被告人は「自首」したつもりが「自首」になってなくて自首減軽を受けられないというケースがあります。
判例をみれば、捜査機関とのファーストコンタクトに問題があったことがわかります。できれば、弁護士に相談してからにして欲しいところです。
東京高等裁判所平成19年7月20日
東京高等裁判所判決時報刑事58巻1〜12号46頁
第1 法令適用の誤り,訴訟手続の法令違反の主張について
1 論旨は,要するに,原審弁護人が,原判示第1,第4ないし第6の各犯行について自首の成立を主張し,自首の要件のうち,原審検察官との間で争点となっていた「犯罪事実が捜査機関に発覚する前に申告がなされた」との要件(以下「発覚前の要件」という。)を満たすことを論証したにもかかわらず,原判決は,原審で全く争点となっていなかった「申告は自発的なものであること」との要件(以下「自発性の要件」という。)を持ち出し,この要件を満たさないとの理由で自首の成立を否定したが,このような原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤り,訴訟手続の法令違反(審理不尽)がある,というのである。
2 検討すると,原審記録によれば,自首の争点に関して,次のような審理経過が明らかである。
(1) 原審弁護人は,原審第4回公判に行われた弁論において,原判示第1ないし第6の各犯行について自首の成立を主張し,それに対し,原審検察官は,第2及び第3の各犯行について自首が成立することは争わないが,それ以外の各犯行については,「発覚前の要件」を満たさないことを理由に,自首は成立しないと考える旨釈明した。原審裁判所は,それ以上の措置を採ることなく,結審した。
(2) 原審第5回公判において,原審検察官からの求めで弁論が再開され,原審検察官から新たに請求されて取り調べられた書証をも踏まえ,自首の成否について,原審検察官は「意見書」に基づき,原審弁護人は「弁論要旨(補充)」に基づき,それぞれ意見を述べたが,そこでは,もっぱら,「発覚前の要件」が争点とされていた。原審裁判所は,それ以上の措置を採ることなく,改めて結審した。
(3) 原審第6回公判において言い渡された原判決は,争いのあった原判示第1,第4ないし第6の各犯行について自首の成立を否定したが,所論指摘のとおり,その理由はいずれも「自発性の要件」を欠くというものであり,かつ,「弁護人指摘の裁判例は,『発覚前の要件』に関するものであって,本件の参考になるものではない」と付記されている。
3 以上の審理経過に照らせば,自首の成否をめぐって,当事者が「発覚前の要件」に当たるか否かのみを争点として互いに主張を展開していた事実が明らかであるから,原審裁判所としては,当事者が問題としていない「自発性の要件」が欠けることを理由に自首の成立を否定しようとするのであれば,その要件の存否の点を争点として顕在化させた上で十分な審理を遂げる必要があると解される。しかるに,このような措置を採ることなく,当事者が争点としていなかった「自発性の要件」を欠くとして自首の成立を否定した原審の措置は,被告人に対し不意打ちを与え,その防御権を不当に侵害するものであって,審理不尽の違法があるといわざるを得ない。
4 また,当審における事実取調べの結果(当審検1,4ないし8号証)を併せて検討すれば,原判示第1,第4ないし第6の各犯行についても刑法42条1項の自首が成立すると認めるのが相当であるから(当審検察官もこれを争わない。),これらについて自首の成立を否定した原判決には,同条項に関する法令適用の誤りがあるというべきである。
5 しかし,本件の処断刑は,7年以上(30年以下)の懲役刑であるところ,被告人に対してこれを下回るような量刑をするのが相当とは認められず,したがって,本件で被告人に対し自首を理由に刑の減軽をする必要は認められないから,上記法令適用の誤り,訴訟手続の法令違反は,いずれも,判決に影響を及ぼさないというべきである。
東京高等裁判所平成19年6月19日
