その趣旨にしては195万円は高すぎるということです。
慰謝料の総額は500万円で、195万円は履行済とされています。
よく被害者との交渉で、物的損害や慰謝料とは別の金員を請求されますが、趣旨がよく分かりませんし、どうせ「弁償」にほかならないのでザックリと「弁償金」「解決金」という名目にまとめてしまいます。
(2)原告の主張
受領した金員は,原告の両親の慰謝料及び刑事事件にかかる実費弁償・(原告の調べや実況見分の付き添い,原告の母親の調べ,学校との対応,弁護人との打合せの際に休暇を取らざるを得なかった)及び刑事事件としての弁護費用(事前相談,検察官・弁護人との交渉,記録謄写,示談案受諾についての相談,刑事事件の流れに説明・相談等の犯罪被害者対応活動)に充当するものであり,本訴の弁済には当たらないことを被告の刑事弁護人に確認した上で受領したものであり,原告の慰謝料として受領したものではない。
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当裁判所の判断
争点2について
(1)甲号証,乙号証及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被害児童に対する原告の不法行為について,児童福祉法違反として起訴され,平成25年4月9日,甲地方裁判所において懲役1年10月の有罪判決を受けたこと、被告は,原判決につき控訴したこと、被告は195万円を原告への弁償に充てることを希望し,被告の弁護人であるA弁護士へその旨伝え,その弁償金は受け取るが,その趣旨るために被害者の両親が仕事を休んだことにより発生した損害及び両親の慰謝料に対する弁償金とする旨合意したこと,同年5月18日,B弁護士の預り金口座へ195万円が振り込まれたこと,A弁護人は,同日付けの控訴趣意補充書(そこには,原告の被害弁償金として195万円を本件口座に振り込んだ等と記載されている。)及び同月5月1日付けの報告書(その中には,195万円は本件口座に保管されていること,弁護人が原告の母親に被害弁償金の受取り意思を確認したところ,同人は,刑事事件を傍聴するために仕事を休んだことの損害や,代理人の費用に充てたいという考えから,同年8月1日に195万円を受領するとの回答を受けた等と記載されている。)を作成し,乙高等裁判所甲支部に提出したこと,同裁判所は,同日,原判決を破棄し,懲役1年6月の判決を言い渡したが,その中で原判決後の事情として,195万を用意してこれを被害弁償金として原告に支払ったことが指摘されていることが認められる。
(2)上記認定によれば,被告が195万円を支払ったのは明らかに原告に対して行った起訴された事件を含む上記不法行為に対する被害(原告の精神的損害)を弁償する趣旨で195万円が原告の代理人でB弁護士が保有する本件口座を経由して,原告の親権者に支払われているのであるか195万円の支払は,原告に対する損害賠償請求権の損害の填補として認めるのが相当である。
この点,原告は,上記のとおり主張しA弁護士とB弁護士あるいは母親との間のやりとりにおいても,上記のような事実が認められる。
しかし,ある給付が,当該債権に対する弁済としてなされたか否かを決するのは,弁済に至る経過から推察される当事者特に弁済者の合理的な意思をもって決めるべきであると解されるところ,195万円が支払われた時点において被告が原告に対して,かなりの高額にわたる慰謝料を支払う義務があることは明白であったと解されるが,被告が,原告の両親に対し,原告が主張するような金員を損害として支払わなければならないのか,仮に支払う必要があるとしてその適正額はいくらであるかについて,客観的に明確になっていたとは言えず(仮にある程度算定可能であったとしても,少なくともにとって明らかになっていたとは認められない。),被告が,原告が主張するような目的で195万円もの金員を交付したとは考えられず,被告から195万円を上記認定の趣旨で受け取ったとしても,上記判断を左右するとは解されず,原告の主張は採用できない。