児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ製造罪が、正当行為とされる余地

 正当行為が主張されると、必ず判示されます。
 なんか、ネット検索で拾ってきたような主張に見えます。ということは出典は奥村か。

福岡地方裁判所判決平成23年3月17日
LLI/DB 判例秘書登載
  (1) 公訴権濫用の主張について
    弁護人は,性被害があったとして告訴をしなかった児童らに係る児童ポルノ製造行為を検察官が起訴したことは,児童のプライバシー権,性的自己決定権等を侵害する上,13歳未満の児童らについては強姦罪や強制わいせつ罪が親告罪とされている法の趣旨を潜脱するものであるから,訴追裁量権を逸脱,濫用した違法な起訴であり,公訴棄却されるべきであると主張する。
    しかしながら,児童ポルノ製造行為は親告罪とされてはいないから,弁護人の主張は明らかに失当である。
    そもそも当該行為が犯罪とされ非親告罪とされているのは,当該行為が当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず,かつ,流通の危険性を創り出す点で当罰性がある上,これを親告罪とすると,示談等による告訴の取り下げをはかることにより,当該児童の保護,児童を性欲の対象とする風潮を抑制し,児童一般の性的搾取行為からの保護を十分に図ることができなくなるおそれがあるためと考えられ,その合理性は,当該児童のプライバシー権,性的自己決定権等を考慮しても,否定されない。また,児童ポルノ製造行為と強姦罪や強制わいせつ罪とは,構成要件,法定刑を明らかに異にしているから,13歳未満の告訴のない児童に係る児童ポルノ製造行為を起訴することが,強姦罪や強制わいせつ罪が親告罪とされていることの潜脱にならないことも明らかである。弁護人の主張は失当である。
  (2) 違法性阻却の主張について
    弁護人は,本件各児童ポルノ製造行為は,被告人が児童らの人格形成を目的とした教育の一環として教材用に作成したのであり,社会的相当性がある,また,各児童らは十分な判断能力を有した上で真摯に自己決定した上でビデオ撮影に応じたのであるから,違法性が阻却されるべきであると主張する。
    しかしながら,関係証拠によれば,本件各児童ポルノ製造行為は,約2年間にわたり,人格的にも性的にも未成熟とうかがえる当時9歳から16歳までの児童合計13名を,合計28回,性交又は性交類似行為等の姿態をさせて,ビデオ撮影したものであること,その撮影された内容が,被告人が自ら児童と性交するにとどまらず,バイブレーター等を用いたり,複数の児童に相互に性的行為をさせるものであること,児童らの保護者に対し,児童らが性的行為に及んだり,その様子をビデオ撮影する旨の事前説明は一切されず,その承諾を得ていなかったこと,被告人自身,当公判廷において,児童らと性交する際,性的興奮があった旨認めていることなどの事実が認められ,以上によれば,本件各児童ポルノ製造行為が,教育目的があり社会的に相当であるとおよそいえないし,いかに児童らが当時承諾し,現在においても本件行為を含む被告人との関わりをなお肯定的に捉えている者があるとしても,児童らに対する性的搾取行為であることは明らかであり,およそ違法性を阻却し得ない。弁護人の主張は失当である。