高等裁判所刑事裁判速報集平成19年247頁
6 被告人は,午後4時30分ころ出頭し,Oから免許証の提示を求められるや,Oに対し,無免許であること及び友人の名前を騙っていたことを申告した。
以上のように,Oは,上記3の段階から,免許証不携帯を言う者の中には免許を有する他人の名を騙る者,すなわち自らは無免許の者がいることを考えて,被告人に対して自らが「Y」であることを確実な証明手段により証明させようとし,被告人が用があるというので,いったんはこれを中断することにしたものの,その後になお続行する意思で被告人に免許証の持参を約束させ,被告人が来署しないと,被告人の携帯電話に電話して,必ず出頭するよう指示し,被告人が遅れて出頭するや,被告人に免許証を提示するよう求めているのであって,このような経緯に照らせば,被告人は,捜査機関が被告人に対して被告人が免許を有する「Y」本人であることの証明をあくまで求める姿勢を明確に示し続けたことから,自らの無免許と免許のある他人の名を騙っていたことを隠しきれなくなって,これを告白したに過ぎないと認められ,「自発的に自己の犯罪事実を申告した」とはいうことができないから,自首が成立しないことは明らかである。
東京高等裁判所平成18年9月21日
東京高等裁判所判決時報刑事57巻1〜12号49頁本件各犯行につき被告人に自首が成立することにつき付言すると,関係証拠によれば,被告人は,本件各犯行が捜査機関に発覚する前の平成17年5月30日の時点でA警察署に出頭し,自ら進んで同署長宛の上申書(乙1)を作成するなどして,3年間にわたり,自己が集金したトラックの売上金をトラックの納期までの間,自らが経営する会社の運転資金に流用し,会社や取引先に合計7000万円近い損害を与えた旨警察官らに申告していることが認められ,その内容は起訴に係る本件各事実とは法律構成が異なる結果,その被害品や被害者等に差異が生じてはいるものの,社会的事実として同一性が認められ,その概要(大まかな期間,方法等)は警察官に申告していた(申告内容がそれ以上に具体化されなかったのは専ら警察側の事情による。)ものである。このような場合に,被告人に対し,自らの行為がどのような犯罪を構成するのかを明らかにするように期待することは無理であって,原判決がそのような点が明らかでなかったから,具体的な犯罪事実を申告したものとはいえないとの理由で被告人について自首の成立を否定したことは,自首制度の趣旨,目的に照らして正当とはいえず,本件各犯行について被告人の自首が成立するものと解するのが相当である。したがって,この点の原判決の判断は法令の解釈適用を誤ったものといわざるを得ないが,本件各罪の法定刑の下限からして自首による法律上の減軽はおよそ考えられない上,原判決は「量刑の理由」で被告人の上記申告を「実質的には自首と同等に評価できる」と説示し,そのように量刑上も考慮していることは明らかであるから,原判決の上記誤りは判決に影響を及ぼすものではない。(安廣文夫・山田敏彦・前澤久美子)
東京高等裁判所平成17年12月6日
高等裁判所刑事裁判速報集平成17年244頁理 由
論旨は,要するに,原判決は,自首の成立を認めなかった点において,法令適用の誤り又は事実の誤認があって,この誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかである,というのである。
原判決は,その(量刑理由)の項で,刑法42条1項の自首の成立を否定している。
