児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説(平成23年7月)における児童ポルノ関係の記載

東京都青少年の健全な育成に関する条例
http://www.reiki.metro.tokyo.」p/reiki_honbun/g1012150001.html
第三章 不健全な図書類等の販売等の規制
(図書類等の販売等及び興行の自主規制)
第七条 図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催する者及び興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条の興行場をいう。以下同じ。)を経営する者は、図書類又は映画等の内容が、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は観覧させないように努めなければならない。
一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
二 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
(平四条例一九・平一三条例三〇・平二二条例九七・一部改正)


第三章の三 児童ポルノ及び青少年を性欲の対象として扱う図書類等に係る責務
(平二二条例九七・追加・改称)
(児童ポルノの根絶等に向けた都の責務等)
第十八条の六の二 都は、事業者及び都民と連携し、児童ポルノ(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第二条第三項に規定する児童ポルノをいう。以下同じ。)を根絶するための環境の整備に努める責務を有する。
2 都民は、児童ポルノを根絶することについて理解を深め、その実現に向けた自主的な取組に努めるものとする。
3 都は、みだりに性欲の対象として扱われることにより、心身に有害な影響を受け自己の尊厳を傷つけられた青少年に対し、当該青少年がその受けた影響から回復し、自己の尊厳を保つて成長することができるよう、支援のための措置を適切に講ずるものとする。
(平二二条例九七・追加・一部改正)
(青少年を性欲の対象として扱う図書類等に係る保護者等の責務)
第十八条の六の三 保護者等は、児童ポルノ及び青少年のうち十三歳未満の者であつて衣服の全部若しくは一部を着けない状態又は水着若しくは下着のみを着けた状態(これらと同等とみなされる状態を含む。)にあるものの扇情的な姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性欲の対象として描写した図書類(児童ポルノに該当するものを除く。)又は映画等において青少年が性欲の対象として扱われることが青少年の心身に有害な影響を及ぼすことに留意し、青少年が児童ポルノ及び当該図書類又は映画等の対象とならないように適切な保護監督及び教育に努めなければならない。
2 事業者は、その事業活動に関し、青少年のうち十三歳未満の者が前項の図書類又は映画等の対象とならないように努めなければならない。
3 知事は、保護者又は事業者が青少年のうち十三歳未満の者に係る第一項の図書類又は映画等で著しく扇情的なものとして東京都規則で定める基準に該当するものを販売し、若しくは頒布し、又はこれを閲覧若しくは観覧に供したと認めるときは、当該保護者又は事業者に対し必要な指導又は助言をすることができる。
4 知事は、前項の指導又は助言を行うため必要と認めるときは、保護者及び事業者に対し説明又は資料の提出を求めることができる。
(平二二条例九七・追加)

東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説(平成23年7月)P28
〔平成22年改正の経緯〕
平成17年・平成19年の条例改正により、都は国に先駆けてフィルタリングの普及を進め、青少年がインターネットを安全に安心して利用できるよう、その利用環境の整備に取り組んできた。
しかし、メディア社会が広がる中で、青少年がインターネットや携帯電話を通じ青少年には好ましくない有害情報が氾濫し、青少年が犯罪やトラブルに巻き込まれ、被害者や加害者となる事態も頻発していた。
また、児童ポルノがインターネットを中心にまん延、氾濫しているほか、青少年を対象とする強姦や近親相姦等の悪質な性行為を不当に賛美・誇張するような漫画等を青少年が容易に購入することができる状況が見られた。
このような状況を踏まえ、第28期東京都青少年問題協議会において、青少年とインターネット・携帯電話等との適切な関係づくりを支援する具体的な方策や、児童を性の対象として扱うメディアの現状を改善するための方策等に関する答申が出され、青少年をめぐるこれらの課題に対し、条例改正を含めて都が的確にかつ迅速に対応していくことが求められた。
