児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

京都府児童ポルノの規制等に関する条例による心身に有害な影響を受けた児童に対する支援

 H11の法律で、関係行政機関(自治体も含む)に
  必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
  保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
という義務が科されていて、自治体にも「児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努める」とされていたのですが、京都府はH24になっても「保護者も含めて家族に対するサポートができる体制づくりを検討していく。」とか「個々のケースに応じたきめ細やかな支援体制の構築についても検討していく。」とか言っているわけで、結局、法律上の義務について、これまで何もやってなかったことを自白しています。法律とか条例だけ作ってもダメだと言うことです。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律 H11法律52号
第15条(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
1 関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
第16条(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」P121
(1)「関係行政機関」とは、本条に規定されている保護のための措置を講ずる機関をいいます。これには、国及び地方公共団体の行政機関が広く含まれます。具体的な例としては、犯罪被害にあった児童を最初に保護することが多い警察、児童福祉法で保護に関する権能が与えられている都道府県知事、福祉事務所長及び児童相談所長が挙げられます。

 逐条解説H24.9
(心身に有害な影響を受けた児童に対する支援)
第11条
1府は、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、関係機関と連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長し、生活することができるよう、相談体制の充実を図ること等により必要な支援を行うものとする。
2 府は、前項の支援のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、必要な支援を行うものとする。
【解説】
本条は、本条例第1条の目的を達成する上での「府の責務」のうち、被害児童の支:援について特別に規定したものである。:
子どもの時に受けた性的被害は、その子どもの将来や人生のあり方に深刻なダメージを与えるものであり、児童ポルノの被害をなくしていくという観点においても、最優先事項として被害に遭った児童の支援を充実させることが重要であることを明記したものである。
被害児童の支援に当たっては、児童ポルノ被害に関する相談については、被害者自身からなかなか言い出しにくい面があるので、身近な専門相談窓口を設置し、あらゆる機会をとらえて広く周知に努めるなど、気軽に相談しやすい環境をつくることが大切である。:
あわせて、相談に際して二次被害(被害後に周囲の言動によってさらに傷つけられてしまうこと)が生じることがないよう十分配慮するなど、安心して相談できる環境をつくることも大切である。
また、子どもは家族の一員であり、被害児童の支援においては、保護者も含めて家族に対するサポートができる体制も必要である。
【具体的な取組方策】
専門的な知識に基づく迅速かつ適切な支援(助言・指導・一時保護・施設入所など)が行えるようにするなど、相談体制の強化を図るとともに、保護者も含めて家族に対するサポートができる体制づくりを検討していく。
家族に対するサポートとは、例えば、「自分の子どもが児童ポルノ被害を受けたのは、自分が親としての責務を果たしていなかったから」等と自分を責めるケースも想定されることから、児童と同様、心に傷を負った家族に対しても助言・指導等のサポートを行おうとするもの。
また、保健所や市町村、警察、学校などの関係機関との相互の連携・協力により、家庭支援総合センターを中心に被害児童支援のためのネットワークを府域全体に拡げるとともに、(社)京都犯罪被害者支援センタ一等の民間支援団体との連携も強化し、個々のケースに応じたきめ細やかな支援体制の構築についても検討していく。