そこで,検討すると,被告人は,原審公判廷において,覚せい剤を使用し,ぼけた状態になったので,このままでは家族にも迷惑をかけると思い,警視庁品川警察署青物横丁駅前交番に自首するつもりで入った旨供述し,当審においても,川崎市の簡易旅館で覚せい剤を注射し,妻のいる大崎に行こうと思って電車に乗ったが,覚せい剤で頭がパニック状態で,このままでは何をやらかすかも知れないので,警察に逮捕してもらおうと思い,青物横丁駅で途中下車し,本件覚せい剤と注射器を包んだティッシュをポケットから取り出し,これを手に持って,同駅前の上記交番に入り,交番の警察官に,注射器と覚せい剤を持っているから逮捕してくれ,30分前に射ったばかりだなどと告げて,警察官にこれらを渡した,その後,本件覚せい剤の予試験が行われ,現行犯逮捕された旨供述している。一方,同交番勤務の警察官ら作成の現行犯人逮捕手続書には,同交番勤務の警察官らは,平成17年5月23日午後9時46分ころ,京浜急行青物横丁駅方向から同交番方向に歩いてくる被告人が顔全体に汗をかき周囲の様子をうかがうようにしていたことから不審と認めて職務質問のため呼び止め,「どうしました。具合でも悪いのですか。」と尋ね,路上では人通りも多いことから交番内に任意同行を求めたところ,被告人は素直にこれに応じて交番内に入ったこと,警察官らが,同交番内で,被告人の様子を観察すると,被告人が右手に白色のティッシュ様の物を握っていたことから,警察官らが「これは何ですか。」「手の中の物を見せてください。」と言うと,被告人は「おう,覚せい剤持ってるよ。」と言いながら右手に握っていた丸めたティッシュをロッカーの上に投げ出して提示したこと,警察官らが,ティッシュの中身を開示するように求めると,被告人は,「30分前に射ったばっかりだ。覚せい剤だよ。」と言ってティッシュを開いたこと,中には,注射器とビニール袋入りの白色結晶様の物が入っており,被告人は,「覚せい剤だ。渋谷でフィリピン人から買った。さっき射った。」と言ったこと,この時刻は,同日午後9時48分であったこと,警察官らは,予試験の必要性を認めて,本署に応援を求め,同日午後10時05分同交番に到着した同署刑事組織犯罪対策課警察官が,被告人の同意を得て,覚せい剤試薬により予試験を実施したところ,白色結晶様の物から覚せい剤の陽性反応が出たことから,同日午後10時08分被告人を覚せい剤所持の現行犯人として逮捕したこと,被告人は,「うん。」と言って素直に逮捕に応じたことなどが記載されている。このように,被告人が上記交番に入り,本件各犯行を警察官に申告した経緯について,被告人の述べるところと上記現行犯人逮捕手続書に記載されたところとは,若干趣を異にしている。しかし,前者によるとすれば,被告人に刑法42条1項の自首の成立を肯定できるのはもちろんであるが,後者によるとしても,被告人に自首の成立が肯定できるといわなければならない。すなわち,後者によっても,被告人は,捜査機関が未だ本件各犯行を覚知していないうちにこれらを捜査機関に申告していることが明らかである。加えて,上記のように,被告人が予め覚せい剤等を手に持った状態で交番に入り,警察官の促しですぐに覚せい剤と注射器を警察官に提示し,格別の追及を受けたわけでもないのに,提示した物が覚せい剤であることや覚せい剤を30分前に注射したことなどを警察官に申告したこと,警察官が被告人の姿を交番前で認めてから覚せい剤等を提示し本件各犯行を申告し終わるまでわずか2分間しか経過していないこと,その後,被告人が覚せい剤の予試験にも異議なく応じ,逮捕にも素直に応じたこと,などに照らせば,被告人が自発的に本件各犯行を申告し自らの処分を捜査官憲に委ねたことも明らかである。したがって,後者によっても,刑法42条1項の自首の要件がすべて充足されているということができ,被告人に同条項の自首の成立を肯認できるのである。
東京地方裁判所平成17年9月15日
判例タイムズ1199号292頁
(弁護人の主張に対する判断)
弁護人は,本件において被告人が犯人であることが発覚する以前である平成16年4月中旬に,大韓民国に帰国していた被告人は日本の警察官と連絡を取り,自分が本件に関与していること等を申告したから,被告人には自首が成立すると主張するところ,被告人が日本の警察官に電話で連絡した日時は証人Bの証言でも必ずしも明らかではなく,甲の逮捕事実では被告人は共犯者とされておらず,証拠上,被告人からの電話連絡の際に,捜査機関において,既に被告人が犯人の一人であると判明していたものとは断定し難い。