このような漫画等に関する区分陳列への取組を進めるに当たっては、従来と同様、関係業界の自主的な取組が重要である一方、平成16年度以降平成22年までに不健全指定された図書類の約半数が自主規制団体に属さないいわゆるアウトサイダーの出版社により発行されたものであり、このようなアウトサイダーについては、積極的な自主的取組が期待できないものであること、意図的に自主的取組を行わない出版社が放置されれば、自主的取組を行う出版社に対しでも不公平であることを考えれば、新たな基準に基づく区分陳列を徹底するためには、自主規制団体による自主規制だけでは十分ではなく、自主規制によっては区分陳列等をされないもののうち著しく悪質なものについては、行政の責任として不健全指定を行い、義務的に区分陳列させることができる仕組みが必要であると考えられた。
これらを踏まえた検討の結果、都は、平成22年第一回都議会定例会に、青少年の健全な性的判断能力の形成を妨げるおそれのある漫画等についての区分陳列を、実効性を持って推進しようとするため、自主規制や表示図書の基準に係る規定と不健全指定基準に係る規定の双方に新たな基準を追加する等の規定を含む「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」を上程したが、規定の文言の指すところが暖味である、実効性に欠ける等の懸念が示され、都議会総務委員会における継続審査を経て、第二回都議会定例会において同案は否決された。
こうしたことから、第一回・第二回都議会定例会等における議論及び改正内容を巡る各方面との意見交換等を踏まえ、主として3点について見直しを加え(※)、平成22年第四回都議会定例会にて再度条例改正案を上程し、平成22年12月15日可決、平成22年12月22日公布されることとなった。
なお、第四回都議会定例会における可決に際し、「第七条第二号及び第八条第一項第二号の規定の適用に当たっては、作品を創作した者が当該作品に表現した芸術性、社会性、学術性、詣諺的批判性等の趣旨を酌み取り、慎重に運用すること。
また、東京都青少年健全育成審議会の諮問に当たっては、新たな基準を追加した改正条例の趣旨に鑑み、検討時間の確保など適正な運用に努めること。」との付帯決議が付された。
施行期日は平成23年7月1日であるが、都の責務などを定めた一部の規定は平成23年1月1日又は同年4月1日とされた。
主な見直し
当初の上程案においては、悪質な性行為を賛美する漫画を子供が容易に手に取ることができる現状を改善するため、
○「非実在青少年」 (1 8 歳未満の登場人物)との悪質な性行為をみだりに肯定的に描写する漫画を区分陳列の対象に追加上記の漫画の「まん延の抑止」に関する都民等の責務を規定していたが、文言の趣旨が不明確である、「大人も読めなくなる」とのおそれを抱かせる等の懸念を踏まえ、第四回都議会定例会での上程に際しては、以下のとおりの修正・削除を行った。
○ 区分陳列の対象が、「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」又は「婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為」を、不当に賛美又は誇張する漫画等であることを明確に規定
○「まん延の抑止」関連規定については、削除
当初案では、児童ポルノの根絶に向けた都民の自主的取組を促進するため、「何人も児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する」と規定していたが、国の児童ポルノ法改正論議と相まって、様々な議論があったことなどから、「都民は、児童ポルノを根絶することについて理解を深め、その実現に向けた自主的な取組に努めるものとする。」との規定とした。
当初案では、インターネット回線・携帯電話を用いたインターネット利用に際し、インターネット上の有害情報による子供の被害の防止を図るため、フィルタリングにより制限すべき有害情報の考え方を示して事業者の責務を規定としていたが、いわゆる青少年インターネット環境整備法で定める「青少年有害情報」との関係が不明確である等の指摘を受け、 防止すべき子供の被害に着目して事業者の責務を規定することとした。

東京都青少年の健全な育成に関する条例施行規則
(指定図書類、指定映画等の基準)
第15条
条例第8条第1項第1号の東京都規則で定める基準は、次の各号に掲げる種別に応じ、当該各号に定めるものとする。
著しく性的感情を刺激するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ 全裸若しくは半裸又はこれらに近い状態の姿態を描写することにより、卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
