児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

手を触れなくても強制わいせつ罪になる場合

 この調子では、メールで送らせる強制sextingも強制わいせつ罪になることがあると思います。

某高裁
平成22年11月10日午後7時35分ころ,大阪市北区西天満4丁目付近歩道において,通行中の(当時15歳)に対し,その間近で,露出した自己の陰茎を手淫し,同女の身体,衣服に向けて射精して,精液をその衣服などに付者させるなどし,もって強いてわいせつな行為をした,

強制わいせつ罪における暴行は, 被害者の意思に反して当該わいせつ行為を行うに必要な程度にその抗拒を抑制する程度・態様のものであれば足り, 暴行自体がわいせつ行為である場合も含まれる。そして, 被告人は, 精液が被害者の衣服に付着するような間近の位置及び被害者が認識しうる状況下で, 露出した陰茎を手淫し被害者の身体, 衣服に向けて射精しており,判示行為が,一般に 女性の抗拒を抑制する程度・態様のものであることは明らかといえる。
被害者の抗拒抑制には,被害者が不意をつかれ, あるいは驚きの余り, 当該わいせつ行為を避けられなかった場合を含むと解するべきである
 被害者は, 物陰から突然面前に出てきた被告人に射精され, 直後にきゃーと言ってその場から逃げているのであって, いずれの被害者も不意をつかれ, あるいは, 驚きの余り, 間近で射精され精液をかけられるのを避けられなかったものである。
したがって, いずれの被害者も抗拒が抑制されたものといえる

また, 所論は, 強制わいせつ罪における暴行それ自体がわいせつ行為に当たる事案では, そのわいせつ行為は, 被害者の性的自由という保護法益に照らして, 被害者の身体の性的部分への接触に向けられた行為であると解釈されるべきである, という。しかし, 強制わいせつ罪の保護法益である性的自由は,被害者の身体の性的部分への接触に限定されず, 被告人に性的満足を与える行為について被害者がこれを受け入れるかどうかを決定する自由も含まれるというべきである。所論は, 独自の見解であって採用できない。

仙台高裁h21.3.3
原判決は,被告人が各被害児童の陰部をデジタルカメラ等で撮影した行為をわいせつな行為と評価しているが,刑法176条のわいせつな行為は身体的接触を伴うものに限定されるから,上記各行為に同条後段を適用した原判決には法令適用の誤りがある,
などと主張する。
しかしながら,
刑法176条のわいせつな行為は,法文上,態様について限定がなく,また,自己の裸体を他人の目に触れさせたくないという気持ちは,人間の本質的部分に由来するものであるから,強制わいせつ罪の保護法益である性的自由には,自己の裸体を他人に見られたり写真等に撮影されたりしない自由を含むものと解される。そうすると,自らの性的欲求を満足させるために,各被害児童の陰部をデジタルカメラ等で撮影した被告人の行為が,同条にいうわいせつな行為に該当することは明らかというべきである。所論は,公然わいせつ罪の主たる保護法益が善良な風俗であるとしても,多少なりとも見せられた者の性的自由が害されているから,強制わいせつ罪と公然わいせつ罪とを区別するためには,強制わいせつ罪については身体的接触を要件とすべきであるなどとも主張するが,所論も認めるとおり,公然わいせつ罪は善良な性的風俗の侵害を本質とするものであり,わいせつ行為を見せられた者の性的自由を侵害する場合があるとしても,それは副次的なものにすぎず,直接的な性的自由の侵害を本質とする強制わいせつ罪とは行為態様において大きな違いがあるといえるのであって,身体的接触を強制わいせつ罪の要件としなければ両者を区別し得ないものではない。所論は独自の見解に基づくものであって採用の限りでなく,この点において原判決に法令適用の誤りはない。