しかしながら,自首は,検察官または司法警察員に対し,書面または口頭で行わなければならない(刑事訴訟法245条,241条)ところ,「口頭」とは自首した者と自首を受理する者が相対して行うものであるのが原則であって,電話による自首は,連絡後,犯人がすぐに身柄の処分を捜査機関に委ねられるような,相対しているときに準じる状況になければならないと解される。本件では,被告人は,事件後,大韓民国に出国し,日本の捜査機関の捜査権限が及ばない同国から電話で日本の警察官に事件のことを申告したというのであって,電話による申告の直ぐ後に日本の捜査機関が被告人の身柄を確保できる状態になかったことは明らかであり,被告人の供述するような経緯があったとしても,それは情状の一要素として量刑上考慮すべき事情には当たるが,法律上の刑の減軽事由たる自首には該当しない。
東京地方裁判所平成15年1月28日
判例タイムズ1133号269頁 判例時報1837号161頁 研修669号11頁
(自首の成否について)
1 弁護人は、判示罪につき自首が成立する旨主張し、検察官は、自首の成立には疑義がある旨主張する。
2 そこで、検討すると、関係各証拠によれば、次のような事実が認められる。
すなわち、
(1) 被告人は、判示犯行により得た現金約八万円を使って生活していたが、平成一四年一一月一七日朝、コンビニエンスストアで弁当を購入し、所持金がすべてなくなったこと
(2) 被告人は、同日午後七時三〇分ころ、警視庁赤坂警察署を訪れ、同警察署勤務の警部補乙野次郎らに対し、「刑務所に行きたい。寒い。食えない」などと言ったので、乙野警部補は、被告人に対し、「何だ、お前、何かやったんだろう」などと尋ねたこと
(3) やがて、被告人は、「一週間くらい前に、人の車の中からバッグを盗みました」などと述べたこと(被告人がそのように述べるまでの経緯については、後に検討する。)
(4) そこで、乙野警部補が、被告人に対し、その詳細を尋ねたところ、被告人は、「一一月一〇日ころの朝六時ころ、広尾交番の斜め前にあるビルの一階にある車庫に入り、その車庫の中に止まっていたワゴン車の中から、黒っぽいバッグを盗み、バッグの中から現金八万円だけを抜き取り、後は車の屋根の上に置きました」などと述べたこと
(5) 被告人は、同月一七日午後九時三〇分ころ、建造物侵入及び窃盗の被疑事実により緊急逮捕されたことなどの事実が認められる。
3 そして、乙野警部補は、緊急逮捕手続書において、「当職が、被告人に対し、前記2の(2)の質問をしたところ、被告人は、何かを隠しているような様子が窺われながら、煮え切らない様子で、もごもごと口ごもっていた。当職は、被告人が一見して浮浪者風の風体であったことや事実をはっきりと申し述べないことから、ただ単に警察署に暖を取りに来たのか、あるいは犯罪を犯したのかを確かめるために、同人を厳しく追及した結果、同人は、ようやく前記2の(3)の文言を述べるに至った」旨説明している。
4 また、被告人は、捜査段階において、「私は、所持金が全くなくなってしまい、このままだと、また盗みをして金を得るしか方法はなかった。私は、八万円を盗んだ被害者には申し訳ないと思っていたし、今後再び盗みを繰り返してしまうことになると思ったので、警察署に出頭して自首しようかなと思った。私は、前刑の事件が赤坂警察署扱いの事件であったので、赤坂警察署に出頭しようと考えた。そこで、一一月一七日午後七時三〇分ころ、赤坂警察署の正門の所に立っていたお巡りさんに対し、「窃盗で自首してきた」と告げたところ、二階の刑事さんの所まで案内してくれた。そして、私は、刑事さんに盗みをやった場所などを説明し、上申書を書き、盗みをやった場所へ刑事さんを案内した」などと供述している。さらに、被告人は、当公判廷において、乙野警部補から前記2の(2)の質問をされて、すぐに前記2の(3)のように答えたと思う旨供述している。