ロ 性的行為を露骨に描写し、又は表現することにより、卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に卑わいな行為を擬似的に体験させるものであること。
ニ イからハまで、に掲げるもののほか、その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同程度に卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
二甚だしく残虐性を助長するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ暴力を不当に賛美するように表現しているものであること。
ロ残虐な殺人、傷害、暴行、処刑等の場面又は殺傷による肉体的苦痛若しくは言語等による精神的苦痛を刺激的に描写し、又は表現しているものであること。
ハ電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に残虐な行為を擬似的に体験させるものであること。
ニイからハまでに掲げるもののほか、その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同程度に残虐性を助長するものであること。
三著しく自殺又は犯罪を誘発するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ自殺又は刑罰法規に触れる行為を賛美し、又はこれらの行為の実行を勧め、若しくはそそのかすような表現をしたものであること。
ロ自殺又は刑罰法規に触れる行為の手段を、模倣できるように詳細に、又は具体的に描写し、又は表現したものであること。
ハ電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に刑罰法規に触れる行為を擬似的に体験させるものであること。
2 条例第8条第1項第2号の東京都規則で定める基準は、次の各号のいずれかに該当するものであることとする。
性交又は性交類似行為(以下「性交等」という。)のうち次に掲げる行為を、当該行為が社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現し、又は当該行為の場面を、みだりに、著しく詳細に若しくは過度に反復して描写し若しくは表現することにより、閲覧し、又は観覧する青少年の当該行為に対する抵抗感を著しく減ずるものであること。
イ刑法(明治40年法律第45号)第17 6条から第17 8条の2まで、第18 1条又は第2 4 1条の規定の違反行為
ロ児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第4条の規定の違反行為
児童福祉法(昭和22年法律第16 4号)第34条第1項第6号の規定に違反する行為
一条例第18条の6の規定に違反する行為
二近親者間(民法(明治29年法律第89号)第734条から第73 6条までの規定により、婚姻をすることができない者の聞をいう。)における性交等を、当該性交等が社会的に是認、されているものであるかのように描写し若しくは表現し、又は当該性交等の場面を、みだりに、著しく詳細に若しくは過度に反復して描写し若しくは表現することにより、閲覧し、又は観覧する青少年の当該性交等に対する抵抗感を著しく減ずるものであること。
三電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に前二号に掲げる性交等に該当する行為を擬似的に体験させるものであること。

東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説(平成23年7月)P126
条例7条
{要旨}
本条は、図書類の発行、販売、貸付けを業とする者、映画等を主催する者及び興行場を経営する者は、青少年の健全な育成を阻害するおそれがあると思われる内容のものについて、相互に協力し合うことによって、それらのものが青少年の目に触れないようにする務めがある旨を定めた規定である。
{解説】
本条は、平成4年の条例改正で図書類の定義の中にビデオソフトが追加されたのに伴って「出版を業とする者、図書類の販売または貸付けを業とする者」の文言を「図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者」に改めた。また、平成13年の条例改正で第8条の不健全図書の指定事由として「著しく自殺若しくは犯罪を誘発するもの」を追加したことに伴い、「自殺若しくは犯罪を誘発し」としづ文言を追加した。
