したか賃貸あるいは映写の目的で所持したかによってその可罰性を区別する合理的な根拠はないことなどから、準備行為に関する処罰の範囲をいくらか広げることとされた。
なお、芸術上又は科学上の作品について、一定の条件のもとに本条の適用を除外する趣旨の特例を設けるかどうかも検討されたが、他の著作物と明確に区別することが困難な場合もあること、わいせつ概念の解釈及び正当行為に関する総則の規定(第一三条)の適用によって認められる限度で不可罰とすれば足りることなどから、格別の規定は設けないこととされた。

刑法全面改正についての検討結果とその解説(昭和51年 法務省
P259
わいせつ文書の頒布等(第二四七条)
草案は、わいせつ文書の頒布、販売等に関して、基本的には現行法と同趣旨の規定を設けている(第二四七条)。すなわち、何を「わいせつ」と考えるかについては、判例による時代の流れに即した解釈の集積に期待するとともに、わいせつと判断される文書等については、現行法で処罰の対象となる行為のほかに、販売等の目的による製造、運搬、輸入、輸出等の行為についても処罰することとし、わいせつ文書等に対する規制の合理化を図っている。
この規定に対しては、ポルノ自由化の方向から、規制の全廃あるいは害悪を及ぼす程度が高い特定の場合に限った制限的な処罰を主張する意見がある。このような意見の基本的な考え方は、ポルノが有害であることにはなんらの根拠もないのにその頒布等を処罰するのは、それが倫理的に悪いという社会の一部の判断を一方的に押しつけ、個人の自由を不当に侵害するものであり、また、わいせつ文書の頒布等の行為も憲法の保障する表現の自由として十分尊重されなければならないという点にあるようである。
しかし、人の性欲をいたずらに刺激し、興奮させる性質をもつわいせつ文書等が社会にはんらんすることは、これを見たくない人の自由を侵害し、青少年の心身の健全な育成に悪い影響を及ぼし、性生活に関する秩序及び健全な風俗を害することになるのであるから、これを防止するためにわいせつ文書の頒布等の行為を処罰の対象とすることは、国民生活全体の利益に合致するものであって、一部の者の倫理観を他人に押しつけるわけではなく、また、表現の自由といえどもこのような公共の利益のために制約されるのはやむを得ないというべきである。総理府世論調査(昭和五〇年七月)によっても、ポルノ全面白由化に反対する人が六六パーセントに達しており、これはポルノの弊害に対する深刻な憂慮とこれに対する国民の健全な常識を示しているものと考えられる。
なお、草案は、現行法に比べて処罰の範囲をいくらか広げているが、わいせつ文書の頒布等及び販売目的の所持のほか、販売等の前段階の行為として所持と同等に−評価することができる製造、運搬、輸入及び輸出の行為を処罰することにより、わいせつ文書等の規制の合理化を図っているのであって、自己の楽しみのためにポルノを所持するなどの全くプライベートな行為を処罰の対象としていないことは、現行法と同じである。