5 そこで、前記2認定の各事実に加え、前記3掲記の乙野警部補の説明及び前記4掲記の被告人の供述を合わせ考えると、とりわけ、被告人が、自らわざわざ警視庁赤坂警察署に出向き、乙野警部補らに対し、最初に、「刑務所に行きたい」などと申し述べていることなどに照らすと、被告人は、前記4掲記のとおり、自首しようとの思いを持って同警察署を訪れたものと認めることができる。確かに、乙野警部補らが、被告人が判示犯行を犯したことを理解するまでに多少の時間が掛かり、被告人を厳しく追及したことは窺うことができるが、それは、被告人が自らの罪を隠そうとして殊更に曖昧な供述をしたからではなく、被告人の説明が今一つ要領を得ないものであったからと見ることもできるのである。そして、被告人の言動を全体として見るならば、本件において、被告人が判示犯行を明確に述べる前に警察署の追及があったからといって、そのことから直ちに犯罪事実の申告の自発性が否定されるものではないというべきである。
6 したがって、被告人は、捜査機関に発覚する前に、自ら警察署に出向いて、司法警察員に対し、判示犯行を自発的に供述し、その処分に委ねる意思表示をしたと解するのが相当であるから、弁護人の主張のとおり、判示罪につき被告人には刑法四二条一項の自首か成立するということができる。
広島地方裁判所平成14年3月20日
判例タイムズ1113号294頁
7 自首の成否
次に,被告人は,犯行翌日である平成12年12月3日午後1時ころI警察署に出頭して自首調書が作成されているところ(106),検察官は,被告人は重要な社会的事実について虚偽の事実を申告して自己の刑事責任を免れようとしたものであるから,自首は成立しない旨主張しているので,この点について検討するに,関係証拠によれば,被告人が警察に出頭した時点では,本件事件の犯人については,ベージュ色の服を着て,頭にタオルを巻いていたということ,犯行直前のC店の防犯ビデオに,犯人によく似た人物が写っていることが判明するにとどまっていたものであって,未だ犯人が特定していたとはいえず,被告人は,犯人が発覚する前に捜査機関に出頭したといえる。
もっとも,被告人は,その際,捜査機関に対して,自分は,広島市○区○で起きた強盗事件や殺人事件を起こした者であるとは申告したものの,「女性に4回ほどにらみつけられ,一言文句を言ってやろうと思い,女性の後を追って行き,ダイバーナイフをちらつかせながら,何でにらんだのかと尋ねる等したが,女性がにらんだことを否定し,大声を上げる等したので,いったん女性から離れて帰ろうとすると,女性がチッと舌打ちをしてまたにらみつけていたので,頭に血が上り,首を絞めたり,胸倉をつかんだりしたが,女性が抵抗したのでもみ合っているうちに女性が肩にかけていた手提げバッグを持っていた。それで,びっくりして手提げバッグを持ったままその場から逃げた。その後,しばらく走っていると後ろで人の気配がし,後ろを振り向くとすぐ目の前に25歳くらいの男性が立っており,飛びかかってきたので,捕まったらまずいと思い,この男性ともみ合っているうちに,持っていたダイバーナイフが男性の胸や腹等に刺さって,男性はその場に倒れ,自分は気が動転してその場から逃げた。結果的に女性が持っていた手提げバッグを奪い,その後,追いかけてきた男性を殺してしまった。」旨,本件犯行の動機,バッグ奪取の態様(強盗の故意),殺意について,前記2,3及び5で認定した事実と異なる供述をしている(106)。
しかしながら,捜査機関に真犯人を速やかに知らしめ,捜査,処罰を容易ならしめるという自首制度の趣旨からすれば,自首の内容に,動機や態様について真実でない部分が含まれていたとしても,被告人が警察に出頭したことにより,本件事犯についての捜査,処罰が容易になったことは明らかであり,また,被告人の上記供述によっても,被告人は,少なくとも傷害致死の限度では自己の犯罪行為を申告しており,訴追を求める意思もあったといえるから,刑の減軽をするか否かは別途考慮するにしても,自首は成立するというべきである。