さらに、平成22年の改正において、第7条の自主的な区分陳列の対象とする図書類又は映画等の内容に係る従来の基準を第1号とし、新たに第2号を加え、社会的に許されない性交・性交類似行為を不当に賛美したり不当に誇張するように描写等をすることで、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げるおそれのある漫画やアニメーション等(実写を除く)の画像を、新たに青少年への販売等の自主規制の対象とする基準として整備し、平成23年4月1日から施行した。
「発行」とは、第2条に列挙する書籍、雑誌のほか、は製作して世に送りだすことをいう。
「販売」とは、不特定多数の者に対する有償の譲渡行為をいう。
「貸付け」とは、有償又は無償で図書類を他人に貸与し、その閲覧若しくは観覧に供することをいう。
「・・・を業とする」とは、図書類の発行、販売又は貸付等の行為を反復継続して行うことが、社会通念上事業(ビジネス)の遂行とみることができる程度のものであることをしづ。営利目的の有無を問わない。
なお、通常、いわゆる同人誌の発行者は、「個人の趣味」にとどまり、「図書類の発行を業としている」とは言えないため、原則として本条等の対象ではない。ただし、同人誌の販売を行う「同人誌ショップ」において常設販売や通信販売を行っている場合や、書店において同人誌を販売している場合は、「事業(ビジネス)」に当たるため、第7条に基づき、青少年の健全な成長を阻害するおそれのある図書類を青少年に販売しないよう、自主的に取り組む対象となる。
また、年に数回程度開催される同人誌即売会で、の販売についても、発行者や販売者が「図書類の発行、販売を事業(ビジネス)としている」とは言えないため、「個人の趣味」の範囲でのやり取りであると捉えられ、自主規制の対象とはならない。ただし、そのような即売会の主催者に対しては、「青少年の健全な成長を妨げる図書類を青少年から遠ざける」という、この条例の趣旨を理解し、適切に対応するよう、協力を依頼しているところである。
「映画等を主催する者」とは、営利目的の有無にかかわりなく、映画、演劇、演芸及び見せものを観覧させる者をしづ。この場合において、観覧させることの反復継続性は必要ではない。
「興行場を経営する者」とは、興行場法第2条に規定する知事の許可を受けた経営者をいう。
「・・・おそれがある」とは、そのような危険が発生する可能性があるということである。
「頒布」とは、広く配って分け与えることであるが、ここでは不特定多数の者に対する無償の配布行為をいう。
「観覧」とは、映画、演劇、演芸及び見せものを見物することをいうほか、図書類のうちのビデオソフト、映画フィルム、DVD等を機器等を用いて再生し、見ることも含む。
本条第1号は、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発するような図書類等が、精神的・身体的に未完成な青少年に大きな影響を与える可能性があり、なるべく早くそのような危険を取り除く必要があるので、危険が発生する可能性があるという時点でこれを捉えようとしたものである。これは、次条以下においても同様である。
本条第2号は、刑罰法規に触れる性交等を不当に賛美、誇張するように描いた漫画、アニメーション等(実写を除く。以下「漫画等」)が、必ずしも、第1号の基準における、読み手の性的感情を刺激する度合いが強いとは限らないことから、第1号の基準とは別に、新たに明確な基準として設けて区分陳列等の対象とし、青少年の健全な性的判断能力の形成が妨げられることを防止しようとするものである。当然のことながら、漫画等の登場人物の行為に対して、今の日本の刑罰法規が成立するか否かを問おうとするものではない。
すなわち、本条第1号の「著しく性的感情を刺激し」は、閲覧する子どもの性的感情の刺激度合いに着目したものであるが、強姦や児童買春、近親相姦等をあたかも社会的に是認されているものであるかのように描写したり、これらの性行為が特別なものではなく、通常あり得ることとして受けとめられるほど必要以上に詳細に、または執劫に反復して描写する漫画等は、必ずしも性的感情を刺激する度合いが強いとは限らないため、改正前は、このような漫画は必ずしも区分陳列の対象とはされておらず、青少年が容易に購入等することができる一般書棚に陳列されていた。
しかし、このような漫画等は、閲覧する青少年の、そのような性行為に対する抵抗感を弱め、その健全な性的判断能力の形成を妨げるおそれがあることから、そのような漫画等については、性的感情の刺激度合いに着目した第1号の基準とは別個に、独立した基準を設けて、区分陳列の対象としていくことが必要であると考えられたものである。
本条第2号に規定する新基準の対象となるのは、以下の①から④の全てに該当するものであり、いずれか一つでも当てはまらないものは、対象とはならない。
① 漫画やアニメーションなど「画像により」
② 「刑罰法規に触れる」又は「婚姻を禁止されている近親者間の」
