児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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被告を被告人とする集団強姦未遂被告事件において原告が申し立てた刑事損害賠償命令事件が民事訴訟手続に移行した事件であり,原告が被った治療費,休業損害,慰謝料等の損害合計金1212万9500円及びこれに対する不法行為日である平成21年5月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を不法行為に基づき求めた事案で、222万5000円が認容された事例(東京地裁H24.4.27)

出典
エストロー・ジャパン

主文
 1 被告は,原告に対し,222万5000円及びこれに対する平成21年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は,これを7分し,その6を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
 
 
事実及び理由

第1 請求
 被告は,原告に対し,1212万9500円及びこれに対する平成21年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,被告を被告人とする集団強姦未遂被告事件において原告が申し立てた刑事損害賠償命令事件が民事訴訟手続に移行した事件であり,原告が被った治療費,休業損害,慰謝料等の損害合計金1212万9500円及びこれに対する不法行為日である平成21年5月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を不法行為に基づき求めた事案である。
 1 争いのない事実等
 当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実は,次のとおりである。
  (1) 当事者
   ア 原告は,昭和60年○月○日生まれの女性で,平成21年5月31日当時は23歳で,身長163センチメートル,体重45キログラムであった(甲4)。
   イ 被告は,昭和22年○月○日生まれの男性で,平成21年5月31日当時は62歳で墓石業を営んでいた(甲1,乙8)。
   ウ 原告と被告は,平成21年5月31日まで互いに面識がなかった(乙6)。
   エ 原告は,平成21年5月30日から同月31日にかけての深夜,自転車で千葉県市川市相乃川所在のレンタルショップ「○○」に買い物に行ったが,その帰り道に自宅付近で携帯電話を紛失したことに気づき,通ってきた道を探しに○○まで戻ったが見つからず,徒歩で携帯電話を探しながら,一度帰宅した(甲4,乙6)。原告は,同日午前3時30分頃,上下ともにスエットを着用して黒色パーカーを羽織った格好で自宅を出て,自転車を押しながら携帯電話を探し歩いていたところ,同日午前4時過ぎ頃,千葉県市川市〈以下省略〉先a橋(以下「a橋」という。)の手前の交差点付近で,被告に何をしているのかなどと声をかけられた(甲4,11)。
 原告は,被告に対して携帯電話を探していると伝えたところ,被告が,原告の携帯電話を探すために,被告の携帯電話で原告の携帯電話に電話をかけてみてはどうかと提案し,被告の携帯電話で原告の携帯電話に電話をかけたが,原告の携帯電話の着信音は聞こえなかった(甲4,11)。
 原告は,その後,a橋付近の交差点からa橋上に至る間に,被告に対し,原告が務めているキャバクラ店の場所と原告の源氏名を教えた(甲4,11)。
  (2) 刑事事件の経過
   ア 被告は,平成21年12月22日,原告を被害者とする集団強姦未遂の罪で,千葉地方裁判所に起訴された(甲1。以下「本件刑事事件」という。)。
 公訴事実の要旨は,被告が,氏名不詳者と共同して原告を強姦しようと企て,平成21年5月31日午前4時30分頃,a橋上において,氏名不詳者が,原告に対し,その口を手で塞ぐとともにその腰を抱きかかえ,「騒いだら殺すぞ」と脅迫し,原告を千葉県市川市〈以下省略〉所在の有限会社b社敷地内(以下「本件現場」という。)まで連行し,同所において,氏名不詳者が原告の頭髪を引っ張り,その背後から羽交い締めにするなどの暴行を加えて原告の反抗を抑圧し,そのズボンとパンツを引き下げ,被告が原告の陰部に自己の陰茎を押しつけるなどしたが,原告が抵抗したため強姦目的を遂げなかったというものである(甲1。以下,被告及び氏名不詳者による一連の上記行為を「本件行為」という。)。
   イ 千葉地方裁判所は,平成22年7月14日,被告を同罪により懲役4年6月に処する旨の判決を宣告した。
   ウ 被告は,上記千葉地方裁判所の判決に対して控訴し,東京高等裁判所は,平成22年11月11日,被告の控訴を棄却する旨の判決を宣告した(甲12)。
   エ 被告は,上記東京高等裁判所の判決に対して上告し,最高裁判所は,平成23年5月30日,被告の上告を棄却し,同年6月10日,被告の懲役4年6月の刑が確定した(甲19)。