③ 「性交又は性交類似行為」を
④ 「不当に賛美し又は不当に誇張するように描写又は表現したもの」
つまり、
刑罰法規に触れない・婚姻を禁止されている近親者間によるものではない性交又は性交類似行為(例: SM、不倫、婚姻を禁止されている近親者間以外の同性愛等)に関する描写等
刑罰法規に触れる・婚姻を禁止されている近親者間の行為の描写等ではあるが、性交又は性交類似行為の描写を伴わないもの(例・性器等への挿入行為を伴わない痴漢(強制わいせつ)や、性犯罪以外の犯罪(暴行、傷害等)の描写等)
刑罰法規に触れる・婚姻を禁止されている近親者間の性交又は性交類似行為を描いているが、それを不当に賛美し又は不当に誇張してはいない描写等(強姦や性的虐待、近親相姦からの立ち直りを描く作品の中で、ストーリー上必要な程度に当該強姦等の場面を描写等するもの等)
刑罰法規に触れる・婚姻を禁止されている近親者間の性交又は性交類似行為を不当に賛美し又は不当に誇張するような台詞などはあるが当該性交又は性交類似行為を画像として描写してはいないもの
等は、対象とならない。
「漫画、アニメーションその他の画像」とは、漫画、アニメーション、ゲーム及びコンビュータグラフィクス(CG)をいう。第1号と異なり、対象はこれらの画像に限られ、文字や音声だけで表現する小説や録音テーフ。は含まれない。その理由として、青少年に与える影響という観点からは、漫画等の「絵」や「映像」は、その視覚的なインパクトが大きく、また、年齢や読解力にかかわらず、そのシーンが表現するものについて視覚的に捉えられるため、容易に理解することが可能である一方 小説は、その表現に用いられる言葉が様々であり、それを読んだ人の年齢、性別、経験、読解力等により捉え方や感じ方が千差万別であり、青少年にとっての理解の容易さという点で、「絵」や「映像」には及ばないものと考えられること(青少年にとって漫画等の「絵」や「映像」は文章よりも理解しやすいという特性は、漫画等の利点でもあり、例えば、近年、教科書等においても漫画等が活用されている。)、さらに、このような特性を持つ漫画等で、刑罰法規に触れる性交等や近親者間における性交等を不当に賛美・誇張するように描写等したものが、
青少年が容易に購入等できる一般の書棚に陳列されている現状があったことを踏まえたものである。
「(実写を除く。)」にいう「実写」とは、実景・実況を写真や映画に写したものを指し、実在する人物を(ありのままに)写し取った写真集や映画等がこれに該当する。
なお、実在する人物を写し取った写真を基にしていても、それを部分的に使用しつつ、切り貼り・改変など基の写真との同一性が失われる程度の創作・編集を加えたもの(いわゆるコラージュやCG)については、「実在する人物」そのものを写し取ったものとは言えないため、ここでいう「実写」には含まれない。
実写を本規定の対象から除いたのは、実在する人物による、「刑罰法規に触れる性交又は性交類似行為」や「婚姻を禁止されている近親者間における性交又は性交類似行為」をありのままに写し取った写真集や映画等があれば、それは、刑法上の「わいせつ物」又は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号。以下「児童買春・児童ポルノ禁止法」という。)で定義される「児童ポルノ」に該当する蓋然性が高く、そこまで至らなくても、通常、第1号の「性的感情を刺激するもの」としづ基準に該当することになり、既に区分陳列の対象になっているものと考えられることから、実写についてあえて新たな基準により区分陳列の対象とする必要がないからである。
「性交」とは女性器への挿入を伴う異性聞の性行為、いわゆる「セックス」を指す。
「性交類似行為」とは、実質的に見て性交と同視し得る態様における性的な行為をいい、例えば、異性聞の性交とその態様を同じくする状況下における、あるいは性交を模して行われる手淫、口淫(し1わゆる「フェラチオ」)、肛淫(いわゆる「アナルセックス」)等をいい、条例第18条の6の規定と同様に、児童買春・児童ポルノ禁止法における「性交類似行為」と同義である(同条の解説も参照されたい。)。
性交・性交類似行為を伴わない単なる裸体の描写や、性交・性交類似行為が明確に描写されていないものなどは、本規定の対象ではない。
「刑罰法規に触れる性交等」は、刑法第17 7条に規定する「強姦」、同法第17 6条「強制わいせつ」以下、下記「参考法令」に掲げる規定に触れる行為のうち、性交又は性交類似行為を伴うものを指す。
例えば、強制わいせつの罪に当たる行為( 1 3歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いて行うわいせつな行為及び13歳未満の男女に対して行われるわいせつな行為)は、必ずしも性交・性交類似行為を伴うとは限らない(胸部や瞥部を触る等の痴漢行為も強制わいせつ罪の対象となり得る)が、本条においては、そのうち、性交又は性交類似行為を伴うものに限って対象となるものである。
「刑罰法規に触れる性交等」の解釈に当たり、刑罰法規の中で、性交等の対象者が13歳未満又は18歳未満であることが適用要件となっている場合には、登場人物の年齢設定の判断が必要となる。
その場合には、年齢の表記をはじめとして、服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を客観的に推定させる事項の描写から判断することになる。
ただし、年齢以外の客観的事項の描写からは、読み手である青少年が、13歳未満又は18歳未満であると受け止めてしまう書き方をされているにもかかわらず、一言だけ「これは成人である」と断り書きがつけられているようなものについては、適用を検討する対象となり得る。
「婚姻を禁止されている近親者間」については、民法第73 4条に規定する「近親者間(直系血族文は三親等内の傍系血族の間(養子と養方の傍系血族との聞を除く。
))」、同法第73 5条の「直系姻族間」及び第73 6条の「養親子等間」に該当する続柄をいう。
具体的には、親子、祖父母と孫、兄弟姉妹(養子縁組に伴うものを除く)、伯(叔)父・伯(叔)母と甥・姪(同前)等の間柄を指す。
これらに該当する近親関係にあれば、異性間で、あるか向性間であるかを問わない。
このように、民法上婚姻を禁じられている親子、兄弟姉妹、祖父母と孫等の近親者については、法律上性交まで禁じられているとは言えないが、そのような、婚姻を禁じられるほど近しい間柄の者については、社会通念上、性交についても忌避すべきである間柄であるという認識、及び、青少年が極めて近しい近親者間の性交等を、それ以外の性交等と何ら変わりない程度に抵抗感なく受けとめることは、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げることになるという認識は、多くの都民の共通理解であるものと考えられる。
なお、「婚姻を禁止されている」とは、近親者の範囲を指すものであり、現在、婚姻が認められていない者や間柄( 1 6歳未満の女子及び18歳未満の男子、既に婚姻している者、向性問)における性交等を対象とする趣旨ではない。
「不当に賛美するように描写又は表現しているもの」とは、今の日本で社会的に許容されていない、刑罰法規に触れる性交等または婚姻を禁止されている近親者間における性交等を、あたかも社会的に許容されているものであるかのように描写しまたは表現することである。
「不当に誇張するように描写又は表現しているもの」とは、このような性交等について不当に賛美するように描写していなくとも、このような性交等が、読み手の青少年から見て特別なものではなく、通常あり得ることとして受けとめられるほど、必要以上に詳細にまたは執劫に反復して描写しまたは表現することである。
「不当に誇張」とは、漫画において当然に伴う誇張的な描写、いわゆるデフォルメ一般を指すものではない。
なお、本規定は、読み手である青少年が、現在の日本の刑罰法規に触れる性交等や、現在の日本で婚姻を禁止されている近親者聞の性交等を社会的に許されるものと受け止め、読み手である青少年の、これらの性交等に対する抵抗感を弱め、性に関する健全な判断能力の形成を妨げられないようにするためのものであり、現在の日本では婚姻を禁止されている近親者間の性交等を、過去の制度・慣習や諸外国の文化等として描いた作品(例:神話や古典等)を対象としようとするものではない。
また、SFやファンタジ一作品等において、現在の日本で刑罰法規に触れる性交等や、現在の日本で婚姻を禁止されている近親者間の’性交等について、当該作品の設定上は許されているものとしたり、その上でそのような性交等を描写した作品を対象としようとするものでもない。
しかしながら、例えば、「近親婚が認められていた時代を背景とした作品」や「幼児との性交が許されており、法律違反とならない架空の社会」としづ設定にかこつけて、全編の大部分で幼い子供との性交等をテーマに照らし必要以上に執劫に描いたもので、これを読んだ青少年が、こうした性交等が現在の日本でも通常あり得ることとして受け止めてしまう程度のものがあれば、本条の適用を検討する対象になり得る。
「性に関する健全な判断能力の形成を妨げる」とは、広く性的な関係について、青少年がその心身の成熟の過程に応じ、みずから適切に判断し自己決定することを困難にするという趣旨である。
具体的には、心身が未成熟な青少年が、刑罰法規に触れる性交等のように社会的に明らかに許されていない性交等について、それがあたかも社会的に許されているもののように受けとめ、または特別なことではなく、通常あり得ることとして受けとめるようになった結果、性的な関係についてみずから適切に判断し、自己決定できなくなることである。